お互いに信頼できる仲っていいっすねぇ^〜
もう学校は終わった時間だろうか。時計を見ると大体放課後になっているとは思うが、メイデンのみんなはレッスンがあるし恐らく来ないだろう。月の帰りを素直に待つか••••••。
••••••携帯が鳴った。俺は嫌な予感を感じながら手に取って開く。
月『今日は急遽塾に行く事になりました。辛いかもしれないけど頑張って』
天「•••••••••オイオイオイ死んだわ俺」
完全に詰みが確定しました本当にありがとうございました。••••••うっそだろ、おい。ベッドから出るのすらクソキツい状況でこれは酷だぞ。えぇ••••••(困惑)風邪治ったら月が行ってる塾ぶっ壊そうかな•••割と真面目に。
ええぇぇ、どうしよう。多分明日には風邪治るのは確定なんだよ。でも飯も食えてない、風呂も入れてない。そんな状況で明日迎えるとか嫌すぎる。
ピンポーン。
インターホンが鳴り、俺は重たい身体に鞭打って動かす。壁にもたれかかりながら、引きずるように歩いて、玄関を開ける。
咲姫「天くん、大丈夫•••?」
天「•••さ、き••••••?」
目の前には、来るはずのない彼女が立っていた。おいおい、レッスンはどうしたんだよ••••••俺よりもまずライブの練習だろ••••••?そう思っていても、口には出なかった。いや、出せなかった。目の前にこの子がいて、安心して、注意なんてできなかった。
俺の額に咲姫の手が触れる。身体がキツくて妙な感覚なんて全く気にならない。だが、咲姫の手は冷たくてとても気持ち良かった。
咲姫「すごい熱•••。早く中に入ろう」
天「••••••あぁ」
咲姫に支えてもらって、自室まで赴く。ベッドに寝転がり、今更になって自分の身体に無理をさせた事を実感する。
咲姫「あ、お粥•••もしかして、何も食べてないの?」
天「あぁ、キツくてそれどころじゃなかった」
咲姫「今はどう?」
天「咲姫が来て安心したから、食べられそう」
咲姫「わかった。すぐに温めてくる」
お粥を抱えて、咲姫は部屋を出た。また寂しい時間が訪れるが、今度はすぐに戻ってくると確信があるので、そんなに心細くなかった。
しばらくして、温めたお粥を持った咲姫が戻ってきた。俺の前に座って、スプーンで掬って俺の顔の前まで持っていく。
咲姫「はい、あーん」
まぁ、この状況だと変ではないと思うので、好意に甘えるつもりで食べた。
咲姫「美味しい?」
天「腹減ってたからな•••美味い」
咲姫「良かった。もっと食べて」
天「ちょ、そんなに一気に押し込むな•••」
どんどんお粥を俺の口の中に運ぼうとする咲姫。俺の口内はそこまで広くねぇんだぞ。すぐキャパオーバーするわ。
天「というか••••••練習の方は良かったのか•••?ライブも近いんだし、休めないと思うが•••」
咲姫「ライブも大事。だけど、まず天くんの体調が心配だった•••」
天「別に俺の心配しなくても、月がいるんだsーー」
咲姫「今日、月ちゃん帰ってくるの遅いでしょ?」
天「•••••••••なんで知ってるんだ」
咲姫「月ちゃんがうちの学校に来てまで私にお願いしてきた。『お兄ちゃんは絶対私以外に頼ろうとしないから様子を見てください』って」
天「はは、そっか••••••やっぱり月にはお見通しだったか•••」
本当によくできた妹だな。帰ってきたら、抱きしめて頭を撫でてやろう。あの子はこれをするとよく喜ぶ。
咲姫「天くん」
天「な、なんだ?」
やけに真剣な面持ちで俺を見つめる。というか、少し怒ってる?
咲姫「いつも私たちは天くんに頼ってる。だから天くんも私を、私たちを頼って」
あぁ•••そうか。俺は彼女たちの為にずっと動いていたが、俺自身が彼女たちに甘えた事なんて一度もなかった。変な馴れ合いはいらないと、自分に言い聞かせて変に関係を発展させない為に。その結果が大事な時に頼る事もできないバカに成り果てたわけだ。我ながら情けない。
天「悪かった•••そうだったな。自分一人で何でも片付けようとして、いざ自分がダメになったら頼る事もできなかった••••••なぁ、咲姫」
咲姫「どうしたの?」
天「もうしばらく、お前に甘えてもいいか?」
咲姫「うん、もちろん」
天「••••••ありがとう」
ベッドの中に潜んでいた手を伸ばして、咲姫の頭を優しく撫でた。ほんのり咲姫の頬が赤くなったのを感じたが、嫌そうではなかった。
咲姫「••••••陽だまりの様に温かい色」
天「?」
咲姫「さっきまでは不安だらけの真っ黒だったけど、今はとっても温かい色」
天「今は滅茶苦茶安心してるからな••••••身体辛い中で一人ってのは結構キツいよ」
俺は苦笑を浮かべながらも、咲姫の頭を撫でる手を止めない。
咲姫「今日は月ちゃんが帰るまでいるから、して欲しい事があったら言って」
天「あぁ。じゃあ早速だけど、話し相手になってくれないか?朝っぱらからずっと暇で暇で仕方なかった」
咲姫「うん。天くんのお話、いっぱい聞かせて欲しい」
咲姫は快く頷いた。俺はそのまま暗くなるまで咲姫と色んな事を話した。ライブの事や、楽しかった事、また何処かに出かけようなど••••••。とても楽しい時間を過ごした。
月「ただいまー」
月が帰ってきて、俺と咲姫はハッとする。気がつけば夜になっていた。
咲姫「話し込んじゃった•••そろそろ帰らないと•••」
月「お兄ちゃんただいまー。あ、咲姫さん。お兄ちゃんのお世話ありがとうございました。夕飯も食べて行きませんか?」
咲姫「え、えっと•••」
月「ダメ•••ですか•••?」
上目遣いで月は咲姫を見つめる。身長差もあって自然な上目遣いになった。咲姫はまだ迷ってるようで、うーんと唸っている。
咲姫「天くんは••••••」
天「え、俺?」
すっかり回復した俺は首を傾げる。いやでもこの時間帯まで娘さんをお預かりするのは、ご両親に常識を疑われそうだしなぁ••••••でも咲姫と飯を食えるというのは魅力的だ。
天「咲姫と夕飯を食べられるのはいいと思うけど、咲姫のご両親にめいwーー」
咲姫「ここでご飯食べる」
月「ナイスゥ!」
月が俺にサムズアップして、ウキウキ気分で一階に降りていった。
天「お、おい、本当にいいのか?」
咲姫「うん。お父さんもお母さんも多分許してくれると思う」
いや多分って••••••確証ないんかい。とりあえず両親に電話をすると言って咲姫は部屋の外に出た。
気分も良くなったので携帯を開くとめっちゃラ◯ンに通知きてた•••。みんな心配の旨のメッセージを送ってて、少し嬉しかった。
咲姫が戻ってくる、やけに嬉しそうな表情でまたベッドの隣に座った。
咲姫「OK貰った。一緒にご飯食べられる」
天「ん。なんかいつも通りになってきたな。咲姫と飯食べるの」
咲姫「あーんも•••」
天「月がいるから今日はやめろよ?」
先にその話題を出してくれて助かった•••。月にあんな場面見られたら今後マジで面倒な事になる。次の日から生きていけない屈辱を味わうことになるだろう。
咲姫「天くんは料理しないの?」
天「あぁ•••簡単なのは作れるけど、一回キッチン燃やした事あってそれからキッチンは出入り禁止になった」
咲姫「ふふっ」
天「あっ、今笑ったな?」
咲姫「だって、天くんが意外とダメダメだから•••」
うっさいわい。今はできるからええもん。
天「そういう咲姫はできるのか?料理」
咲姫「今衣舞紀さんから教わってるところ。少しずつできるようになってる」
へぇー、料理教えてもらってるのか。誰かに弁当でも作るつもりなのだろうか。まさか咲姫の彼氏か•••!?どんなイケメンだ!?
天「ご両親に作ってあげるのか?」
咲姫「お父さんとお母さんにもだけど••••••もっと大事な人に作ってあげたい••••••」
あっ、これは彼氏いるな。よしよし、うちは恋愛OKだしバンバン付き合え。愛は人を強くするからな。もうこの赤らんだ頬なんて確定だ。一回会わせて欲しいなぁ、イケメンだったら是非仲良くなりたいものだ。
月「ご飯できたよー?」
天「お、んじゃ行くか」
咲姫「うん」
俺はベッドから降りて、一階に咲姫と一緒に向かった。リビングに入ると、月が温かい夕食を用意して待っていた。
月「ーーそれで、高校大学一貫のところに行かないかって薦められてね」
天「どうしたいかは月に任せる。俺らの高校に来るもよし、更に学力アップさせる為に遠くに行くもよし。授業料とか出すぞ」
月「金銭面はお兄ちゃんにお世話になりっぱなしになっちゃうなぁ•••今もそうなんだけどさ」
咲姫「神山家は天くんがお金を管理してるの?」
月「お父さんもお母さんもお兄ちゃんもみんな稼いでて•••誰が管理してるとかは全くないんですけど、お兄ちゃんが私の為に自分の分を削ってまで払ってくれるんです」
天「金余ってんだし、使うなら月の為の方がよっぽどいいわ」
味噌汁を飲みながら俺は口を出す。月は、はぁ、とため息をついて俺にジト目を向けてきた。
月「お兄ちゃんは私を子供扱いしすぎなの。高校に入ったらバイトくらいするよ」
天「そんな事考えなくていいから甘えとけって。その方が嬉しい」
月「うーん••••••これはダメだなぁ。人をダメにするマシンの誕生だね。好きな人できたらとことん貢ぎそう」
天「そんなマヌケな真似はしねぇよ。パパ活対象のおっちゃんじゃねぇんだから」
月「あの、仮にも女の子がいるところでその発言はどうかと思うよ•••?」
咲姫「私は気にしない。天くん、学校で友達とこれより酷い事言ってるから」
月「例えば•••?」
咲姫「セックsーー」
天「はいストップ」
咲姫「んふっ」
俺が言う分にはいいが咲姫にその発言をさせるのはまずい。全て言う前に口を塞いだ。
月「お兄ちゃん••••••男子校じゃないんだから自重しようよ••••••」
天「仕方ないだろ••••••一緒にそう言う事しようやーってお誘いくるもんだから言い返す分でさぁ」
月「お兄ちゃんの高校行くのやめようかな••••••」
多分ヤベーのが集まってるのはうちの学年だけだろ。他学年まであんなのがいたら学校崩壊する。
咲姫「天くん、クラスの女の子からモテモテだよ」
月「やっぱりですかー?うちのお兄ちゃん、可愛くてカッコいいですからねー!」
何故そこでお前が胸を張るんだ。••••••まな板だなぁ。
月「お兄ちゃん後でね♡」
天「ひっ」
月からとんでもない殺意の波動を感じて怯えてしまう。というかなんで心の中読まれたの?こいつエスパーなの?怖っ。
咲姫「とても仲良しだね」
月「えへへ〜そうでしょう。私たちラブラブ兄妹ですから!」
天「まぁ普通普通」
月「世の妹は私みたいに兄に甘えたりしません」
真顔で月はキッパリ言いのけた。え、そうなの••••••?月みたいな妹が普通だと思ってたわ•••。
月「お兄ちゃんは私の存在を感謝するといいさ!」
天「へいへいあんがと」
月「心を込めてもう一回!」
天「ありがとうございまーーす!!」
咲姫「ふふっ、ふふふ、あはは!」
堪えきれない、と言うかのように咲姫が声に出して笑った。俺たちも釣られて笑ってしまう。というか、咲姫•••そうやって笑う事できたんだな••••••(クソ失礼)
月「こんなに楽しい夕食は久しぶりだよー!」
天「あぁ。こんなに笑ったの、久しぶりだ」
その後の夕食も、大いに笑って楽しんだ。今まで忘れていた、食事の楽しさというのを取り戻したかもしれない。
晩飯を食べ終えたので、咲姫を家まで送り届けていた。
咲姫「ごめんね、ここまで付き合わせちゃって」
天「いいよ。今日の晩飯楽しませてもらったし」
俺の家から咲姫の家まで大した距離はない。十五分ほど歩けば着くほど近い。
咲姫「今日はありがとう。おやすみなさい」
天「あぁ。こっちこそありがとうな。おやすみ」
ぽふっ、と咲姫の頭に手を乗せて撫でた。咲姫は頬を緩ませて静かに目を閉じた。
咲姫「天くんのそれ、気持ちいい•••」
天「ん、そっか。でもいい加減帰らないと。風呂入らないといけないし」
咲姫「うん。今度こそまたね」
天「あぁ。じゃあ、また明日学校で」
俺は咲姫に手を振りながら走る。手を振り返していた咲姫は俺の姿が見えなくなると、振っていた手を止めて、自身の頭に乗っけた。
咲姫「えへへ•••」
自然と出たのかもしれない嬉しそうな声は、夜空に溶けて消えた。
明日はリア友と遠くまで自転車で出掛けてから書きますかねぇ•••でも今週は部活で忙しいから書けるかわかんねぇ•••(引退者)