ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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誤字報告していただいた”とみたくさん”、”岩本さん”ありがとうございました!


14話 Girl Meets Girl Meets アルベルト

「ルミア~。そろそろ起きないと遅刻するわよ~」

「みゅにゅ~」

システィーナに揺さぶられるルミア。

どうやら二度寝、三度寝していたようで遅刻する時間ではないが、やや危うい。

すでにシスティーナは制服に身を包んでおり、これ以上寝てしまうと非常にマズいため、ゆっくりとだが体を起こす。

 

 

 

「おはよ~システィ、相変わらず早いね」

「貴方が遅いだけじゃないかしら。まったく寝起きの悪さだけがルミアの欠点ね。今日は学校ですることがあるから先に行くわね」

「わかった、またね」

システィーナが部屋から出るとルミアも支度を始める。

制服に着替え、用意も済み部屋から出ようとすると。

 

 

 

「あれ?窓から何か聞こえる・・・なんだろう」

先程から窓をコツコツと叩く音が聞こえ、気になって近づくと。

 

 

 

「あ、鳥さんだ。おはよう・・・あれ?なんだろう?」

どうやら窓を叩いたのは小鳥だったようで、それに気づいたルミアは穏やかな笑みを浮かべていたが、よく見ると小鳥の足に何か付いている。

小鳥もルミアに取ってもらいたいのかしきりに足を近づける。

足に付いていたのは小さな紙切れであり、ルミアが手に取ると小鳥はすぐに飛び去ってしまった。

 

 

 

「小鳥の足に紙切れをつけるなんて一体誰が・・・え!」

紙切れを手に取ると急に発光し文字が浮かぶ。

それを読むと、急ぎ部屋から出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええと、ここでいいのかな?」

紙切れの文字に書かれた場所に着くルミア。

そこは学院の通学路から少し外れた路地であった。

少し、いやだいぶ指定されていた時間は過ぎており、待ち人はもう帰ったのかと思うと。

 

 

 

「遅いぞ、1時間遅刻だ」

後ろから聞きなれた声が聞こえる。

振り向くと。

 

 

 

「おはようございます、アルベルト先生」

ルミアの護衛であり、講師のアルベルトが立っていた。

 

 

 

「あの、待ち時間に着かなくてすみませんでした」

「いや、考えれば学生にとっては少し時間が早かったようだ。構わん」

「でもどうしてあのような方法で呼び出したんですか?」

ルミアの疑問も最もだ。

ただの連絡なら使い魔を使ってあんな周りくどいことをせずに学院でいつでも伝えられる。

それをしないということは。

 

 

 

「ああ、今後の護衛についてだ」

ルミア(元王女)に関わることだろう。

 

 

 

「護衛・・・ですか」

「そうだ。先日の魔術競技際の件を受けて上は新たな護衛を送ることを決めた。今日から俺のクラスに編入してくることとなる。それに先立ってソイツと顔を合わせるためにこの場を設けた。それでコイツが今日からティンジェルの近辺警護を行う。出てこい、リィエル」

アルベルトに呼ばれ、奥から出てきたのは魔術競技際の時に出会った少女であった。

 

 

 

「ええと、この子は魔術競技際の時の・・・」

「覚えていたか。そうだ、コイツの名はリィエル、リィエル=レイフォード。俺の同僚で宮廷魔導士団所属の魔導士だ。護衛だが表向きは編入性となっている。コイツはやや扱いが難しいか気にしないでくれ」

「わかりました。ええと、リィエル・・・だよね。久しぶりになるのかな?」

「ん」

アルベルトから説明を受けると早速挨拶をしようとリィエルに向き合う。

 

 

 

「改めて自己紹介しますね。私はルミア、ルミア=ティンジェルです。これからよろしくお願いしますね」

「ん、任せて」

そう無表情で眠たげに答えるリィエル。

上手くやれるか先行きが不安なアルベルトであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルザーノ帝国魔術学院二年次生二組の教室にて。

「今日からこのクラスの新たな学友となるリィエル=レイフォードだ。親交を深めるように」

アルベルトがリィエルを連れて教室に現れると生徒の声が上がり、特に男子生徒は新たな同級生の姿に色めき立つ。

 

 

 

「おおぉ・・・か、可憐だ」

「め、滅茶苦茶可愛い子だよなぁ」

「決めた。俺、リィエルちゃん派になるぜ・・・」

「俺もなるわ」

「そこ!男子うるさい!」

案の定男子生徒を中心に騒がしくなりつつある。

彼らの気持ちもわからないでもない。

それほどリィエルは口を開かないのであれば文句なしの美少女であるのだから。

・・・口を開かないのであれば。

 

 

 

「気になるのも分かるがそろそろ落ち着け。まずはリィエルから軽い自己紹介でもしてもらおう」

するとクラス中が静まり返り、注目が一斉にリィエルに集まるのだが。

 

 

 

「・・・」

沈黙。

リィエルはクラス中から視線を集まっていることなどお構いなしに、眠たげな表情を一切変えずに佇んでいた。

クラスの空気も次第に気まずさが支配されていく。

 

 

 

「・・・おい、リィエル。聞こえなかったのか?自己紹介をしろと言ったはずだが?」

「・・・?私のことを紹介してどうするの?」

「そういうものだからだ。わかったらさっさとやれ」

「・・・そう、分かった」

微かに頷き、一歩前に出る。

すると。

 

 

 

「・・・リィエル=レイフォード」

小さな声で呟き少し頭を下げる。

 

 

 

「・・・」

沈黙。

 

 

 

「続きは?」

「もう終わった」

「・・・そうか。そういうことだ。これにて自己紹介は終わる。各自質問したいことがあれば休憩時にでも聞くように」

(((それでいいのかよ!!!)))

おそらくクラス全員が内心でそう思ったが、リィエルとアルベルトに突っこめる勇者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして昼休み。

午前の授業で盛大にやらかしたリィエルを生徒たちは遠巻きに見ていた。

いわゆる浮いているという状況だろう。

それも無理もない。

まさかこんな見た目が華奢な少女が大剣を振り回すという規格外の馬鹿力を持っているとは誰も想像すまい。

そして浮世離れした雰囲気を漂わせるリィエルに話しかけれる図太い性格の持ち主は学院にはおらず今に至る。

 

 

 

誰が見ても分かるほど、リィエルは見事学院デビューに失敗してしまった。

いかに任務で学院に潜入しているとはいえこれから一人ぼっちで学院生活を送るとなると寂しくて見ていられない(本人がそう思っているかは知らないが)。

アルベルトは同僚として、そして教師としてリィエルを昼食に連れ出そうとしたその時。

 

 

 

「ご機嫌よう、リィエル」

ルミアがリィエルの傍に寄ってきた。

後ろにはルミアのことを心配そうに見ているシスティーナが控えており、周りもルミアの行動に驚いている。

そんな周りのことなど気にせず微笑みながら言う。

 

 

 

「リィエルはお昼ご飯どうするの?」

「お昼ごはん?必要ない。私は三日間食べなくても平気」

「えっ?駄目だよそれじゃあ、ちゃんと食べないと。それに・・・」

リィエルの物言いに苦笑いしながら、周りに聞こえないよう耳元にそっと呟く。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()?」

「・・・一理ある。でも何を食べたらいいのかわからない」

ルミアを見て戸惑うように呟くリィエル。

 

 

 

「じゃあさ、私たち今から学食に行くんだけどリィエルも行かない?」

「・・・学食?何それ?」

「ご飯を食べるとこかな。ね、どう?」

「・・・」

押し黙るリィエル。

いつもの無表情かと思うが、よく見ると戸惑っているらしい。

どうやら軍生活の長いリィエルにとって同い年の子と食事をしたことがないのだろう。

リィエルはどうすれば良いのかわからず少しばかり口を閉ざしていると、ルミアが話始める。

 

 

 

「別に無理にとは言わないよ。だけどこれから長い付き合いになるんだし。それに食事は大勢でしたほうが楽しいよ」

「・・・楽しい?私にはわからないけど・・・」

ルミアの言葉を咀嚼し、視線を泳がしていると、教室の外にいたアルベルトと目が合った。

アルベルトは行けと、顎をしゃくって見せる。

それを見たリィエルは頷き、席を立った。

 

 

 

「ん、わかった。行く」

「ふふ、じゃあ行こうか。システィもいいよね?」

「ええ、いいけど・・・。勇気あるわねルミア」

システィーナが放つ言葉がクラスの意見の代弁であろう。

事実、教室に残っていた生徒はその様子をみて騒めいていた。

そんなことは意に介さずルミアはシスティーナとリィエルを伴って教室を出る。

すると風に乗ってか、ルミアの耳元にアルベルトの声が聞こえた

 

 

 

「・・・リィエルを頼んだぞ」

ルミアは周りを見渡したがその姿はもう見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂にて。

(無邪気な子ね・・・)

リィエルが頼んだ苺タルトを一心不乱に食べる姿を見てシスティーナはそう感じた。

正直な話、昼食にルミアがリィエルを誘うことに反対だった。

それもそうだろう。

午前の授業でリィエルが見せた魔術は、”ショック・ボルト”の授業でのアルベルトとの魔術戦で体験した恐怖と似通った物を感じたシスティーナはリィエルのことを怖いと感じた。

だが実際どうだ。

目の前にある大量の苺タルトを小動物のように大切に食べている姿を見ていると、警戒するのも馬鹿らしく感じる。

それに親友のルミアが平然としているのだ。

自分だけ偏見して見るのも可笑しいだろう。

 

 

 

そうじっとリィエルを観察していると、視線を感じたらしく顔を上がる。

「・・・欲しいの?欲しいなら分けてあげる」

そう言い、手元にある苺タルトを割ろうとするが。

 

 

 

「・・・」

その手が止まる。

無表情なのには変わりないが、何を考えているか分かりやすい反応をしている。

その様子を見て、苦笑いを浮かべながらシスティーナは言った。

 

 

 

「無理しなくていいから、全部食べたいんでしょ?」

「・・・いいの?」

そこからは安心したように再び苺タルトを齧り始めるリィエルを微笑ましく見るシスティーナ。

 

 

 

「もうリィエルったら。ほっぺにクリームがついているわよ。拭いてあげるからじっとして」

「ん・・・ありがと」

そこにはもうリィエルのことを怖いと感じていたシスティーナは居らず、その様子を嬉しそうにルミアが眺めているのであった。

 

 

 

「・・・ふん。護衛が対象者にフォローされるなど三流もいいところだ」

食堂でクラスの生徒に囲まれて食事をするリィエルを遠目の魔術で見守っていたアルベルトが息を吐く。

そう言いつつも見守っていたことから、学院にリィエルが馴染めるか不安だったのだろう。

アルベルトは数字信奉者で一見冷徹な人間だと思われやすいが、仲間に対しては義理堅く気を掛ける人間である。

本人は気づいていないが、僅かに表情が崩れてリィエルがうまく溶け込めている様子を眺めていた。

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