ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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2話 "ロクでなし"のアルベルト

「学院長、どうかお考え下さい。あのような不詳の男に栄えある学院の講師の座を任せるなど正気の沙汰ではありません!」

アルザーノ魔術学院学院長室、このように訴える男の名はハーレイ=アストレイ。

20代半ばの神経質そうな顔に眼鏡をかけた男性だが、この若さで第五階梯(クインデ)へと至った天才魔術師である。

その彼が務める学院の長に対して新たにやって来る非常勤講師の就任について強く反対した。

 

 

 

「これをみてください、学院長。彼の魔術適正評価です。魔力容量(キャパシティ)も、意識容量(メモリー)も、系統適性もすべて中の下。そして彼の位階は第三階梯(トレデ)。これだけでもこの学院にふさわしくないのにさらにこの経歴、空白ですぞ。つまり奴はこの職に就くまで無職ということです。どうか学院長、ご再考を・・・」

「ハーレイ君」

ハーレイが最後まで言う前に学院長が話を遮る。

 

 

 

「悪いことは言わん。彼には関わるな」

「しかし学院長」

「もう一度言うぞ、()()()()()()()

「!!!」

普段の学院長ではありえないほどの雰囲気をを感じ取り、黙り込むハーレイ。

どうやら自分が踏み込んではいけないことにようやく気付き、大人しく部屋から退出した。

 

 

 

「ふむ・・・。だが何やら面倒ごとが舞い込んできたの・・・」

学院長の手元には鷹の紋章が箔押しされている帝国政府公文書の羊皮紙が広げられており、その中にアルベルトの名前が記載されていた。

 

 

 

「なるほど・・・位階は第三階梯(トレデ)。つまり三流魔導士の学院非常勤講師が今回の経歴(カバー)か。まさか翁のあの本が本当に役に立つとは。俺もまだまだ未熟だな」

魔術学院へと歩む中、今回潜入するために用意された講師の能力(スペック)を改めて思い出すアルベルト。

その講師の人格は完璧に模倣(コピー)できた、何の不安もない。

とても軽やかな足取りでアルベルトは魔術学院の門を潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルザーノ帝国魔術学院二年次生二組の教室、今日から新たな講師が来ると聞き、周りはざわめき立っている。

その中で一組の女学生も同じく、新たな講師がどのような人なのかを思い馳せていた。

「ねえシスティ、どんな人がくるのかな?」

「どんな人でも私は構わないわ」

「また質問攻めして講師から嫌われないでね」

「ちょっとルミア!」

 

 

 

周りの生徒も同様の会話をする中、教室の扉が開き始める。

講師が来たようだ、どのような人なのか皆興味を持って見ると・・・。

 

 

 

「わりぃわりぃ、ちょい遅れたわ。お前ら席に座れ。出席を取るぞ~」

現れたのは20代の男性だった。

黒みがかった藍色の長い髪を後ろで纏め、背も高く、その風貌からさぞ立派な魔導士として見られるはずなのだが・・・。

 

 

 

「な・ん・て・い・う格好してるのよ!」

システィーナがクラスの意見を代弁した。

学院の講師として、そして魔術師としての正装であるローブを着ず、服を着崩して、粗野な言葉遣いを吐くこの男は、この学院の教鞭を執る姿とは正反対の存在であった。

 

 

 

「おい、そこの女子生徒。人を見かけで判断するなってご両親から習わなかったのか?」

「っう」

確かに正論である。

だがなぜか納得がいかないシスティーナであった。

 

 

 

「そうだよシスティ、人を外見で判断しちゃ」

「そうね・・・。申し訳ありませんでした、先生」

「分かればいいんだよ、分かれば。じゃ軽く自己紹介するぞ」

そういい教卓に立ち、男が自己紹介をした。

 

 

 

「俺の名はアルト=フレイ、アルトと呼んでくれ。この1ヶ月非常勤講師として君らの面倒を見ることとなった。前置きはここくらいまでにして、じゃ授業を始めるぞ」

アルトがチョークを手に取ると、クラス中の生徒が彼に注目する。

一体どんなことを教えてくれるのか、そう期待を胸に黒板を見ると・・・。

 

 

 

自習

 

 

 

「「「・・・え」」」

システィーナは目を擦って黒板をもう一度見るが、書かれていることは何も変わらない。

周りも同じような反応なので、どうやら自分の目がおかしいわけではないことにほっとするのもつかの間。

 

 

 

「え~今日は自習にします、眠いから」

そう言うと、本当に寝たようで、アルトから鼾が聞こえ始めた。

その音以外は沈黙に包まれた教室だったが、システィーナがふと我に返ることでその支配は破られる。

 

 

 

「ちょっっぅと待てぇぇぇ!!!」

教室にシスティーナの咆哮が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、完璧だ」

その日の授業が終わり、アルトは校門を出て人気がない場所に着くと、一気に講師としての服装を解き、そこに現れたのは先ほどの授業で生徒全員から呆れられたアルトではなく、宮廷魔導師として数多の外道魔術師を葬ってきた男、アルベルト=フレイザーであった。

バーナードから借りた本の主人公と同じ振る舞いを完璧に沙汰なくこなし、学院への潜入も違和感なく出来ていると思い込んでいるのだが。

 

 

 

「だが・・・どうにも周りから注目される。原因はなんだ?」

さすがに疑問に思ったのか、暫しの間考えると。

 

 

 

「やはり俺の演技力が足りんか、不覚」

おそらく明後日の方向へと結論づけてしまったが、そこには誰も彼を止める者はいなかった。

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