敏腕(感)男、マネージャーするってよ   作:如水くん

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遂に最終回となりました•••。嬉しいような悲しいような、なんだか複雑な気持ちが入り混じっています。グルミクが正式追加されて、それまではちょいちょい程度しかやってなかったD4DJというコンテンツにどハマりして、今になってはこうやって小説を書いて偉そうに最終回とか言っちゃってるわけですけども。自分としてはDに関われて良かったと思っています。出雲咲姫っていう推しがDにハマった後すぐに知ることができたのもまた、このコンテンツに残っている理由にもなっています。D4DJはまだまだ大きくなると感じていますが、その時にはもしかしたら自分自身がバンドリの時と同じく完全に飽きて、界隈から姿を消しているという可能性すらあります。それはなってみないとわかりませんが、少なくとも咲姫への愛だけは未だ薄れる気配すらかりません。とりあえず五月十日の戦争に備えて石を貯めまくります。


12月25日(木)

いよいよ迎えたライブ当日。緊張が辺りに走る中でリハーサルを終えた四人は、厳しい面持ちで本番を控えていた。

その中には当たり前のように俺も入っていて、まるでメンバーの一人になっているかのように錯覚する。

 

衣舞紀「いよいよね••••••」

 

ごくり、と生唾を飲み込む音と共に衣舞紀さんが言葉を放った。それに反応して、他の三人の目が更に厳しくなる。

 

天「リハーサルは問題なくできてました。新曲の出来もバッチリですし、口出しするような不安要素もありません。自信を持って取り組んでください」

 

俺も一切の甘えは見せない。淡々とした口調でメンバーに語り掛け、少しでも緊張を減らす為に褒めておく。

 

乙和「わかってるよー!これまで頑張ってきたんだから自信持たないと!」

 

乙和さんがやる気に満ちているようで、メラメラと燃えていた。

それに触発される、という程ではないが、みんなにも多少ながら熱は移っている様子だ。

 

ノア「うぅ•••緊張してきた••••••」

 

天「大丈夫ですよ。校内ライブから人増えただけなんですから」

 

ノア「そういう問題じゃないよ!」

 

ガチガチになりながらもちゃんと怒る時は怒るみたいで、俺の方に喰ってかかった。

 

ノア「校内ライブの人数の数十倍もの人がいるんだよ!?緊張するなって言う方が無理!!」

 

天「まぁまぁ••••••」

 

苦笑しながらノアさんを宥める。しかし、こうも余裕ぶっこいて発言をしている俺も、なんだかんだで緊張はしっかりしていた。

そこまで酷くしている訳ではないが、あまりふざけてられる余裕もない。

目の前のノアさんがガチガチになってるおかげで少し安心できるが、もし四人が余裕綽々な様子だったら俺は緊張で潰れていたのは間違いないだろう。

 

衣舞紀「確かにお客さんも多いし、緊張はするわ。でも、多いということはそれだけの人が私たちの為に来ているのよ。しっかり満足させてあげられるようなパフォーマンスを見せつけないと!」

 

衣舞紀さんが励ますように言葉を放つ。流石リーダーだ。彼女たちを今の発言で一気にまとめ上げてしまった。

 

咲姫「曲の順番は予定通りでいい?」

 

天「咲姫に任せる。お客さんの反応次第で流れを変えてもらっても構わないが••••••」

 

チラリ、と乙和さんノアさん衣舞紀さんの三人に目を配る。

急に変えすぎてついていけない、なんて事はないのかと心配になったからだ。

 

乙和「私たちを誰だと思ってるのー?それに咲姫ちゃんの切り替えは何回も経験してるから対応なんて朝飯前だよ!」

 

自信満々に胸を張りながら鼻を鳴らす乙和さん。余計な心配だったようで、すぐに咲姫の方に顔を戻す。

 

乙和「あ、あれ?それだけ••••••?」

 

天「ん?何かありますか?」

 

乙和「え?もっとこう•••すごいねー、とかないのかなって••••••」

 

天「•••••••••はぁ」

 

ついため息が漏れてしまった。それも心底嫌そうなのが伝わってくるほど嫌悪感に満ちた吐息だ。

 

天「ライブが成功したらいくらでも褒めますから。今から調子に乗ってると足をすくわれますよ」

 

乙和「むぅ•••厳しい••••••」

 

天「こんな状況で甘やかすわけにもいきませんから」

 

スタッフ「Photon Maidenさん、準備をお願いします」

 

衣舞紀「時間ね。それじゃあ天、後でね」

 

ノア「行ってきます」

 

乙和「終わったらちゃんと褒めてよねー!」

 

咲姫「•••••••••」

 

三人がぞろぞろと出て行く中、咲姫だけは俺の目の前で立ち止まっていた。

もう何も言わなくてもわかる。どうせここまできて甘えているのだろう。

 

天「頑張れ」

 

優しく、頭を撫でてやる。時間も押しているので軽く済ませる程度に、数回だけ触れてからすぐに手を離した。

 

咲姫「行ってきます」

 

満足した咲姫は、小さく手を振りながら控え室を出て行った。

さて、観客席に移るか。俺は咲姫に向けていた笑みを解いて、移動を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

月「こっちこっちー」

 

天「わかってるから一々呼ばなくていい」

 

月が大きく手を振りながらこちらに位置を知らせる。席の場所を既に知っている俺は、ため息を吐きながら小走りで向かった。

 

天「よっと」

 

そして妹の隣に座ってステージを眺める。まぁ関係者席だから遠い上に見にくい。

もうちょっと見やすい位置が良かったが、今更文句も言えまい。

 

月「ドキドキするー!ね、ね、開始いつ?」

 

天「後もう少し待て。さっき準備に入ったばかりだから」

 

月「えぇー」

 

ぶーぶー、と唇を尖らせてぶーたれる月。恐らく俺が来たからすぐに始まるものだと思っていたのだろう。

 

天「ガキじゃねぇんだからそれくらい待てよ」

 

月「まだ中2なんですけど?十分ガキなんですけど?」

 

天「屁理屈垂れてんじゃねぇよ殺すぞ」

 

月「乱暴!!」

 

舌打ち混じりに言葉を発する。最早いつも通りで妹も慣れているのか、声だけは必死そうだったが顔は余裕たっぷりだった。

 

天「それに、楽しみにしてるもんがさっさと始まってもつまんねぇだろ?」

 

月「まぁそうだけどねー。少なくとも、お兄ちゃんはあまりそういった事は好まないでしょ?」

 

天「よくわかってるな」

 

薄らと微笑みながら、ステージに目を向ける。観客たちが楽しみに待っているのが嫌でも伝わってくる。既に歓声が上がっているのだから驚きだ。

 

月「さて、仕上がりはどうですかマネージャー様?」

 

天「バッチリだ」

 

月「すごい端的だ•••シンプルでわかりやすいけど」

 

だってそれ以外に言うことねぇんだもん。変に長く言うよりはこれくらいシンプルな方がいい。

 

しばらくしたくらいだろうか、ステージに光が灯った。ライブ開始の合図だ。

自然と、俺の姿勢が張る。目つきも鋭いものに変わる。目の前にあるステージを睨みつけるように目線を送り続けた。

ステージからPhoton Maidenの四人が姿を現す。それだけでも大きな歓声が上がり、ペンライトが揺れまくった。

 

天「•••頑張れ」

 

小さく、隣にいる月にすら聞こえない声で呟いた。準備が整った四人は位置に着いて、姿勢を取る。

ーー咲姫の手が動いた。それと同時に曲が流れ始める。というかこれ•••。

 

天「新曲じゃねぇか••••••」

 

予定とは大違い。なんと一発目から新曲を投げつけやがったのだ。状況が理解できていない観客は、困惑しながらも何とか盛り上がっている状態だ。

 

天「••••••まぁ、流れを任せてるのは俺だし、一々文句も言えないな」

 

ため息混じりに笑みを零し、今一度ダンスを見る。大量の観客に当てられているのもあって、いつも以上に気合の入っているダンスだった。

それでもそれぞれの個性がしっかりと表れていて、完璧、という言葉がとても似合う仕上がりとなっている。

歌も丁寧さこそ感じられるが、情熱的な激しさも兼ねた強い歌声だった。これも生のライブならではのものだろう。

 

月「すごい•••!すごいすごい!夏のライブと全然違う!!」

 

月が興奮してジャンプを始めた。こいつの言う通り、夏のライブと比べて何倍もレベルアップしているのが見て取れた。

ダンスも、歌も、DJも••••••何もかもが前とは違う。全てが更に上へ向かって突き進んでいる。ずっと側で見ていたからこそ、彼女たちの成長はこまめに確認できていた。

だが今回は違う。ライブ本番になって急に化けやがった。リハーサル?そんなものとは比べ物にならないくらい激しいし、何より楽しそうだった。

汗を散らしながら踊る姿は、一種の感動すら覚える程美しい。

辛いはずだ、疲れているはずだ。それなのに笑顔を振りまく姿は圧巻だった。

 

天「•••なんというか、置いていかれた気分だな••••••」

 

まるで、俺の存在なんて必要ないんじゃないかと考えさせる程に、彼女たちのパフォーマンスは完璧に出来上がっていた。

それを見て無性に寂しく感じるのは、今まで一緒に見ていたものを先取りされたように感覚的にそう取ってしまったからなのだろうか。

 

天「まぁでも••••••」

 

みんなが楽しいなら、俺はそれで満足だ。遠くから眺めながら、しみじみと感じる。

楽しそうに踊って歌う彼女たちの姿は、今世界で一番輝いていると、そう確信した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数時間にわたるライブが終わりを迎え、観客たちはぞろぞろと帰っていった。

その姿を見届けた後に、俺と月は二人で控え室へと戻る。

まだ疲れた様子の四人が、荒く息を吐き続けている中で、俺は椅子に座った。

 

天「お疲れ様でした」

 

と、短い一言だけの労いを送る。これ以上は何も言わない。

 

月「すっごく良かったです!夏よりもすごくて私興奮しちゃいました!」

 

月に関してはまだまだ興奮が冷めない様子で、大きく声を張り上げながら思い思いに自身の感想を皆に伝えていた。

 

乙和「えへへ〜ありがとう月ちゃん!はぁ〜疲れたー!」

 

乙和さんが大きく手を広げながら、椅子の席に体重を預ける。

 

ノア「はしたないよ乙和。でも、かなり疲れちゃった••••••」

 

ノアさんも同じようで、机に突っ伏してぐったりとしていた。人の事言えないなこの人も。

 

衣舞紀「でも、大成功だったわね。お客さんみんな喜んでくれていたみたいだし」

 

咲姫「みんなとても楽しそうで温かい色だった••••••」

 

ノア「二人とも、どうしてそんなに余裕なの••••••」

 

あまり疲れた様子を見せない二人に、ノアさんは絞り出すような声で呟いた。その姿を見て俺は苦笑を浮かべてしまう。

 

天「ちょっと失礼します」

 

俺は席を立って、控室から出る。そのままスタスタと歩いて行って、会場の外に出た。

まだライブの余韻に浸っている観客が、ライブの感想などをみんなで語らっていたところだった。

混ざりたいところだが、マネージャーとして顔が割れてるので下手に行動できないのが辛い。

とりあえず目についた自販機から飲み物を買って、それに口をつける。

 

天「••••••もう終わりか」

 

こうして、帰っていく人たちを見ると、本当にライブが終わったのだと実感する。またすぐにあるとはいえ、かなりの寂しさを感じた。

 

紗乃「こんなところにいたのか」

 

天「•••プロデューサー?」

 

恐らく会場内にいるであろう姫神プロデューサーがこちらに来ていた。仕事どうしたんだよアンタ。

お構いなしに隣に来て、コーヒーを飲み始めた。

 

紗乃「まずはお疲れだったな」

 

天「それを俺に言ってどうするんですか。Photon Maidenのみんなに言ってくださいよ」

 

紗乃「彼女たちにも後々伝えるさ。一先ずは神山に伝えるのを優先しただけだ」

 

天「••••••俺は何もやってませんよ」

 

一口紅茶を啜って、プロデューサーから目を逸らした。

 

紗乃「いいや、神山はよくやってくれた。お前がいなかったら、Photon Maidenがここまで成長する事はなかったし、こんな大きなところでライブをすることもできなかった。だから感謝している」

 

天「•••買い被り過ぎですよ。俺は自分の仕事をしただけですから」

 

紗乃「相変わらずだな。少しは自分から認めたらどうなんだ?」

 

苦笑しながらこちらに目を向けるプロデューサー。俺はただ逸らすばかりで、一向に目が合う事はなかった。

 

天「なんというか、実感がないんですよ。自分のお陰で成功した、なんて」

 

紗乃「それは誰だってそうだろうな。だが、彼女たちは、お前のおかげでここまでこれたと確信している。だから四人の前でだけは威張ってやれ。そうしないと、彼女たちが可哀想だ」

 

天「•••••••••そうですか」

 

飲み干した紅茶のペットボトルを握りつぶす。グシャッ、といい音が鳴り、近くのゴミ箱へ投げるとそれは綺麗にスッポリ収まった。

 

天「戻ります。後のことはお願いしますね」

 

紗乃「わかった。彼女たちにもよろしく頼む」

 

天「はい」

 

一礼し、俺は走って控え室へと急いだ。自然と、心が弾んでいた気がする。

 

控え室に戻ってくると、既に着替えていたPhoton Maidenの面々が待ちくたびれた様子で俺に目を向けた。

 

咲姫「何処に行ってたの••••••?」

 

天「ちょっと外にな。後ついでにプロデューサーと色々話してきた」

 

衣舞紀「プロデューサーいたの?」

 

天「知らん間に来てました。俺がビックリですよ」

 

少し驚いた様子の衣舞紀さんに対して、俺はヘラッと笑う。乙和さんもノアさんも衣舞紀さんと同じく顔がびっくらこいている。

 

乙和「もしかして今日のライブの事話してた!?」

 

天「それはまたプロデューサーに呼び出された時に話してくれますので待っててください」

 

乙和「えぇー!?」

 

ノア「何か言われるのかな••••••?」

 

天「変に心配しなくても大丈夫ですよ。少なくとも、怒られる事はないと思って貰って」

 

乙和「じゃあ安心だね!今日はスッキリ寝られそうだよー!」

 

天「••••••そうですね」

 

本当に、今日はゆっくりと寝られそうだ。一ヶ月ほど前からのしかかっていた重りからようやく解放されたのだ。今の俺はやたらとスッキリしている事だろう。

 

天「そろそろ帰りましょうか。打ち上げとかは明日にしましょう。オフにしてますので」

 

乙和「ホントに!?明日は美味しいご飯を食べに行こー!」

 

天「いい所に連れて行きますよ。とてもいいライブができたんですから」

 

晴れやかな顔で、俺は頷いた。明日はどこか高級なところにでも連れて行こう。今更金の心配なんてバカらしいからな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

三人と別れて、俺、咲姫、月の三人で家に向かって歩いていた。足取りは軽く、月に関してはまだウキウキ気分が残っていた。

 

月「無事に終わって良かった良かったー!これでまた忙しさから解放されましたなマネージャーさん?」

 

天「うっせぇなぁ••••••どうせ明後日からいつも通り仕事なんだから変わらねぇよ」

 

咲姫「••••••でも、ライブ前みたいに無理はしないよね?」

 

天「ん?そりゃまぁ、そこまで忙しいってわけでもないからな。それより咲姫の方だ。また直ぐ近くにライブがあるんだからそれに向けてちゃんと頑張れよ?」

 

咲姫「天くんが練習を見に来てくれるなら頑張る」

 

天「•••意外と面倒な注文してくるなお前••••••」

 

月「行ってやりなよ彼女からのお願いだぞー?」

 

天「変に盛りあがんなバカ」

 

挑発してくる月の頭に一発入れておく。痛そうに頭を押さえながら涙目で訴えてくるが気にしない。

 

咲姫「•••ダメ••••••?」

 

天「はぁ•••わかった。行けない日もあると思うが善処する」

 

咲姫「ありがとう。やっぱり優しい••••••」

 

天「•••早く帰るぞ」

 

咲姫「うんっ!」

 

妙に小っ恥ずかしくなり、俺は咲姫の手を引いて自宅へ向かって急いだ。

元気に応えた咲姫も、俺と歩幅を合わせて歩いていく。

こんな日は永遠とこないのは、俺が一番わかっている。だからこそ、今を大切にしていかなければならない。

咲姫の方へ顔を向けると、彼女は穏やかな笑顔を見せてくれた。

その笑顔に応えようと、より一層強く決心した。




では皆様、五月十日にまたハーメルンでお会いしましょう!ばいちゃ!またその時に色々言えたらいいなーと思っています!できることなら課金せずにバースデー咲姫をブチ当てたい!
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