ついにライブ本番前日となった。もうここまでくると笑っていられる余裕もなく、全員がピリついていた。
俺もかなり緊張が走っていて、ドキドキしながら明日の事を考えていた。
天「いよいよか••••••」
乙和「緊張するなー」
天「あまりし過ぎないようにしてください。プレッシャーに負けて失敗とか笑えませんから」
ノア「わかってるよ。心配性だなぁ天くんは」
ちなみに今はレッスンも終わって、俺の家にPhoton Maidenの全員が集まっている状態だ。
何故か知らんけど集まった(小並感)。
月「もう明日かー早いなー。期待してますからね!」
衣舞紀「ありがとう。月に満足してもらえるライブにしなきゃね」
咲姫「頑張る••••••!」
全員が気合い十分なようで、俺はなんだか安心する。それに、近くでずっと彼女たちの姿を見てきたのだ。
今更不安がる必要なんてないし、むしろ余裕なまである。本人たちはそんな事を言ってられないだろうが。
月「そういえば今日と明日雪が降るらしいですよ!雪合戦したいですね!」
天「雪玉ん中に石詰めてやるか」
月「死んじゃう死んじゃう!というかそれただの暴力!」
天「冗談に決まってんだろ」
薄らと笑いながら月の反応を楽しむ。周りも次第に緊張が解けて、笑うようになった。
乙和「ていうか天くんは余裕そうだよね。実際にステージに立たないから?」
天「それもありますけど•••今のPhoton Maidenなら大丈夫って、自信を持って言えますから」
衣舞紀「ちょっと前とは大違いよね。あの時は『ライブなんて到底できない』なんて言ってたのに」
天「あえて強く言ったんですよ。変に甘くするよりはよっぽどいいと思いますし」
衣舞紀「そうね。それで実際に火が着いたんだもの」
勝ち気な笑みを浮かべながら、俺に顔を向ける衣舞紀さん。その顔は自信に満ち溢れていてマイナスな感情など一切感じなかった。
乙和「天くんがそんな事を言うの、なんだか珍しい気がするね」
ノア「そうでもないんじゃない?咲姫ちゃんとかよく褒められてるし」
乙和「あーえこ贔屓だー!」
天「•••そんなつもりはないんですけどね」
乙和さんが頬を膨らませながら俺に詰め寄ってくる。それに対して俺は頭をポリポリと掻きながら苦笑いを浮かべた。
咲姫「でもその分厳しく言われたりもするから••••••」
乙和「それは私も同じじゃーん!」
天「子供かよ••••••」
駄々をこねるガキに一瞬だが見えた。精神年齢ェ•••。
月「まぁまぁ。乙和さんはそういう人なんだから割り切らないと」
天「ごめん。お前にだけは言われたくない」
月「あれぇ!?なんでぇ!?」
知った風に抜かす月に対して俺はキツめの言葉を浴びせる。
月は涙目になりながらノアさんに引っ付いた。あ、ノアさんの顔変わったな•••()
ノア「カワイイ•••すごくカワイイよ月ちゃん••••••!天くん!月ちゃんの事イジめたらダメだよ!」
天「めんどくせぇ••••••」
完全に月に毒されたノアさん。顔はいつものヤベーやつになっていて、手のつけようがなかった。
にしても本当に月の事好きだよなこの人。いっそのことあげようかな()
月「変な事考えたでしょ」
天「••••••ナンノコトカナ?」
月「目を逸らすな!」
そしていつも通り、と言うべきなのか、見事に心の内を読まれて睨まれてしまった。オーマイパスタ。オーコワイー(激寒)。
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全員が帰った後も、ワイワイと言う程ではないが少し賑やかになっていた。
月と咲姫が楽しそうに料理をしている背中を、俺はボーッと眺めていた。
月「案外早かったよねー。クリスマスライブするーって言ってたの、20日以上前でしょ?つい昨日のように思い出せるよ」
咲姫「うん、すごく早かった。練習は大変だったけど、今なら完璧なパフォーマンスができそう」
月「そこまで言うなら期待しまくっちゃいますよー!ジロジロと見まくりますから!」
咲姫「そ、それはちょっと恥ずかしい••••••」
薄らと顔を赤く染めた咲姫が顔を逸らした。ニヤーッと悪い笑みを浮かべたのが、背中越しの俺でもなんとなく伝わる。
天「そもそも関係者席遠いからわからないと思うぞ」
咲姫「天くんも月ちゃんもちゃんと見えてたよ?」
天「うせやろ」
こいつどんな目してんの?少なくともステージから2階の端っこを見たら、顔はおろか姿すら曖昧に映るはずだ。
咲姫「天くんと月ちゃんは独特な色をしているから••••••」
月「他の人と一味違うからね私は!」
天「辺な方向に走るなよ?」
月「失礼な!厨二病にはなりませーん!」
天「今中ニだけどなお前」
月「上手いこと言ったつもりか」
吐き捨てるような月の台詞に俺は少し心が痛む。結構ガチな方の発言だったな今•••中々にキツいゾイ•••。
天「咲姫の色がどうのこうのは置いといて•••明日は朝からリハーサルだからすぐに寝るぞ」
咲姫「うん、わかった」
月「私がいる目の前で誘うなんて•••!キャーーっぶねぇ!!?」
天「あんまり余計なこと言うとドタマかち割るぞ?」
月の頭めがけて上からグーパンをぶち込むが、ギリギリのところで月が躱した。チッ。
月「今モロ殺す気だったよね!?お父さん殴る時と同じくらいガチで殴ってきたよね!?」
天「そうだけど?」
月「平然な顔して言うことじゃない!」
ギャーギャーと喚き散らかす月を止める為に軽く拳骨を一発入れてから、俺は席に着いて晩飯ができるのを待った。
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飯も食って風呂に入り、後は寝るだけとなった。二人で一緒にベッドに入っている状況だが、最早慣れ過ぎて当たり前のように感じてきていた。
天「眠れるか?」
咲姫「大丈夫•••。少し緊張してるけど、天くんがいるから」
天「早く寝ろよ?明日は朝からリハーサルなんだから」
咲姫「うん。でも少しだけお話しがしたい••••••」
俺の胸元を引っ張りながら、咲姫がこちらに顔を向ける。微笑みながら話を聞く体勢に入った。
咲姫「関係者席は何処にあるの?」
天「ステージから見て2階の右側の端」
咲姫「じゃあ見つけたら手を振るね」
天「やめなさい。ファンの方々に失礼だろ」
Photon Maidenとしてステージに立った以上は、私情なんてものは一つも通用しない。
それではプロとして失格となってしまう。
しかしファンはみな平等にステージに立つ彼女たちに魅了されるはずだ。今まで頑張ってきたからだろう。
咲姫「どうしてもダメ••••••?」
天「ダメだダメだ。ライブ終わった後にいくらでも相手してやるからそれまで我慢しろ」
咲姫「むぅ••••••」
頬を膨らませて起こった様子を見せるが、今の俺には通用しない。何故なら明日のことで既に緊張しているからだ。
天「とりあえず、頑張れよ?今更だが」
咲姫「ううん、大丈夫。ありがとう、すごく嬉しい」
ニコッと咲姫が笑顔になった。俺もつられてつい笑ってしまう。
咲姫「なでなでしてほしい••••••」
天「わかった」
今はこれくらいのワガママは聞いてあげよう。手を伸ばして、サラサラな白髪に触れた。
咲姫「落ち着く••••••私が寝るまで撫でてもらってもいい?」
天「あぁ、いいぞ。それで安心できるならいくらでも」
目を閉じたのを確認して、俺は無心で彼女の頭を撫で続けた。作業と変わらない同じ動きのサイクルは、ずっと続けていると少し頭がおかしくなるような気がした。
そして撫で続けるうちに、咲姫から落ち着いた寝息が聞こえた。どうやら寝たらしい。
天「•••頑張れよ」
撫でるのをやめると同時に、ポン、と軽く頭を叩いて、俺も目を閉じた。
次回最終回!明日で本当の意味で引退や!