仕事が終わった後、俺はPhoton Maidenの全員に連れられて、ショッピングモールに足を運んでいた。
本来なら家に帰って眠っているはずなのにおかしいな何があったんだ。
乙和「ーーというわけで!今日は天くんの私服を買いたいと思います!」
天「••••••何で???」
敬語も忘れて、俺は心底嫌そうな顔で疑問を発する。それでもお構いなしの乙和さんは、俺に詰め寄って今着ているスーツを軽く引っ張った。
乙和「私の記憶が確かなら天くんが制服とスーツ以外を着ているところを見たことありません!」
衣舞紀「そういえばそうねー•••咲姫は見たことあるでしょ?」
咲姫「はい。基本的にあまり飾らないような服装だった気がする••••••」
ノア「じゃああまりデザインとかがないシンプル目な方が良さそうですね」
天「••••••いや、あの?だから何で俺の服を買う流れになってるんですか••••••?」
勝手にどんどん話が進んでいる。このままではなし崩し的に服を買いかねない。
咲姫「月ちゃんが普段着をほとんど持ってない、って言ってたから••••••」
天「余計な事しか言わねぇなあいつ」
確かに俺が所有する服は、部屋着のパジャマと運動用のジャージがほとんどだ。大した私服は本当に数着程しかない。
衣舞紀「そういうわけだから、天の服を買いに来たってわけ」
天「そこまで気を遣わなくて良かったんですけどね••••••」
ノア「天くん大学行くでしょ?それまでにはキチンと私服を揃えておいた方がいいと思うよ」
天「え゛、大学スーツで通うのダメなんですか?」
衣舞紀「悪くはないけどちゃんと私服は用意して欲しいわね••••••」
天「別にいいじゃないですか。足りなくなったら買いに行きますし」
腕を頭の後ろに組んで、俺は大きく欠伸をする。もう既に帰りたいという欲望が外に溢れ出していた。
咲姫「早く行こう••••••」
天「あーはいはいわかったよ」
咲姫に手を引かれて、俺は仕方ないな、とため息を吐いた。
そのまま服屋に連れて行かれて、俺は着せ替え人形にされてしまう。これでもかと服を着せられて、ストレスが溜まる溜まる。
天「••••••••••••いつまでやるんですか?」
ついに耐えきれなくなって苛立ち混じりにそう問うような声を発した。
乙和「あはは〜ごめんね〜。これで最後だから!」
天「またそういうふざけたのを持ってくる••••••」
何処かのおちゃらけたパーティーにでも行くのかと言いたげな、カラフルなクソダサスーツを乙和さんは持ってきた。
もう既にゲンナリしていたのに、更にそれが加速してしまう。キレていい?
天「というか、さっきから乙和さんこういうヤツしか持ってこないじゃないですか。ふざけてるんです?」
乙和「だって天くんスタイルいいんだから何でも着せたくなっちゃうんだもん!はいこれ着て!」
天「えぇ••••••」
ノア「天くん•••無理だけはしないでね?」
天「代わりにノアさん着ます?」
ノア「いえ、遠慮しときます」
断るくらいなら最初から心配すんなや。顔は笑っていたが、眉間にはしっかりと皺が寄っていた。
結局着る事になり、披露する前に鏡で確認するが、
天「クッソダセェ••••••」
あまりのダサさに笑いすら込み上げなかった。それくらい酷い。マジで酷い。
カーテンを開けて、四人にその醜態を晒す。そして見事に笑われた。
天「俺の服選びって、結局何だったんだろうか••••••」
当初の目的は何処へやら。目の前に広がる光景は、散々人を着替え回した挙げ句、ゲラゲラと笑う四人の少女。
天「はぁ•••もういいです。俺で勝手に決めますから」
面倒になり、俺はすぐにスーツに着替え直してスタスタと歩く。どうせ着るかもわからない服を買うんだ。適当でいいだろう。
咲姫「あ、あの、天くん•••?」
天「なんだ」
咲姫「怒ってる••••••?」
天「怒ってはない。疲れただけだ」
明らかに苛立ちを隠しきれてないが、決して怒っているわけではないのだ。ただただ面倒でウザいだけ。
天「っと、これ持っててくれ」
咲姫「うん••••••」
選んだ服が少し多かったので、咲姫に持たせる。ジャケットやジーンズも色々と吟味していく。
衣舞紀「私たち、いらなかったわね••••••」
ノア「乙和が遊び過ぎるからよ」
乙和「ノアも笑ってたじゃん!」
天「••••••意外とかかるな」
適当、とは言っても多少は真面目に選んだものだ。かなりシンプルなもの揃いだが、それもまた組み合わせ次第だろう。
ただ量が多い。そのおかげでかなりの金額へと変わり果てた。服怖い。
店員「えっと•••大丈夫ですか?」
数万単位の金額が提示されて、流石の店員も顔を引き攣らせていた。しかしこれでも社会人の仲間入りを果たしている人間だ。これくらい大したことない。多分。
天「これで」
キッチリ支払って、俺は紙袋をいくつも手に提げる。全く重くないのが救いだったりする。
天「俺の服買う以外になんかやる事あるのか?」
咲姫「何も考えてなかった••••••」
天「本当に服買いに来ただけじゃねぇか••••••咲姫は買わなくていいのか?」
咲姫「私はしばらくは大丈夫。少し前に買ったばかりだから」
天「ん、そうか」
咲姫から視線を外して、店の外で待っている三人に顔を向ける。
天「終わりました。次何処かに行きたいとかありますか?」
乙和「お腹空いた!」
天「じゃあ昼飯にしますか。どこか食べるところありましたっけ?」
ノア「この中の何処かに飲食店があったと思うから探そっか」
天「ライブ前なのでそこまでガッツリなのはダメですからね」
乙和「えぇー!」
乙和さんが不満タラタラで俺に文句を垂らす。俺は苦笑しながらすぐに目線を逸らして何処か良いところがないか探す。
天「あ、あそこでいいですか?」
近くにあったのは、女性行きつけの飲食店だった。結構量が少なくて彩りが良いと有名なところだ。
乙和「えぇーここー!?お腹いっぱい食べられないじゃん!」
天「はいはい我慢してください。ライブまでは厳しくいくつもりですから」
咲姫「美味しそう••••••」
食品サンプルを見て、咲姫が目を輝かせていた。どうやら彼女のお気に召したご様子だ。
衣舞紀「咲姫も行きたそうだし、ここでいいんじゃない?」
ノア「そうだね。サンプルを見ている咲姫ちゃんも可愛いし」
天「本当にブレないなこの人••••••」
相変わらずノアさんはノアさんで逆に安心してしまう。まだサンプルを見ていた咲姫の手を引いて、店の中へと入っていく。
席に通して貰って、俺たちはメニューをジーッと眺めていた。
乙和「私オムライス〜」
ノア「私はどうしようかな••••••あ、これ美味しそう!」
衣舞紀「バランスのいいコレにするわ」
それぞれが決まる中、俺と咲姫は少し決めかねていた。うんうんと唸りながらどれにしようかと指を走らせる。
天「これにするか。美味そうだし」
俺が選んだのはカレーだった。なんでもリンゴと蜂蜜が入っているとのこと。バー◯ントやん()
咲姫「じゃあ私も••••••」
そこに咲姫の指が重なる。••••••俺に合わせてる?なんとなくだがそんな気がしたので、少し遊んでみよう。
天「いや、やっぱりパスタにしよう」
指を移動させて、パスタの写真に移る。そこにすかさず咲姫の指が飛んできた。
咲姫「私も••••••」
天「••••••やっぱりカレーで」
咲姫「私も••••••」
うん、完全に俺に合わせてるねこれは。チラチラと俺の顔を窺ってるのがなんとなくだがわかった。
衣舞紀「天、あまりイジめないであげて?」
天「すみません。俺はカレーにするけど、咲姫もそれでいいのか?」
咲姫「うん••••••」
すぐに彼女は頷いた。•••心なしかノアさんの顔がいつもより溶けているような気がするな。絶対に咲姫の反応見て楽しんでただろこの人。
乙和「咲姫ちゃん天くんの事本当に大好きだよねー」
咲姫「だって、大好きな人だから••••••」
薄らと頬を染めながら、咲姫は言葉を漏らす。普通に可愛らしくて、つい目を逸らしてしまった。
ノア「あー、天くん照れてる」
天「五月蝿いですよ」
ノアさんがからかってくるが、俺は目を合わせることができずに悪態をつく。
乙和「私も天くんのこと大好きだよー?」
天「〜〜〜!わ、わかりましたから••••••!」
こうも面と向かって言われると恥ずかしくて堪らない。耳まで顔が赤くなってしまって、手で隠せなくなる。
ノア「カワイイ•••!天くんカワイイ••••••!」
そしてここぞとばかりにノアさんからも攻撃が飛んでくること飛んでくること。
衣舞紀さんも途中から加わってしまって、収拾がつかないまま、注文は遅れに遅れることとなった。
明日日曜か•••寝よw