後ちょっと長くなりました。
※早くも誤字報告ありがとうございます。修正致しました。
「1、2、3」
灰色の巨体の脚が雪の残る地面へと真っ白な表面を削るようにめり込んでいき、その下に隠されていた地面の土をも巻き返す。
エイハブリアクターの
シートベルトがパイロットスーツ越しに身体にめり込むも、しかしその目線と手先だけは正確に動いている。
背後から巻き上げられていた雪煙は、モビルスーツの巨体が生み出した風圧と、風下という位置も相まってフレック・グレイズの前方へと流れ、その姿をあっという間に白で覆い隠した。
直後、巻き上がる雪に紛れて真上へスラスターを吹かし跳躍。
すぐ補足されるだろうが、それまでの短い時間で施設周辺の敵機の配置を頭上から素早く確認した。
予測されていたモビルスーツ2機が未だにトレーラーの上に未だ寝そべったままなのを確認し、近くを護衛するモビルワーカーへ向かって降下を始める。
「MS2機確認。スピナ・ロディ。MW10機確認。3機撃破」
『データリンク完了。ブレードアンテナのある白いスピナ・ロディを優先して撃破して下さい。恐らく指揮官です』
「
短い文章の羅列でもって
時間稼ぎのために必死に迎撃しようとするモビルワーカーを落下するフレック・グレイズがライフルで撃ち下ろし、着地。
それと同時にライフルを持つ右腕とカメラアイだけを半身のまま真横に向け1機のモビルワーカーへ銃弾を叩き込む。
「4、5」
5機目のモビルワーカーを葬ったその時、フレック・グレイズがライフルを向けていた方向とは逆方向に位置する指揮官機と思われる白いスピナ・ロディが機体を起こしかけていた。
もう1機はまだ起動中なのか動く気配はない。
決死の覚悟によりモビルワーカーは、その僅かな時間稼ぎに成功したのだ…と思われていた。
起き上がりながらも、たった今ライフルの銃口をフレック・グレイズへ向けた白いスピナ・ロディは気づいていない。
特徴的な箱型の頭部に縦に並んだ二つのカメラアイの内、一つがじっと自分を見ていたことに。
間髪入れず頭部ミサイルポッドの上部ハッチが開き、小型ミサイルが一発垂直に打ち出される。
ツインアイに内蔵されたレーザー目標指示装置から照射されたレーザーを道標に、短距離用の小型ミサイルが半円を描き標的へ飛んだのだ。
それはまだ完全に起き上がり切っていなかった白い"スピナ・ロディ"の胸部に直上から落下するように命中。
破裂音が辺りに響き、モビルスーツは強烈に地面へと叩きつけられた。
轟音と雪煙が立ち上り、吹き飛んだ鉄の塊が幾つも周囲へと飛散する。
しかし撃破には至っていなかった。
なんと直前でミサイルと機体の間にブーストハンマーを差し込み盾にしたのだ。
…だからといってパイロットが無事な訳ではない。
落下速度の乗ったミサイルに真上から打ち付けられるという激しい衝撃に見舞われたモビルスーツは、軽微な損傷のまま起き上がることなく沈黙してしまった。
その間に立ち上がり始めていたもう1機のモビルスーツも、既にフィーシャのフレック・グレイズに捉えられている。
スラスターを吹かし、左腕のシールドを構えながらも真横にスライドするように急速接近。
半ば持ち上がったスピナ・ロディの機体を灰色のフレック・グレイズは左腕に固定されたシールドで減速しないままの速度を持って地面に向けて叩き落す。
先程の白いスピナ・ロディの焼き直しのように、勢いよくモビルスーツの巨体が地面にたたきつけられ、轟音。
その横を灰色の巨体が勢いのまま通りすぎた。
そしてライフルを抱え、足を前に投げ出す様な姿勢になることで腰部のスラスターを前方へ噴射、這いつくばったスピナ・ロディの周囲をグルッと一周するかのようにしながら減速。
その円を描く様な噴流によって再び雪煙があたりを満たして2機の姿を隠してしまった。
直後、一際大きく鈍い金属音が辺りの空気を短く震えさせ、ここにいる全ての人間の耳を不快に刺激する。
フレック・グレイズは雪煙が晴れる前に、継ぎ接ぎのマチェットを杭を打ち込むがごとく体重を乗せた一撃でコクピットを貫いたのだ。
「MSは、まず1機」
慈悲も
残ったもう一機は、既に死に体だ。
風下にいるモビルワーカーに狙いをつけ、灰色のフレック・グレイズは再度雪煙に紛れて強襲を仕掛ける。
巨体によって起こされた小さな吹雪の中、角ばった縦に並ぶ二つのカメラアイが鈍く発光し、残りの得物をそれぞれの視界に収めて睨みつけた。
主力である2機のモビルスーツを失ったからか、その後大した抵抗もなく残りのモビルワーカーは投降した。
『敵勢力の撃破、又は投降を確認。残るは、そのモビルスーツだけです』
「あいよ」
『なんだよ。もう終わっちまったのか』
「…その場で武装解除の後、パイロットはモビルワーカーから降りて一ヶ所に集まるように伝えてくれ」
『かしこまりました』
一定の間隔に維持していた呼吸の間隔を長めに変え、大きく吸って吐いてを繰り返しながらも残心。
油断して、投降したと思っていた奴らから後ろから撃たれるなんてこともざらなのだ。
視界に纏めて入れておくことが俺としては一番気が楽だ。
一拍置いた後、未だに倒れたまま動かない指揮官機と思われるブレードアンテナ付きの白いスピナ・ロディへと足を進める。
「…」
まだ緊張は解かない。
まだリズムを崩してはいけない。
額から流れる汗をむずがゆく思いながらも、倒れ込んだままのスピナ・ロディに近づき、110mmライフルの銃口をコクピットへと突き付ける。
多分、まだ生きているだろう…多分?
生きていなかったら仕方ない。
しかし生きているならばちょうど良い。
足で押さえつける様にして機体に触れて接触回線を開き、俺は伸びてるパイロットに向けて寝起きの言葉をかけてやった。
『いい話が聞けたな』
「全く、その通りだな」
そうやってニヤニヤと笑っているのは私の手元のモニターに映るフィーシャと、隣に座る大型ヘリの操縦者、アドウェナおじい様だ。
つい先ほど生き残りの海賊たちを、依頼をしてきたと思われる駐屯地の将校へ引き渡し、1本2本…いや3本ぐらい釘を刺された上でようやく帰路につけた。
…この二人、先ほどから楽しそうに笑うばかり。
親子ぐらい年が離れているが、完全に悪友のノリである。
と、言うのも、今回の件は少々"よろしくない"仕事だということを看破したこの二人が、口止め料として報酬の上乗せを要求したのだ。
───そして何もこの笑いは報酬をふんだくったために浮かべているだけではない、というのがまた質が悪い。
「そういえば"古い友人"と会う約束があったんだっけなぁ?どうだったかなぁ、まぁ今から予定をちょちょいと入れるんだが」
『俺もそういえば会う約束のある"古い友人"がいたっけなぁ?これで
フィーシャはモニター越しに、その相変わらずだるそうな目元のまま口端を吊り上げている。
その顔には「楽しみです」と書いてあるかのようだ。
顔を横に向ける。
アドウェナおじい様は悪魔のようないっそ清々しい程の笑みを浮かべている。
その顔には「無茶苦茶楽しみです」と書いてある。
私は思わず大きな溜息を吐き、一応…無駄だと思うけれど忠告はする。
「いいのですか?再三釘を刺されたではないですか」
『浅い浅い。打ち込みが浅すぎたもんで痒くなって抜いちまったよ』
「違いねぇ。それも言われたことはちゃぁんと守るさ。なぁ?」
『そりゃそうだ。な?』
「な?と言われましても…」
そうしてフィーシャとアドウェナおじい様はそれぞれのコクピットに取り付けられた年季の入ったオーディオプレイヤーをぺしっと叩く。
どちらも機種の同じ古い型のもので、かつての彼の団員(とアドウェナおじい様)は全員がこれを持っていたらしい。
彼らに刺す釘に鋭利さが不足していたのか、単に面の皮が分厚すぎたのか…
私はもう一度小さな溜息を吐くと、このことをさっさと頭から追い出して今回の戦闘で消耗した弾薬や推進剤の計算を始める。
彼らは不気味に笑いながらも"古い友人"とやらに連絡を入れた後、ひと段落した私も含めて三人で他愛のない話に興じた。
「おいフィーシャ、そういえば愛機に名前付けたんだって?
『おいリーリカ?』
「すいません」
『言い訳もなしかい…恥ずかしいからやめてくれよ………団長も他のやつらも付けてたしな、俺もそれに
「感慨深いな…そうなるとお前の母国語か?」
『あぁ。ロシア語で───』
二人の傭兵のやり取りに、時たま私が言葉を差し込むような調子で会話が繰り広げられていく。
その三人の声はチャーリー・パーカーの『I've Got Rhythm』の陽気な音楽をBGMに、私たちの住む拠点まで途切れることなく続いていた。
後日、見覚えのある将校が逮捕されたというニュースを見て、再度口端を吊り上げる二人の男がいたとか。
まぁ一人は私の目の前でベーコンエッグを食べているのですけど。
あら、このベーコンいつもより美味しい。
△△△△△△△△△△
「そういえばなのですが」
俺が運転をしている大型トレーラーの中、助手席に座るリーリカが読んでいた革のブックカバーをつけた本を閉じて口を開く。何度も読み返しているらしいが、そんなに気に入ったのだろうか?
ハンドルはそのまま、目線も前に向けたまま俺は彼女に応える。
「どうした?」
「私も釣られて言ってしまっていたのですが、どうして"アーブラウ国防軍"と呼ぶのですか?」
あ、今聞くんだ、と彼女の顔をチラと横目で見た。
微妙な静寂の間を、トレーラー内に流れるピアノの自由な曲調が彩り繋げる。
「…今まで聞いてこなかったから知ってるのかと」
「
「あーそうだよなぁ」
よく考えなくとも不思議だったろう。
何故なら"アーブラウ国防軍"など存在しない。
いや、別にホラー映画的な話をしてるわけじゃなくて、そう名乗る軍隊は
そこらへんの事情を軽く説明することにする。
「では、やはり最近お世話になっているアラスカ駐屯地は本来は…」
「そう、正確には"アラスカ国防軍"だ。今はまだな」
だが俺はアーブラウ国防軍と呼んでいる。
…彼らは約一年後に控えた発足式典を折に公式にアーブラウ国防軍と名乗ることになる。
実態としてはアーブラウのロシアやカナダ、アラスカなどの国に元々あるそれぞれの国防軍が再編成という形で"アーブラウ国防軍"という括りに
何もないところから軍人が出てきたり、ましてやそれで指揮系統がいきなり成立することは難しいしな。
ちなみに暫定だが、駐屯地司令はそのままアラスカ国防軍の国防総長が就任している。
アーブラウ国防総長とアラスカの駐屯地司令の折り合いが悪いという話もそれが原因のようだ。いきなり他国の上司が現れたわけだからな。
「確かに、急造の素人集団では国民も納得がいかないですものね」
「そうそう、もうアーブラウ国防軍の体制自体は出来てて、正式に周知されるまで呼び方が古いままのだけってことだ」
───ただ少々厄介な話なのは、モビルスーツの配備があまりスムーズに進まなかったということらしい。
ギャラルホルンからフレック・グレイズを購入するわけだから、そこらへんを意図的に調整されてる気がしないでもない。
そのせいで最近話題の鉄華団の地球支部がある
加えて本部は各国からの招集があった人員が配属しているという。
聞こえはいいが、今この時期を狙われれば連携不足が響いて来るのは確実だろう。文化や習慣の違いだってあるはずだ、こういう些細なすれ違いはあまり馬鹿にできるものではない。
今はモビルスーツの方はさすがに配備は既に済んでいるが、発足式典までの1年にも満たない
そのためのフォローを任されているのが鉄華団のような奴らや、俺ら傭兵というわけだが。
組織の再編成で落ち着かない軍の穴を埋めるための戦力ということだ。
ちょっと思考が
「…それで、フィーシャもアドウェナおじい様も、既にアーブラウ国防軍と呼んでいたのは結局何故なんですか?」
「発足式典が一つの区切りなだけであって、内部はもう新規"アーブラウ国防軍"の空気だったから、が理由かな。繋がりがある傭兵も、関係者として周知があったからなぁ。まぁ宜しくお願いされてることもあって軍の依頼で最近物騒な仕事が多かったんだよ───違ぇわ、物騒な仕事なのは当たり前だった。俺も
「軍内部の空気に合わせて呼んでいたのですね…私がもうお世話になってる時期のはずですよね?連絡、来てましたか?───ですが、意外に収入になるんですよね…MSアクションスタントとしてやっていけるのでは?」
「来てたさ、直接人を使ってな。出会ったばかりの頃、一度客が来た時あったろう?タイミング的にリーリカに関係があるのかと疑って同席させなかったが、そいつが団長と知り合いの軍の士官でな。再編成後の挨拶というか、体制とか空気とかも聞かされてるのさ。俺しかいなくなっていたことには驚いていたが…───………
リーリカはようやく納得いく答えが貰えたからかこちらに向けていた顔を逸らし、まだ雪の残るどこまでも続きそうな目の前の地平線へと視線を向ける。
彼女は視線をそのままに再度口を開いた。
…最近は彼女も遠慮なく喋ってくれるので俺も機嫌が良かったり。長時間移動も悪くないな。
「しかし、傭兵と軍の関係は思った以上に深いのですね」
「…傭兵は何かと軍と繋がりがなければやってられないからなぁ」
「実感しています。私たちのようなフリーランスであれば尚更」
「立場が違うだけで、軍に所属する兵たちと結局やってることは似たり寄ったりだよ。金を貰ったからといってほいほい別の陣営に入って裏切ったりなどは出来やしないもんさ」
まぁ国同士の戦争なんぞ今は聞きやしないから、場合によってはSAUとかの依頼もあれば受けるけどな。アドウェナじいさんはそもそもSAU出身らしいし。
俺の立場で受けちゃまずい依頼と言えばギャラルホルンからの依頼だろうか。
「まぁリーリカも知っての通り一度受けたんだがな…」
「そのおかげで私はここにいれるのですから感謝しかありませんよ?
「許さないって言われたら今通り過ぎた
「この時期は止めてください。軽車両でも割れますよ、氷」
小っ恥ずかしくて心中を提案してしまった。なんて冗談はいいとして。
あの時期は仕事がなかったのもあるが俺の心の問題もあったからな…
まぁともかく武力は元より、雇用主や同業者からの"信頼"がなければ成り立たないのが傭兵だ。
悪質な者は排除されるというのが実態である。
今回もそうだったが、事前に航路を打合せ、申請したりと軍とはそれなりに密に連携をとる必要がある。
対人交渉の能力だって見られているのだ。
その"過程"と"結果"で信頼を築くことが俺たちにとっては重要になるのである。
「…悪質なものは排除される、ですか?フィーシャ?」
「…
「どれくらいそう思っています?」
「70くらいかな」
「100の内ですか?」
「いや1億」
「おじい様も同じことを言いそうですね…」
リーリカが言うのはこの前の金鉱での海賊討伐の件である。
実はあの採掘施設、アラスカ
というのも、投降した連中から聞き出したのだが、今の技術でスキャンと採掘をした結果、さらに深くに多量の金があることがわかったそうだ。
嫌な予感通りにやはり悪い"大人の事情"だったわけだな。
「"欲の熊鷹 股裂くる"ってな。過ぎた欲は身を滅ぼすのさ」
「見事にあなたとアドウェナおじい様に股を裂かれましたね。海賊も…あの
「これで
人陰のない山奥だということもあって欲が出ちまったんだろう。
だが、バレずにやるためにちまちま少ない人員でやってたのと、それの秘匿を徹底させるための待遇と処罰が厳しいのが仇になった。
その件で例の将校に軍を追われた士官が海賊に堕ち、事情を知る故にこれ幸いと占拠したということらしい。
最低限の戦力しかないことを知っていたから、弱小海賊でもどうにかなる。さぞ美味いカモに見えたことだろう。
将校にとっても何の拍子で
彼としてはかつては顔見知りだったのだから、上手く脅せば多少はこちらの言葉に耳を傾けると思っていればこの結果。
元々交渉に応じなくともある程度採掘すれば早々に放棄する予定だったらしいが、予想以上の速さで俺が現れたわけだ。
「良いカモだったよ」
「まともに正面から戦ってませんからね…」
「それに関しては俺の腕の問題もあるが
思うに、フレック・グレイズはグレイズの
動きながらだと当てるのが難しいレーザー誘導式のミサイルだったり、広範囲の視界を確保できるツインアイだったり。
まぁ言い訳は止めておこう。俺がこいつを使いこなせなきゃ死ぬだけだしな。
さて、海賊の制圧後、後詰めの部隊が遅れてやってきたのだが、それまでに白いスピナ・ロディに乗っていた男に色々話を聞けたわけだ。
俺はコクピットに取り付けていたオーディオプレイヤーから抜き取った録音データを、トレーラーのダッシュボードの上に固定したプレイヤーで再生する。
『───本当だ。間違いない』
『それを裏付けるものはあるのか?』
『ある。軍を追われる時に、いつか一矢報いてやろうと記録した汚職の経歴を保存した媒体が。ここの金鉱のこともデータに入っている』
『あんたも余計な欲を出したもんだ。大人しくメディアにでも突き出せばよかったのにな』
『…』
『ここで捕まるか死ぬかすればそれも無駄になるわけだが───』
『…』
『───そこで、だ。それを俺にデータを預けてみないか?』
『…何?』
『上手くいけば
『それは…いや、どうせ俺に選択肢はない。せいぜい上手く使ってくれ』
『上手く使うとも(報酬の上乗せとか、軍に恩を売るためとかな)』
『…(大丈夫なのか?)』
『安心してくれ。やることはやるさ。信頼が大事な商売なものでね』
『…傭兵、そうだったな』
…というやり取りをした。
ちなみにここはオフレコ部分だ。
聞けばわかると思うが彼が軍を追われた士官その人だったらしい。殺しそびれて良かったよ。
道連れにするつもりであっさり洗いざらい吐いてくれたこともまた良かった。
おかげで例の将校が直々に来る前に色々とよろしくない活動の記録データを回収できたからな。
『───これで満足か、傭兵ども。金の亡者どもめ』
『ええ、ええ。これで十分ですよ』
『…わかっているな?ここで見たものも、聞いたことも、誰にも他言はするな。軍の人間なんてもっての他だ』
『目の前でちゃんと戦闘データも消去したでしょう?約束は守りますよ。信頼が大事な商売なものでね』
『お前たちのことは知ってるぞ…背中を気にしながら生きたくないのならばしっかりと私の言葉を身に刻むんだな』
『ええ。心得ております。だから今後とも私たちをよろしくお願いしますね?』
『木っ端傭兵風情が…』
お、ちょうど流しっぱなしのプレイヤーからこの時の会話が出てきたな。
言われた通り他言はしてないし、戦闘データも見せることもしていない。"古い友人"はちゃんと
俺たちはただ昔話に花を咲かせた後に、無言で骨董品のカセットテープをプレゼントしただけだ。
「会われたという"古いご友人"は軍の?」
「ああ。もう引退してるんだが、
「…アドウェナおじい様も?」
「同じだな、むしろ向こうの方がえげつないだろう。なんせあの年の知り合いと言ったらそりゃぁ、かつてそれなりに高い地位とかにいたお偉いさんだろうよ」
「悪い人たちですね…」
リーリカはそんな俺に対して呆れ顔だ。
だけど反省はしてない。生き残るためだからな。
そしてこれは結果的にそれは彼女のためでもあるのだから。
「…信頼は大事だと言ったろう?今はまだ体制が整いきってないからこそ俺の様な木っ端傭兵でも軍から
「…鉄華団の件ですか?確かに、彼らは軍事顧問になりましたからね」
「
「そう考えれば、ヒーローショーのことは結果的に依頼を受けて良かったと言えますね。まさか軍が関係してるとは思ってもいなかったのですけど」
「………そうだなぁ」
凄まじく複雑である。
信用は大事だ。
だけど、こう…傭兵の
…え?弾薬代がない?
ちなみに今トレーラー内で流れているこのピアノ曲はドミートリイ・ショスタコーヴィチの『24の前奏曲』だ。ショパンのじゃないぞ、でもそれを参考に作曲したらしいと昔聞いた気がする。
この作曲者はリーリカが一時期聴いてた『十月革命』と同じ作曲者だな。
でも彼女は結局The Beatlesとかのポップバンドに落ち着いてしまったんだ…いや、俺も好きだけど。
「…しかし本当にどうしたもんかねぇ…これぇ」
そう言って俺はトレーラのバックミラーから吊り下げられた"
───海賊討伐の前のことだ。安っぽい白が目立つフレック・グレイズをやっとまともに塗装してやれたのだ。パッチワークだとクライアントの心象も悪くなるからな。
で、白は"フレッくん"と被るから灰色に塗り替えてやったのさ!
信頼は大事と言ったが、そう言った手前、
だから少しでもそれに抵抗してやろうとなんとなく向こうが望んでいるであろう色を変えたのだ。無言の抗議というやつだ。
───…なのに今度はアニメで新キャラの仲間として、このカラーリングで登場しやがった。
『フレッくんを時に助け、時に立ちはだかる正体不明の男(?)グレイフレッくんと呼ばれる彼は果たして敵か味方か!?』
紹介文の上には立ち絵姿と「てきでもみかたでもない…」という台詞がかわいらしいフォントで書かれていたのをリーリカから見せられた時の俺の心よ。
逃がしてくれねぇ。
ちなみにそいつの本名(?)は"ヴェーチェル"らしい。
…そうロシア語だ。
俺が愛機に付けた名前も"ヴェーチェル"なんだがなぁ?
…
あの
ついでにいらんこと喋りやがったな!?
じゃぁ
…"フィーシャ"…?…え、嘘…だろ………?
「フィーシャ?前ちゃんと見てくださいね?スーパーヒーロー(と同名)が交通事故など起こしてはいけませんよ」
「リーリカおまえ…………………………」
「………いえ、その…えっと、ほら、この"手乗りフレッくん"良いと思いません?」
リーリカが俺の視線から逃れる様に取り出したのは名前通り、前足をだらっと放り出した姿勢で座る手乗りサイズのフレッくんだった。
彼女は気まずい空気の中、苦肉の策で頭頂部のボタンを押す。
《あしたはあしたの
余計に気まずくなった車内では、ピアノの音色だけが必死に死んだ空気を繋ぎ止めようとその曲調を激しくしていくのだった。
…キャラクター使用料だけでも取るからな。
■ヴェーチェル(フレック・グレイズ改・寒冷地仕様)
亡き団長がその信条からかMSに名前を付けていたことに倣って名付けられた。
意味はロシア語で「風」
灰色に塗装し、継ぎ接ぎも綺麗に直した。
ゲイレール時代に使用していた破損を免れた110mmライフルを装備している。
■アーブラウ国防軍
アーブラウ加盟の各国の国防軍を再編成、名称を変更した軍隊の総称。
本編では素人集団みたいな扱いだったが、実際にそうなるかと言われると疑問があったので、今作では無理やり理由付けされている。
■グレイフレッくん
「踏み込め!フレッくん!」の9話で登場した新キャラクター。
本名を"ヴェーチェル"というらしい。
とある傭兵から抗議文が来たが無視された。
サイボーグ忍者ではない。(わかる人にはわかるネタ)
■金鉱海賊の討伐を依頼した将校
自分の金鉱(違法)を海賊に占拠されて速攻で傭兵に依頼した男。
"よろしくない仕事"と看破した傭兵二名と、それを口止めする将校のアウトな会話が録音されたカセットテープはフィーシャが、海賊に堕ちた士官が持っていた不正の記録はアドウェナがそれぞれ持ち帰る。
それは"古い友人"という名の軍の
報酬の上乗せを要求された上にこれである。
どうなったかは昨日のニュースを確認してくれ。
この世界でミサイルの扱いがあまりわからなかったのですが、フレック・グレイズの頭部はミサイルが積んであるそうです。
ならばと、電波誘導ミサイルはエイハブウェーブに乱されそうなので光波誘導なら大丈夫と思い、レーザー誘導式の
簡単に言えば「レーザー照準を当ててる間は誘導できるミサイル」という認識くらいで。
より詳細な資料を探せばきっと設定があるのでしょうが、私は見つけられなかったのでご容赦を。