珍しいことに晴れた今日この頃。土曜日といえども仕事が休みだということはなく、最早当然のように事務所に駆り出されていた。
別に忙しくもないこの時期なら、別に仕事ほっぽり出して遊んでても差し支えない。そうしないのは変に真面目だからなのだろうか。
天「あー•••つまんねぇ••••••」
早々に仕事が片付いてしまったので、俺は机に突っ伏してため息を漏らしていた。
せめてもの暇つぶしにと外を眺めるが全くもって面白くもなんともない。
適当にパソコンで何かを見ようとかそういった気分にもならないのもまた悪いところだ。
天「•••流石に勝手に帰るわけにもいかんし、ちょっと気分転換にブラブラしに行くか••••••」
気怠そうに身体を起こして、俺は事務所から出て行く。そしてそのまま目的もなく、某モンスターの動く鎧みたいにさまよっていた。
天「••••••少し腹減ったな」
時計を見ると昼前になっていた。昼飯を買うついでにと、コンビニに立ち寄る。少し値は張るが、キチンと美味いから今回は許したる(寛容)。
天「•••••••••」
食うものが決まらねぇ。数分くらいはおにぎりと睨めっこをしている状況になり、店員も少し引き気味に俺を眺めていた。
りんく「あれ?天くんだー!」
天「ん?あぁ、りんくか」
聞き慣れた声によって振り返ると、涼しそうな私服に身を包んだりんくが手を振りながらこちらに走ってきた。
天「お前も昼飯か?」
りんく「そうだよ!ちょうど近くを歩いていたからついでにと思って!もう天くんは食べるもの決めた?」
天「あ、いや•••腹は減ってるんだが、これといって食べたいものが決まらなくてな••••••」
あはは、と苦笑混じりに言葉を返すと、りんくはノーコンマでとある商品を手に取って俺に渡した。
天「••••••え、何これ」
•••カツサンドだよな?これ。いきなりどうしてこんなものを。
りんく「カツサンド!天くん男の子だしお肉食べた方がいいかなって!」
天「•••じゃあ、これにするか」
少々りんくに押し切られた感はあるが、カツサンドならハズレはまずないので乗っかった。
ちなみに一個じゃ確実に足りないので三つほど買った。
りんく「あ!ここイートインできるんだ!食べていこうよ!」
天「はいはいわかったよ」
まるではしゃぐ子供のようにりんくは向かっていった。それを見て俺は薄らと笑う。
お互い向かい合うように座って、昼食の時間が始まった。
りんく「いただきまーす!」
天「いただきます」
りんくは•••まぁ当然とでも言うべきなのかおにぎりだった。
りんく「んふぅ〜!美味しいー!どうしてコンビニのおにぎりってこんなに美味しいんだろうね!?」
天「それを俺に訊かれてもな•••まぁ美味いという点は同意だが」
りんくに続いて俺もカツサンドにかぶりつく。うん、美味い。ソースが()。というかソースの味が殆どだな。濃いわ。
りんく「ねぇねぇ天くん」
天「ん?」
りんく「咲姫ちゃんとは今はどんな感じ?」
天「•••ぶっこんできたな」
なんともまぁストレートな質問だこと。当の本人は目をキラキラと輝かせながら俺を見つめている。
天「特に変わりないよ。いつも通り」
当たり障りのない回答を投げつけるが、りんくはそれでは満足できなかったのか、更に追い討ちを仕掛けてくる。
りんく「どんなことしたー、とかこういうことあったーとかないの?」
天「なんかやけにしつこいな•••というか俺じゃなくて咲姫に訊けばいいだろ?」
咲姫に丸投げするようで悪いが俺は逃げさせてもらうぜ。
りんく「え〜。だって咲姫ちゃん、天くんの事になると急に恥ずかしがるんだもん!」
天「それで矛先が俺に向いたのか••••••」
りんくはバカじゃないからちゃんと先手は打ってくるよな•••少し甘く見ていたわ。
天「とは言ってもなぁ•••変わりないのは変わりないし••••••」
特にこれといったものがないのが困りものだ。うんうん唸ってしまうのが関の山となっている。
天「あー•••でも最近スキンシップというかそこら辺は減ってきてる気がするな••••••」
キスとかほとんどやってないし。あれ?これってまさか••••••
天•りんく「倦怠期•••?」
ちょうど良く声が重なった。しかしお互いの表情は全くの正反対なものだ。
俺は顔面蒼白となり、りんくはなんだか楽しそうだった。
天「••••••••••••••••••やべぇどうしよう」
俺の不安はどんどんエスカレートしていき、今にも心臓が胸から破れて飛び出しそうだった。
胸に手を当てるとわかりやすいくらいに鼓動が早鐘を打っている。
りんく「天くんならきっと大丈夫だよ!」
天「お前その自信どこから湧いてくんの???」
他人事のりんくから無慈悲な言葉を投げつけられて、少しイラついた。
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まだ不安感を残したまま事務所に戻ってきた。
ソワソワとして落ち着かないのが自分でも良くわかっていたので、誰にも見つからないようにそーっと仕事部屋に戻ってきた。
天「はー•••後何して過ご•••そ••••••?」
ドアを開ける時だけは軽い動作だったが、目の前の光景を見て一瞬で固まってしまった。
咲姫「••••••すぅ••••••すぅ••••••」
いつも俺が使っている椅子に、咲姫が座って寝ていたのだ。えぇ•••(困惑)。
天「え、あれっ?もう今日はレッスン終わりだっけ?」
メモ帳を開いてスケジュールを確認する。•••あ、もうとっくに終わってるわ。明日の分と勘違いしていた。これは池沼。
天「あーマジかー•••。じゃあ咲姫ずっとここで待ってたのか。それは悪いことをしてしまったな••••••」
とりあえずと、毛布を取り出して彼女の背中に掛けてやる。暖かいとはいえ、こんな薄い服装で寝ていたら風邪を引いてしまう。
天「さて•••起きるまで待ってるか」
もう一つ椅子を取り出して、それに座る。ちょくちょく咲姫の様子を確認しながら、携帯をイジり続けた。
しばらく時間が経った頃だろうか、咲姫がみじろぎを始めた。
咲姫「んっ、んぅ••••••」
天「お、起きたか?」
携帯をポケットにしまって、彼女に目を向ける。むくりと身体を起こして、目を擦りながら俺の姿を認識した。
咲姫「天くん••••••?」
天「ん、そうだ」
咲姫「何処に行ってたの••••••?」
少しだけムッとした表情をされながら問いただされる。少しだけ冷や汗が流れた。
天「いや•••もう終わってるって知らずに昼飯食いに行ってました•••ハイ••••••」
そして何故か敬語になる俺。余計に不自然になるからやめろ。
咲姫「怪しい••••••」
ビクッ!!俺の身体が跳ねた。もうこれで確定だろう。俺が何かしら隠してるってことが。まぁ隠してるんだけどさ。
天「コンビニに行った時に、ちょうどりんくと会って•••二人で飯食った••••••」
咲姫「•••私の事は放っておいて?」
天「いや、それはマジで申し訳ない••••••」
咲姫「••••••キスしてくれたら許す」
天「あっ•••ハイ••••••」
少し納得がいかなかったが、キスだけで済むならいいか•••。この後更に飯に付き合えとかだったら死んでたけど。
彼女の頬に手を添えて、唇を近づける。すると咲姫も応えるように目を閉じたのがわかった。
そしてそのまま口付けをする。いつも通り、咲姫の唇は柔らかかった。
咲姫「んっ、ちゅ、ちゅっ••••••」
息の問題もあって長くは続かないが、それでもやめられないでいた。息が上がっても、苦しくても、離れるのがとても惜しかった。
咲姫「天くん••••••」
天「ん•••?」
咲姫「大好き」
天「あぁ•••俺も好きだ」
また唇を重ねる。ここに人が入ってくることがないのをいいことに、好き勝手にお互いに好きを表現し合った。
天「••••••じゃあ、帰るか」
キスも終わり、帰る準備も整った俺は咲姫に声をかける。
咲姫「うん。あ、でも私お腹が空いた••••••」
天「よーし帰ろうかなーあはははー」
ガシッ。
天「••••••えーっと、あのー咲姫さん•••••••••?」
咲姫「もちろん一緒に食べてくれるよね?」
天「••••••ア、ハイワカリマシタ」
キスで許すとは一体何だったのか。俺は咲姫に連れて行かれて本日二度目の昼飯をかっ食らう事となった。泣けるぜ。
それではまた。筋トレしてきまーす。ゼンワンゼンワーン!!(バクシン並感)