ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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17話 ?????orアルベルト

「ねえ、リィエル。今から町に食事に行くんだけど一緒にどう?」

「・・・ん。苺タルト、ある?」

「ん~、ちょっとあるかどうかはわからないかな?」

研究所見学が終わり旅籠に帰ってきた二組一行。

日も落ちて辺りは暗くなっていたが、元気のある者は食事を取りに行ったり、辺りを散策したりなどと町へと繰り出していた。

もはやクラスでお馴染みとなったシスティーナ、ルミア、リィエルの三人組も町に繰り出そうとした矢先、アルベルトに止められる。

 

 

 

「お前たち、今から町に繰り出すのか?」

「はい、そうですけど・・・。何か問題でも?」

「いや、フィーベル。特に問題はないのだが・・・。少しリィエルを借りる。何ほんの僅かだ、ちょっとだけ待っていろ」

 

 

 

アルベルトはリィエルを連れてその場から少し離れる。

「おい、リィエル。お前の仕事は覚えているか?」

「・・・ん。ルミアを守る」

「そうだ。よく覚えていたな」

「・・・なんか気になるから」

人に興味を持たないリィエルがこのような心変わりをしている様を見たアルベルトは、事前に懸念していた問題がないことを確認すると話しを続ける。

 

 

 

「ならいい。俺は今から別の任務があるためティンジェルの周辺警戒を外れる。その間はリィエル、お前だけが頼りだ。万が一の場合は守り抜け」

「・・・ん」

話を終えるとシスティーナとルミアの下にリィエルを送る。

護衛任務として必要最低限の認識を持っていることを確認したアルベルトは再度バークスの周辺を調査しにその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リゾート地ならではの露店がいっぱいあって面白かったね、システィ、リィエル」

「そうね、ルミア。でもリィエルったらレストランで苺タルトしか頼まないんだもの。せっかく学院の外にいるんだからたまには他の物も食べなさい・・・って、あれリィエル?」

食事を堪能し、夜市を満喫した三人娘達はおしゃべりを楽しみながら旅籠への帰り道を歩いていたのだが、先程まで一緒に歩いていたリィエルが急にいなくなってしまった。

 

 

「まったく、あの子ったら。急にどこに行ったのかしら」

「あはは・・・。リィエルなら大丈夫だよ」

システィーナとルミアはそう言いながらもリィエルを探すため辺りを見回りながら歩き始めた。

 

 

 

一方、リィエルはというと。

「システィーナとルミアが迷子・・・。どうしよう」

自分が迷子になっているとは考えてもいなかった。

二人を探そうと歩き出したその瞬間。

 

 

 

「久しぶりだね、リィエル」

背後からどこかで聞いたような、懐かしい声が聞こえた。

声を掛けた人物から敵意を感じないためか特に警戒をせずゆっくりと振り向くと、そこには白衣型のローブを着用し、自分と同じ鮮やかな青色の髪をした青年が立っていた。

 

 

 

「・・・誰?私は二人を探さないといけないから。用がないならどいて」

「久しぶりだから思い出せないのかな?ゆっくりでいいから思い出してごらん?」

無視して素通りすることも出来るのだが、なぜかその青年の言葉が頭の中に響き、足を止める。

なぜ気になるのか答えを探すべくその人物を暫しの間注視していると、ふと記憶の奥底からその青年が誰なのか答えが浮かんできた。

 

 

 

「兄さん・・・うそ、なんで・・・?兄さんは・・・死んで・・・()()()に殺されて・・・」

()()()()()()って誰だい?」

兄と思われる男に問い掛けられ、兄を殺したあいつを思い出そうとするが、その記憶だけがまるで霧に隠れたかのように思い出せない。

リィエルが必死に思い出そうとしている所にその青年が話しかける。

 

 

 

「誰に殺されたかはここでは重要ではない。大事なのは僕が現に生きていること・・・違うかい?」

「う、うん。それで・・・兄さん。どうしてここに・・・?」

「そうだね、本題といこうか。リィエル、僕を助けてほしいんだ」

「助ける・・・」

「リィエル、君も知っていると思うけどあの組織は裏切者を許さない。君は上手く逃げ仰せたかもしれないけど、僕は失敗して今も組織の奴隷だ。僕がまだ組織に生かされているのも利用価値があるに過ぎない。いつ殺されたっても可笑しくない状況なんだ」

「そ、そんな・・・。に、兄さん・・・わたし、知ら・・・なくて」

「謝らなくていいさ。でも、もし、後ろめたく感じているようだったら助けてほしいんだ」

「た、助けるって・・・。何をすればいいの?」

恐る恐る聞くと耳を疑いたくなる答えが返ってきた。

 

 

 

「ルミア=ティンジェル。組織は彼女を求めている。彼女を献上すれば僕を許してくれる、自由を与えると組織が約束したんだ。僕に協力してくれないか?」

「そ、そんな・・・ルミアは友達で・・・」

「僕を見捨てて逃げて、また見捨てるのかい?」

「ぁ・・・」

その言葉を聞き兄を助けるためにルミアを差し出すことに心が傾きかけた時、アルベルトの王女を守れという言葉が蘇った。

今一度ひと呼吸おき、ルミアを守りながら兄を救うためにはどうすれば良いのか、普段はほとんど使わない脳をフル回転させてこの状況を打破する作戦を考える。

 

 

 

「わ、私が兄さんを救う!一緒に帝国に亡命しよう。イヴに話をしたら何とかしてくれる」

「無理だ、リィエル。僕の身体には禁呪が付与されている。脱走するといなや死が身体を蝕む禁呪だ。今だってかなり限界なんだ。組織に与えられた時間ももう僅かしかない。だから僕を選ぶか、彼女を選ぶか、今決めてくれ」

辛そうにリィエルに訴えかける。

元々作戦屋ではないリィエルにとってこれ以上の考えは思い浮かばず、ルミアを差し出せという兄とルミアを守れというアルベルト、どちらかを天秤にかけなければならない。

どちらを選ぶのか、その答えは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルミアとスティーナはリィエルを探しながら歩いていると、昨晩部屋を抜け出してやってきたビーチに辿り着いた。

「ここまで来たけど見当たらないわ。まったくどこに行ったのかしら?もう一度戻ってみる、ルミア?」

「う~ん、入れ違いになるかもしれないからやめとこう。リィエルのことだもん、きっと戻って来るよ」

「そうだといいけれど・・・」

旅籠に戻るため来た道を歩くべく、浜辺を背に振り返ると二人の目の前にリィエルが現れた。

だが、その様子が可笑しい。

手に大剣を持っているのもそうだが、幽鬼のような不気味な雰囲気を纏っており、ただ事ではないことが遠目からでも分かった。

 

 

 

何があったのか聞くためルミアが近づく。

「・・・リィエル?大剣を錬金してどうしたの?顔も青いし何がー」

ルミアの視界は急に暗転し、それ以降声を発することはなかった。

 

 

 

「・・・え?」

その様子を見ていたシスティーナは思考が停止し、体が固まる。

いや何が起きたのかはわかっている。

リィエルがルミアを大剣で切ったのだ。

血が出ていないことから外傷は負っていないようだが気を失っている。

システィーナのことを顧みず、ルミアを抱きかかえ、どこかに立ち去ろうとしたその時、ようやくシスティーナの思考が現実に追いついた。

 

 

 

「ま、待ちなさい!リィエル!あ、貴方何をしたのかわかっているの!!!おふざけで済ませるつもりないでしょうね!!!今すぐルミアを放しー」

システィーナは急に口を閉ざした。

いや、閉ざされたといったほうがいいか。

リィエルが片手で持っていた大剣をシスティーナ目掛けて放り投げたのだ。

大剣はシスティーナの顔のすぐ横を通り抜け、後ろの浜辺に着弾し、大きな水飛沫が上がった。

 

 

 

死。

アルベルトとの課外授業でほんの僅かだが経験した感覚。

日常生活では決して交わらないソレが今目の前に差し迫っている。

システィーナは腰が砕け立ち上がれないのを見るとリィエルはもう用がないかのようにその場を無言で立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、リィエル。辛い選択をさせてしまってすまない」

「・・・いいの、気にしないで兄さん」

夜の森を歩いているリィエルとその兄と思わしき青年。

リィエルの背中には気を失ったルミアが担がれている。

アルベルトの指示を無視しルミアを攫うというこの選択が正しいのかは分からないが、もう後戻りが出来ないことは分かっていた。

兄を助けたというのにやけに心が落ち着かないまま、天の智慧研究会のアジトに向かうのであった。




おそらく今年最後の投稿です。
来年も応援よろしくお願いします!
ではよいお年を~
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