ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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15話 良い子にしないとアルベルトがやって来るよ!

「ここがサイネリア島・・・」

フェジテから馬車で一日掛けて港町シーホークに着くと、そこから数時間の船旅で『遠征学修』の目的地、白金魔導研究所のあるサイネリア島へと着いた二組一行。

白金術を主に研究とする白金魔導研究所は軍用魔術や魔導工学などと比べると一見地味なため男子生徒を中心に当初はあまり乗り気ではなかったのだが、学友と旅をするという日常生活では到底味わえないこの『遠征学修』が近づくと皆浮足立ち始め、今となっては大はしゃぎである。

いつも生真面目なシスティーナも例外ではなくサイネリア島の景色に見惚れていた。

 

 

 

「よし、皆いるな。では行くぞ」

アルベルトは全員船から降り立ったか点呼を取ると生徒を引き連れて旅籠へと向かった。

 

 

 

「ひゃっほーい!すげえよこのベッド。滅茶苦茶柔らけぇ!!!」

「まったく煩い奴だな、君は」

「あはは・・・。あんまり煩かったら先生に怒られるよ、カッシュ」

ベッドの上ではしゃぐカッシュを見て、呆れた口調で言うのはギイブル、苦笑いな口調で言うのはセシルである。

旅籠に入ると複数名ごとに割り当てられた部屋に入る生徒たち。

この部屋ではカッシュ、ギイブル、セシルの三人で寝泊まりするようだ。

 

 

 

暫くベッドを満喫していたカッシュが口を開く。

「なあ、この後の予定ってなんだっけ?」

「君は先生の話を聞いていなかったのかい?今日の予定は何もない。明日も移動日で予定を組んでいただけだから何もない。本格的に始まるのは明後日からさ」

「なるほど、なるほど。なら動くなら今日しかないな」

ギイブルからの説明を聞き何やら不敵な笑みを浮かべるカッシュ。

何やらくだらないことを考えていると思ったのかギイブルはそれ以降カッシュを無視して読書に耽るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ集まってくれた同士諸君。さて、共に楽園(エデン)を目指そうではないか」

本来なら部屋で寝静まる時間なはずなのだが、旅籠の茂みに複数の男子生徒が蹲っていた。

もちろん音頭を取っているのはカッシュ。

成績はお世辞にも良いとは言えないが欲望を叶えるためならどんな手段をも講ずるその熱意は誰にも引けを取らない男である。

 

 

 

「でもカッシュ。アルト先生はどうするんだ?正直俺たちだけじゃ、いや全生徒が相手取っても先生には勝ち目がないぞ」

「その点は抜かりない。間諜(女子生徒)に探りを入れてもらったところ、先生はこれから30分程他の場所を巡回している。でも皆、相手はあの先生だ。些細なことから気が付かれ急接近される恐れがある。俺たちは慎重にかつ迅速に女子の部屋に忍び込まなければならない。・・・お前たち、覚悟は出来てるか?」

「そんなこと今更聞くまでもねえよ」

「そうだ、そうだ」

「お、お前たち・・・」

カッシュの問に応じ今から戦場に向かう戦士のような面構えをした男子生徒たちはそれぞれ己が願望を曝け出す。

 

 

 

「俺・・・リィエルちゃんと双六するんだ・・・」

「俺はルミアちゃんとトランプで遊ぶぞ!」

「ウィンディ様に罵倒されたい・・・」

「システィーナは・・・別にいいや」

「「「うん、うん」」」」

こうしてカッシュの下に集った戦士たちは己が願望を叶えるため動き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男子生徒の行軍は見事なものだった。

それほどまでに女子と一夜遊びたいという年頃の少年の執念は凄まじかった。

暗闇の雑木林をまるで軍精鋭部隊を思わせるかのような手際で踏破する様は素直に賛辞を贈るべきだろう。

彼らの行動を見破るには同じ思考回路を持っているロクでなしな人間ではないといけないのだが、生憎魔術学院の講師陣にこのような思考回路の持ち主は存在しなかった。

 

 

 

男子生徒の行軍は順調に進み、女子の部屋までもう目と鼻の距離である。

見回りが一介の講師ならば無事に女子の部屋までたどり着き彼らの夢は叶っていただろう。

そう、一介の講師ならば・・・。

 

 

 

「ほう、暗闇だけに頼らず隠密系呪文を付与(エンチャント)して静寂性、隠密性を高めるとは・・・。大したものだ」

雑木林から数百メトラ先、旅籠の屋上からアルベルトは男子生徒一行を遠目の魔術で監視していた。

だが広い雑木林の中から闇夜に紛れかつ隠密系呪文を付与した生徒たちを見つけることはアルベルトといえども簡単ではない。

ではどうやって彼らを探し当てたかというと。

 

 

 

「さすがに探知用の魔力信号が自身の身に付与(エンチャント)されてるとは思いもよるまい」

なんと男子生徒全員に魔力信号を付与していたのだ。

いかにアルベルトといえども全員に魔力信号を付与させることは楽な仕事ではなかった。

ではなぜそのようなひと手間がいる手段を選んだのかというかアルベルトが置かれている状況に由来する。

 

 

 

自分の不始末は軍の不始末となることが潜入当初大いに身に染みたアルベルト。

本来ならとっくに罷免されていても可笑しくないのだが、学院テロ未遂事件、競技際での女王暗殺未遂事件の功績でなんとか首の皮が一枚繋がっている。

元王女の護衛というカードは多くの陣営が虎視眈々と狙っており、小さな失態でもそれを攻撃材料にされかねない。

そのためアルベルトは些細な失態でも犯すことは出来ないのである。

 

 

 

さて話を戻すが、現在男子生徒は女子生徒の部屋に忍び込もうとしている。

彼らにとっては一夜限りの小さな火遊び感覚なのかもしれない。

だがこのクラスの女子生徒は貴族や名家の出身が多い。

大事な愛娘を見知らぬ男と一夜を共に明かすとは何事かと保護者に言われかねず、それが対立派閥によるものだと軍にとっては都合が悪い。

そのため攻撃材料になりかねない生徒の行動は事前に防がなければならないのだ。

このような大人の事情により、もう少しで願望が叶えられる男子生徒には気の毒だがアルベルトが壁となって立ち塞がるのであった。

 

 

 

「危険を冒して進むその覚悟に敬意を示し、一撃で葬り去ってやろう」

アルベルトは術式を唱え発動させると、その数秒後に雑木林の中から小さな悲鳴が響くのであった




耐えた…耐えたぞ…
活動報告でもお知らせしましたが何とか片付けることが出来ました。
これからは多分週1、2本のペースで投稿出来る?かもしれないです。
今後とも応援よろしくお願いします!
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