メイン小説を完結させたので燃え尽き症候群…になる間もなく仕事に追われていました。(進行形)
他にも新しい構想が浮かんでしまったのも原因ですが…
「───ガランと言えば、数年前に活動を始めた傭兵か」
「ご存じで?」
僅かな衣擦れの音が、手入れを怠っていたのか黄ばんだカーテンに囲まれた狭い空間から聞こえる。
その音は二人分。
「ああ…そりゃぁ、
「恐らくは」
「面の皮が厚いことで…」
俺は袖も
「一度会ってみたかったから丁度いい。話を受ける気はないがな」
「拠点を差し出すことになりそうですものね」
うちは部屋もモビルスーツ用の倉庫も空いてるしな。
白いYシャツの袖のボタンを留め、最後に鏡の前で黒いネクタイを締める。
ややバランスが悪い気もするが…まぁ見えないからいいだろう。
「そういう事。それに、あいつらに祟られちまうぜ、本当にな」
「………」
リーリカは俺の呟きに何も返さない。
俺がこう言う"理由"を既に話してあるから安易に口を挟みづらいんだろうなぁ。
普段は雑に分けている髪の毛もポマードで丁寧に整え、無造作に長い髪の毛を後ろで
せっかくだから今日に合わせて切ろうと思ったが、リーリカに「勿体ないですね…」なんて言われたもんだからやめた。アドウェナじいさんもそこらへんは適当でいいって言うしな。
あぁ、今日は事あるごとに刈り取られる無精髭を残している。今回のような"バイト"であれば似合うだろうとお許しが出たからだ。俺の自由意思よ、戻ってこい。
準備が終わりカーテンを開けて布に囲まれた個室から外へ出る…っと、ちょうどリーリカも終わったようだ。女性は準備に時間がかかると言った奴は一体誰だったのか。彼女があまりに早いだけなのは、わかってるが。
彼女も俺と同じく袖のないスーツを着てロングネクタイを締めているが、俺と違って色の濃さは違えど、どちらも彼女のお気に入りの色の
髪型は普段と同じポニーテールだが、いつも前に垂らしている髪の毛(それ鬱陶しくないか?といつも思っていることは内緒だ)は全て左右に流していた。
それとフチなし眼鏡。
その服装は彼女の隙の無いような雰囲気にもしっかりフィットしており、それどころか堂に入ったような感覚すら覚える。かつて、こんな仕事をしていたのだろうか?
「よく似合ってる」
「あなたも」
俺たちは仕事の確認をしながら、肩を並べて暗い廊下を進む。
奥にあるドア…今見えている反対側に貼り付けられた真鍮製のプレートに「Staff only」と書かれているであろうドアを潜った。
そこは古めかしい雰囲気を漂わす広間。
スタッフの通用口から出れば、まっすぐ伸びたカウンターが、吊り下げられたランプに慎ましく照らされているのが目に入る。一個だけ形が違うのはうちの
静かな雰囲気を晒しているがそう見えるのは今だけで、一度人が入れば奥で沈黙しているピアノが、持ち出されたサックスたちと共にあたりを楽しいジャズィーな音色で包み込むだろう。
内装の装飾のめに表面だけレンガを積んだ壁には、仰々しい額縁に挟みこまれた古い写真が所狭しと飾られており、それがかつてここで演奏をしたミュージシャンたちの顔だということを知らない者はいない。
その下にはもう動くことが無いジュークボックスがこの場の雰囲気づくりのためだけに突っ立ていた。
さらには背の低い本棚が並べられており、中にはちゃんとハードカバーの紙製の本が収められている。ここに通っている常連が持ち寄って集められたからなのかどれもボロボロで言語も様々。
見事に骨董品ばかり、といった様相だった。
───SAU北部、アメリカ合衆国モンタナ州の町"スウィートグラス"
羊飼いの映画のロケ地になったスウィートグラス郡ではなくツール郡の中の町の方だ。こう言っても分かる奴なんざアドウェナじいさんぐらいだが。
州間高速道路15号線が真横を通る町で、ほぼ同じ町と言っていいような近さで"カッツ"というカナダの町が隣接している。そうここはまさに国境のが目と鼻の先にある町だ。
そして俺たちがいるこの場所はアドウェナじいさんが持つジャズバー"
何の映画か?
『
俳優たちのシェイカーやグラスを使ったパフォーマンスである"フレアバーテンディング"に憧れて皆で練習したもんだ。公開直後バーテンダー養成学校への申込が殺到したという話があるのもよくわかる。
あぁでも、主演はこの映画のこと好きじゃなかったみたいだけどな。どうでもいい蛇足か。
───そう、俺たちは今、ジャズバーでバイトをしているのだ。
「ついにモビルスーツすら使わなくなったな………」
「では、いっそもうここで働いては?」
「…二人でなら悪くないと思い始めた自分がいることに戸惑いを隠せねぇよ」
今度は俺の呟きを逃さずにリーリカが提案。
酒場で働きながらモビルスーツでアクションスタント…わけわからんな。
そして頼むから酒瓶と一緒にに"フレッくん"ぬいぐるみを置くんじゃぁない。おぅいじいさん。その手に持ってる
───"バイト"なんて言ったものの、そもそも別の目的があってここに来たのだ。
ここを俺が会合に使いたいって言ったら、じいさんにバーテンスーツ投げ渡されたせいでこうなっただけだ。働く事が条件と言われちゃな。
チラリと隣でシェーカーを気取ってシェイクの練習を一生懸命するリーリカを見やる。
既に数日経つが、流石にまだ少々ぎこちない。肩に力が入っており、眉間に皺を寄せながらシェイクシェイク。身体と共に。そう特に───
「悪くないな」
「…え?なんて言いました?」
「まだ肩に力が入ってるって言った」
邪心を振り払う。
しかし振りにくいのも仕方のないことで、今リーリカが持っているシェーカーは"ボストンシェーカー"と呼ばれる一般的なシェイカーよりも容量が大きいものだ。その分、シェーク時に空気をたくさん含ませることができるので、フルーツを使ったカクテルであれば香りが際立ちまろやかな味に出来る。
彼女は要領が良いのでもう少し時間があればすぐ慣れることだろう。
「しかしイメージがないですね」
「何がだ?」
「フィーシャが"フレアバーテティング"ができるということがですよ」
「やっぱりそう思うか」
俺も自覚はある。
彼女が言うには、ダウナーの雰囲気を出しながらもストイックに(過大評価な気もするが)生きている俺に対して、曲芸の様なことを人前で披露するイメージが湧きづらいとのことだ。
まさに今、ぽんぽんボトルとグラスを回しながら飛ばしてはキャッチを繰り返してるわけだが。
「古い映画に憧れたそのままの勢いで、団員の皆で何故かベストを尽くしてしまったのもあるがな」
「全員出来たんですか」
「
「ドルト出身の…額縁を贈ってくれたという?」
俺の部屋に置いてあった写真の入った額縁を思い出すように彼女は言う。
「そうそう。ま、そもそも"情報収集"の一環としてローテーションでバイトさせられていたのはある。じいさんも団長も、フレアバーテンダーを入れるのに乗り気だったし、俺たちも軽いノリでやっちまったんだよ」
「それで好評だったと…しかしこのような酒場で"情報収集"とは、アドウェナおじい様の交友関係の広さを思い知らされたようです」
「まさに敵に回したくない人間の一人だよ、知っての通りな」
リーリカはこの間の将校の告発の件を思い出してか神妙に頷いた。
ここは特に傭兵やら軍人やらがたむろする酒場だ。
アドウェナじいさんという存在は、宇宙に出ないのであれば傭兵からしてみれば信頼できる輸送ヘリのパイロットだ。傭兵の知り合いは多い。
加えて本人はあまり語らないが、かつての従軍経験から何かと古い軍の友人も多い。
そういったじいさんの世話になった人間がこの酒場に集まってくるのだ。かく言う団長もその一人だったらしい。
だからこそ、ここは比較的簡単にリスクも少なく情報を集められる穴場なのだ。
当然、行き過ぎた行為をした者は
集まってる人間が人間だからな。相当度胸がなきゃ問題も起こせないだろうけど。
そんでもってここで"話"を付けることもままある。
それは傭兵同士の協定であったり、軍が使い走れる傭兵を見つけるためであったりだ。
グレーゾーンはあってもそれよりやばい仕事が出てこない(出せないが正しい)から利用者も方も比較的安心して話を進められるわけだ。
だからさっき言ったように俺も"話"の
「腕が鈍ってなかったのが救いかねぇ…」
そんな呟きもサックスと笑い声の音に掻き消されて消える。
日も暮れ、ようやく春に入ったというのに外は吹雪いていた。それでもここは昔と変わらず人に溢れており…思わず、ここで飲んだ
誰かがリクエストした『
あぁこれも映画で使われていたっけなぁ。ここでは昔から変わらず定番の曲だ。これを聞けば映画を思い出して宇宙旅行をしたくなる。いつかリーリカと、どこかにふらっと行くのもいいかもしれない…
20〜30人は入れる程度の大きさのこのバーは既にそれなりの人数が入り込んでおり、リーリカも忙しそうに狭い机の間を歩き回っている。
今彼女に手を出そうとした輩は、カウンターで老齢な軍人と話をするアドウェナじいさんが眼力で黙らせた。俺もガンを飛ばしたがいつも目つきがよろしいとは言えないせいでいつも通りにしか見られない。つまりなんの迫力もなかった…けどな、顔は覚えたぞ。
その俺はと言うと、じいさんから少し離れたカウンターでボトルをぶん投げてる最中だ。
シェイカーを
回転していたボトルは
大事なのは緩急だ。
"
そんなことを言っていた亡き団長を思い出す。
だから覚える気のある団員は皆バラバラの『表現』をして、客だけではなく団員やアドウェナじいさんをも楽しませていたものだ。
何にでも"流儀"を語りたがる団長は、言うだけあって一流のフレアバーテンダーでもあったのだ。何よりカクテルを絶妙なバランスで提供し、客と俺たちの舌を喜ばせていた。
実のところ戦闘においてリズムを重視する
───しかしこれが"自己表現"だというならば、今の俺はどう見えているのだろうか?
一度落ち込むところまで行ったが、今はそれなりに吹っ切れて安定しているとは思うのだが…
そういうのに鋭そうなじいさんをチラりと横目で見れば、何故か視線が合った。
ん?と一瞬呆ける暇もなく、じいさんが空のグラスを持ってアンダースローの構えをしている。
(───あぁあれか)
意図を理解した俺は、自分が投げ、落ちてきたボトルをキャッチする。同時にじいさんがニヤリと笑いグラスを俺に向かって放り投げる。
俺はキャッチしたボトルと手に持っていたシェイカーを再度宙に放り投げてじいさんのグラスをキャッチ、シェイカーと合わせてジャグリングする。加えてその途中でもう一つのシェイカーをカウンターから掠め取るように弾いて飛ばし、宙を円を描いて舞うステンレスとガラスの流れに新たに洋銀を加わえてやる。
その息の合った突発的なパフォーマンスに対してカウンターやテーブル席から覗いていた客からと思われる口笛。小さな拍手。
ちょうどリーリカも見ていたらしく、思わず足を止めてこっちを見ていたのを確認。
じいさんはどうやら彼女に対する俺の"見せ場"を作ってくれたらしい。相変わらずそういう気遣いは嬉しいのだが、心臓に悪い。
入りたての頃は反応できずに目の前をグラスがただ通過していって…俺の隣でフレアをしているバルがキャッチしてジャグリングをかましていたっけなぁ。あいつも上手かったというか、打ち込み具合は断トツだった。
───Fleckmansはモビルスーツを5機も保有したそれなりの規模の傭兵団だ。
伝手もあったため仕事に困ることもなかったが、必ず5機全てが出払うわけではない。輸送方法やその費用の問題から全員が現場に行けないことがほとんどだ。
そういった残留組が一人、ないしは二人でここで"バイト"をして常連から"お話"を伺うのだ。
団長がわざわざ他のメンバーが戦闘中にも関わらず派遣させる程に、ここで集められる情報は侮れない。
"アドウェナの元で働いている人間"という肩書きだけで相手の物腰もまるで変わる。
『比較的簡単にリスクも少なく情報を集められる穴場』とは言ったが、その信頼あってのものだ。
俺含め他の団員も常連からは顔を覚えられていたし、会話は弾む。…ほとんどが昔話だったがその合間に有益な情報を話してくれたりもする。
上手く聞き出せるかは上手く機嫌が取れるか次第。そういう意味ではフレアバーテティングのパフォーマンスも無関係ではなかったのだ。ご機嫌取りさ。
「ブランドンのやつは残念だったなぁフィー坊。だがしばらく見ないと思ったら美人な嬢ちゃん連れてくるたぁいけねぇよ」
「そういうことなんだろう?コレだろ?コレ」
カウンターに座る顔の傷が目立つ老人が小指を立てる。隣の禿頭の老人も同様に。
「いえ、まだソレですね」
「でもアレはもうしたんだろう?」
懲りずにOKサインをしている二人組。どちらもイギリス出身だからそのジャスチャーの意味は色々とNGだ。
「いいえまだ」
「うっそだろおめぇそりゃないぜ。俺らだったら秒でアレだぜ」
「あたりめぇよ。明日も分からんって教訓を得たんだからアレしてコレになったらアアすればいいんだよ」
「いやどれですか」
「だからぁよぉ、嬢ちゃんの下「口を慎んでくださいおっさんども」
そうやって古い常連から生前の団長の昔話だったり雑談をしていれば、また客が一人。
それを見て俺は
肩幅のある偉丈夫で、深緑色のパンツと革ジャンを着た男だ。防寒としてか革製のグローブを付けている。黒髪をセンター分けし、整えられたフル・ビアードの髭を生やした三白眼。
日が落ちたばかりとは言え暗くなっているにも関わらず、空軍パイロットの印象が強いアビエイターモデルのサングラスをかけており、コートに張り付いた雪を落としながらバーを軽く見渡すように視線を巡らせている。
すぐさまリーリカが出迎え、カウンターの席へと案内する。
男の視線はサングラスにより隠されているが、心なしか彼女へ向けている気がしないでもない。尻を見るなこら。
擦り切れた木製の床の上を硬いブーツの音を立てながら、間もなく男は俺の目の前の席へ座り、そこでグローブとサングラスを外し、しばらく体を温めた後にその男は口を開いた。
「───中々にいい場所だ。別にそこまで長生きなわけでもないが、古い時代を思い出すようだ」
初めて来たかのような物言い。
男は片肘をカウンターに乗せ、やや乗り出すように言う。興味が引かれた子供の様な、そんな人好きのするような目を俺に向けて。
「マスターの拘りと、常連の方々の協力があったからこそですよ」
「なる程。確かに、俺のようなおっさんを指して若造と言えるようなご老人もよく見える」
「何かとマスターの
「ここのマスターは軍にでも入っていたのか?いかつい連中の多いこと多いこと」
男は何気ない所作でぐるりと室内を見渡し、ここに集う人種を察して肩をすくめる。
「さぁ?詳しく聞けたことは無いですが、アフリカユニオンの方で活躍したと思っていますよ」
「それはまた手広いな?」
「ええ、手広いようで」
一瞬、目が合う。
「お飲み物は?」
「任せていいか?酒の味が分かるような輩じゃなくてな」
「では"シーザー"を…貝類にアレルギーは?」
「ない。それで頼む」
本人が言ったように酒は飲めればいいタイプのようで、メニューに目を通すことなく俺に任せた後は片肘をカウンターに付いたままステージの方へ振り返る。酒を楽しめなくともジャズは楽しめるようだ。
すぐさま俺はカクテルの準備を始める。この男に"フレア"を見せる必要はない。
さっそく棚からグラスを取り出し、準備を始める。
まずグラスを上下反対にして、皿に張ったレモン汁の中にグラスのフチをそっと浸す。そしてレモン汁で湿った箇所に同じように塩胡椒を付けて定着させ、グラスを持った手首を叩いて余分な塩胡椒をトンと落とした。
そのグラスに氷を入れ、ウォッカと"クラマトジュース"を注ぎ混ぜ、さらに適量のタバスコとウスターソースを加えて混ぜ合わせる。
今作っているこのカクテルはセロリの茎を大胆に差し込むものもあるが、ここではショットグラスに野菜スティックと共に刺して提供している。お好みで、と言う奴だ。
最後に小さなレモンとライムのスライスをフチに引っ掛けて彩り完成。
「"ブラッディ・シーザー"です」
「………」
『ブラッディ・シーザー』
カナディアンにも人気で、二日酔い防止としてもよく飲まれるカクテルだ。
"ブラッディ・メアリー"との違いは、トマトジュースではなくクラマトジュースという、ハマグリのエキスとミックスしたトマトジュースで酒を割ったという点。
カナダの定番カクテルと言えばこれだろう。
目の前の男に
ほぅ、っと感心したように男はグラスの赤いアルコールを眺めた。
「いい腕だな。久しぶりに飲んだが、俺が飲んだ中でも1、2位を争う程だ」
さっきの味が分からん設定はどこいった。
「恐縮です。…ですが、それなりに自信がありましたので"一番"になれるように精進しなくてはいけませんね。良ければあなたの"一番"をどこで飲んだか教えて頂いても?」
「ここだよ」
キンっと、どこかでグラスがぶつかり合う音が聞こえた。
ちょうど演奏との間なのか、辺りが妙に静かに思える。カウンターの俺たちの話声すら周りの客に聞こえてしまいそうだった。
リーリカが木製の床を歩き回る靴音が大きい。
聞き取れはしないが、近くから小さな
───どうもおちょくられている。
「あなたはそれを作ったのが
ステージの方から「ワン・ツー・スリー」と小さく聞こえたと思えば、『
これも映画の挿入歌で、美しい響きと裏腹に孤独を酒で誤魔化す日々を謳った曲のはずだ。
「…あぁ。マスターの"シーザー"でしょうか?そうであれば納得せざるを得ないですね。それにしても、以前に来たことがあったのですね。それに同じシーザーとは面白い
「全くだな。いやしかし、来たのは一年程前だから誰が作ったか実際ははっきり覚えてないんだ…そこのマスターぐらいの年齢だったのは覚えているな…誰だったか」
男はグラスに口を付け、味わうようにゆっくり飲む。
「いえいえ、恐らくマスターでしょうね。シーザーに限れば私より上手く作れる者はここにはそういないので───」
「あぁ、思い出した!ブランドンの
《孤独な夜が蘇える》と、バリトンボイスのヴォーカルが口ずさんだ。
その歌詞の合間に、二人分のグラスがテーブルに置かれる音が聞こえた気がした。そう、さっきまで俺が話していた二人組あたりから。
…しかしそれはまるでこの男───"ガラン・モッサ"と団長と親しかったかのような言い方だ。
傭兵仲間?だが、
単純に古い友人か、確実な答えは出せない。
だが恐らく俺でなくても団長の過去を知っていれば一つだけ思い当たることがある。そのせいで僅かに、眉間に皺が寄った。
あらゆる可能性の中で、何故かあまり考えたくない可能性が、頭の中を
団長は元
ガランは、その野性味溢れた顔の眉尻が下がるしぐさをする。それはどこか悲しみを表す時の表情に見える。
それも一瞬で、今までの気さくな態度を改めて声のトーンを落とし、真剣な顔になって語りかけて来やがるのだ。
「俺が何でお前に声を掛けたかを、知りたいんだろう?」
───"前座"は終わりにして欲しいらしい。
相手の表情を見逃さないように、手元は"シーザー"の後片付けを続ける。
亡き
これは俺が"話"を受けるつもりがないのもバレてそうだなと、ついネガティブに考えてしまう。
───正直、この男に関わらないで済むならばもうそれで良かった…会うことを選んだのは俺なんだから今更だが…
この様子ならここで話す意味はもうないだろう。
相手はこちらの返事を待つばかり。ここでは先程の思わせぶりな言葉の意味を聞き出せなさそうだ。
…それに、わざわざ協力を申し出てくれた常連たちを刺激させることもない。
一応の収穫はあったが、
俺は顎で店内奥の小部屋のドアを指し、ガランを連れてそこへ向かう。
途中すれ違ったリーリカに、人手が減って忙しくなってしまうことを詫びてから、ドアを潜った。
彼女の心配そうな視線を受けて、少しだけ肩の力を抜けた気がする。
部屋の中はさっきの広間とは趣がまた違う。近代的な装いをしており、気取るつもりが全くない。
それもそのはずで、ここは軍の人間や傭兵たちが話を付ける時に使う防音の小部屋だ。ドアを閉めれば広間の音楽などもう聞こえやしない。
テーブルやカウンターで話がある程度成立しそうと判断すれば、こちらでより詳細に詰める。そういう流れが多い。
なんならここで契約してしまう場合すらある。それでいいのか軍属。
ちなみに傭兵同士であれば大抵はテーブルで済ませる。そんなもんだ。
だから今回は特別だ。
「さて、"お話"を始めようか?」
席に着くなりガランは目の奥を光らせて言った。
あーこの目は見たことある。悪戯好きな子供のように無邪気に見えて、実際はこっちを揺さぶる算段を立てている時のやつに似ている。
さっきの、こちらが気になる情報の出し方といい、主導権は簡単に渡してもらえそうにない。
それを忌々しく思いつつも…それが手の平の上だったとしても、少しでもガランの情報を引き出すために"お話"を始めた。
こいつは団長を、
「まずはっきりさせようか。ブランドンを、お前たちを殺ったのは俺だ」
「…まずは自己紹介をしようぜ」
顔を引きつらせながらもこの返しができたことを誰か褒めてくれ。
あーやっぱ会わなけりゃよかった。
聞こえるはずもない褒め言葉を求めて耳を澄ましても、壁一枚挟んだ広間の楽し気な音楽すら、やはり何も聞こえては来なかった。
改めてお待たせしました。忙しい時期なのでペースは杜撰ですがお付き合いください。
やり取りの解説は次回誰かが喋ってくれますので、なんかそれっぽいこと言い合ってるとだけ思ってくれれば。
というかモビルスーツどこいった。
■映画と音楽について
『Cocktail』:フレアバーテンダーの映画。これもトム・クルーなんちゃらさん主演。
『Fly me to the Moon』:老人が宇宙へぶっ飛ぶ映画の挿入歌。
『Days of Wine and Roses』:酒に溺れていくカップルの悲劇を描いたドラマとそのテーマ曲の名前。
■フレッくんのぬいぐるみ
大好評発売中!ど畜生!今回のモビルスーツ成分はこれだけ!
■ガラン ・モッサ
最近人集めをしている傭兵。
亡き団長であるブランドンと交友があったようなそぶりを見せている。