私は次期アドラステア皇帝エ『レオノォォルゥゥ!!』 作:炭酸ソーダ
リシテア動かしやすい
……リセットしていいすか?(軍師並感)
「ワシは、黒鷲に行こう」
「ならアタシは金鹿~」
「私は青獅子になるか」
「……」
これは、少し前の話。
最古の四人は、フェイスレスの指示を受け、どの学級に加入するかを決めていた。
「おい、己はどうなるんだ?」
「知らなーい。くじ引きで負けたアンタが悪いんじゃない」
「すまんなドットーレ。だが、誰かは余る。それがおまえだっただけだ」
「お、己は……フェイスレス様……」
よたよたと、大きな帽子を抱えて歩く男。
彼は、ドットーレ。最古の四人と呼ばれるオートマタであり、主の指令を完遂できないという思いから、目的もないまま放浪を続けていた。
「あ、ああ……フェイスレス様アア~~」
ふらふらと。
あてもなくさまようその体は。
地面にある隠し扉に気づかなかった。
「お、うおおおお!!」
オートマタの重みによって扉は壊れ、ドットーレは階段をころげ落ちていった。
「ここは……」
ドットーレが見たのは、広い空間であった。地下でありながら照明によって明るく、そして多くの人間の声が響いている。
「修道院の地下に、こんな空間があったとは……」
「おい、貴様!地上の人間が何の用だ!」
「ああ?人間だと?」
音に気づいて近づいてきた番人に、ドットーレは低い声を返す。
「己は……己は人間じゃねえ!フェイスレス様のみに従う、ドットーレだァ!」
「何だ、お前……修道院の人間じゃねえのか?」
「何だ、新入りか?」
少年の声が響く。
「ユーリス、あんた……」
「ここはアビスだ。追われた者の潜む煤闇、来る者は拒まない」
しゃがみ込むドットーレに、ユーリスもひざまずき話しかける。
「ようこそ、灰狼の学級へ。歓迎するよ……まあ、歓迎されたくはねえだろうがな」
「あれ、新入り?」
「ああ、要領を得ないがまあそうだろう」
「おーほっほっほ!歓迎いたしますわ!」
「おう、良く来たな!まあ、楽にしとけ」
ハピ、コンスタンツェ、バルタザール。残る生徒の声かけにも応じず、膝を抱えて丸くなっているのはドットーレである。
「……で、なんでこうなってんの?」
「さあ?でも、人間じゃねえとか言ってたぜ」
「人外!?ひょっとして、これはヌーヴェル家復興の足がかりに――――」
「ならんだろうなあ」
「……貴様ら、士官学校の生徒なのか?」
ようやく口を開いたドットーレに、ユーリスは顔を綻ばせる。
「生徒であって、生徒ではない。ここはアビス、地上にいられなくなった、あるいは地上を追放された連中が集う場所だ。あんたも、そんなとこだろ?」
「いられなくなった、か。確かに、己は主の命令を遂行できなかった……」
「命令って、何だったの」
ハピが問いかける。
「……士官学校の、生徒になること。そして、学級に加入することだ」
「……なあ、それもう達成できたんじゃねえのか?」
バルタザールが言う。ユーリスはうなずき、ハピはため息をついた。
「そもそも、なんで生徒になる必要があったんだ?」
ユーリスが問う。
「……来たるときに備えて、有力者とのコネクションを構築する。それが我々『最古の四人』に下された使命だった」
「おいおい、なんかやべえこと言ってねえか?」
「……来たるべき時って?」
「それはもちろん、ヌーヴェル家の……」
「てめえは黙ってろ!」
バルタザールが一喝する。
「……闇にうごめく者どもと対峙する時、我らだけでは力が足りぬ。主はそうおっしゃっていた」
「……闇にうごめく者?」
「それって、もしかして……」
ハピが再びため息をついた。
「こんな所で、何の用かねドットーレ」
後日。浴室へと続く階段、その脇。寮と階段の間のスペースに、フェイスレスは呼び出されていた。
「まず、使命を果たせなかったことをお詫び申し上げます!」
「いや、僕は別に各クラス一人ずつなんて言ってないけどね」
「しかし、今このドットーレめはある学級に所属しております!」
「はあ。そりゃどこだね」
「この下でございます!」
ドットーレが指差す先には、茂みに隠された落とし戸があった。
「ほー、こんな所にこんな物があったとはね」
「この下は、アビスという空間になっております。地上から追放されたあらゆるモノが流れ着く掃きだめのようなものです」
「あらゆるモノ、ねえ。それは……」
「もちろん、情報もでございます」
フェイスレスの口が、三日月をかたどっていく。
「早速行こうか、ドットーレ。君の成果を見せてくれたまえ」
「ファーガスの乱……軍師パーン……闇に蠢く……。これは、ファーガス建国が闇うごの手によるものの可能性か……」
「あいつが……」
「口に気を付けろ、ユーリス。あの方こそ、我が主フェイスレス様だ」
アビスの書庫で、フェイスレスは書物を読みふけっている。
「望遠鏡の禁止……石油の禁止……活版の禁止……解剖学の禁止……。フォドラの文明レベルを抑えていたのは教会か。なぜだ、そのせいで闇うごとは圧倒的な……」
「フェイスレス、ねえ。偽名だろ?」
「古の神……異形の巨躯……水の底?神によって、世界が沈む?ノアみたいな話だねえ。神を討つ光の柱……核か?いや、神の杖か?人の子は地下へ逃げ……やがて獣の支配する地上への復讐を……。ドットーレ!」
「御前に」
「よくやってくれたね。お前のおかげで、僕はかなり進展できたよ。パンタローネより、アルレッキーノより、コロンビーヌよりも。お前が勲功第一位だね」
「貴方様に作られし者として、当然の義務でありますれば」
飄々とした態度のドットーレ。
「よく言うよ、死にそうな顔してやって来たくせに」
ユーリスのぼやきは、虚空へと消えていった。
「ドットーレ、元気そうだ……なっ、貴様!」
「そ、それは……」
「フェイスレス様のサングラスじゃない!」
さらに後日、情報交換の為に集まった4人。その内の3人は驚愕に目を見開き、1人は誇らしげに目元に手をやっていた。
「どうだ!勲功の報奨として、フェイスレス様に頂いたのだ!似合っているか?」
「……こうしてはおられん!ベルナデッタと刺繍をしてくる!」
「私も失礼する。イングリットに餌付けをせねば!」
「ローレンツちゃんとお茶でもしてくるわあ!」
「くくくく。まあ、頑張りたまえよ」
「ま!フェイスレスさん、サングラスはどうなさったの?」
「フレン君か。いや、部下へのご褒美にあげちゃったのよね。どう?」
「案外可愛らしい目をなさっているのね!」
「そりゃよかったよ。ところで……君の。いや、君たちのことについて、聞かせて貰えないね?」
「……わたくしたち?それは、どういった範囲をおっしゃっているのかしら?」
「そうだねえ。何と言ったら良いのかなあ」
フェイスレスは、言いよどむ。珍しいその様子に、フレンも少し緊張していた。
「教団のことかしら?それでしたら、お兄様に……」
「いやいや、フレン君。お兄様じゃあないだろう?」
「それは、どういう……」
「お父様、じゃあないのかね?セスリーン君」
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