駅前に集合という予定で、俺は早く起きてすぐに着替えた。私服はいつも通り白シャツの上にジャケットを羽織ってジーパンを履く。春の間はこれがいつもの装備になりそうである。夏からはジャケット着られないし今のうちに着ておきたい願望があるので、よく着てる。
朝食は自分で適当に食って家を出る。月からすれば何故朝早くから出掛けてるのだろうと困惑するだろうが、内容知ったら絶対うるさいので言わない。
駅前の柱にもたれかかって咲姫を待つ。時計を確認すると、予定の時刻の十五分前だった。流石に急ぎ過ぎたか•••?でも遅れるよりはマシだと頭に言い聞かせる。
咲姫「ご、ごめん•••待った?」
とてとて、と小走りで咲姫がこちらにやってくる。俺は柱から身体を離して咲姫に顔を向けた。
天「いんや、全く待ってない」
咲姫「良かった•••」
待ったと言っても所詮は一、二分程度だ。一々言うことじゃない。駅の中に入り改札に切符を通す。そのまま目的の車両が来る前まで歩き、近くの椅子に腰掛けて新幹線が来るのを待つ。
天「京都とかいつぶりだろうか。最近行ってなかったしなぁ」
咲姫「私は中学の修学旅行以来•••かも?」
出雲家はあまり旅行とかしない家なのだろうか。でも咲姫単独で旅行する金は持ってるみたいだし、単純に彼女が遠出とかしないタイプなのだろうか。
天「どうする?観光」
咲姫「天くんは何かプランとか立ててる?」
天「まぁ•••とりあえず京都駅降りて、金閣寺、清水寺、銀閣寺で周ろう。日帰りで楽しむのはこれくらいが限界だ」
咲姫「うん、わかった」
納得したようで、咲姫が頷いた。それと同時に、新幹線がここに止まるアナウンスが聞こえて、指定席のある車両が止まるところの前まで移動した。
無事新幹線に乗り、流れていく景色を眺めていた。移動している時は、こうやって移り変わっていく外の景色を見るのが楽しみである。
天「おっ、咲姫。陽葉学園が見えるぞ」
咲姫「本当。ここから見るととっても小さい」
身を乗り出して俺の隣で外を眺める咲姫。うーん顔が近い。しかも軽く息かかっちゃってますねぇ。
ここから京都までは大体2時間で着く。その間ずっと咲姫と話してたわけだが、こんなに長々と話せたことに俺自身が一番びっくりした。
京都駅に到着し、俺はうーん、と伸びをする。咲姫も真似して伸びる。可愛い。
天「いやー何とか着いたなー。時期が時期だから人もまーったくいなくていい観光日和だ」
観光シーズンはとっくに過ぎていて、人はまばらだ。人混みに押される事なく平和に観光ができそうで、心の中で安堵する。
天「んじゃ早速金閣寺行こうか。バスに乗って移動するからバス乗り場まで行こう」
咲姫「うん」
咲姫は頷き、俺の隣を歩く。が、目の前にチャラい男が立ちはだかった。え、何だこいつ(困惑)。
男「そこの可愛いお二人さん、俺と遊ばな〜い?」
まさかのナンパだよ。えぇ•••ここまできてナンパされるのも中々にすごいな。でも面白そうだからちょっと遊ぼ。
天「いやぁー怖ーい(裏声)(棒)」
できる限りの女声を出して咲姫の後ろに隠れる。俺のその気持ち悪い仕草が男には受けたのか、ニヤニヤとしてる。あーうっぜぇ殺してぇ(キレ気味)。
男「大丈夫何もしないから•••な?俺と遊ぼうぜ」
天「じゃ、じゃあしょうがないなぁ•••(裏声)ーー死ねやクソボケがぁ!(地声)」
突如声が男になって豹変した俺の姿を見て、男は困惑して為す術もなく俺にぶん殴られた。男はぶっ倒れてピクピクとしている。死んだかもなこれ(他人事)。
天「ったく、つまんねぇ事しやがって。行こう、咲姫」
咲姫「今の人、大丈夫かな•••?」
天「あんなクソ男の事なんて気にしなくていい」
あんなことしてきた男の心配するとか優し過ぎるだろ••••••。そこは素直に尊敬するけど、同じ思想になろうとは思わん。
バスに乗ってゆらゆら揺られながら移動する。というかバスがあるならもうちょっと観光できそうな気がしてきたが、いかんせんやる気が起きない。あまりにも時間が余るようだったら何処か行こうそうしよう。
金閣寺近くにバスが止まり、俺と咲姫は降りる。金閣寺の写真を撮り、周りを歩いて眺めていく。
咲姫「中学の時も訪れたけど、金色で綺麗」
天「そうだな••••••」
中学の時は金閣寺なんてまともに見ずに友達とギャーギャー騒いでただけだ。今見ると本当に綺麗であの時の俺を殴りたくなる。
またバスに乗って、次は清水寺に移動を開始した。金閣寺だけでもまぁまぁ時間を潰せたし、このままいけば予定通りになりそうだ。
咲姫「••••••お腹空いた」
天「あー•••もう少ししたら12時か」
腕時計を確認すると11時40分を示していた。清水寺の近くを降りたらまず昼食にしよう。
近くに飯屋があったのが本当に救いだった。だがわざわざ京都に来て海鮮丼とはどうなのだろうか()
俺も咲姫も店オススメのマグロ丼を頼んでしばらく待つ。出てきたマグロ丼は、赤身も中トロも大トロも乗った豪華なものだった。すんげぇ美味そう。
天•咲姫「いただきます」
手を合わせて、俺はマグロ丼にがっつく。ご飯には醤油が染み込んでいて、ご飯単体でも十分美味しい。こりゃ箸が止まらん。ひゃあああぁぁう゛ま゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!
天「トロの脂すごいな」
咲姫「口の中で溶けて美味しい•••」
咲姫はマグロ丼に満足いただけたようだ。本当に美味しそうに食べている。••••••なんか、ご飯食べてる娘を見るような気分だ。俺と咲姫同い年だけど。
腹一杯に飯を食って、清水寺を訪れた。床を踏むと、少し軋んだ音が鳴り、この寺の歴史を感じさせる。清水寺から眺める景色は、緑がたくさんあってとても綺麗だった。一昨日話した通りにおみくじも引いてみた。結果は、またもや小吉。それに対して咲姫は大吉だった。ちくせう。しかも咲姫がむふっ、と軽くドヤ顔したのがウザかったのでほっぺたをむにむにしてやった。
またバスに乗り、次は銀閣寺へと向かう。ちなみに俺は京都で一番好きなのは銀閣寺だ。何故って、あの渋い見た目がいいからに決まってんだろ?
銀閣寺近くのバス停でバスが止まる。俺たちは降りて、歩いて銀閣寺へと向かう。
咲姫「楽しい時は、時間が経つのが早い••••••」
天「そればっかりは仕方ないさ」
不満を口にする咲姫を嗜めながら銀閣寺を眺めて、写真を撮る。よしよし、撮れた撮れた。近くにあるでっかい岩も写真に納めて、満足する。欲を言うなら銀閣寺の中とかに入りたいが、無理なんだなこれが。あー入りてぇ(願望)。
観光は終わり、京都駅近くまで戻ってきた。少しだけ時間があるので、近くの八ツ橋店を訪れた。みんなへのお土産に買って行こう。
咲姫「•••••••••」
何やら咲姫が一つの八ツ橋をジーっと見つめているが•••みかん味の八ツ橋か。いかにも咲姫が好きそうなのが出てきた。俺は苦笑し、店員にーー
天「すみません、試食とかってできますか?」
と、訊いた。店員の方はにこやかに頷いて、小さく切ったみかん八ツ橋を持ってきてくれた。
咲姫「美味しい•••みかんの味がする•••」
そりゃみかん味って謳ってるわけだし、多少はね?俺も何か気になるものがないか探す。••••••鯖味ってなんだよ••••••。とりあえず一番気になるミルク味を試食した。うっめ。
咲姫「私も食べていい?」
天「あぁ、いいぞ」
咲姫「あーん•••」
うんわかってた。今二人っきりだししてくるんじゃないかとは思ってたよ。やれやれといった感じに咲姫の口の中にミルク八ツ橋を入れる。
咲姫「これも美味しい•••」
天「みかん味ちょっと気になるからもらっていいか?」
咲姫「うん、もちろん。はい、あーん」
天「えぇ•••あ、あー•••ん」
何故か俺にも同じ事をされる。うん、みかん味、美味いよ。でもアレのおかげでそこまで味がよくわからなかった。
結局種類があまりにも多くて決まらないので、店員のセンスに頼った。そして時間もちょうどよくなったので、新幹線に乗り、京都に別れを告げた。
新幹線から外の景色を眺めていると、肩に何かが乗っかる。横を見てみると、咲姫が俺の肩に頭を乗せて眠っていた。散々歩いたからきっと疲れたのだろう。俺は微笑み、その綺麗な白髪を撫でる。
天「今日はありがとうな•••おかげですごく楽しかった」
眠ってて感謝の気持ちなど届かないとわかっていたが、礼を申しておく。そしてこっそり寝顔を撮ってノアさんに送りつけておいた。返信が来た。
ノア『え、なにこれ尊い、カワイ過ぎる•••もう悔いはない』
と帰ってきた。••••••相変わらずすぎて、俺はどんな顔をしていいかわからず、唇が歪んで変な顔になった。
というか明日アイ込め届くやん!小説書く時間?ゴリ押しで作ります()