私は次期アドラステア皇帝エ『レオノォォルゥゥ!!』   作:炭酸ソーダ

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一応の補足として、主人公くん=アレではないんです。記憶がないところにアレの生き様(200年分くらい)を突っ込まれているだけなんです。でもわりとフィクションの人物を人生の教訓にしたりするよねっていう。


4月 新任教師の時間外(物理)労働

ところで、僕は何歳なのか。闇うごのせいか転送の影響かはともかくとして、この体にあった記憶はたぶん消し飛んだ(物理)からわからない。声変わりは元々していたようだし、既に身長も伸びなくなったから20歳くらいなのだとは思うがね。

 

「久しいですね、ジェラルト。それに……フェイスレスでしたか」

 

あの平野での邂逅から、僕も多少は成長した。とはいえ、大司教には一目でわかったらしい。やはりこうして見ると、目が彼らのそれに似ているような気がする。何かを追い求めているような目だ。皇女サマなんかよりもよっぽどフェイスレス達に似ているね。

 

「それで、そちらの方々は……?」

 

「僕はサーカス団の団長でね。彼らは団員さ、大司教どの」

 

「そうですか。貴方も、壮健そうで何よりです。生徒を救ってくれたと聞いています。そして……」

 

大司教の目が移る。ベレス君をその目に捉えると……あっ、すっごい。これはフェイスレスの目だね。ベレス君、愛されてるねえ。それも相当な権力者に。

 

「それで、この子が……」

 

すごい。何というか、生き別れの娘でもみるかのような慈愛に満ちた目だ。いや、慈愛というか何というか。フェイスレス感があるせいで、素直にそうは思えないけど。

 

その後、ジェラルト君と大司教は昔話をしていたが、やがて大司教は退室していった。

 

「ジェラルト君。ひょっとして、僕はもうお役御免かね?確かに礼はいらんとは思うが、これだけの為に僕はここまで来たのかね?」

 

「いいじゃねえか、忙しくはねえんだろ?大司教にサーカスを売り込める機会なんざ、そうそうねえんだからな」

 

ちょっと理由が強引じゃあないかね。あ、なんとなく分かったぞ。

 

「ジェラルト君、ここに来るのが嫌だったんだろう?だから僕らも一緒にここに招待された時、ちっとも拒否しなかったんだ!僕らのことを嫌いな君が、僕らの同行を少しも嫌がらないなんて変な話だもんねえ」

 

「っち、やっぱりてめえは嫌いだ。……そうさ、俺はここがあまり好かん。過去にいろいろとあったからな」

 

「まあいいさ。……それで?君らの傭兵稼業はこれでおしまいかい?」

 

「そうさな。俺も騎士団に戻れと言われたし……ベレスを、士官学校の教師にしろとも言われちまった」

 

ベレス君を教師に?

 

「大司教の目って、節穴かい?」

 

「おい、そりゃあレア様にもうちのにも喧嘩を売ってんのか?」

 

 

 

 

「フェイスレス様。これから、どうなさるおつもりですか?」

 

ジェラルト君らと別れ、やることもないので修道院内をぶらぶらとしていると、パンタローネに声をかけられた。

 

「どう、とは?」

 

「このフォドラという大地については、おおよそ情報が集まりました。これ以上サーカスを続ける必要もないように思われますが……」

 

「そーだねえ。でも君らの存在理由は他人を笑わせることだし、サーカスを続けるのが良いんじゃないの?」

 

「確かに、現状ではそうです。しかし、我々は造物主様により生み出され、そのご意思に従うことこそが存在意義です。貴方様が虐殺を成せと仰れば、現状のご指示に代えてこの世の人類を迷いなく根絶やしにいたしましょう」

 

あ、そうか。彼らの記録を元に作ったから、わりと思考が危ないんだね。本来の存在理由であるフランシーヌ人形がいないから、存在理由もわりと柔軟なのかもしれない。

 

「虐殺する気はないが……。いずれ、闇うごとは対立する。いや、もうしてたね。表側の世界の重要人物が揃うこの修道院で、パイプを作っておくのも良いかもしれんね」

 

正直に言って、闇うごと真っ向勝負して勝てるかは怪しい。世界の技術レベル的にオートマタの量産は厳しいし、ゾナハ蟲を作れるのもいつになるかは分からない。いや、ゾナハ蟲は最終手段にしておきたいけど。

 

「それが造物主様のご意思であれば」

 

「そーなると、どうにかここに潜り込まないと……あっ、いたね。ここの責任者に顔が利きそうなひと」

 

 

 

 

「というわけで、何か職くんない?」

 

「俺はてめえらが好かんつったよな」

 

「いいじゃないの。騎士団長なら口も利くでしょ?」

 

「サーカスはサーカスらしく巡業してりゃいいだろ」

 

つれないねえ。

 

「……」

 

「あん?どうした、ベレス」

 

「教師になればいい」

 

思わぬところから援護射撃があった。

 

「ああ!?おまえ、こいつに教師が務まると思うか!?」

 

「彼の技術は素晴らしい。生徒が教わって損はない」

 

とはいえ、僕は教師にはならない。ここの教師は魔術とか戦闘技能を教えるようだし、僕にはとてもじゃないが不可能だからね。「分解」なんて教えられるようなものではないだろうし。

 

「ベレス君の申し出はありがたいけどね、僕は教師になるつもりはないよ」

 

「そう。それは残念」

 

「俺が言うのも何だが、だったら何になるつもりだ。てめえを騎士団に入れるつもりはねえし、教師にもならねえのなら、もうなるもんがねえだろうよ」

 

「そうだねえ。……生徒の枠とか、開いてたりしないかな?」

 

「はあ?」

 

「僕じゃないよ、この4人のことさ。彼らは天涯孤独の身でね、教育なんて受けたことがないんだよ。なあ、パンタローネ?」

 

さりげなく、オートマタたたち目配せをする。そんなことをしなくとも、僕の意に背くようなことはないどろうけどね。

 

「……ええ。我らは、フェイスレス団長に拾われた者。学などありませぬ」

 

「てめえら何歳だよ。そこの嬢ちゃんなら分かるが」

 

「おや?先ほど修道院を見た限りでは、生徒といえどあまり年齢は関係ないように思えたんだけどね。どうなんだい、ベレス君?」

 

ジェラルト君はともかく、ベレス君はやけにこちらの肩を持ってくれる。大司教にも気に入られたようだし、ベレス君の方が親身になってくれそうだ。

 

「年齢はあまり関係ない。先ほど顔合わせをしたけれど、20歳を超える生徒もいた」

 

「いや、だからっつってほいほいと増やすわけにもいかんだろう」

 

「私がレアに掛け合ってもいい」

 

僕はベレス君を誤解していたのかもしれない。サーカスの巡業で2、3度遭遇し、公演を無表情で見ていた彼女を、僕はオートマタのようだと思っていた。しかし、ここ最近の彼女はひじょーに感情的、それも僕にとっては良い意味でだ。

 

「ありがとう……!」

 

「おいおい、泣いてんのかてめえ」

 

「そりゃあそうさ。そんなに縁のないサーカス団員の為に、そこまで親身になってくれるなんて!ベレス君、君は僕の女神様だ!ソティス様だよ!」

 

「……ソ、ティス?」

 

あれ、変なこと言ったかな。このフォドラの神と言ったら、女神ソティスしかいないはずなんだけど。

 

「こいつぁ今までセイロス教に縁がなくてな。初めてその名を聞いたんじゃねえか?」

 

「ジェラルト君、それくらいは一般常識として教えるべきじゃないのかい」

 

ベレス君は固まってしまった。……いや、ジェラルト君も固まっている。最古の四人も、僕自身も体を動かせない。これは……

 

「女神……ソティスじゃと?」

 

いつぞやの声が聞こえた。

 

 

 

 

「女神、女神じゃと!?おぬし、確かにこやつはそう言ったな!?」

 

「間違いない」

 

「わしが……女神と同じ名じゃと?これは、どういうことじゃ?」

 

「へえ、君ソティスっていうんだ。僕はフェイスレスだよ」

 

ベレスとソティス。二人だけのはずの世界に、二人の意図せぬ声が聞こえた。

 

「な……!おぬし、なぜ動けるのじゃ!?」

 

「いや、動けないんだよね。だからこれは心の声なんだけど、どうやら聞こえているみたいだねえ」

 

ベレスが前を見ると、確かにフェイスレスは静止していた。その口元も、微塵も動いてはいない。

 

「そんなことはよい!おぬし、何者じゃ!」

 

「だからフェイスレスだって。からくりサーカスのフェイスレスだよーん」

 

「名ではない!おぬしが『何か』を聞いておるのじゃ!」

 

「『何』ねえ。白金、ディーン=メーストル、才賀貞義、フェイスレス。みーんな同じ人間。別次元に生きた彼らの記録を脳みそに叩き込まれ、哀れにも記憶を消し飛ばされたこの世界の住人。それが僕さ」

 

「外世界じゃと……?」

 

「君のへんてこりんな術に精神が止められないのは、そのおかげ。かといって、体が動かせないのは、体自体はこの世界のものだからかなあ。ま、予想でしかないけど」

 

「……にわかには信じられぬな」

 

「時間を止めといてよく言うよ。僕にしちゃあ、そっちの方が信じられないね」

 

「……おぬし、彼らと言ったな。つまり、おぬしには4人分の記憶があるのか?」

 

「いや、彼らは同一人物さ。人を溶かし、飲んだ者に溶けた者の精神を植え付ける液体『アクア=ウイタエ』。白金はそれに溶け、他者に飲ませた。それによってディーン=メーストルが生まれ、ディーンは才賀貞義という偽名を用いて社会を生き、敵対者から身を隠すためフェイスレスを名乗った。フェイスレスは世界を滅ぼそうとし、最期には己の過ちを理解しながら死んでいった。……しかし、どういうわけか彼らの記憶は次元を超え、僕の頭に入り込んだ」

 

「つまり、おぬしも彼らと同一人物ということか」

 

「いや?この体にあった記憶は吹き飛んだが、人格は消されなかった。その証拠に、僕は彼らが嫌いだ。しょうもない理由で人類を抹殺しようとしたんだからね」

 

「なにがなんだか、わからない」

 

頭の中で流れる二人の会話劇に、ベレスは圧倒されていた。

 

「わかりやすく言えば、僕と君らは共犯者になったってことだね」

 

「きょ「共犯者じゃと?」……」

 

ベレスの言葉は、ソティスのそれに押しつぶされた。

 

「君らは、世界の時間を止められる。ルミール村を見る限り、巻き戻しもできるのかな?こんな神の如き権能、他人に知られるわけにはいかないでしょ?」

 

「神の如き、か。……わしは、女神なんじゃろうか」

 

「知ーらない。でも、大司教なんかに知られてみなよ。『神を冒涜する愚か者』とかいって処刑されるかもね?」

 

「……言ったな?おぬしが動けん今なら、ベレスが剣を一振りするだけで……」

 

「できるのかな、そんなこと。ここはベレス君の精神世界のようなものだろう?」

 

「ぬう……」

 

「言ったじゃないの、僕らは共犯者だって。僕は君らのことを口外しない。その代わり、ちょっとばかし便宜を図ってほしいわけだよ」

 

「べ「便宜じゃと?」………………」

 

「僕が大修道院に残ろうとしているのは、ひとえにある目的のためだ。いや、それだけじゃあないんだけど。とにかく、君たち……特にベレス君には手伝ってもらいたい」

 

「ふん。聞くだけきこうかの」

 

「ぶっちゃけね、この世界ってかなり綱渡りなんだよね。教会も相当きな臭いし、信用できないし。ジェラルト君の気持ちは分からんでもないよ」

 

「待て。世界が、綱渡りじゃと?」

 

「知らないと思うけど、世界のあっちこっちで悪だくみしてる連中がいるのよ。僕は勝手に闇にうごめく者、略して闇うごって呼んでるけど」

 

「そやつらが、世界をどうこうしようとしているのか?」

 

「というか、できるね。闇うごの科学技術は驚異的だ。僕にフェイスレスらをぶち込んだのも、もしかしたら闇うごかもしれない」

 

「なんじゃと!?そん「わかった。何をすれば良い?」おぬし、被せるな!」

 

どことなく誇らしげなベレス。

 

「君は大司教に気に入られたようだからね。君ができる範囲内で、僕のするお願いを聞いて欲しい。とりあえずは、最古の四人を生徒にしてほしいかな」

 

「最古の四人?」

 

ベレスが首を傾げる。

 

「ああ、僕の後ろの4人さ。彼らは人間じゃなくて、僕が作った自動人形なんだよ」

 

「人形じゃと!?こやつら、人ではなかったのか!」

 

「ベレス君の指示に従うようにしておくよ。やってもらえるかな?」

 

「わかった、なんとかやってみる。それで、あなたは?」

 

「用務員とか、空いてないかなあ。僕、わりとなんでもできるよ?」

 

「頼んでみよう」

 

「おぬしおぬしおぬし!そう安請け合いをするものではない!」

 

「それは僕も気になってたんだよね。僕とベレス君、そんなに接点あったっけ?」

 

ベレスはしばし考え込むような素振りをし、ようやく言った。

 

「ファンだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半で会話文だらけなのは、情景に動きがないからです。時間止まってるからね、しょうがないね。

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