ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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12話 任務遂行、アルベルト にっ!

「大事には至らなかったか、ティンジェル?」

「はい、グレンさんが上手くしてくれたので」

あの後、僅かな隙をつかれてエレノアを取り逃がしたアルベルト。

しかし彼の仕事はそれで終わらず、先程まで今回の事件について関係者と打ち合わせを行っていた。

本来ならグレンの担当のはずなのだが、「作戦を立てたのはオマエだから後は頼む」と足早に立ち去り、面倒ごとをすべてアルベルトに任せたようだ。

次会ったらシメよう。

そう心に刻み、打ち上げの店に着くと。

 

 

 

「おお~アルベルト。遅いぞ」

先程心に刻んだはずの本人(グレン)が目の前にいた。

しかも高いことで有名なワイン瓶を両手に持ちながら。

 

 

 

「・・・なぜ貴様がここにいる、グレン?」

「え~。だって優勝の打ち上げでしょ?優勝に導いたのは俺。なら俺がいてもいいじゃない」

「ほう。それでその手に持っているのは何だ?俺の見間違えでなければ高価で有名な酒であると思うが。懐に隙間風が吹いている貴様に頼める代物じゃないはずだが?」

「ほら、あれだよ。優勝賞金と賭け金だよ。俺にももらう権利はあるだろ?でもまさか頭の固いアルベルトが賭け事をするとはな。どうだ、いい賭博場があるんだが俺とお前が組めばー」

それ以降グレンは声を発することはなかった。

アルベルトの格闘術により一瞬で締め落とされたのである。

グレンの懐から財布があるか探っていると。

 

 

 

「ん~アルトせんせ~い。なんですかこのおとこは」

今度は酔っぱらったシスティーナが登場する。

同じく両手にワイン瓶を持ちながら。

よく見ると無数に空になった瓶が転がっている。

グレン一人分なら奴の財布から金を抜き取ればなんとか清算できるのだがそれが二人分となると話が変わる。

アルベルトにしては珍しく顔を青ざめているとシスティーナが絡んできた。

 

 

 

「このひとわたしのことしろねこていうんです。ひどくないですか」

「ああ、そうだな」

「えへへへへ。そうですよね~」

そう言うと黙り込むシスティーナ。

どうやら寝てしまったようである。

 

 

 

「あはははは。システィは私が運んでおきますね」

「頼む、俺はこのゴミを外に捨ててくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒たちはそれぞれ帰路に着き、店に残っているのはアルベルトとルミア、そしてソファーで寝ているシスティーナのみであった。

店側の好意により閉店後だが残ってよいことになった3人。

アルベルトはボトルを空けながら今回の事件を思い馳せながら静かに窓際で飲んでいる。

外を見るとまだ気を取り戻していないのか、ゴミ捨て場に横たわっているグレンが寒さで震えていた。

 

 

 

「・・・ふん」

それを見て助けるわけもなく飲み続けるアルベルト。

彼にしてはらしくない飲み方であるが、入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多いため、無理もない。

 

 

 

「お疲れ様です、先生。隣いいですか?」

「・・・ああ」

先程までシスティーナの面倒を見ていたルミアが戻ってき、アルベルトの許しを貰って横に腰掛ける。

 

 

 

「母親とのわだかまりは解けたのか?」

酒を飲みながらアルベルトは呟いた。

 

 

 

「はい、あの後お母さんと色々話したらすっきりしました。でもどうして私とお母さんの間に何かあると知って・・・いえ、こんなことを聞くのは野暮ですね」

「・・・」

ルミアは何やら意味深な目で見てきたが深く追求することはなかった。

だが聡明な彼女のことだ。

自分と母親であるアリシアとの間で起きたことなどこの人には筒抜けなのだろうと考えていた。

アルベルトも任務とはいえ親子の逢瀬を盗み見してきたことに少しは罪悪感があるのかそれっきり黙っていた。

ルミアは空になったグラスに酒を注ぐ。

 

 

 

「でも先生。どうして私のことを助けてくれたんですか?いくら任務とはいえあの時私を助けたら先生たちも反逆者になる一歩手前だったんですよ。グレンさんにも聞いたんですけどはぐらかしてしまって。教えてくれませんか?」

「・・・女王陛下からの密命だ。ルミア・ティンジェルを護衛することそれ自体はすでに帝国政府から下命されていた。だが学院でのテロ未遂事件以降、陛下から直々に命を拝した。たとえ帝国政府の命でルミア・ティンジェルを排除することがあっても、女王陛下から直接命じられない限りルミア・ティンジェルを護衛せよ、とな。あの場面では確かに親衛隊が動いていたが、俺にとっては陛下から殺害を命じられていなかったからな。俺はただ任務を愚直にこなしたにすぎん。礼を言われるものでもない」

「学院のテロ未遂事件?」

「・・・」

どうやら酒の勢いで機密事項をうっかり口を滑らしたようだ。

 

 

「先生は随分前から私の知らないところで守っていてくれたんですね。ありがとうございます」

「・・・礼を言われることでもない」

アルベルトの失言には触れず礼を言うルミア。

 

 

 

「あと最後に先生の本名を教えてください」

「・・・アルト=フレイだ」

「それは偽名ですよね。グレンさんがアルベルトってよく呼んでいましたよ。私の護衛なんですからちゃんと本名を覚えておかないと。教えてくれないとうっかり学院の事件について口を滑らしてしまいますよ?」

ルミアは小悪魔的な笑みを浮かべアルベルトに寄りかかる。

ここまで追い込まれるとしょうがない。

「アルベルト=フレイザーだ」

「アルベルト=フレイザーさん、ですね。これからもよろしくお願いします」

「ああ」

空いたグラスに酒を注ぎ、それを飲みながら夜が更けていくのであった。

 

 

 

「そういえばアルベルト先生。最初の授業のあの性格はもしかしてグレンさんを参考にしたんですか?」

「・・・さあな」

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