12月1日(月)
季節は秋から冬へと本格的に変わっていた。雪が降ったりは今のところしていないが、今年もなんだかんだで降りそうではあった。
天「さっむ」
そして俺は布団から出られずにいた。期末考査はちょうど数日前に終わり、赤点は無事に回避した。また勉強会で乙和さんが泣いていたが()。でも仕方ない、ライブの為だ。普通なら陽葉学園でクリスマスライブをやるらしいが、我らがPhoton Maidenは一味違う。
そう、クリスマスの為に超大きいハコを押さえたのだ。ドヤ、俺すごいやろ?収容人数はなんと三万人。東京ドームには及ばないが、夏の横浜アリーナよりもデカい規模だ。
チケットも即完売したし、これは完全に勝った。Photon Maidenの時代が来たのだ。もうこの事実だけでも嬉しい。
月「おっはよー。ご飯食べよー」
天「あぁ」
が、月が部屋に入ってきたので、俺の喜びは一気に冷えた。無感情に応えて、俺は一階へと降りた。
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頭をボリボリと掻きながらリビングに入ると、月ともう一人誰かがいた。
咲姫「おはよう、天くん」
天「あぁ、咲姫。おはよう」
朝早くから結構なことで。制服を着込んでテーブルの前に静かに座っていた。俺はその隣にお邪魔する。
天「外寒かっただろ?大丈夫か」
咲姫「うん。それにここ、あったかいから」
リビング内はエアコンが効いており、暖かい風が部屋中に充満していた。起きたばかりの冷えた身体にはとてもありがたい。
咲姫「身体、冷たい•••」
ぺた、と咲姫の手が俺の腕に触れる。
天「さっむい部屋の中で寝てたからな•••冷えてるんだよ」
咲姫「そうなんだ••••••」
今度はぎゅっ、と俺の手を握った。そしてこちらに目を向けてくる。
咲姫「どう•••?あったかい?」
天「あぁ。ありがとな」
空いているもう片方の手で咲姫の頭を撫でる。途端に咲姫は目を閉じて撫でられる頭に意識を向けていた。
咲姫「えへへ•••」
なんだか嬉しそうだった。そうやって素直に喜んでもらえるのはこちらとしてもなんだかありがたい。
月「朝からおアツいねぇ〜、冬なのに火傷しちゃいそうだよ」
月は俺と自分の分の朝食を置いた。どうやら咲姫は予め飯を食ってから来ていたようだ。
天•月「いただきます」
手を合わせてから食事を始める。朝からそんな詰め込む気もないので、軽く済ませる。
咲姫「美味しい?」
天「あぁ、美味いぞ」
月「作ったの私だからね?一応言っておくけど」
そんな事はぶっちゃけどうでもいい。テレビから流れるニュースを聞き流しながら飯を食べ続ける。
月「あっ!お兄ちゃんお兄ちゃん!Photon Maidenが出てるよ!」
天「は?」
咲姫「え?」
月の言葉に反応してすぐに俺と咲姫はテレビに目を向ける。するとテレビにはPhoton Maidenのメンバーの姿が映っていた。クリスマスライブの告知らしい。
月「クリスマスライブやるんですか!?お兄ちゃん仕事でいないから一人で寂しく過ごすつもりでしたけど、行きたいです!」
咲姫「じゃあ、関係者席は月ちゃんで埋める•••?」
天「月が行きたいならそれでいいだろう。どうせ枠はいくらでもある」
大規模の会場故に関係者席の枠はいくつか確保されている。月一人入るくらい造作のない事だろう。
月「わーいやったやったー!私ライブとか行くの久しぶりなんだよー!」
興奮のあまりついには踊り始める我が妹。恥ずかしいからやめてくれ。
咲姫「月ちゃん、楽しそう••••••」
そしてそれを我が子を見るかのように、咲姫は慈愛に溢れた瞳で月を眺めていた。俺はふっ、と笑って、また咲姫の頭に手を置く。
天「楽しみなのは、お前もだろ?」
咲姫「•••••••••うんっ」
返ってきた声は、僅かにだが弾んでいた。
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家を出ると、冷たい風が防寒着を貫通して襲いかかってきた。ネックウォーマーを巻いているのはいいが、それでもかなり寒い。
天「冷えるなおい•••」
咲姫「私は平気」
そういやこいつ雪国出身だったわ。通りで平気そうなわけだ。手袋越しとはいえ、俺たちは手を握る。
天「手袋あるとあんまりわからんな•••」
しかも俺が着けてる手袋はバリバリ革製だ。余計にわかりづらい。
咲姫「繋ぐ手だけ手袋外す?」
天「お前は良くても俺が死ぬ」
こちとらガキの頃からここで育ってんだ。普段からさっむいところで育ってるキミと一緒にしないで貰いたい。
天「はぁー」
大きく息を吐くと、白い霧のようにそれは口から出てくる。
天「白い息まで出るな•••これは今年も降りそうだな」
今年も今年でホワイトクリスマスになりそうな気がしてきた。それはそれで悪くないしむしろ良い。
咲姫「クリスマスは二人っきりで過ごしたかった••••••」
天「悪いな、ライブ入れたからそれどころじゃなくなって」
少し悲しそうな表情をしたが、すぐにそれは戻る。代わりに、俺の手を握る力が強くなった。
咲姫「じゃあ、イブ。イブは一緒に過ごしたい」
天「•••••••••あぁ、わかった」
ライブ前日だが、それくらいはいいだろう。俺は軽く頷いた。
天「ライブが終わった後でも、一緒にいられるさ」
咲姫「••••••うん」
腕に、咲姫の身体がぶつかった。そっちに目を向けると、彼女は微笑みながら腕に抱きついていた。
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学園に着くと、同じクラスなのもあってずっと咲姫と話し込んでいた。そのいつもの光景は、クラスメイトからすれば当たり前であり、いい見せ物になっていた。
女子生徒A「最近出雲さん神山くんと話してばっかりだね••••••」
女子生徒B「恋人同士だから仕方ないよ•••神山くんと話してる時の出雲さん、すごく幸せそうだし」
女子生徒C「でもいいなぁ。私も神山くんにあんな優しい顔で話しかけてもらいたいなぁ」
女子生徒A「えっ!?あんたもしかして神山くんの事好きだったの!?」
女子生徒C「う、うん•••中等部の頃からずっと••••••」
なんか、とんでもない事実が聞こえてきて俺大困惑してるんだが。あんな冷めてた俺のどこがいいのか逆に聞きたい。
咲姫「モテモテ•••?」
天「いや、それはない」
決してモテてはいない。俺は即座に否定した。
咲姫「天くんは私だけのものだから•••」
天「変に独占欲働かせるなよ」
しかもここ学校だし、そういう事言われるのは普通に恥ずかしい。せめて二人きりの時に頼む。
?「咲姫ちゃーん!いる〜?」
教室の外から元気そうな女の子の声が聞こえ、咲姫は振り向く。
咲姫「りんくさん•••?」
天「え、誰」
リンク••••••?ハ◯ラルの勇者か•••?退魔の剣持ってガ◯ンドロフと戦うのかな。
咲姫「ゲームの方じゃないよ••••••」
天「わかってる。少しふざけただけだ。んで、誰なんだ?」
咲姫「最近ウチに転校してきた子。今は『Happy Around!』っていうユニットを組んで活動してる」
天「最近来た人か•••なら知らねぇわけだ」
しかもそのりんくとかいう人こっちに向かってきやがった。
りんく「ねぇねぇ何やってるの?あれ?もしかして、この人って咲姫ちゃんが言ってた」
咲姫「天くん。私の彼氏」
天「神山天です。よろしくお願いします。えっと•••すみません、名前しかわからないので苗字を教えていただければ」
りんく「愛本りんく!りんくでいいよー。よろしくね、天くん!」
コミュニケーション能力の鬼かなこの人。多分誰とでも仲良くなれる一種の才能を持っているな。
りんく「Photon Maidenのマネージャーやってるんだってね!すごいなぁ、あんなに大きな会場でライブすることができるなんて」
天「これも全部、Photon Maidenの実力の賜物です」
俺は誇らしげに頷く。俺の力なんて微々たるもの。全ては咲姫をはじめとしたPhoton Maidenのメンバーの才能や努力によって培った能力によるものだ。
咲姫「言った通り、自分の手柄にしようとしないでしょ?」
天「なんつー話してんのお前!?」
絶対余計なことまで吹き込んでるだろ!?なんだかんだで咲姫が一番危ない存在なのかもしれないと、少し怖くなってきた。
りんく「咲姫ちゃんからはカッコよくてすごく頼りになる人だって聞いてるよ!」
天「••••••それだけだよな?咲姫」
咲姫「うん、大体はそれくらい」
天「大体ってお前•••」
詳しく言わない辺り何か隠してそうだ。少し探りを入れたいが、そこまでやる気力がなかった。
咲姫「どうかした?」
天「いんや•••何でもね」
疲れそうだったから、俺はこれ以上考えるのをやめた。後は咲姫とりんくが教師がやってくるまで話を続けている姿をとにかく眺めていた。
それじゃあ僕は筋トレしてきますので•••あ、後先日追加された暁(Fruits MIX)、キッチリPFCしてきました!