ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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4話 挽回するアルベルト

鐘がなり、今日も一日が始まる。

しかしこの2組の生徒はもうアルベルトに期待をしていないか、それともこの状況に慣れてしまったのか、各自それぞれが自分の勉強をするための準備をする。

前に座っているシスティーナとルミアもそれに洩れず、準備をしていた。

 

 

 

「システィ、元気出して。そもそも、講師が生徒の決闘を受けるわけないよ。それよりもいきなり決闘を申し込むんだから心配したんだからね」

「ルミア・・・。ありがと」

教室の扉が開きアルベルトが入ってくる。

さて今日も自習か、そう思い机に向き合うと。

 

 

 

「さて、授業を始める」

アルベルトの声に顔を上げた生徒たちはさらに驚く。

今まで気崩していた服装ではなく正装を着こなし、言葉使いも凛とし、その立ち振る舞いや鋭い眼光からあのやる気のない先生と同一人物なのか生徒一同不安に思い、誰もが顔を見合わせる。

 

 

 

「今日は簡単な実習をする。全員外へ出ろ。”ショック・ボルト”について実戦を伴いながら講義する」

これにはクラス中から声があがる。

 

 

 

「何を言い出すかと思えば・・・”ショック・ボルト”なんてみんな極めていますよ」

「極めている、か。ならこの後も同じことが言えるか楽しみだな」

生徒たちの声に挑発的に返すアルベルト。

その物言いに生徒たちは苛立ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルベルトに連れられ、教室の外に出る生徒たち。

「”ショック・ボルト”について説明する前に実習を行う。なに、簡単だ。俺とお前たちで魔術戦を行う。使用呪文は先ほど話した”ショック・ボルト”と対抗呪文(カウンター・スペル)のみだ」

「あの・・・さすがに先生と言えども全員を一気に相手取るのは無理じゃ・・・」

クラスの1人が心配そうに声を掛ける。

 

 

 

「構わん。万が一にも俺の敗北はありえん。俺に傷一つでも負えた者にはそうだな・・・学食をこれからずっと奢ってやろう」

「その発言忘れないでくださいよ」

アルベルトの発言に一部の生徒の目が光る。

 

 

 

「よっしゃ、行きますよ、先生!」

「ちょっと待って、カッシュ!」

我先にとアルベルトと闘おうとしたカッシュをシスティーナが止めた。

 

 

 

「な、何だよ。システィーナ」

「カッシュ、落ち着いて。この大人数が相手でも先生は自分が勝つことを疑っていないのよ。こんな絶望的な条件を持ち掛けるんだから腕によっぽどの自信があるはず。ここは作戦を立てて慎重に動くべきよ」

「ほう、まさか貴様の口からそのような言葉を吐くとはな。だが今回はフィーベルの判断は正しい。気づいた褒美だ、3分やる。その間に対策を練れ」

システィーナの意見を肯定し、暫しの間待つアルベルト。

生徒たちは作戦を練りだした。

 

 

 

「といっても"ショック・ボルト"と対抗呪文(カウンター・スペル)しか使えないんだろ。作戦なんてどうたてればいいんだ」

「いいえ、私たちには先生にはないものがある。それは数よ」

クラスメイトの質問に答えるシスティーナ。

 

 

 

「40人を二人一組に分ける。それぞれ一つの呪文に専念するのよ。防御担当は先生の攻撃を耐え、攻撃担当は絶え間なく攻撃する。これでどう?」

システィーナの言う通りに陣形を組む生徒たち。

これを見てアルベルトは。

(ほう。なかなか考えたな)

素直に感心していた。

 

 

 

どこかで学んでいたのか、それとも直感なのかはわからないがシスティーナの指示で配備された陣形は簡易的な二人一組(エレメント)一戦術単位(ワンユニット)として展開されていた。

いかに講師と言えどもここまでされると生徒の勝ちは明白であろう。

・・・相手がアルベルトでなければ。

 

 

 

「さて、全員。こい」

アルベルトがそう言うと共に。

「「「う、うぉぉぉー」」」

防御担当の生徒は対抗呪文(カウンター・スペル)を、攻撃担当の生徒は”ショック・ボルト”の呪文を唱え始める。

が、相手は特務分室のエース。アルベルト。

誰よりも早く動き、魔術を放つ。

 

 

 

「"雷精よ"ー"踊れ、踊れ、踊れ(タンズ タンズ タンズ)"」

アルベルトが放ったのは近接魔術戦での十八番、黒魔”ライトニング・ピアス”の7射同時起動、”七星剣”の劣化版(ダウングレード)

しかも軍用魔術ではない汎用魔術、その中でも初等呪文といえる”ショック・ボルト”で再現したため、なんと七射同時起動を超える120連射同時起動という神業。

 

上空に放たれた一閃の雷光はその後無数の閃光に分かれ、雨のように生徒たちに降り注ぐ。

対抗・呪文(カウンター・スペル)を唱えていた防御担当の生徒は何とか耐えることが出来たが、攻撃担当の生徒はなすすべもなく倒れる。

余りの出来事に防御担当の生徒は狼狽えるが、それを見逃すアルベルトではない。

 

 

 

「”雷精よ”-”踊れ(タンズ)”」

先ほどよりは少ないといえ、”ショック・ボルト”の40連射同時起動が残った生徒を襲う。

生徒40人はアルベルトに傷一つ負わせることが出来ずに魔術戦が終わった。

このクラスで一番の腕を持つと謡われるシスティーナでさえ例外でない。

 

 

 

「どうした。ショック・ボルトを極めたのだろう?このくらいできて当然ではないのか?」

(((そんなの出来るわけないだろ!!!)))

クラス全員が内心で突っ込んだ

 

 

 

「まあ冗談だ。今のお前たちに出来るとは思わん。だがこの程度の魔術を極めたとほざく奴がいたからな。そいつらに極めるとはどういうことか見せたかっただけだ」

目を逸らす一部の生徒たち。

 

 

 

「お前たちは教科書をろくに読めもしないのに先に進みたがる。まずは教科書をしっかり理解することだ。では教室に戻るぞ」

そう言い踵を返すアルベルト。

その背中をどんなことを教えてくれるのか、期待の眼差しで生徒たちは見ていた。

 

 

 

(嘘・・・こんな完膚なきまでにやられるなんて)

システィーナは教室に戻る中、この結果にショックを受けていた。

どこかで油断していたのだろうか、これほどの人数で負けるわけがないと。

しかしアルベルトの圧勝だった。

 

そしてシスティーナは今まで魔術に対して感じてこなかった恐怖という感情が芽生え始めた。

上空から雷閃が降り注いでいく様を見て、生まれて始めて魔術に対し、恐怖心を抱いた。

 

(あれがもし殺すつもりで放たれていたら私は死んでいた)

システィーナは新たに芽生え始めた感情を押し殺し、アルベルトの授業に臨んだ。

 

 

 

その後の授業はまさに目から鱗が落ちるという内容であった。

今まで自分たちが学んできたことでは知らなかった魔術の本質、それを”ショック・ボルト”を使い説明する。

その日の授業はまさに今まで受けてきた授業と一線を画していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルト、覚醒。

アルベルトの授業が凄いという噂はすぐさま学院中に広まった。

特に黒魔の授業は、他の講師陣の授業内容に追随を許さないほどの優れた授業内容であった。

今や学院でアルベルトを蔑むものなどいなかった。

 

 

 

「いや~一時はどうなるかと思ったが杞憂だったわい、アルト先生・・・いやアルベルト君」

「恐縮です、学院長」

学院長室、アルベルトは学院長に呼び出された。

 

 

 

「ですが俺をお呼びになるとは何か?」

「何、ただの連絡事項じゃよ。来週からは魔術学会の件で学院が休校になるのだが、君の前任者であるヒューイ君が急にいなくなってな。そのため休み中だが君のクラスは授業が入っておる。まあ今の君のことだから特に心配しておらんがの」

「いなくなった?一身上の都合で退職をしたと聞いたが」

「おや、聞いておらんのか?それは一般向けの説明だ。彼は今も行方不明、足取りはつかめておらん」

「・・・彼についての詳細な情報はありますか?」

「ん?まああるにはあるが・・・君が不安に感じるほどの実力は持っておらんよ」

一抹の不安を感じ取りアルベルトは学院長から彼の情報を手に取る。

 

 

 

「残念だが、君とはこの魔術学会が終わったらお別れだ。上から話を聞いているが私としてはもう少し早くから君が実力を出していたらと心から思うよ」

「・・・それについては黙秘させていただきます」

まさか自分が参考にした人物がロクでなしだとは学院長も思わないだろう。

アルベルトは居心地が悪く、すぐさま学院長室から退出した。

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