敏腕(感)男、マネージャーするってよ   作:如水くん

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どうも、実家帰省型剣道家です。バイト受かりましたありがとうございます。とはいっても早朝に数時間働く程度のものなので大したことはないんですけど、肉体労働なので楽しみですねぇ。毎日運動できる。


海といったら焼きそばだよなぁ?

日焼け止めで紫外線をガードする膜を得たところで、俺は浮き輪を借りて咲姫をその浮き輪に乗せていた。

プカプカと海を漂いつつ、俺はちょくちょく周りの目線を気にしていた。

 

天「(昨日ライブやった後だもんなぁ•••流石にバレてるか)」

 

彼女らがPhoton Maidenだとわかった上での目線をビシバシ感じる。ただその中にやはり「俺」に対する視線がすごかった。

 

天「顔出してないし当然だよな•••」

 

咲姫「?どうかした?」

 

咲姫の問いに、俺は首を横に振った。まぁマネージャーが表に出ることはまずないので知らない方がいいのだけども。

 

天「いや、何でもない。何かやりたいこととかあるか?」

 

咲姫「二人で泳ぎたい」

 

天「了解」

 

要望を聞いたところで、彼女を抱き上げて浮き輪から離脱させる。

浮き輪はそこら辺の場所に引っ掛けておいた。どうせ遠くまで行かないしいいだろう。更に言うならレンタルモノだし。

 

天「泳ぐっつったってどうするんだ?」

 

咲姫「海の中を見たい•••!」

 

珍しく顔を近づけて目を輝かせる咲姫。なんというか•••探究心に満ちてるな。

 

天「まぁ、いろんな生き物とかいるだろうし見てて楽しいのは確かだな。よっと」

 

息を吸って頭から水に潜り込む。目を開けると、目の前には青い美しい景色が広がっていた。

汚れなど何一つなく、小さな魚が泳いでいるのが見えた。

横目に咲姫が潜ったのを確認して、俺はバタ足で少しずつ身体を前へと進めていく。

腕は平泳ぎのように横に大きく広げて更に推進力を増していた。

 

咲姫「んっ、んーっ」

 

天「(何言ってんだコイツ•••)」

 

水の中で喋れる訳がなく、ただぶくぶく言っているだけだった。ガキみたいで可愛らしいが。

ただわかりやすく指を指していたので、その方向を向くと足だけだが衣舞紀さん達ということだけは理解できた。

多分そこまで泳いで行きたいのだろう。俺は頷いて顔を乙和さんの足に向けた。

 

天「(一丁前に脅かしてみるかな)」

 

少しニヤつきながら泳いでいく。少しずつ、少しずつ距離が詰まっていき、もうすぐ目の前!というところで俺は思いっきり身体を上に打ち上げた。

 

天「よいしょっとぉ!!」

 

乙和「うわあああぁぁぁ!!??」

 

ちょうど乙和さんの視界のド真ん中の位置だったらしく、彼女はびっくらこいて天を仰ぎながら海水の中に倒れた。

 

天「あ」

 

ノア「乙和!大丈夫!?」

 

乙和「鼻に水入った〜••••••」

 

あー•••痛いヤツだ。申し訳ない。鼻を摘んで痛みに耐えながら乙和さんは怒った様子で俺を睨みつけた。

 

乙和「急に何するのさ!」

 

天「軽ーくビックリさせようとしたら思いの外反応が良かったもので」

 

衣舞紀「天一人?咲姫は?」

 

天「あれ?俺と一緒に泳いできたはずですが••••••」

 

みんなでキョロキョロと探していたところに、衣舞紀さん以外の三人は察したように口を開いた。

 

ポン。

 

衣舞紀「わああぁぁ!?」

 

咲姫「衣舞紀さん、捕まえた」

 

衣舞紀さんの肩に手を置いた咲姫が、無邪気に笑った。

 

天「随分と遅れたな」

 

咲姫「乙和さんが驚いていたから収まるまで待ってた」

 

天「あぁ•••そゆこと••••••」

 

機会を窺ってたのか•••月みたいなことするな••••••。いや待て絶対アイツが唆しただろ。なんかそんな気がする。

 

天「お腹空きました。飯食べに行きません?」

 

乙和「私もお腹空いた〜!行きたい行きたい!」

 

ノア「でもここの近くにご飯を食べられるところって••••••」

 

衣舞紀「ほら、あそこの海の家。多分そこで食べられると思うわ」

 

天「行きますかねぇ•••はぁ、腹減った」

 

お腹をさすりながら、波を立てながら足を進める。

 

咲姫「天くん」

 

天「ん?」

 

咲姫に呼び止められて、俺は振り返る。彼女は砂浜とは反対方向を指差していた。

 

咲姫「浮き輪••••••」

 

天「あ」

 

完全に忘れていた。ため息を吐きながら泣く泣く回収へと向かったのだった••••••。

時間がもったいないゾ••••••。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

キチンと浮き輪を回収して、海の家へと訪れると意外と中は空いていて、人は少なかった。

 

兄ちゃん「らっしゃい!」

 

あ、さっきの俺をナンパしてきた兄ちゃんだ。忙しそうで何より何より。

 

兄ちゃん「あ!さっきの女っぽい兄ちゃん!この人たち全員カノジョ?」

 

天「違いますよ」

 

げんなりした顔で返す。俺の態度が応えたのか、兄ちゃんはすぐに黙り込んだ。

 

兄ちゃん「そ、それで、何にしやす?」

 

天「俺は焼きそばドカ盛りで」

 

咲姫「私も焼きそばドカm」

 

天「自分の胃袋に合わせなさい」

 

咲姫「••••••普通でお願いします」

 

いつも通りと言うべきなのか、わざわざ俺に合わせに来たので食い気味に言葉で殴っておいた。すぐに訂正したので少しホッとする。

とは言っても焼きそばやお好み焼き、カレーなど腹を満たせるものが限られてるのが痛いところだ。後はかき氷くらい。他になんかないのかよ。

 

兄ちゃん「焼きそば五つ、一つドカ盛りあざっす!」

 

注文を受けた兄ちゃんはすぐに厨房へと入っていく。それを確認してから、俺はテーブルに身体を突っ伏した。

 

天「あの人マジなんなんだよ••••••」

 

月とはまた違うウザ絡みだ。精神的に参ってしまう。

 

乙和「天くん結構好かれるもんね〜」

 

天「男に好かれても嬉しくないですよ」

 

乙和「あ、女の子ならいいんだ〜?」

 

天「••••••その人に寄ります」

 

なんかこれ以上言うと墓穴を掘りそうな気がしたので適当に流した。

乙和さんも乙和さんでウザ絡みの頻度が増えたような気がする。

 

天「というかノアさんちゃんと乙和さんの躾してくださいよ。貴方保護者でしょう?」

 

ノア「私そんな役割じゃないよ!?」

 

乙和「というかなんで私がノアのペットみたいになってるのさ!?」

 

衣舞紀「そういうところじゃないかな••••••」

 

相変わらず息ピッタリなことで。俺と衣舞紀さんはクスリと笑う。

 

「ねぇ、アレってPhoton Maidenじゃない••••••?」

 

ギクッ!

 

「うん、絶対そう。ライブの次の日だしいてもおかしくないよね」

 

ギクギクッ!!

 

「え、じゃああの男の人誰?顔は女の子っぽいけど••••••もしかしてメンバーの誰かの彼氏!?」

 

ギクギクギクッ!!!

 

衣舞紀「そ、天、大丈夫?汗すごいよ?」

 

天「•••••••••ご飯食べたらすぐに帰りますよ」

 

乙和「え〜どうして〜?」

 

天「俺たちのこと、バレてます••••••」

 

ヒソヒソと小さい声で乙和さんに言い聞かせると、わかりやすいくらいに顔が歪んだ。

 

乙和「ウソおぉ!?」

 

天「マジですよ••••••。できるだけ早く食べてズラかりましょう」

 

ノア「言い方がただの泥棒••••••」

 

うっさいわ。

 

焼きそばが到着したところで、俺たちはすぐに箸を伸ばした。俺だけは他と比べて三倍くらいの量があるので一気に口内に詰め込んでいく。

 

咲姫「天くん、そんなに一気に入れると喉に詰まるよ?」

 

天「大丈夫だいじyむぐっ•••!」

 

言ったそばから喉に詰めた。酸素を取り入れられなくなり、胸が苦しくなっていく。

ドンドンと胸を叩いてなんとか流し込もうとするが、中々上手くいかず苦しさが増していった。

 

咲姫「はい、天くんお水!」

 

天「んぐっ!んぐっ!ぷはぁ!あ゛ー死ぬかと思った!」

 

衣舞紀「急ぎすぎよ。詰まる程入れなくていいんだから」

 

天「はい•••すいません。助かった、咲姫」

 

咲姫「お礼に後でキスしてね?」

 

天「••••••わかったよ」

 

周りに聞こえないように耳元で囁かれて、少し背徳感を感じてしまう。身体によろしくない。

 

天「とりあえずはさっさと食べ終えるか••••••」

 

明日はもしかしたらネット内で話題になるかもなぁ。事務所と一緒に対策を練らねば。まぁ俺がマネージャーであることは事実だし、変に言及されても正直に答えればいいことだ。

世の中って楽勝!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昼飯を食べ終えて、そそくさと海から退散した。ある程度は遊べたからいいよな•••?

帰りの新幹線で外の景色をゆったりと眺めていたら、膝に置いている手に咲姫の手が重ねられた。

 

天「どうした?」

 

咲姫「これ、見て」

 

咲姫が手に持つスマホの画面を見てみると、見事に海の家で焼きそばを食っている俺らが撮影されていた。

『福岡の海にPhoton Maiden出現!』とデカデカと表示されている。流石インターネット。出回るのが早い。

 

咲姫「天くんの事についてかなり言われてる」

 

天「そりゃ俺はあまり表に顔出さないからな••••••」

 

一般人から見たら誰だコイツ状態だろう。多分大衆はPhoton Maidenのマネージャーは女性と思ってるだろうし俺がそのマネージャーとは微塵も思わないだろう。

じゃあ俺はどういう立ち位置になるの?ナンパでもした悪い男?それとも友人?

 

咲姫「私は天くんの事もちゃんと知ってもらいたい」

 

天「俺が知られてどうするんだよ••••••喜ぶヤツ一人もいないと思うんだが」

 

咲姫「私が嬉しい」

 

当たり前のように言葉を紡ぐ咲姫に、今回ばかりは目を見開いて驚いてしまう。

ちなみに衣舞紀さん達は遊び疲れてぐっすりと眠っていた。

 

天「••••••変な事言ってないで寝なさい。疲れただろ」

 

咲姫「天くんこそ寝ないの?」

 

天「俺まで寝て駅寝過ごした、なんてオチはゴメンだからな。しっかり起きておくつもりだ」

 

咲姫「うん、頼りにしてるからね」

 

天「存分に頼られてくれ、これくらいしかできないからな」

 

そっと彼女の頭を撫でてやると、咲姫は俺の肩に頭を置いて、少しずつ寝息を立て始めた。

 

天「まだまだ子供だな」

 

あんな大舞台でたくさんの人の目に晒されながら踊って歌うのに、疲れ果てて寝てしまうところはまだまだガキだった。

 

天「•••まぁ、これからだしもっと頑張ってもらいたいが••••••今はゆっくり休みなさい」

 

既に眠っているであろう彼女に言い聞かせながら、俺はもう一度窓から景色を眺めた。

頭を撫でる手だけは止まらず、静かに優しく動き続けていた。




それではまた来週〜。花巻弟とヤる小説も投稿するのでそちらは見なくていいです。過去最高のクソっぷりですので。

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