ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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20話 特務分室の一員なら潜入もお手のものだよね?

「ふははははッ!素晴らしいッ!これは想像以上だ!!!」

床には大掛かりな五芒星法陣が描かれ、その法陣を取り囲むようにモノリス型魔導演算器が所狭しに配備されている大広間の中心にはルミアが鎖で天井から吊るされている。

今までの感応増幅者を使用した実験とは違う結果にバークスは興奮を抑えきれないようで、哄笑が広間に響き渡っていた。

 

 

 

「どうだ、エレノア殿。この私の実力は。これなら『Project:Revive Life』の成功は明らかだ。幹部共に伝えておくのだな。この私、バークス=ブラウモンの席を用意しておけ、と」

「畏まりましたわ、バークス様」

そうエレノアが優雅に一礼するとそれに満足したのか気を良くしたバークスだが、ふと気になることを聞く。

 

 

 

「そういえばエレノア殿。まさか貴方ほどの魔術師がネズミ狩りに手こずるとは・・・。一体どういうことかね?」

「申し訳ございませんわ、バークス様。何せ久しぶりの殿方との逢瀬ですもの。ゆっくりとその時間を噛みしめたいと思うのは淑女にとって当然ですわ」

「ふん、そのような悪趣味で敵を見逃すとは・・・。それでは本末転倒だろう」

「あら、バークス様ともあろう御方がネズミがその辺りをうろついているだけで怖気つきましたか?」

「ふん、馬鹿を云え。ここを嗅ぎつけたということはどうせそのネズミとやらは帝国宮廷魔導士団の魔導師なのだろう?深淵の真理に至る術たる魔術を戦争にしか利用できぬ愚者共の駒戌がこの真なる魔術師である私にかなうものか」

「流石はバークス様、実に頼もしいですわ」

「それに駄犬共が嗅ぎまわった所でこの場所が割れることはありえん。そうだろ?」

「ええ。元王女と私たちに寝返った宮廷魔導士に付いていた痕跡も払いました。バークス様が築き上げたこの場所は決してバレませんわ」

「その通りだ。精々戌は戌なりに走りまわるがいい」

そうバークスは高笑いをすると、もはやそんなことはどうでもいいとばかりに再度実験に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

「(今頃決して見つからないなどと宣っているのだろうな)」

アルベルトの目の前には周囲を樹海と山岳に囲まれた広大な湖が広がっていた。

なぜこのような場所にいるかというと。

 

 

 

「(あの女に付呪(エンチャント)した魔力信号は地下から発せられている・・・。バークスの専門分野は白金術。奴が根城を作るなら白金術と相性の良いこの地しか考えられん。あとは奴の秘密研究所とやらに繋がる地下水路に流入する不自然な水の流れを辿ればよい)」

アルベルトは黒魔”エア・スクリーン”の呪文を唱えると空気の膜が形成される。

そのまま湖の中に足を踏み込み、アルベルトは湖の中へと姿を消した。

 

 

 

暫く湖の中を探索すると不自然な水の流れが発生している横穴を発見した。

その横穴を進んでいくともうすぐ出口なのだろう上から光が差し込んでいる。

敵に見つからないよう音を立てず慎重に浮上し、水上に出ると傍にある足場に飛び乗り、すぐさま潜入用の隠密系呪文を自身に付呪(エンチャント)する。

 

 

 

すると、目の前の水路から侵入者を感じたのだろうか生態系の進化から外れたような歪な形の巨大な蟹が現れた。

おそらくこの研究所で生み出された合成魔獣(キメラ)の1体なのだろう。

だが、所詮は魔獣。

一流と呼ばれる魔術師の眼でさえ欺くアルベルトの隠密系呪文による欺瞞を知性の欠片もない合成魔獣(キメラ)が見破られるはずがない。

蟹は正体が見えない侵入者に対して自身の勘違いであったと感じたのだろうか、暫くすると水の底へと戻っていった。

 

 

 

廃棄された合成魔獣が屯している区画を誰にも感づかれないように踏破するアルベルト。

この区画の出入り口であろう扉を開け、暗く狭い通路を進んでいくと開けた空間に出た。

広間は暗いため何があるのかわからなかったが、だんだんと眼が暗闇に慣れた時アルベルトの眼の前には常軌を逸脱するような光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(・・・あら?)」

『Project:Revive Life』の儀式が順調に進んでいることに狂喜乱舞しているバークスを横目に見ているエレノアは偶然だろうか微かな体の違和感に気が付くと、自分の体の彼方此方に指を這わせ、頬から発せられる魔力信号に気が付いた。

その魔力信号がどこに放たれているのか遠目の魔術で辿ると・・・。

 

 

 

「あらあらまぁ・・・流石はアルベルト様。抜かりないとはこのことですか。私もまだまだ未熟ですわね」

「ん?どうしたエレノア殿。一体何を呟いている?」

「バークス様、侵入者ですわ。敵は1名。帝国宮廷魔導士団特務分室アルベルト様ですわ」

「何だとッ!!!」

いつの間にか帝国政府の手の物が研究所内に侵入しているのだ。

これで慌てるなとは無理であろう。

 

 

 

「それでエレノア殿。ソイツは今どこにいるかわかるかッ!」

「ええ、もちろんですわ。ここは・・・ああ、先日バークス様に案内していただいた保管室ですわね。只今バークス様の実験体に狼藉中ですわ。」

「何だと!クソッ駄犬が!()()()がどれほど貴重なものか理解できん魔術師のクズめ。おい、貴様!後に残った儀式の細かい調整は任せる。エレノア殿は一緒に来い!!!」

「畏まりましたわ、バークス様」

「わかりました、バークスさん」

バークスは残りの儀式を青髪の青年に任し、エレノアを伴って鬼の形相で部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さて、いかがいたしましょうか)」

薄暗い通路を不機嫌そうに突き進むバークスの後ろをエレノアは静かに考える。

帝国宮廷魔導士団”星”のアルベルト。

フェジテの路地裏、そして先程の樹海での一戦を踏まえてアルベルトの実力を人一倍理解しているエレノア。

先程の戦いにおいてももし続いていたらと思うと背筋に寒気が走る。

もし此方に第二団(アデプタス)・<地位(オーダー)>クラスの魔術師がいたら話が変わるのだがと思い、ちらりと前方を流し見るのだが。

 

 

 

「(これは・・・正直お話しになりませんわね)」

バークスはアルベルトの実力が分かっていないようで、相手の実力を過小評価し自身を過大評価している有様だ。

このままアルベルトと相対すると、初めは人数差によりこちらが有利だが彼のことだ。

その状況さえ簡単に覆し逆に二人を追い詰めるだろう。

己が敬愛する大導師のために命を差し出すことには迷いなどないが、それがこの無能のためにとなると話は変わる。

エレノアは頭の中で瞬時に考えると。

 

 

 

「(仕方ありませんわ・・・ここは大導師様のために。バークス様には悪いですがここは一足早くお暇させていただきましょう)」

そうエレノアは前方を行くバークスの背中を指さして小声で呪文を唱えた。




時々『魔術師』と『魔導士』の違いが分からない今日この頃・・・。
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