天「珍しいですね。プロデューサーが俺を呼ぶなんて」
学校が終わり、事務所に来ていた俺は社内の人間からプロデューサーに呼ばれていたことを知らされる。
久しぶりの呼び出しに、緊張気味に部屋に入った俺は、至って冷静なフリをしていた。
紗乃「悪いな、急に呼び出して。Photon Maidenの今後について伝えておきたかったんだ」
天「まーた無茶な要件はやめてくださいよ?これ以上ライブ押さえろとかだったら流石に無理ですよ」
紗乃「そうじゃない。神山は、今の彼女たちを見てどう思う?」
姫神プロデューサーから投げかけられた質問は、とてもシンプルなものだった。
どのようにも答えやすい、至って簡単な質問。そこに彼女のどういう意図が潜んでいるのかはわからなかったが。
天「そうですね•••俺が担当し始めた時に比べて確実に技術の成長は見られています。でもやっぱり何処か拙い部分は出てきますので•••そこの改善とかもしていけば、もっと良いユニットになれる、と考えてます」
紗乃「なるほど•••実に神山らしい意見だ。だがお前は甘過ぎる」
天「••••••というと?」
母さんにも言われた言葉を久々に聞いて、少しドキッとしてしまった。だがこれでも修羅場を何度も潜り抜けてきた人間だ。一々動揺なんてしていられない。
紗乃「お前は注意はよくしてるが、怒っているところは一度も見た事がない。それではいずれ下に見られるぞ」
天「その時はその時ですよ。別に俺は一切怒らない聖人君子じゃありませんから」
紗乃「本当にそうか?甘くなり過ぎて何処か下に見られてると思った事はないのか?」
天「••••••まぁ、過去に担当してた人からは結構下に見られてましたね。まぁ俺の方が立場下なんで当たり前ですけど」
紗乃「••••••話が少し逸れたな。Photon Maidenの今後として、神山、お前自身の成長も必要だと考えている」
ズバリと言ってのけるプロデューサーの目は燃えていた。
しかし、言いたいことはわかるが••••••。
天「具体的にどうすれば••••••?」
何処から取り組めばいいのかさっぱりだった。ただ首を傾げるばかりで、大した思いつきもない。
紗乃「お前自身も何か変わってみせろ。そうすれば見えてくる景色もある」
天「•••••••••正直よくわかりませんけど、やれるだけの事はやりますよ」
紗乃「相変わらず曖昧な答えだな••••••それでちゃんと成果を出しているから何も言わないが」
天「責任を持って取り組んでますので。それでは、失礼します」
腰を曲げて大きく頭を下げた後に、俺は部屋を出る。
一気に肩の荷が下りて、大きく息を吐く。
天「あー焦ったー•••威圧感がすげぇよプロデューサーは」
目力がすっげぇわ。あれで真顔なんでしょ?最早睨んでるわ怖いわ。
天「•••にしても、俺自身の成長ねぇ••••••。まぁ確かに人間的にもまだまだ未熟だけど」
俺自身が変わればPhoton Maidenもまた変わるのか?もしそうなら試してみる価値は十分にある。だが気掛かりなのは••••••。
天「怒る、ねぇ••••••」
そんな事したところで何かが変わるとは到底思えない。ここに関してはマジでプロデューサーの頭が逝ってるとしか思えないんだよな。失礼だけど。
天「••••••でも試しもせずに否定するのはちょっとな」
ただ頭ごなしに否定しても何も変わらないのは俺が一番わかっていた。一回だけだ。一回だけお試しでやってみよう。
レッスン部屋に入ると、丁度ダンスレッスンをしているところだった。
全員が俺に気がついたが、動きは止めなかった。うん、流石だ。
ジーッとダンスをしている姿を眺めながら、キチンと良いところと悪いところを見定めていく。
天「(••••••やっぱり個性の違いだよな。所々粗が目立つ。ライブ本番までは後ちょっとだし、ここら辺も直していかないとな•••)」
多分今の俺の顔はいつになく真剣な事だろう。威圧感すらもあるんじゃないかと感じる。
•••あ、乙和さんモロ振り付け間違ったな。これはちょっと言っておかないとダメだな••••••。
天「(•••あながちプロデューサーが言ってたことも間違いなかったかもな••••••確かに甘く接し過ぎたかもしれん)」
クリスマスライブまでの間は少し追い込みをかけるか。そうしないと本番で変なミスをする可能性が見えてきたからだ。
•••仕事増えるなぁ。
ダンスレッスンが終わった後は休憩時間へと切り替わる。汗を流したメンバーは座りながら水分補給をしていた。
そこに混ざるように座った俺は、全員に目を向ける。
天「お疲れ様でした」
乙和「ありがとー!珍しいね!天くんから見にくるなんて!」
天「えぇ。後みんなに色々言っておきたい事がありまして」
乙和「え!?なになに!?」
四人の顔を見渡す。乙和さん以外の三人は何かを察したのか固唾を呑んで見守っているが、乙和さんだけはやたらと元気だった。
あー、やっぱおバカって言われる所以だよなぁ••••••。
俺は眉間に皺を寄せながら、イラついた様子で口を開いた。
天「まず乙和さん。ここまでライブが迫ってあんなミスするって何考えてるんですか?」
乙和「••••••え?」
ここまで強く言われるとは思ってなかったのだろう。拍子抜けした顔を乙和さんは見せた。
天「もうライブは目前へと迫ってきてます。今の状態では乙和さんをライブに出すなんてとてもできません。もっと自覚を持って取り組んでください。後周りとも動きを合わせて。あなた一人だけ早いんですよ」
乙和「えっ?•••えっ?あ、は、はい••••••」
天「次にノアさん。動きが優等生過ぎます。Photon Maidenのダンスとしてはよくできてますが、あなたの個性が全く見えません。もう少し欲張るように」
ノア「••••••はい」
天「そして衣舞紀さん。ダンス、歌共に問題はありません。ですがもう少し周りにも言葉をかけてあげてください。リーダーという立場にいるのですから、他のメンバーの動きにも注意を。いつもいつも俺が見ていられるわけじゃないんですから」
衣舞紀「••••••わかった」
天「最後に咲姫。•••お前はなぁ••••••まずDJに集中しているからだと思うが、ダンスの動きが小さい。二つの事を一緒にやるのが大変なのはわかる。だが今さっき見てたが、これでは到底本番で見せられる姿ではない」
咲姫「•••••••••ッ」
天「後もう一つ。ミスをすぐにカバーしていたのは良かった。だが次はそのミスは絶対にしないように。失敗がいい方向に転がるなんてごく稀な事だからな」
咲姫「•••••••••はい」
天「以上。少なくとも言える事は今のままじゃライブは無理だと言うことです。夏のライブがきっかけにPhoton Maidenは更に名のあるユニットになっています。それによってあの時よりもレベルが上がらないと見向きされなく可能性もあります。プロとして自覚を持って取り組むように」
言いたいこと全部キレ気味にぶちまけてみたがどうだろうか。
••••••明らかに凹んでるな。いや、そもそも俺がここまで強く厳しく言う事がなかったから困惑している、の方が強いのかもしれない。
天「•••とまぁ、冗談はこれくらいにして。とりあえず課題はできましたね。次はその課題をクリアするということで頑張っていきましょう」
咲姫「••••••え?」
乙和「あ、あれ•••?普通の天くんだ」
天「ビックリしちゃいましたか?いや、実は•••」
俺は先程姫神プロデューサーにされた話を事細かに彼女たちに説明した。
•••少しだけプロデューサーに悪態をつきながら。
天「そういうわけなんで試しに怒ってみたんですけど、どうでした?」
乙和「••••••すっごく怖かった。プロデューサーよりも怖い••••••」
天「うぇっ!?」
咲姫「いつもの天くんじゃなかった••••••まるで別人••••••」
天「ん、んん••••••」
まぁそりゃ別人を演じてるわけだし•••普段の俺こんな強く言ったりしねぇもん。
ノア「確かに怖かった。でも、意見はすごく的確で何も言い返せなかった•••」
衣舞紀「私たちの事をよく見てる天だからこそ言える事よね」
乙和さんと咲姫が怯えている中、衣舞紀さんとノアさんは至って冷静だった。精神的な違いだろうな。
天「ですが、ライブまですぐでこの状態はちょっといただけません。明日からは厳しく取り組みますからよろしくお願いします」
咲姫•乙和•衣舞紀•ノア「よろしくお願いします!!」
座りながらではあったが、俺たちはお互いに頭を下げた。
天「(••••••結局、俺の成長に繋がるのか?)」
しかし俺は、疑問を残したままこの後の時間を過ごした。そのモヤモヤは夜になっても消える事はなかった••••••。
ではまたモンハンに•••戻る前に明日の準備しないと•••あーダル