私は次期アドラステア皇帝エ『レオノォォルゥゥ!!』 作:炭酸ソーダ
あれ、1人余るなあ……。
「フェイスレス。大司教の権限により、貴方を士官学校の用務員に任命します。各施設の管理人と協力し、施設の保守や拡張をお願いします。……しかし、本当に無給でよいのですか?」
「もちろん!衣食住と、生徒たちの笑顔!それさえあれば、他に何がいるだろうか!」
ベレス君、どれだけ気に入られているんだい。まさか要求が全部通るとは思っていなかったよ。
「期間は、1年。貴方の仲間が卒業するまでということになるでしょう」
「全く問題ない。頑張らせてもらおう」
「では、これで任命は終わりです。……そうですね、生徒たちと顔を合わせた方が良いでしょう。よろしいでしょうか?」
「もちろん。では、失礼するよ」
「レア。良いのか?」
「あの者の善性は、かつてのグロンターズで知っています。決して悪人ではないでしょう。それに、サーカスによる巡業で知見も豊富です。生徒にも良い影響が……」
「それはそうだが……」
「セテス。フレンがいるからといって、些か心配しすぎではないですか?」
「……むう」
「というわけで、用務員として諸君のサポートを行うことになった。からくりサーカス団長……は休業中だが、フェイスレスだ。よろしく頼むよ」
とりあえず、聖堂から一番近い学級にやって来た。黒鷲……ということは、あの皇女様のいる学級だね。
「あら、貴方は……」
「先日ぶりだねえ、皇女様。ご機嫌いかがかな?」
「おかげさまで。ふうん、用務員、ね。」
ふーん、どうやら僕を観察しているようだね。
「フェイスレス様、ご機嫌麗しゅうございます」
「ああ、パンタローネ。おまえはここに配属されたのかい」
「おお、君がそうか!」
ふむ。何やら気品のある少年が割り込んできたが……
「私はフェルディナント=フォン=エーギル!パンタローネに模擬戦を申し込んだところ、軽く捻られてしまってね。そうしたら、自分よりも団長の方が強いと謙遜していたのだよ。今度、勝負をしてもらえないだろうか?」
「だーめ。パンタローネに勝てるようになったら来たまえ」
「なるほど、では一層精進せねばな!」
良いねえ、高貴な一方で向上心もしっかり持ち合わせている。
「へえ、お強いのね。貴方、おいくつかしら?」
こちらの娘は、どこかで見たような……ああ、あそこだったかな。
「いきなり年を聞くのは無粋だよ、歌劇団のお嬢さん」
「あら、私をご存じだったのね。これは失礼しました、ドロテア=アールノルトよ」
そんな感じで、ここでの顔合わせは済んだ。この学級は、貴族が多いようだね。パイプ作りのために、パンタローネには頑張ってもらわないといけないね。
「そうか、貴様が……。フェリクス=ユーゴ=フラルダリウスだ。アルレッキーノより貴様の方が強いらしいな」
なんかさっきもこんな感じだったような。青獅子……ファーガス神聖王国の出身者が集う学級のようだね。
「うん。でも、戦うのはアルレッキーノを倒せたらだよ?」
「そうか。その日を楽しみにしておこう……」
フラウダリウスって大貴族だよね。そこの息子があんなに血気盛んなんだ。
「すまない。フェリクスは、昔からああでな」
そう言うこちらは、ディミトリ……何だっけ。長いから覚えてないや。しかしこいつも、ちょっと不穏な気配がするような……。
「私の地元でも、からくりサーカスの名前は聞いていましたよ。あ、すいません。私はイングリット=ブランドル=ガラテアといいます」
一目で分かった。この娘は、騎士だよ。この見た目で騎士じゃなかったら詐欺だよ。
このクラスは、なんだろうね。表面上は、問題がなさそうだが……。ファーガスの王子に、フラウダリウスか。……ダスカーの悲劇が闇うごのせいだと言えば、こちらになびいてくれるかなあ。いや、確証はないけどね。確証はないけど、あーゆー陰謀はだいたい闇うごが絡んでるでしょ、たぶん。
最後の学級に行こうとしたら、聞きなじみのある声がした。
「あんた、その声で変なこと言わないで貰えます?」
「変なことってなーに?アタシは、恋愛ってどういうものか聞いてるだけじゃない」
「それが変なことだって言ってんの!」
コロンビーヌが2人いる。いや、これは声が似ているだけかな。
「あっ、フェイスレス様!聞いてくださいよ、このちんまいのが~」
「ちんまいのはあんたもでしょう!」
学級を除くと、コロンビーヌが近づいてきた。それを追うように、白髪の娘もやってきたが……。
「コロンビーヌ。クラスメートとは仲良くするもんだよ?」
僕の声を聞くや否や、その娘の体が跳ねた。なにその反応?どっかでなんかあったっけ?
「そ、その声は……」
この声?変哲もない男声だけどね。
「あ、あんた!昔コーデリアで……」
コーデリア?あそこは僕が生まれた()所だが……。
「ちょ、ちょっと来なさい!」
小さな少女に手を引かれ、教室から出て行くはめになった。
やって来たのは中庭。娘は周囲を見回した後、口を開く。
「あんた、4年前、コーデリア領で……」
やけに興奮してるけど、大丈夫かね。過呼吸?
「4年前なら、確かにいたけどね。それが?」
「コーデリア伯の、地下牢でしょう!?」
あー思い出してきた。そういや牢を分解して、1人逃がしたような気がする。
「君、あれかい。闇うごの被検体だったかい?」
「闇うご?……でも、そう!実験動物にされていた……!生きていたんですね!」
「そりゃこっちの台詞だよね。生きてたのかい」
「……あの後、結局また捕まって。その後運良く紋章が発現して、生き延びたんです」
ふーん。あの実験場では、紋章を無理矢理発現させようとしてたんだ。
「良かった……!生きてた……!」
そんな嬉しいことかね?……いや、これは使えるね。
「君、名前は?」
「リシテア……リシテア=フォン=コーデリア……!」
「よおしリシテア君、君は闇うごを知っているね?ああ、闇うごというのは君で人体実験していた連中のことだよ」
「もちろんです。片時も忘れたことはない……!」
「僕はね、彼らに対抗しようとしているんだ。君の力も借りて良いかな?」
「そんなもの……言うまでもないじゃないですか……!!」
よおし。……っていうか、この子今コーデリアって言ったね。君、自分ちで実験されてたのかい。そりゃあ大変だったねえ。
「よお、逢い引きでもしてたのかい?」
金鹿の学級に入るなり、色黒の少年に言われた。まあそう見えるよね。
「違います!わたし、からくりサーカスのファンなんです。だから、サインを……」
「つってお前、コロンビーヌにはねだらなかっただろ?」
「こいつにもらう気はありません!」
「あら、失礼しちゃうわ」
すっごく楽しそうな少年。なんとも腹黒そうだねえ。
「悪いね。俺は、ここの代表をやってるクロードだ。下は覚えなくてもいいぜ」
「あ、あたしも!ヒルダっていいます!」
「それなら僕もだ。ローレンツ=フォン=グロスタールだ。はーはっはっはっは!」
「オデも!ラファエルってんだ!よろしくなあ!」
「わ……私も……。マリアンヌといいます……」
「ですよね、マリアンヌさん!僕は、イグナーツです!」
「おいおい、みんながっつきすぎだろう?あ、わたしはレオニーってんだ」
……居心地いいね、ここ。たぶんみんな裏表もないし、良い子ばかりじゃあないか。他の学級も、見習わないといかないんじゃないの?
「あっ、そうだ。僕は施設の拡張もできるんだけど、何か要望あるかい?」
「「「「「浴室!!」」」」」
揃ったねえ。そんなに悪いのかね?
「いや、悪くはないんだが……」
「蒸し風呂なんですよねえ、あそこ。乙女としては、やっぱりお湯に入りたいなあって」
「僕も同意見だ。貴族としては、常に清潔を心がけなくてはね」
蒸し風呂かあ。確かに、訓練で汗まみれになる士官学校としては、湯船に浸かりたいというのは当然だね。
「任せたまえ。簡単なものなら、夜までに作ってみせよう」
「嘘だろ!?さすがに時間がないだろう!?」
クロードが目をひんむいている。しかし、だよ。
「おいおい。僕は、もの凄いのさ」
「何ごとかね!?」
夜。いつもなら静かな時間であるのに、その日はやけに騒がしかった。厳格なセテスがそれを聞き逃すはずもなく、音の元へと向かっていた。
「あ、お兄様!」
「フレン!いったいどうしたんだい?」
教室の横を通り、浴室の方へと向かっていたセテスは、愛む……妹の上気した顔を目撃した。
「フェイスレスさんのおかげで、すっごく気持ちよかったのですのよ。体中がポカポカして、もう天にも昇る心地でしたわ!」
「フェイス……レス……?気持ちよかった……?」
「ま!お兄様、お顔が恐ろしいですのよ!」
「フェイスレス、貴様ぁ!やはり招き入れるべきではなかったようだなぁ!」
浴室への階段を駆け上っていくセテス。途中いくらか生徒とすれ違ったが、その全てが女生徒であり。その体は、漏れなく火照っていた。
「フェイスレス!」
浴室の入り口に、フェイスレスはいた。机と椅子を構え、その脇には木箱が置かれていた。
「あれ、セテス君じゃないか。今は入っちゃだめだよ」
「フェイスレス、貴様!フレンに何をした!」
「何って、風呂だよ。風呂に入ってもらっただけさ」
「風呂、だと?」
「うん。実験的に……」
「いかがわしい風呂にかぁ!!」
「君、とっつきにくそうかと思ったけど。案外仲良くできそうな気がしてきたよ」
「湯船、か」
「うん。初日から大盛況さ。女生徒の、いやガルク=マグの女性の総意だったみたいだよ?池から水を引いてきて、膜で濾過して、アルレッキーノとパンタローネに温めさせたわけだね」
「そうか。フレンが喜ぶなら、それで良い」
「入場者には、石鹸もプレゼントしておいたよ。ああ、それと水量が少ないから、麓から直接水を引きたいと思ってるんだよね。いいかな?」
「……」
「レア、やはりあの男は危険だ。奴は高度な科学技術を持っているようだ」
「なればこそ、我々の目の届く範囲に置いておくべきでしょう?」
「……」
「それに……」
「なんだ?」
「わたくしだって、お風呂に入りたいのです」
見りゃわかるかもしれませんが、金鹿好きです。どこぞの軍師の影響もあるかも。
それはさておき、問題です。ドットーレはどこにいるでしょうか?
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