天「••••••なんで俺はお前らに付き合わされているんだ?」
昼休み、俺はとある奴らに呼ばれて学食に引っ張り出されていた。せっかく咲姫と二人で飯を食おうと思っていたのに、これでは台無しだ。
響子「ごめんごめん。こうして天とちゃんと話し合ってみたかったからさ」
申し訳なさそうに笑いながら、響子は俺に顔を向ける。話をすると言っても特に話題はないだろうに。
響子「しのぶからある程度は聞いていたんだけど、結構•••というよりかなり面白い経歴ばかりで気になってね」
天「変な事は吹き込んでないよなお前」
ジロリ、としのぶを睨みつける。おにぎりを黙々と食べながらスマホを眺めていた彼女は、表情を一切崩さずに首を横に振った。
しのぶ「ちゃんとプライバシーは守ってるよ。そうでもしないと、アタシがどうなるかわかったもんじゃないし」
絵空「天さんのお父様に殺られちゃいますからね〜」
天「確かに父さんなら変な事言ったらすぐに殴りかかってきそうだな••••••」
だってクソ野蛮なヤツなんだし。俺は乾いた笑いを漏らす。
天「というかしのぶ、昼飯それだけか?大きくならねぇぞ食え」
しのぶ「むぐっ!?」
おにぎりしか食べていなかったので、無理矢理だがハンバーグを彼女の口に突っ込んでやった。
天「どうだ?」
しのぶ「い、いきなり何!?」
天「食う量が少ねぇんだよ。そんなんじゃいつまで経ってもチビだぞ?え?」
ツンツン、と丸出しの額を指でつついてやる。イライラしているが、それと同時に恥ずかしさも感じているようで、しのぶの顔はキレながらも赤かった。
響子「しのぶの事、いつも気にかけてるよね」
天「ん?まぁなんだかんだ付き合いのあるヤツだからな。それに普段のこいつもよーく知ってるから心配なんだよ」
しのぶ「何もそこまでしなくてもいいだろ••••••」
天「どうせお前の事だ。授業中寝てたんだろ?」
しのぶ「ど、どうしてそれを••••••!?」
見事に言い当てられて、しのぶはギョッとした顔になる。予想通り過ぎて、俺は逆にため息が出てしまった。
天「昨日、月が夜遅くまでゲームしてたからな。どうせしのぶと一緒だと思ったよ••••••」
絵空「あらあら、しのぶの事はなんでもお見通しみたいね」
しのぶ「嬉しくないんだけど•••」
天「お?言ったな?」
生意気にも口答えをするようなので、俺は彼女の可愛いおデコにデコピンを繰り返す。
パチンパチンと言った、小気味いい音が何度も繰り返される。
天「って、そういえば由香はどこに行った?」
会話に唯一加わっていなかった由香は、いつのまにか消えていた。
他のみんなもわからないようで、一斉に首を傾げる。
由香「うーん、この肩•••一見細く見えても筋肉が詰まりに詰まってる•••!」
天「後ろかよっ!?」
知らん間に背後を取られて、ペタペタと肩を触られていた。流石に不気味過ぎて驚くわこれ。
由香「本当にいい筋肉をしてるよ。どんな筋トレをしているのか教えてちょうだい!」
天「悪いが秘密だ」
とは言っても、ごく普通のトレーニングをただただ限界まで追い込み続けるだけなのだが。
響子「そもそもマネージャーの仕事って何をしてるの?」
響子から放たれた質問はごくシンプルなものだった。
俺は少し考えて、そっと口を開いた。
天「•••まぁ、スケジュール管理とか、ライブの予定立てたりとかだな。後は担当のメンタルケアとかそこら辺もあるし、結構ブラックだぞ?」
力なく笑う。が、ピキピキのメンツは全く笑っていなかった。
しのぶ「•••辛くないの?」
天「いや全然?」
絵空「それを学校と並行してやってる、と考えるとかなりの重労働では?」
天「忙しい時期は流石に遅くまでかかるな。とは言っても一時間二時間程度の残業だし、あんま変わらんな」
実際日が明けたりとか、学校を休んでまで仕事をする、と言った事は一度もない。
そもそも一日にどれくらいやるかを自分自身でちゃんと決めているので、そこまで苦になることもなかった。
響子「ふーん•••かなり苦労してるんだね」
天「そんな大それたもんじゃないさ。こうやって仕事を頑張れるのも、Photon Maidenがいるからだ」
響子「•••そうだね。天が人に好かれる理由がわかった気がする」
天「なんだ急に?」
響子「そうやって人の為に頑張れるって、すごくカッコいいと思うよ」
天「•••••••そ、そうか」
唐突に褒められて、俺は顔を逸らす。
絵空「あら〜?顔を赤くして可愛いわね〜」
天「ぬぅ•••やめろ••••••」
しのぶ「これでアタシがイジられる辛さがわかっただろ?」
天「うっせぇぞチビデコガキ助」
しのぶ「何で前より進化してるの!?」
響子「あはは!相変わらず天としのぶは面白いね!」
俺としのぶが悪態をつきあっている様子を、響子は笑っていた。それに釣られたのか、由香と絵空も笑顔を漏らしていた。
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今日はダンスや歌を見てやれる時間が取れず、俺は仕事部屋にこもって万年筆をただただ走らせていた。
軽い書き味でスラスラと文字が写し出されていくのは、何とも言えない快感があった。
天「•••大丈夫だろうか••••••」
心配してない筈だったのに、心の片隅にはどうしてもそう言った感情が残ってしまっていた。
妙にソワソワしてしまって、作業の効率は低下まっしぐらだった。
天「いや。ダメだダメだ、俺が不安になってたら」
俺が一番に彼女たちを信頼してやらないと誰がするんだって話だ。きっと大丈夫だと、そう言い聞かせて仕事に集中する。
天「•••大丈夫なはず••••••」
わかっているはずなのに、今まで一番近くで見てきたからこそ、わかるはずなのに•••どうしても不安になってしまう。
ビリッ。
天「あっ••••••」
力んでいたのか、万年筆が紙を裂いてしまう。万が一を考えて万年筆を点検する。もちろん壊れてなんていない。
天「••••••一旦落ち着くか」
このままだと仕事が進みそうにないので、俺はコーヒーを持って外に出る。
既に暗くなりかけてる空を見上げながら、俺は温くなったコーヒーを飲む。
天「もうそろそろ、降りそうだな••••••」
それは雨ではなく、雪だ。更に酷くなった寒さに身震いする。息を吐くと、それは白い霧となって口から出て行った。
もう本格的に「冬」と言うものが近づいてきていた。
天「あー•••さっみ」
思いの外冷たすぎて、鼻水がズルズルとしてきた。流石にいい加減中に戻ろうと踵を返そうとしたら、隣にーー、
咲姫「もう少しだけ••••••」
咲姫が服の裾を引っ張って、引き止めた。彼女の顔を見て安心したのか、俺は頷く。
天「休憩か?」
咲姫「うん。部屋に行ったら天くんがいなかったから探した••••••」
天「それは悪かった」
咲姫の頭に触れる。外気によって冷やされた手は、彼女の頭の温もりがより伝わった。
咲姫「もしかして、集中できてない••••••?」
天「よくわかったな。咲姫やみんなが心配でな•••あまり進まねんだわ」
コーヒーを一飲みして、ふぅ、と息を吐く。咲姫にペットボトルを向けて、飲むか?と問う。
頷いたのを確認して渡すと、咲姫はチビりとそれを口に含んだ。
咲姫「苦い••••••」
天「あまり得意じゃなかったか」
薄らと笑う。咲姫からコーヒーを返して貰おうと手を伸ばすが、
咲姫「大丈夫だよ」
止まる。そして咲姫の方に顔を向けると、彼女は意志に溢れた顔を見せる。
咲姫「私たちなら大丈夫。だから、しっかりと見てて欲しい」
天「••••••わかった」
はぁ、これじゃあ変に心配してた俺がバカみたいじゃないか。
優しく咲姫の身体を包み込んで、耳元で囁いてやる。
天「期待してる」
咲姫「•••うん。必ず、応えてみせる」
咲姫がとても嬉しそうな表情をしているのが、なんとなくだが伝わった。
俺も俺でようやく安心した笑顔を見せる事ができた。
もう、口出しなんてしなくても大丈夫だろうと、そう確信した。
僕モンハンしてきまーす。ではではー