自分自身の成長、と言われてもあまりわからなかった。ぶっちゃけどうすればいいのかも、どう行動すればいいのかも、とんと見当がつかぬ。
仕事をしながらも考えるが、これと言ったイメージも湧かないままPhoton Maidenのダンスを眺めていた。
乙和「天くんってクリスマスライブが終わるまではこうやって毎日見にくるの?」
天「えぇ、そのつもりです。俺も俺でプロデューサーから課題を言い渡されているので、それの達成も兼ねて」
咲姫「天くんが課題••••••?」
天「あぁ。みんなと同じで俺も成長しろ、との事だ。正直今のところどうすればいいか全くわからん」
俺は首を横に振りながらため息を吐く。Photon Maidenを見ていたら何か変わるだろうと思っていたが、現実はそんなに甘くはない。
改善点は見えても、俺自身の改善点なんて一つも見えてこない。そりゃそうだろう。ダンスしか見てないんだから。
ノア「でもこれと言った欠点があるわけでもないし••••••もしかしてカワイさが足りなかったり?」
天「俺が可愛くなってどうなるんですか••••••」
ノア「お客さんと私が喜ぶ!!」
天「そりゃノアさんは喜びますよね!!というか俺表には基本出ませんよ!」
ツッコミどころ満載なノアさんは、至って平常運転だった。
いや違う違う。俺はツッコミ力を鍛えにきたわけじゃないんだ。
乙和「もっとお仕事持ってきたり•••とか?」
天「今でも十分にやってきてると思いますけどね•••広告とかも大々的に展開したり、仕事はキチンとこなしてますよ」
衣舞紀「••••••そうだ!」
天「何かアイディアが!?」
衣舞紀「天もDJとダンスをやってみればいいのよ!」
天「••••••は?」
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衣舞紀さんから言い渡された意見の通りに、俺はDJ機材の前に立っている。
一応ここを担当するときに予め勉強してきたが、実際にやるのは初めてだ。
スタートボタンを押し、バーを上にあげて曲が聴こえるようにする。ここからどんどんイジっていきたいが、そこは技術的に難しいので変な事はせず、堅実的に行こう。
一応隣には咲姫がサポート役で控えている。何かあった時にカバーしてくれるだろう。
天「••••••ッ、ん•••!」
かなりやる事が多くて混乱してしまいそうだ。次はどうする?その次は?と絶え間なくやってくる「次」に、俺は少しずつついていけなくなってきていた。
天「••••••わからん」
衣舞紀「まぁ•••天は普段からDJなんてやらないから仕方ないわよね••••••」
咲姫「でも、初めてとは思えないくらい上手だった」
天「そりゃどうも」
咲姫からお褒めの言葉をいただけて、心の中で少し舞い上がってしまう。
だが、これでは成長とは全く呼べない。
衣舞紀「それじゃあ次は•••ダンスをしてみない?」
天「えっ•••?ダンスやった事ないんですけど••••••」
精々学校の授業程度だ。Photon Maidenのような本格的なダンスなんてやった事ないし無理だ。DJと違って予習もしていないし。
衣舞紀「とりあえず試しにさ!天、運動神経いいんだからなんとかやれる!」
天「投げやりですね•••とりあえずやってみますよ」
ここまできたら後戻りも出来ないので、俺は仕方なく頷いた。
スーツの上着とワイシャツを脱いで、上裸になる。このくらいじゃないと動きにくくて敵わん。
乙和「おぉ〜すごくいい身体•••!」
ノア「というより脱ぐ必要あった•••?」
天「スーツ動きにくいんですよ」
ウォーミングアップに何度もジャンプを繰り返して、ふぅー、と大きく息を吐く。
天「そもそもダンスって何すればいいんですか」
衣舞紀「うーん、とりあえず適当に流すからそれに合わせて踊ってみて」
天「いや雑•••。まぁいいや」
その場の対応力を養うと思えば、いい練習にもなるだろう。
ダンス知識はないから、とりあえず色んなところで見てきたダンスを実際に試してみる。
天「よっ、ほっ」
乙和「おぉ〜、上手上手!」
ノア「鍛えてるだけあってとっても軽い身のこなしだね」
咲姫「•••カッコいい••••••」
天「これいつまでやるんですか?」
衣舞紀「バク転しながら喋るなんて本当に余裕ね••••••」
普通に動くのも飽きたので、前宙やバク宙などを適当に取り入れていた。
鍛えていたおかげもあってか、全く疲れない。
ようやく終わった俺は、軽く汗をかいた程度で疲れなどは全くなかった。
天「••••••変わった気しませんね」
結局プロデューサーの意図はわからないまま時間が過ぎていき、今日のレッスンは終わりを迎えた。
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帰り支度をして、俺は咲姫と一緒に帰り道を歩いていた。いつものように手を繋いで歩きながら、冬の寒さをこれでもかと感じていた。
天「マジでわからんな••••••俺、どうすればいいんだか••••••」
咲姫「私も、天くんの何処が足りないのかわからない••••••」
天「悪いな、咲姫やみんなにも付き合わせて」
時間まで取ってしまったのに嫌な顔せずに付き合ってくれた彼女たちには感謝しなければならない。
咲姫「大丈夫。いつも天くんには助けて貰ってるから。それに、天くんからのお願いは全部叶えたい」
天「ホントさ、そんな恥ずかしい事よく言えるよな••••••」
言われたこっちがなんだか小っ恥ずかしくなってしまい、顔を逸らしてしまう。
咲姫「天くんが大好きだから」
天「そ、そうか•••俺も好きだぞ」
咲姫「赤くなってる。可愛い」
天「うるせぇうるせぇ」
あまり好きではない言葉をぶつけられたので頭を乱暴に撫でてやる。
それでも彼女からすれば嬉しいようで、ニコニコとしていた。
咲姫「きっとすぐに見つかると思う••••••。みんなで頑張れば、きっと」
天「••••••悪いな」
本当は俺が頼られなきゃいけないのに、逆にみんなに頼ってしまっている。
そんな現状があまりにも情けないが、それを越えていく程に優しくて、温かい。
もうすぐ俺の家が見えてきた。その前で咲姫が立ち止まり、俺もほぼ同時に止まる。
天「どうした?」
咲姫「••••••ッ」
唐突に咲姫に抱きつかれて、俺は頭が少しこんがらがる。目をパチクリとさせながら下に目線を送ると、上目遣いの咲姫の顔があった。
咲姫「無理だけはダメ••••••」
天「•••わかってる」
咲姫「夜遅くまで仕事するのもダメ••••••」
天「ん。気をつける」
咲姫「浮気もダメ••••••」
天「それはしねぇよ」
最後の最後でやはり咲姫らしい言動が見えた。
天「どうしたんだ急に?」
咲姫「一人で抱えないで頼って欲しい••••••。仲間だから」
天「••••••あー、なるほど」
ようやく、ようやくプロデューサーが言ってた俺の課題が理解できた。
一人で抱えずに周りに頼れって事だろ?あーそうだ。いっつも俺一人で片付けて周りに頼るなんて全くしてこなかった。
けどさっきもこの課題をクリアする方法を見つける為にPhoton Maidenに頼ったばかりだ。
ようやくプロデューサーの意図が伝わって、心底スッキリした。
天「全く紛らわしいんだよあの人は••••••」
咲姫「••••••?」
天「いんや何でもね。咲姫やみんなのおかげで何とかなりそうだ。ありがとうな」
咲姫「良かった••••••」
天「••••••それで、そろそろ家に入りたいんだけど」
ほとんど目の前にあるが、今は咲姫に抱きつかれて身動きが取れない状態だ。
咲姫「•••んっ」
咲姫が背伸びをして目を閉じた。•••解放されたかったらキスしろってか?ワガママなこった。
俺からも咲姫を抱きしめて、唇を重ねる。
咲姫「ふっ、んぅ、ちゅっ•••」
真昼間からこんな住宅街の中でキスしてるカップルなんて俺たちくらいだろう。
場所を選ばないのは相変わらず咲姫らしいが、これからはちゃんと注意しておこう。どこでおっ始めるかわからん。
咲姫「はっ•••じゃあ、また明日」
天「あぁ、また」
お互いに手を振りながら、今度こそ俺たちは別れた。今の俺の顔はとてもスッキリしていて、不安や焦りも感じていなかった。
執筆?進んでないですどうにかします