今日は久しぶりのオフ••••••なのはPhoton Maidenの面々だけで、俺は俺でいつも通り仕事だった。まだ出社しないだけマシな方と捉えるべきかもしれない。
月「ふーん、珍しいね。基本みんなが休みの時もお兄ちゃん休みだったし」
天「だよな、俺も少し驚いている。一々歩かなくていいだけ本当にラッキーだが」
月「正直な話仕事いつまでよ?」
天「••••••わからん。ライブの打ち合わせとかあるからかなり遅くなりそう」
月「•••私が咲姫さんの相手した方がいい?」
嫌そう•••というよりは焦りが見える表情で月は恐る恐る問う。
ちなみに咲姫はまだ俺の部屋で寝ている。珍しく俺が早起きしたのだ。
天「いや、咲姫には適当に誰かと遊ばせておけばいいだろ。俺は仕事、お前は勉強でどのみち咲姫の相手をするのは難しいしな」
月「じゃあ、乙和さんに電話しておく?」
天「あぁ。後で俺からしておく」
月「りょうかーい。あ、ご飯できたから咲姫さん起こしてきて」
天「ん」
俺は立ち上がって、階段をゆっくりと登っていく。今更自分の部屋をノックするつもりもないので、無遠慮にドアを開けた。
白髪の少女はまだベッドに横たわっていて、小さく息を吐いていた。
天「咲姫、朝ご飯だぞ」
咲姫「ん、んぅ••••••」
天「起きなさい」
咲姫「もう少しだけ••••••」
寝返りを打ちながら、今にも消えそうなくらい小さな声で咲姫は抗議する。
天「昨日ずっと起きてるからだろ。自業自得だ」
咲姫「天くんも一緒に寝よ?」
天「ダメ。俺今日仕事だから」
彼女からの誘いに俺はノーコンマで首を横に振る。むぅ、と不満の声が聞こえてきたがそんなものは知らない。
天「せめて朝飯食ってから寝てくれ。月に面倒事を増やしてやるな」
咲姫「•••わかった」
バッ、と咲姫は仰向けになって両手を大きく広げた。一体何のつもりだ?と俺は首を傾げてしまう。
咲姫「起こして」
天「へーい•••」
ため息を吐きながら咲姫の背中と足に腕を回して抱き上げる。
なんかまた軽くなった気がするけどちゃんと体重増えてるのか•••?流石にこれ以上減らすのは避けたい。
天「咲姫、今日の朝飯、白飯おかわりしろ」
咲姫「どうして•••?」
天「何でってお前前より軽くなってるからだけど」
咲姫「天くんの筋力が増えただけだと思うよ?」
天「えぇ••••••?」
お互いに首を傾げて、沈黙の時間が続く。しばらく経った辺りで、下から月の声が木霊する。
月「朝ご飯冷めちゃうよー!早く降りてきてー!」
天「行くか」
咲姫「うん」
天「後自分で歩け」
咲姫「いや」
天「•••••••••」
泣けるぜ。
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朝飯を食った後、月はささっと二階に上がって勉強を始めた。俺も仕事があるので、自室にこもってパソコンを立ち上げる。
ベッドには咲姫が座っていて、こちらをずっと眺めていた。
天「本当に良かったのか?乙和さんたちと遊ばなくて」
振り向いて、咲姫に問う。
彼女を預かってもらおうと乙和さんに電話しようとしたが、咲姫にしなくていいと止められた。
当の本人はただベッドに座っているだけで、退屈そうだった。
咲姫「うん。それに、天くんの仕事を見るの好きだから」
天「どんな趣味だよ」
俺は軽く笑って、パソコンの方に目を向ける。まぁ自宅仕事する程度のものだからそこまで大したものがあるわけでもない。重大なのはライブの打ち合わせで通話を繋げるくらいだ。
天「あぁ、そうだ。咲姫」
咲姫「どうしたの?」
天「後々ライブの打ち合わせとかがあるから、その時は咲姫にも会話に入ってもらいたい。演者からの意見も聞きたいしな」
咲姫「うん、わかった。それと•••」
天「ん?あーー」
咲姫「ちゅっ」
まだ何かあるのかと振り向いたら唐突に唇が重ねられた。突然の事態に俺は動揺を隠しきれず、目をまん丸にした。
咲姫「お仕事頑張ってね」
天「あ、あぁ••••••」
顔が熱くなって、まともに咲姫の顔が見られない。本人はと言うとニコニコととても嬉しそうだ。そんなに照れてるのがいいのかよ。
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仕事を進めながら、俺は思い出したかのように咲姫に声をかける。
天「そういえばそろそろ修学旅行だったな。行き先どこだっけ?」
咲姫「確か大阪だったはずだよ」
天「そこら辺か。確定でウニバだな」
大阪と言えばウニバーサルスタジオジャパンと相場が決まっているものだ。しかし修学旅行と言っても大阪だけなのは少し物足りないかもしれない。
天「自由行動の時、大阪だけだと飽きるから京都まで行くか」
咲姫「京都•••。また八ツ橋食べる?
天「もしかしたら、新しい味があるかもしれないしな」
大阪から京都への移動は本当にすぐだ。そこまで時間もかからないしいいだろう。
天「本当にあっという間だよな•••気がついたら十月も終わりだし」
到底秋とは思えない寒さがガンガンに殺しにかかってきているが、今年の冬は果たして大丈夫なのだろうか。十一月には雪が降りそうな勢いだ。
咲姫「修学旅行、みんなと一緒だから楽しくなりそう」
天「••••••そうだな」
ハピアラ、ピキピキのメンバーがいるのだ、心強い。最悪彼女たちに任せて俺は一人でホテルにこもっていたいものだ。
咲姫「天くんも一緒だよ?」
天「•••••••••アッハイ」
いつも通り丸投げをしようと思ったがやはり止められた。毎回どうしてこうも簡単に心の内を見られるのか。
天「••••••しょうがねぇな。俺もついていけばいいんだろ?」
咲姫「うん。いつまでも天くんと一緒にいたいから」
天「なんか•••プロポーズみたいだな、それ••••••」
咲姫「少し意識したかも。でも天くんからして欲しいな」
天「その時が来たらな」
照れ臭くなってそれ以上は何も言わなかったが、後ろで咲姫が笑みを浮かべているのだけはなんとなくわかった。
そして俺の後ろに立って、腕を回してくる。
咲姫「待ってるからね」
天「あ、あぁ••••••」
ボンッ、と顔が爆発した。俺が彼女に対して結婚を望む姿を想像して恥ずかしくなったからだ。
結婚、結婚かぁ•••少なくとも現状だとまだ夢の様な話に感じてしまう。
天「な、なぁ咲姫•••」
咲姫「?」
天「離れてくれないか•••?恥ずかしい••••••」
咲姫「えへへ、いや」
更に咲姫は密着する。椅子の背に防がれて胸の感触自体はないが、至近距離なのもあってもう仕事どころではなくなってしまい、完全に手が止まってしまった。
天「はぁーーー••••••全く」
俺は大きな大きなため息を吐いて、身体を反転させた。そして咲姫を抱きしめ返して、そのままベッドに倒れる。
天「休憩。まだ打ち合わせまで時間あるし、残ってる仕事も少ない。だから甘えさせてもらう」
咲姫「うん、いいよ。たくさん甘えて」
一際強く抱きしめる。咲姫の細い細い体躯が、俺の身体に飲み込まれていった。
咲姫「いつもより、顔が近いかも」
天「前よりも抱きやすくなったからかもな」
咲姫「言い方がえっち•••」
天「悪かった。他意はない」
確かに今の言い方じゃセックスに慣れてきました、と言ってるようなもんだ。いやもう何回もシてるから今更な話なのだが。
天「少しだけ寝るか」
咲姫「うん、私も少し眠くなってきたかも」
天「それは退屈してただけだろ?」
薄らと笑いながらツッコんでやると、咲姫も釣られて笑った。
そのまま他愛のない話を続けていたら、いつの間にかお互いに眠ってしまっていた。
ではまた次話で会いましょう。ではでは。