乙和「夏休みだーー!!」
天「うるっさ!」
突然として家の中に響き渡る乙和さんの大きな声。彼女の言葉通り、今日から夏休みだ。某ペルソナみたいに日本中をキャンピングカーで駆け抜けてみたいぜ。
月「夏休み•••今年はあってないようなものですよ••••••」
天「まぁお前はそうだろうな。ウチにも三人ほどいるわけだし」
チラリ、と受験組の三人に目を向ける。こちらに気がついたのか、目が合ったのがわかった。
天「まぁ、あまり心配はしてないさ。『一人』を除いて」
乙和「むぅ、悪意を感じるぞー?」
天「寧ろ悪意しかないですよ」
乙和「言ったなー!絶対に受かってやるんだから!」
そもそも落ちる事がありえないんだが•••その話をしたらまた色々膨らみそうなのでやめておいた。
ノア「でもせっかくの夏休みなんだし、みんなで夏らしい遊びとかをしてみたいね」
ノアさんからの願望が聞こえてきたところで、俺は何かを思い出したかのようにメモ帳を取り出した。
咲姫「どうかしたの?」
天「いや•••確か何処かの日にライブがあって••••••あ、これだこれ」
目的の内容が見つかって、大まかに目を通す。そしてその日の予定を思い出して、小さく笑った。
天「来週のライブ。福岡でありますよね?ライブの次の日は福岡で自由にできる日があるので、海にでも行ったらどうでしょう」
衣舞紀「へぇーいいわね。去年は海に行かなかったし、今年こそは行きたいわね」
天「じゃあ決定ですね。適当に海水浴場探しときます」
乙和「じゃあ水着とか新しく買わないと!」
ノア「そうだね。買いに行こうか」
話がどんどん盛り上がっていく様子を、俺は微笑みながら眺める。みんなが楽しそうで何よりだ。
が、クイッ、と服の裾を咲姫が引っ張ったのが見えた。え、何(困惑)。
咲姫「水着、買いに行きたい」
天「え?月も連れて五人で行ってくればいいじゃないか」
咲姫「六人」
天「•••••••••つまり俺も来いと?」
咲姫「うん」
天「••••••断るっていう選択肢は•••••••••」
咲姫「ない。天くんも来ないとダメ」
天「••••••はい」
咲姫が引かない性格なのはわかっていたので、俺は素直に頷いた。
月「すっかり咲姫さんのお尻に敷かれてるねー。あ、もしかしてセックスも騎乗位が多かったりーーいったぁ!!」
天「性的な話はやめろバカ」
月「だからって殴んじゃねぇよコラァ!」
天「口調おかしくね???」
なんで今回は喧嘩売ってる感じなのだろうか。相変わらずこいつの頭の中身はわからん。
月「と、り、あ、え、ず!咲姫さんからも来いって言われてるんだから行くよ!」
天「へーい••••••」
どうせ俺は海に入る気はさらさらないし、適当に男モノの水着でも眺めながら時間でも潰すかな〜。
衣舞紀「あ、そうだ。ちゃんと天も水着買っておいてね。天も遊ぶんだから」
天「え゛」
ノア「?何かおかしなところでもあった?」
天「いや•••俺は仕事が」
乙和「関係ないよ!というかその日くらいは仕事休もう!」
天「••••••あーはいはいわかりましたよ」
まぁなんだかんだこうやって言いくるめられるのがオチなのだが。
変に悲しませるよりはこうやって乗っかって置いた方が楽でいい。
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というわけでショッピングモールにやってきたわけなのだが、もう店内は夏ムードまっしぐらで、所々に夏らしい要素を感じさせる装飾や商品が並んでいた。
天「うわ、かき氷作るやつまである。懐かしいな」
お手軽に家で氷を砕いて作る例のアレまでもある。ちなみに作者の実家には、痴漢車ト◯マスモデルのかき氷機があります。クソガキの頃はトーマス大好きでした(クソどうでもいい)。
月「そんなもの見てないで早く水着買いに行くよ」
天「はいはいわかってるよ」
月に呼ばれて、俺は気怠そうに返事をしながら歩を早めた。
店舗内にはしっかりと夏コーナーが設けられていて、水着がこれでもかとズラーッと並んでいた。選びきれねぇだろこの量は。
天「焼野原くんくらいは連れといた方がよかったな••••••」
男一人で水着を選ぶなんて、虚しすぎて敵わん。例えるならR18小説を書いてる時くらいの虚無感だ。
天「まぁどうせシンプルなやつにするんだけどな」
飾りがあるのはそこまで好みではない。さっさと黒一色のシンプルな短パン型の水着を適当に手に取って購入する。
そして女モノの水着が並んでいるコーナーをウロウロして咲姫たちを探し始める。
ノア「あれ?もう終わったの?」
天「えぇ。拘りとかないのですぐに決めて買いました」
乙和「どんなのどんなの!?」
天「普通のですよ」
乙和「えぇーつまんないー!ノアに選んでもらえばよかったじゃん!」
天「絶対に嫌ですけど」
ノア「どうして••••••!?」
なんか心底驚いてる顔をノアさんがしてるが、あなたに任せたら絶対デザイン盛り盛りの女性が着けるような水着引っ張ってくるでしょ。こちらから願い下げだ。
衣舞紀「じゃあ天には私たちの水着を選ぶのを手伝ってもらおうか。男の子からの意見も聞きたいし」
天「あっ•••はい」
もう自分の分終わったし帰ってもいいよねー?なんて考えてたけどやっぱりダメだったわ。はよ家帰って寝たいんだけど。
乙和「天くん天くん!これなんてどう!?」
乙和さんが意気揚々に持ってきたのは、水色に近い色のビキニだった。
天「•••••••••ハッ」
乙和「どうして鼻で笑うの」
天「いえ、失礼しました。乙和さんは雰囲気が明るいのでそのような大人っぽい水着は少々合わないのではと」
本当はその水着を着けた乙和さんを想像して面白かっただけなのだが。即席とはいえ、何とか言い包めそうだ。
乙和「私来年で大学生だよ?今のうちに大人に少しでも近づきたいんだもん!」
天「無理に背伸びしても違和感しか出てきませんよ。少しは自分を客観視してみるのはいかがかと」
乙和「なんだよー!じゃあ天くんが選んで!」
天「えぇ••••••。じゃあこういうのでいいんじゃないですか?」
俺が指差したのは、シンプルな水着にジーンズに似た短パンが着いたものだった。
天「これなら乙和さんの雰囲気にも合いますしいいんじゃないですか?」
乙和「じゃあこれにするー!」
天「単純過ぎる••••••」
ほぼ適当に選んだのになんか気に入られたし••••••。別に俺は必要ないのでは?最悪ノアさんがいるし。
咲姫「•••••••••」
天「ん?どうした?」
咲姫が俺の目の前まで歩いてきて、ジーッと俺の顔を見上げていた。その様子が気になって、首を傾げてしまう。
咲姫「私の水着も選んで欲しい」
天「うーん••••••それはノアさんに頼んだ方が」
咲姫「天くんの好みに合わせたい」
そう言われたら選ぶしかないでしょ!(単純)
とは言っても咲姫に着せたい水着とかは去年辺りからある程度定まっていたので、すぐにその目当てのブツを探す。
天「あったあったこれだこれ」
真っ白の、フリル等があしらわれたビキニだった。それを手に持って、咲姫の胸元に持っていく。
天「咲姫は肌も髪も白いから、白で統一した方が似合うと思ってたんだ」
咲姫「どう?似合ってる?」
天「あぁ、とても可愛いよ」
咲姫「嬉しい•••」
月「••••••なーんか近づき辛いですね」
俺と咲姫が二人でニコニコとしている傍らで、月がため息混じりに苦笑しながら言葉を落とした。
ノア「二人は恋人だから仕方ないよ。あれ?そういえば月ちゃんは水着買わなくていいの?」
月「ライブ日、学校の方で勉強会でした••••••」
衣舞紀「それは•••タイミングが悪かったわね••••••」
ノアさんと衣舞紀さんは、しょんぼりと肩を落とす月を宥めていたという。
そんな事は露知らず、俺と咲姫はお互いに来週の事について話し合っていた。
それではまた次回にお会いしましょう。次がいつかはわかりませんが。