昨日の校内ライブ効果はかなり効いたようで、一日経ったのにまだライブの話で持ちきりになっていた。
女子生徒A「出雲さんすっごくカッコよかったよ!」
咲姫「は、はい•••ありがとうございます••••••」
女子生徒B「すごいよねー。それに衣装も可愛いしカッコいいとか最高じゃん!しかも光ってたし!」
女子生徒C「また校内ライブやってね出雲さん!もちろんちゃんとしたライブにもいずれ参加するから!!」
咲姫「え、えっと••••••ありがとうございます••••••」
咲姫はずっと囲まれっぱなしで、困惑しながらも対応に専念していた。それを俺は遠目から眺める。
天「人気者だなマジで」
月の影響をモロ受けてしまったのか、意地の悪い笑みを浮かべてしまう。
あわあわしている彼女の姿は、見ていて楽しかった。
焼野原「悪い顔してるぞ」
天「おっと、失礼失礼」
焼野原くんに指摘されて、俺はなんとか真顔に戻す。
そしてもう一度咲姫を囲む集団に目を向けると、咲姫本人が、こちらに目を向けていた。
天「ん?なんだ」
焼野原「助け求めてんじゃね?」
そうなのだろうか?焼野原くんの言葉に従い、助けに行こうと腰を上げた瞬間ーー、
ギュルルルルルルル••••••!!
天「•••待って唐突に漏れそうになってきた••••••」
焼野原「•••は?冗談じゃなく?」
天「あ、ダメだこれ。直行コースだわ」
俺はダッシュで教室を飛び出して男子トイレに駆け込んだ。
なんとかズボンの中でリバースする事はなく、平和的に致す事に成功したという。
天「はースッキリしたー」
お腹をさすりながら戻ってくると、まだ咲姫はおしくらまんじゅう状態になっていた。
周りも周りでよく飽きないな、と感心すらしてしまう。
咲姫「天くんっ••••••」
天「おっと•••」
生徒たちを抜けて出てきた咲姫が俺に抱きついた。なんか少し怯えてる様子だったが大丈夫なのだろうか••••••。
天「あー•••変な事訊いたりはしてないよな?」
女子生徒A「あはは•••多分みんなで一斉に質問を続けたのが原因かな••••••」
天「いや何やってんだよ•••普通に捌き切れなくてパンクしちまってんじゃん」
未だに抱きついたまま胸に顔を埋めている咲姫の頭を撫でながら呆れた顔になる。
天「こっちもこっちで今忙しい時期だから、あまり担当の心労を増やすような真似は控えてほしい」
ただでさえ昨日の校内ライブで疲れているんだ。もしそれで倒れられたりしたら俺の責任問題になってしまうだろう。
天「咲姫も、嫌なら嫌って言わないと伝わらないぞ?」
咲姫「うん•••ごめんなさい••••••」
またより一層強く咲姫が密着する。これはしばらく離れないだろうな、となんとなく察した俺は苦笑を漏らした。
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放課後になり、俺は増えに増えた仕事を事務所で片付けていた。
昨日の校内ライブから得たものはかなりあり、それを踏まえての調整やセトリの組み合わせの再考•••。
かなりやる事が多くて萎えそうだ。今日は帰るのがまぁまぁ遅くなりそうな気がしてきた。
天「書く事もまぁまぁあるよな•••」
既にクリスマスライブ後のライブもいくつか組んであるので、そちらとも話あったり書類を書いたりと別件もかなり貯まってたりする。
意外と詰み詰みなんだよな••••••。
天「あー•••終わる気しねぇなこれマジで••••••」
欠伸をしながら万年筆を走らせる。指がまぁまぁ痛くなってきた•••後手首も。
天「書くやつはあと少しで終わるが•••でもその次はパソコンかぁ••••••」
ため息が自然と漏れる••••••。あーもうマジで帰りてぇ•••一気に仕事増え過ぎでしょ。
天「••••••でもやるしかないんだよなぁ」
パンッ!と自分の頬を叩いて喝を入れる。一気にやる気が湧いて、万年筆を動かす手が加速する。
意外とすぐに残りを片付けて、次はパソコンを起動する。
天「あっはー多い•••」
もう絶望するしかない書類の量だ。一応今日のノルマみたいなのがあるから、わざわざ一日に全部片付ける必要は一切ない。
天「むぅ•••意外と面倒だな••••••」
会場使用の申し込み、意外と条件が厳しい。こいつは捨てようかな••••••。
天「何というか••••••母さんの息子で良かったわ俺」
ここまで会場使わせてくれるなんて中々ないぞ。やっぱり母さんの息子効果が大きいよなぁ•••そこら辺は感謝しないと。
しばらく作業を進めていたら、気がつけば今日の分は片付いていた。
それでも謎の余裕があったので継続して明日の分を消化し始めている。
天「••••••もう七時か。後少ししたら終わるかな」
多分もうそろそろ彼女たちもレッスンが終わる頃だろう。
疲れてるだろうから俺の事放って帰ってくれるといいが•••。今日は八時まで残るつもりだ。
天「残業なんて久しぶりだな••••••」
夏のライブ以来だろうか。夜遅くまで仕事をしたなんて。まだ半年も経っていないのに、どこか懐かしさを感じてしまう。
天「••••••なんか、今日はいくらでもやれそうな気がするな•••」
なんというか、たまにある異様にやる気が湧くそれになっている。
ここまで仕事に熱心になってるのも珍しいがなんか俺らしくない。
天「••••••焦ってんのかね」
クリスマスライブまで後少ししかない。それによって緊張感が増しているのかもしれない。
だから道理で仕事を余分に多くこなそうとしているのか。
力なく笑って椅子の背もたれに体重を預ける。
天「あーあ疲れた。なんか冷静になった瞬間襲ってきたなおい」
一気に疲れが回ってきて欠伸も飛び出てきた。このままだと寝てしまいそうで怖い。
咲姫「天くん、いる••••••?」
天「おぉ•••咲姫•••。もう終わったのか?」
咲姫「うん。一緒に帰ろう••••••?」
天「ん、そうだな」
パソコンの電源を落として、鞄にしまう。立ち上がって仕事部屋を出ようとした時に、一瞬だけだがフラついてしまった。
天「おっとと•••」
咲姫「大丈夫••••••?」
天「俺もちと疲れてるみたいだ。悪いな」
苦し紛れに笑ってみせるが、今の咲姫にはそんなものは通用しないのは俺が一番わかっていた。
俺の腕を抱き寄せた咲姫は頬を膨らませながら、少し怒った顔を俺に向けていた。
咲姫「無理はダメ••••••」
天「•••おっしゃる通りで」
そのまま咲姫に引かれながら、俺たちは事務所を出て帰路につく。防寒着すらも貫通する寒さに身震いしてしまう。
天「さっぶ•••!」
日が進むにつれてどんどん寒くなっている気さえしてくる。
というか十二月でこの寒さとか一月は死ぬ気しかしないんですけど?
天「•••何というか、悪かったな」
咲姫「•••••••••?」
訳がわからない、と言った様子で咲姫は首を傾げた。
天「人には散々言っておいて結局自分が無理してたからな」
咲姫「天くんが忙しいのはみんなわかってる••••••。でも倒れたりとかだけは絶対にして欲しくない」
天「ん、わかってる」
頭を撫でてやると、すぐに彼女の顔が穏やかになる。わかりやすいやつだ。
咲姫「今日もまた、泊まっていい?」
天「またか•••いいぞ。いつでも」
咲姫「良かった••••••」
天「本当によく泊まるよな。たまにはPhoton Maidenの誰かの家にお邪魔してみたらどうだ?」
咲姫「天くんと一緒がいい••••••」
天「アッハイそうですか•••」
俺がセットじゃないとどうにもダメらしい。最初会った頃の大人しさは何処へやら。
今となっては人前で腕に抱きつくような娘になってしまった。人の変化ってすごいな。
天「とりあえず家に帰ったら月にまたなんか言われそうだな••••••」
咲姫「そうかも••••••」
また来たんですか!?って驚く姿が目に浮かぶ。それは咲姫も同じように感じたらしくて、小さく笑っていた。
ワンチャンモンハン買うかも