ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー   作:つりーはうす

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5話 特務分室のエース、アルベルト

(ヒューイ・ルイセン。学院の人気講師として生徒から慕われていたが、先日失踪。今日まで行方が分からず。"時間/空間"系統が専門。ただし目立った研究成果はなし)

学院長から貰った彼の詳細を読み漁るアルベルト。

一見彼には怪しい点はなく、なにか事件に巻き込まれたとしか見えようがないが、幾度となく地獄を乗り越えてきたアルベルトには何やら引っかかるものがあった。

 

 

 

「ヒューイ・ルイセンが失踪した日と天の智慧研究会が動き始めているという情報が流れた日は近い・・・。これは偶然か?だが・・・まさか!」

アルベルトの中で糸が一つに繋がる。

 

 

 

「万が一いや、億が一にもありえんが、ヒューイ・ルイセンを攫い、学院の情報を引き出したとなると・・・。来週からの休校は絶好のチャンス。学院には教授陣はおらず、いるのは2組の生徒のみ。そして2組にはあの()()がいる。襲うなら今しかない。ありえんとは思うが警戒するか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術学会、当日。

学院はいつものような騒々しさは鳴りを潜め、閑散としていたが、2組だけは平常であった。

 

 

 

「さて、今日は試験(テスト)をする」

「「「えー」」」

いきなりの試験(テスト)宣告に不満の声をあげる生徒たち

 

 

 

「アルト先生、抜き打ちなんて酷いですよ」

「安心しろ、成績には反映せん。お前たちが今どこまで理解しているか確認するための物だ。その分難しいがな。では始め」

アルベルトの声に一心不乱に紙に向き合う生徒たち。

 

 

 

(やはり恐れていたことが起きたか)

アルベルトは遠目の魔術で警備員が撃たれ何者かが侵入してきたのを捉えた。

 

 

 

「お前たち、俺は暫くの間席を立つ。静かに解いていろ」

「はーい」

アルベルトは教室を出た瞬間、結界をあたり一帯に張り巡らし、通信機を鳴らした。

もちろん相手はイヴだ。

 

 

 

「・・・何、アルベルト。」

「襲撃された」

休んでいたのだろうか、反応が鈍いイヴだったが、この一声で切り替える。

 

 

 

「相手は?」

「確認出来たところ3人。そのうちの1人は()()()()だ」

「中々大物がきたじゃない。すぐに学院の転送法陣を利用して応援を送るから時間を稼ぎなさい。まあ貴方のことだから大丈夫だと思うけど。あと出来るなら竜帝は生け捕りにしなさい」

「了解した、では切る」

通信機を切り、迎撃の準備をする。

「さあ来い。外道魔術師よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーキャレル。アンタって奴がまさか標的を討ち漏らすとはな」

「撃ち漏らしていませんよ。ただ今日は標的が現れなかっただけです」

「そこまでにしておけ、ジン。奴を討ち漏らしたところで計画に支障は出ん」

「わかりましたよ、レイクの兄貴」

先ほど警備員を撃ち殺した集団は2組に向かって学院内の通路を歩んでいた。

するとレイクが何かあることに気づく。

 

 

 

(鏡?なぜこんなところに?)

学院なのだから鏡があっても場違いではないのだが、ふとレイクの脳内に嫌な感覚が過る。

すると・・・。

 

 

 

「チィ!」

「ちょっと!レイクさん、いきなり何です・・・ガハッ!」

レイクは横にいたキャレルの首元を持ち、自身の目の前に引き摺ると何者かの手によってキャレルは沈黙した。

魔術狙撃である。

 

 

 

「レ、レイクの兄貴」

「戯言を今はほざくな、死にたいのか!」

キャレルを身代わりにしたレイクを驚いた目で見たジンだが、今は従う。

すると・・・。

 

 

 

「ガハッ!」

「何!別方向からだと!」

先ほど撃ってきた方向とは違う方向からジンが狙撃される。

そちらを見ると、同じく先ほどと同じ鏡があった。

 

 

 

「チッ。”爆”!」

レイクはその場に留まることは危険だと考え、黒魔”クイック・イグニション”、緊急回避に用いられるC級軍用魔術を使用し、その場を離れる。

 

 

 

(ほう、味方を見捨てて逃亡。最善(ベスト)な判断だ)

アルベルトが狙撃していた場所は2組の教室前、なんとそこから狙撃をしたのだ。

本来なら届くはずがないのだが、学院の彼方此方に錬金”形質変化法(フォーム・アルタレイション)”と”根源素配列変換(オリジン・リアレンジメント)”で通路の壁面を鏡面化させ、その表面を魔力でコーティングした鏡が設置してある。

 

この鏡を中継地点とすることで遠目の魔術、黒魔”アキュレイト・スコープ”の使用負担を軽減でき、かつ死角を大きくカバーし、”ライトニング・ピアス”を鏡に反射当てすることで教室からでも狙撃を出来たというわけだ。

特殊な魔術は一切使っておらず、すべて基礎的なことであるが、それを遥かに高めたのがアルベルトの魔術なのだ。

 

 

 

「さて、行くか」

もう一度遠目の魔術を発動させ、レイクの居場所を探し出すアルベルト。

その姿はまるで死神のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(鏡を利用して敵を狙撃する、そんな凄腕の魔術師がこの学院にいるとは聞いておらん!)

なんとか狙撃を躱し、束の間の安寧を得るレイク。

だが敵は待ってくれるわけがなく、すぐさま動かないと自分が死ぬのは明白である。

 

 

 

「これは・・・私も奥の手を使うしかないな」

レイクは自身に施されている()()を解こうとすると・・・。

 

 

 

「チッ!それすらもさせる時間を与えんか」

すぐさまその場を離れ、レイクが先ほどいた場所に雷光が襲う。

さらに2発、3発と狙撃されるが全て躱した、いや・・・。

 

 

 

(私が躱したというより、相手がわざと当てなかっただけか)

長年戦場に身を置いているレイクは本当ならすでに何回も殺されていることを自覚していた。

ではなぜ死んでいないかというと、自分の悪運があるからではなく、相手の気まぐれによるものだと、レイクほどの腕を持つ者なら気づいてしまった。

 

 

 

誘き出されるように学院のとある広場に着くレイク。

見上げると一人の男が立っていた。

「貴様がレイク。天の智慧研究会、第二団(アデプタス)地位(オーダー)”のレイク=フォーエンハイムだな」

「私の名を知っているということは貴様、学院の者ではないな。何者だ?」

「貴様の質問に答える義理はない」

そういうとアルベルトはレイクに指を向けた。

 

 

 

「貴様はもう詰み(チェック・メイト)だ。大人しく投降しろ」

「・・・断ると言ったら?」

「実力でねじ伏せるだけだ」

アルベルトとレイク、二人の戦いは第二ラウンドへと移った。

 

 

 

「はぁー!」

レイクはアルベルトと近接戦に持ち込もうと接近する。

当たり前だ、あのような神業をする男と魔術射撃で応戦するなど勝ち目はない。

 

レイクの一族に代々伝わる”竜化の呪い(ドラゴナイズド)”。

その呪いの進行を防ぐための封印である”竜鎖封印式”の3つの封印のうち、1つさえ解呪(ディスペル)すれば、竜の力が顕現し、勝つ見込みも出てくるが、そんな時間を与えてくれるほどアルベルトは甘くない。

勝ち目があるとしたら近接戦、五本の剣を用いた魔動器を起動させて持ち込もうとする。

 

 

 

が、それをアルベルトが簡単に許すはずもなく。

「”雷剣よ(シーヴェン・マル)”ー”踊れ(タンズ)”」

黒魔”ライトニング・ピアス”の七射同時起動ー”七星剣”を近づいてくるレイクに向けて放たれる。

 

 

 

さすがのレイクも何の対抗もしないわけがなく、対抗呪文(カウンター・スペル)を唱え、耐え凌ぐがその間にアルベルトとの距離は開く。

先ほどから同じことが続き、一向に戦況は進まない。

だが時間が経てば経つほど有利になるのはアルベルトの方だ。

おそらく軍人であろうと想像できることからすでに援軍を呼んでいることだろう。

そのため危険を冒さず、適度に相手をする。

レイクはそう考え、無理やりにでもアルベルトを倒さなければいけないと思ったその時。

 

 

 

「何!」

レイクの足元に魔法方陣が展開され、レイクの頭、胴、足を完全に拘束する。

黒魔儀”リストリクション”-拘束封印の魔術罠(マジック・トラップ)であった。

レイクはアルベルトが時間を稼いでいるだけだと思っていたが、この(トラップ)のある場所までおびき寄せられただけだと気づくも遅かった。

 

 

 

「”雷槍よ”」

レイクの動きが封じられた瞬間、アルベルトは一節詠唱で”ライトニング・ピアス”を放つ。

一閃の雷光はレイクの胸部を穿つのであった。

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