ロクでなし魔術講師、アルベルト=フレイザー 作:つりーはうす
レイク以下三人を拘束し、イヴに連絡をするアルベルト。
「こちらアルベルト。侵入者をすべて無力化した」
「生け捕りに出来た?」
「ああ」
その報告を喜色満面で聞くイヴ。
「よくやったわ、アルベルト。あの竜帝を生け捕りにするなんて、大手柄よ」
「ところで援軍を送ると聞いていたがどうした?あれから時間も経った。特務分室の連中ならすぐに送れると思うのだが?」
アルベルトはイヴの賛辞を軽く流し、疑問を伝える。
「それがね・・・どうやら転送法陣が壊れているらしいの」
「壊れている?そんな馬鹿な。昨晩その転送法陣で学院の教授陣がオルランドへと出発したのだぞ?」
「だから分からないのよ、それと・・・」
さらに続けるイヴ。
「クリストフに魔導演算器から魔力回線を通して学院の状況を調べたところ、学院の魔導セキュリティのシステムは完全に向こうの手に渡っているわ。当分は学院の結界を解除出来ないから応援部隊を学院内に送り込むことも出来ない。そして不可解な点がもう一つ。その結界はどうやら内側から出られない仕組みになっているの」
「中から出られない?じゃあ奴らは一体どうやって出るつもりだ?」
「そんなの知らないわよ、あんな大導師を信じ切っている狂信者どもの考えは。まあそういうことだから少しの間、中で大人しくしていなさい。時間はかかるけど、フェジテに駐屯している宮廷魔導士団が動いたから、暫くしたら外に出れるはずよ。それまで学院の生徒、特に王女には気づかれず面倒を見ておきなさい」
そうアルベルトに伝え、通信を切るイヴ。
学院を襲ったテロリストは無力化し、何も問題はないのだが、なぜか腑に落ちないアルベルト。
何か見落としていないか、暫く考えていると、先程レイクらが持っていた荷物とイヴから聞いた情報が一つに繋がる。
「いや、まだだ。まだいるぞ、この学院に奴らを手引きをした張本人が」
歩み出すアルベルトだが懐中時計を見ると時刻はもう正午、生徒たちの試験が終わる頃だ。
まだ見ぬ下手人を追い詰めたいところだが、いったん教室へと戻る。
「アルト先生!一体どういうことですか!」
教室に戻ると開口一番システィーナが声を荒げた。
「教室に結界なんか張って。私たち出られなかったじゃないですか」
「授業中だぞ。なぜ外に出る必要がある?」
「っう!」
確かに授業中なため外に出る必要はないが、心情的に閉じ込められたことは気持ちの良いものではなかったらしい。
「確かに何も言わずに閉じ込めたことは悪いと思っている」
「ま、まあそこまで言うのなら・・・」
「そして悪いと思うがもう一度閉じ込めさせてもらう」
そう言うとシスティーナだけでなく生徒全員が声を上げる。
「どういうことですか、アルト先生!」
「なにやらどこぞの研究室に保管されていた魔道具が暴発したらしい。今警備員が抑えているが人手が足りんくてな。俺のところにも応援が来た。念のためだがお前たちには身の安全を守るため、教室にいてもらう」
「「「「あー」」」
明らか嘘なのだが生徒たちはなぜか納得していた。
またあの天災教授の置き土産かーそんな声が聞こえたが今は関係ないので無視し、教室から立ち去った。
(さて・・・生徒は保護した。あとは手引きをしたやつを探すだけだ)
その下手人が何処にいるかアルベルトにはおおよそだが目処がついていた。
学院の結界を弄れるほどの空間系魔術に精通している魔術師、中から出ることが出来ない結界、空間系魔術の儀式で必要とする魔道具と触媒の数々。
それをすべて繋げると・・・。
(
アルベルトの目の前には転送塔を守るようにゴーレムが展開されていた。
それを見て自分の考えを確信したアルベルトであった。
難なく転送塔の内部に入ると一人の男が立っていた。
「貴様が下手人か・・・ヒューイ・ルイセン」
「おや、初めて顔を合わせたはずでしたがご存じでしたか」
「書類を見させてもらったからな」
そこにいたのは失踪したといわれたヒューイ・ルイセンであった。
「転送法陣を改編するために必要な触媒と魔道具が届かないのが不思議だったんですが、真逆あなたがあの3人を?」
「とぼけるな。貴様見ていたのだろう?でなければ転送法陣を破壊して逃げる手段を失うことなどしないからな」
「お分かりでしたか。彼等より先に応援を呼ばれそうでしたので壊させていただきました。ですが、まさか長年準備していた白魔儀"サクリファイス"の術式を書き終える前にここを突き止めるなんて。貴方何者ですか?」
「答える義理はない。投降しろ」
「ええ、もちろん。僕は戦闘員ではないので」
こうしてアルザーノ帝国魔術学院を取り巻く事件はあっけなく幕が降りた。
アルザーノ帝国魔術学院テロ未遂事件。
政府の公文書にはこのように書かれたが、当の学院にいた学生たちには一切気づかれなかったため、公式には魔道具の暴走と発表された。(このことで一人の天災教授に難が降りかかる)
そして事件の報告のためにアルベルトは”業魔の塔”にと呼び出された。
「まずはご苦労というべきかしら?アルベルト。周囲に一切気づかれずに天の智慧研究会3名を拘束。特に竜帝レイクを生け捕りにしたことは大手柄よ。これだけども大戦果なのに学院にテロリストを手引きし、さらに自爆テロの準備をしていたスパイにも気づいて捕獲。これで貴方に文句を言ってきた奴らも反国軍省派の奴らも黙ったわ。貴方の失敗も全て帳消し、万事解決。だけどね・・・」
イヴが顔を上げ、アルベルトに問い質す。
「あの授業は一体どういうつもりなのかしら?最終的には学院の講師から認められたらしいけど初期のあの体たらく・・・。貴方のせいで私がどれだけ苦労をさせられたか。何か釈明はある?」
そう言い、今にも怒鳴りたいのを我慢し、指先に火を灯すイヴは、いつもの金切り声ではなく地を這うような低い声でアルベルトに釈明を求める。
人間、本気でキレたらこうなるんだなと内心思っていたアルベルトだが、釈明を認められた時間を無駄にすることなく話始める。
「翁から・・・」
アルベルトはバーナードから潜入する際に参考にしたらどうだと手渡された本を元に授業をしたのだと釈明。
その本を手にしたイヴは呆れて物も言えない。
「確かにこの本は有名ね・・・スパイ小説にギャグをぶち込んだ問題作としてね」
それを聞き唖然とするアルベルト。
そこに間髪入れずにイヴが罵倒する。
「なんで読み始めてから気づかないのよ!!!こんな小説が潜入の際に参考にしたっていうバーナードの戯言を信じるなんて、貴方バカなの!!!」
そこからはいつものような金切り声でイヴの長い説教が始まった。
説教が終わりようやく部屋から退出するアルベルト。
すると。
「おお、アル坊。聞いたぞ、一騎当千の大活躍だったらしいじゃないか」
そこには今回の原因のバーナードがいた。
「ん?どうしたアル坊、黙り込んで。ちょ、ちょい。なぜ指を向ける!」
「・・・覚悟はいいか、翁!」
いつもは鉄仮面のアルベルトだが今回は珍しく他人が見てもキレていると分かるほどの鬼の形相。
その後二人の鬼ごっこはイヴがキレて