私は次期アドラステア皇帝エ『レオノォォルゥゥ!!』 作:炭酸ソーダ
真夜中のサーカス。
このろくでもない、それでいて純愛(笑)の為に生み出された存在は、彼ら四人の記録の中でもなかなかにぶっ飛んだものだろうね。笑わせるためなら何でも(強調)するというオートマタによって、他人を笑わせないと死んだりするような病気が蔓延するわ、それへの対抗策として人間をやめる人たちが続出するわ、挙げ句の果てに世界を滅ぼそうとするわ。いや、最後のはオートマタじゃなくてフェイスレスがやったことだけどね。
それはともかく、殺人機能とゾナハを取っ払えば、オートマタは人間と遜色ない。人間社会に紛れていたシルベストリというオートマタもいるみたいだしね。危険の多いサーカスでも、彼らの運動性能なら問題ないだろうし。
オートマタを作るのは決めた。そして、まず作るべき存在も決まっている。
最古の四人。人形フランシーヌを笑わせるべく作られた、最初期のオートマタ。アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーヌ……ドットーレ。なんかドットーレだけ作る気が起きないんだよなあ。存在理由を否定して自壊したからかなあ。
それはそれとして、ここから去ることが先決かな。あの黒服から聞き出した限り、ここはフォドラという半島の東部、コーデリア伯爵領らしい。というか、ここは伯爵の邸宅らしい。領主の家で禍々しい実験をしていた奴らは、自称シャンバラの民だとか何とか。暗い地下牢なんかでこそこそやってるんだから、闇にうごめく者とでも呼ぼうか。略して闇うご。可愛らしくていいんじゃない?
で、コーデリア家は闇うごに支配されていると。そーなると、こんな土地はさっさと出た方が良いのだが……生憎それぐらいしか聞けなかった。痛みで気絶したからね。ここからは、未知の世界を僕の判断で進んでいかなくてはならない。
というわけで、邸宅から離れて市街地へとやって来たわけだね。まあ邸宅から察してはいたが、この世界は中世ヨーロッパのような文化レベルらしい。彼らの中では、白金の知識に近しいかな。
「小僧! そんな薄汚い格好で、うちの店に近寄るな!」
どうやら飲食店らしき建物の店主が、僕を見るなりそう吐き捨てた。ああ、そういえば服は覚醒したときから変えていなかったか。服とも言えぬぼろ布を身に纏った僕を、住人たちは汚らしいものであるかのように見ている。服を替えなければいけないが、そもそも金など持っているはずもない。何かしらで稼がなくては。
「何か『分解』できなくて困っていないかね?」
街の一軒一軒をこう言って回ったが、芳しくはない。そもそも見た目が見た目だし、当然といえば当然かもしれないがね。しかし、ある家で老婆に呼び止められた。
「あんた、そんな格好で! 上がってきなさい!」
僕が何か言う前に、無理矢理家へと連れ込まれた。ルシールじゃあないが、どこの世界でも老婆は押しが強いのかね。老婆は、話をするでもなくとっくに出て行ったという息子の服を押しつけてきた。何ともかび臭いが、ありがたく受け取っておこう。
「お礼といっちゃあなんだけど、開かなくて困っている金庫とかないかね?」
そう言うと、老婆は古めかしい小箱を持ってきた。
「死んだ爺の遺産なんだけどね。腕の良い鍵屋に見せて回ったけど、結局開かなかったんだよ。あんた、開けられるかい?」
「当然だ。僕は『分解』のフェイスレスだからね」
小気味の良い「かちり」という音を立て、箱は開いた。これは……
「色眼鏡か。あの爺、こんなものに鍵をつけてたのかい。あたしゃいらないからあんたにあげるよ」
黒いサングラスだ。持ち主がいらんと言うなら貰っておこう。ますますフェイスレスみたいになってしまったがね。
酒場に来た。老婆からいくらかの路銀まで貰ったので、空腹を満たすと共に聞き込みをすることにしよう。店内は広いが、ここは店主の前にでも座ろうか。
「……何の用だ、ガキ」
「何か食べるものを。ああ、それとここらの地理について聞こうか。それも基本的なところからね」
「変わったガキだな。ここはレスター諸侯同盟のコーデリア領だ。と言っても、最近は帝国の干渉を受けて領主様も大変そうだがな」
「大都市っていうと、どこになるのかね?」
都会に行けば、オートマタの材料くらいは揃うだろう。材料さえなんとかなれば、いくらでも作れるからね。
「そりゃあアンヴァルだろう。南の大橋を渡った、そのまたはるか南の方だ。あとは北の方にデオドラや王都フェルディアなんかもあるが、やっぱり大都市ったらアンヴァルだな。……おまえ、お上りさんか?」
「そんなところだよ。いかんせん常識に疎くてねえ」
……うむ? 表の方が何やら騒がしいな。と、酒場に鎧を着た衛兵らしき男が入ってきた。
「店主! 白髪の少年と少女を見なかったか……」
ああ、追っ手か。少女ということは、あの子も逃げ出していたようだね。上手いこと逃げおおせられたら良いのだが。
「そ……そいつだ! 捕まえろ!」
わらわらと出るわ出るわ。店内には、赤い鎧を着た六人もの男が入ってきた。
「店主、情報料だよ。釣りはいらないからね」
固まっている店主を尻目に、カウンターに有り金をぶちまける。カウンターの方を向いていた僕の背後には、兵士たちが迫ってきているようだ。
「分解」
剣、槍、斧。迫ってきていた武器であるが、その構造は単純だ。武器と一緒に、兵士の関節も分解しておいた。さらに分解、分解、分解!ものの十数秒で、僕を捕らえようとしていた兵士たちは地面に這いつくばることになった。
「情報料って言ったけど、迷惑料も入っているからね!」
そう言い残し、酒場を出る。こうなると、さっさとコーデリア領を出ないと面倒だね。とにかく街道を南へ、目指すは帝都アンヴァルだ。
リシテアが改造された年が不明。エガちゃんが改造されたのはたぶん1174~75年くらいなんで、まあそれ以降なんでしょう。ということで、作中では1176年ということにしておいてください。あと勝手にパラメータも作っておきました。
フェイスレス(偽) LV.1 錬金術師
HP 25 装備 素手 スキル(固有)自己評価
力 10 全獲得経験値×1.3
魔力 7
技 23 戦技 分解 スキル 身体熟知
速さ 12 (効果)全ての敵に有効 毎ターン最大HPの20%回復
幸運 5 命中時、相手の移動が低下
守備 8
魔防 6 騎士団 なし
魅力 10
合計 81
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