月「咲姫さん彼氏いるの?」
天「あぁ、多分だけどな。衣舞紀さんから弁当の作り方とか教わってるみたいだし、昨日も大事な人に作りたいって言ってたから」
月「そうなんだ、誰だろうね(それ、お兄ちゃんの事じゃ••••••?)」
朝の卓で、俺と月は一緒に朝食を食べながら昨日の事について話す。月は疑わしい顔を向けていたが、それに対して俺は無表情だった。
天「でも、付き合ってる人がいるならそれでいいんだ。それでDJ活動のモチベーションが上がってくれれば上々なんだから」
月「お兄ちゃん、やたらと芸能人とかそこら辺の人たちの恋愛に寛容だよね」
天「愛は人を強くするからな。特にアイドルとかの活動は本人の精神状態がパフォーマンスを左右するんだから、出来る限りストレスなくいて貰わないと」
月「今後のお兄ちゃんの行動次第で咲姫さんのストレス関係は変わるけどねー」
天「••••••どゆこと?」
訳が分からず首を傾げた。そりゃ俺の行動次第でメンバーの精神状態は少なからず変わるだろう。だが何故月が咲姫に限定したのかがわからない。
月「今のお兄ちゃんにはわからないよねー。何せ女心を知らないどころか付き合った事すらないんだから」
天「うぜぇなぁ••••••俺の恋愛事情はどうでもいいだろ」
月「私は家族として兄の将来が心配なのです!ちゃんといい人見つけてくれないと困るの!」
えぇ•••(困惑)別に俺が相手見つけようが見つけまいがどうでもいいと思うんですけど••••••。少なくとも俺は恋愛に関しては無頓着だ。あまりに精神的にヤバイ時は作ろうかな•••()
天「今日は仕事多くなるなぁ•••昨日風邪で休んでた分があるから」
月「頑張ってね〜応援してるよ〜」
天「殴っていい?」
月「なんで!?」
なんか顔がうざったらしいからだけど。こいついっつも表情変わってんな•••顔疲れないのか?
制服に着替えて準備を整える。鞄を持って玄関を出た。月と話してて遅くなったので、少し走りながら学園へと向かう。
通学路はちょうど仕事に向かっているであろうサラリーマンで溢れかえっていた。ぶつからないように躱しながら走り、陽葉学園に到着する。教室にサッと入り、椅子にドカッと座った。
焼野原「おう神山、おはよう」
天「あぁ、おはよう。お前が話しかけてくるなんて珍しいな」
後ろの席の焼野原くんが俺に挨拶をしてきた。無難に返して話題を繋げる。
焼野原「お前が風邪を引くからビックリしたぞ。いつもあんなに元気なのに」
天「俺、そんなに普段元気に振る舞ってねぇと思うんだけど」
焼野原「言われてみればそうだった。ところで、今度裸祭りあるんだけど来る?」
天「ところで、で出す話題じゃねぇんだけど!?裸祭りって何だよ!前も裸踊り祭り誘われたから尚更謎だわ!」
俺もう転校していいか••••••?もうやだこのクラス••••••。露出狂しかいねぇじゃんか••••••(涙目)。
焼野原「でも昨日は出雲さんがずっと元気なかったんだよな」
天「咲姫が?」
焼野原「そう。しれっと名前呼びなのは後で問い詰めるとして、先生から指名されても気がつかなかったり、ずっと座ってて動かなかったり」
天「咲姫がそんな状態に••••••?心配だな••••••」
焼野原「それで神山が休んだ事に関係があるんじゃないかと思ってさ」
天「俺が?はは、ないない。咲姫、彼氏いるだろうし彼氏がなんかあったんだろ」
焼野原「出雲さん彼氏いんの!?」
焼野原くんが大声をあげながら席を立った。周りの視線が俺たちに集中するが、すぐにみんな友達とかと話し始めた。
焼野原「悪い、取り乱した。え、本当に•••?出雲さんに彼氏•••?」
天「確定ってわけじゃないけどな。昨日俺が風邪引いて休んだ時見舞いに来てくれたんだが、それっぽい発言がたくさん出てきた」
焼野原「マジか••••••出雲さんに看病された事に関しては殺すとして、殺すとして•••!」
殺意隠し切れてないぞ焼野原くん。めっちゃ血走った目向けてくんじゃん()普通に怖いよ。
焼野原「でも神山は出雲さんの所属してるDJグループのマネージャーしてるんだろ?相手がどんな人か確かめてくれよ」
天「一応訊くけど確かめてどうするつもりだ?」
焼野原「ぶっ殺す」
過激派じゃねぇか。俺的には咲姫は幸せに交際を続けて欲しいので後押しは全力でさせてもらおう。
天「あんまり彼女たちのプライベートには踏み込まないようにしてるんだ」
焼野原「相当いい立場にいるのにもったいないな」
天「バカか。その立場にいるからこそ責任が大きくなるんだよ。それに俺の仕事は彼女たちのサポートだ。変に踏み入って精神的に傷がついたら後々ダルい」
焼野原「あっそっかぁ(納得)真面目に仕事してたんだな••••••」
天「流石の俺も怒るぞ?今すぐここから叩き落としてもいいんだけど」
焼野原「お前が言うとガチにしか聞こえないからやめてくれ(懇願)」
なんかどんどん俺に対して怯え始めたので雰囲気を柔らかくしてみた。が、あまり効果はなかった。
昼休みになり、俺は一足先に屋上へと向かった。ベンチに座り、咲姫が来るのを待つが、中々こない。あれ?まだ俺を探してるとかじゃ、ないよな••••••?
携帯が鳴った。手に取って見ると、咲姫••••••ではなく知らない番号だった。ちょっと怖いが一応出よう。
天「もしもし、神山です。••••••あぁ、はい。Photon Maidenをですか?是非お願いします。はい、ありがとうございます。••••••え?あぁ••••••考える時間をください。かけ直します。はい、はい。失礼します」
電話を切り、俺は真っ青な顔でベンチにもたれかかる。
さっきの電話の内容。かなりデカい会場でのライブを誘われた。ドーム並みの規模だ。だが、それに参加する条件として、俺を電話先の会社の芸能人のマネージャーになれとの事だ。いや、正直美味しい話ではある。次の担当は今大人気のイケメン俳優だ。そのマネージャーと言うだけででかい顔ができる。俺に利益しかない話だ。
天「••••••Photon Maidenを捨てるかと言われたらなぁ••••••」
俺は唸ってしまう。今後の俺の薔薇色の人生を取り、彼女達を大きな舞台へと連れて行くか。もしくはPhoton Maidenのマネージャーを続ける代わりにまたとないチャンスを逃すか。
•••••••••答えは決まった。俺はPhoton Maidenのマネージャーを降りよう。後は姫神プロデューサーが俺より優秀なマネージャーでも寄越すだろう。
天「あーあ••••••意外と早いお別れになっちまうな••••••」
咲姫「お別れって•••?」
気がつけば目の前に咲姫がいた。俺は寂しそうに笑いながら咲姫に目を向けた。
天「俺、Photon Maidenのマネージャーを辞める事になった」
咲姫「••••••え••••••?」
持っていた弁当箱を咲姫は落とす。ゴトンッと音が鳴り、咲姫の表情は暗いものになった。
咲姫「•••どうして••••••?何か嫌な事でもあったの••••••?」
天「そういうわけじゃない。みんなの為に担当を降りるんだ」
咲姫「••••••どうして••••••」
天「さっき、電話が掛かってな。Photon Maidenをでかいライブに誘う代わりに、俺を別の人のマネージャーをするよう条件をつけられた」
咲姫「••••••じゃあ、断って」
天「何故だ?東京ドーム並みの規模のライブだぞ?出る事ができれば、Photon Maidenは更に上へ行く事ができる。俺が担当を降りるだけで成長できるんだ。これ以上の美味しい話はないだろ?」
咲姫「私は••••••天くんがマネージャーをしてくれないと、嫌」
俯いて、咲姫が声を絞り出す。だが俺の意思は変わらない。何がなんでも彼女達を導きたいのだ。
天「俺の最後の仕事はでっかい舞台でのPhoton Maidenの活躍をサポートする事だ。マネージャー冥利に尽きるよ」
咲姫「嫌、嫌•••天くん以外のサポートなんて、考えたくない••••••」
咲姫は泣いていた。瞳から流れる水が、頬を伝って地面に零れ落ちた。••••••ダメだ。ここで甘えを見せたら、彼女たちはいずれ後悔する。こんな男一人の慰留の為に千載一遇のチャンスを逃してしまったと、自分たちを責めてしまう。
天「ダメだ。これは俺の独断での決定事項だ。今更変える気はない」
咲姫「じゃあ私たちは、ライブに出ない•••そうすれば、天くんが辞めることもない」
天「だったら姫神プロデューサーにでも言って強制でやらせる。これはPhoton Maidenの今後の為だ」
咲姫「私は•••天くんじゃないと嫌!」
ついに、咲姫が声を荒げた。俺は唇を噛んで、心を鬼にする。
咲姫「天くんがいたから、私はここまで頑張れた!天くんが私たちの為にたくさん仕事を持ってきてくれた!天くんがいないと••••••Photon Maidenは壊れちゃう••••••」
何故だ。何故俺程度の人間がそこまで必要なんだ。俺より優秀で気の遣える人間なんて吐いて捨てる程いる。俺にこだわる必要なんて、何処にもないのだ。だからこそ、わからない。俺という存在が、咲姫の中でどういう立ち位置にいるのかも、さっぱりだ。
俺はベンチから立って、咲姫の横を通る。これ以上は話の無駄だ。放課後まで、事務所で姫神プロデューサーにこの事を話すまで、無視を決め込む。それが一番手取り早•••い•••。
咲姫「••••••だめ」
俺の制服の裾を、咲姫が握った。立ち止まって、身体の力が抜ける。
天「••••••さっきも言ったが、これはみんなの為なんだ。俺一人を代償に大きな舞台でライブをして、人気を集める事ができる。こんなに都合の良い話を何故、みすみす逃そうとするんだ」
咲姫は何も答えない。ただ震えて、ポタポタと涙が地に落ちて音だけを響かせていた。
咲姫「天くんは••••••」
天「••••••なんだ」
咲姫「天くんは、本当はどうしたいの••••••?」
今一番訊かれたくない質問をされて、胸がズキリと痛んだ。そうさ、本当は••••••本当は、マネージャーを辞めたくない。まだまだPhoton Maidenのマネージャーとして仕事を続けたい。ずっと彼女たちの行く末を見ていたい。
だがーー、
天「俺はみんなのマネージャーを辞めて、みんなを大きな舞台へ連れて行く」
俺の意思は変わらない。本音を押し殺してでも、彼女たちには上に向かって歩いて欲しいのだ。
咲姫「嘘つき••••••。天くんの色、すごく悲しい••••••ちゃんと、本音を聞かせて••••••」
天「••••••ッ、これが俺の本音だ!」
俺は大声を上げる。無理矢理心に感情を押し込めて、咲姫の言う「色」を他色にねじ曲げる。
天「俺は誰でも良いからマネージャーとして仕事をしたいだけだ!その仕事としてPhoton Maidenをライブへ連れて行ってた!別に辞めようが辞めまいが俺にはどうでも良いんだよ••••••!みんなの為なんだ••••••!俺がいなくなるだけで、お前らみんなが幸せになれる!」
咲姫「ならない!!」
天「••••••ッ!?」
今のは••••••咲姫の声なのか?彼女からは想像もできない、いや、ありえないような声量だった。
咲姫「そんなの、ただの天くんの自己満足!何も私たちの事なんて考えてない!ただ自分だけがスッキリ終わるように逃げてるだけ!今言った事も、全部建前なのはわかってる••••••!逃げないで、本音をぶつけて!私たち、仲間でしょ!?」
天「そんなこと••••••!••••••ッ!」
ギュッと、力強く自身の手を握る。血が滲むのではないかと、強く、強く握る。甘えるな、甘えるな。そう言い聞かせているのに、心がいう事を聞かない。言ってはダメだとわかっているのに、今ここで全てぶちまけたいと微塵でも思ってしまっているんだ。
天「本当は••••••!本当は•••••••••!!辞めたくない!!」
•••••••••俺の負けだ。ついに本音を漏らしてしまった。完全にタガが外れて、思いのままに全てを曝け出してしまう。
天「みんなの担当をしてて楽しかった!歓迎会とかみんなでライブの相談したりとか、全部が新鮮でまたやりたいなって思えた!咲姫の歌声は綺麗だし、DJプレイはすごくカッコよかった!また一緒に何処かに出掛けたい!衣舞紀さんとは一緒に走ったり筋トレしたり、お互いに高めあった!乙和さんとは一緒にクレープやお菓子を食べたりして、色んな事を話した!ノアさんとは一緒に本を読んで彼女のカワイイものについて聞くのが楽しかった!!本当は••••••辞めたくなんかない••••••!ずっとPhoton Maidenのマネージャーを務めたい••••••!!」
咲姫が俺を抱きしめた。感覚が暴走するが、そんな事が気にならない程に、俺の精神はズタズタのボロボロになっていた。情けなく涙を流して、膝から崩れ落ちて••••••咲姫のお腹に顔を埋めてしまう。
咲姫「私も••••••天くんと一緒にお出掛けするの、楽しかった•••また今度、何処かに行こうね」
天「あぁ•••!あぁ••••••!今度は、もっと遠くに行こう••••••!!」
声が震えて、まともに喋れているのかすらわからない。今はただ、咲姫の優しさに、温かさに甘えたかった。今だけは、普段の仕事のできる俺は捨てて、何もない、年相応の弱い自分に戻った。
毎度思うけど毎話投稿する度に感想くれる兄貴天使過ぎない?マジで掘れs間違えた惚れそう。これ読んでくれてるそこのあなた!感想と評価してくださいお願いします何でもしますので!(何でもするとは言ってない)