今日は気分を変えて、学園内にある庭の喫茶店にあるようなテーブルと椅子を拵えた所へ赴いた。流石に毎日屋上は飽きる。人目を気にしなくていいという利点はあるが、それでも飽きるものは飽きる。
椅子に座って弁当箱を広げた。相変わらず咲姫の弁当は少し崩れている。
咲姫「あーん」
以前の咲姫ならこんなことはしなかったが、今は恋人同士だ。人目があろうとなんだろうとお構いなしにやってくる。そして相変わらずの交換弁当スタイル。ちなみに卵焼きだけは甘いのを咲姫の為に用意しておいた。
天「••••••流石に少し気になるな••••••」
俺と咲姫の光景は珍しいようで、周りからの視線が集まっているのがひしひしと伝わってくる。
咲姫「私たちは付き合ってるから、気にしなくてもいいと思う」
天「いやまぁそうなんだろうけどさ。どうしても気になるんだよ」
他人の目を気にしていても他人は大して見ていないと言うが、あまりにもわかりやすく見られているのでなんだかこそばゆい。
猫「にゃー」
天「ん?」
動物の鳴き声がして下を見ると、猫が近くにやってきていた。もしかして学園内に迷い込んだのか•••?
咲姫「猫••••••」
咲姫の視線が猫に釘付けになった。とりあえずどうにかして学園の外へ帰さないとな。いきなり抱っこはキツいだろうから、まずは慣れさせないと。
俺は手を猫の目の前に出した。猫は興味あり気に俺の手を見たり、匂いを嗅いだりしている。多少慣れ始めた頃を見計らって、顎に指を走らせた。
天「ゴロゴロ言ってる•••」
猫「にゃーん」
とても気持ち良さそうな顔をしている猫が可愛くて、更に頭も撫でてやる。あー気持ちいい。モフモフ最高だぜ。
さて、そろそろかな。俺は猫の身体に腕を持っていき、抱き上げた。結構大人しいな。暴れないし降りようともしない。
猫「にゃー♪」
天「お、なんだ?抱っこされるの好きか?」
猫の嬉しそうな鳴き声が可愛くて、俺もつい笑ってしまう。
パシャッ。
咲姫「••••••」
天「おい、今撮ったよな?」
咲姫「うん、可愛かったから」
それは••••••猫の事だよな?猫だよな?なぁ?(疑心暗鬼)
天「咲姫も触るか?」
すっかり俺の腕の中で大人しくなった猫を咲姫に向ける。咲姫は頷いて、恐る恐る慎重に猫に触れる。
咲姫「可愛い•••」
天「ホント大人しいなこいつ。飼い猫じゃないだろうな?」
咲姫「でも首輪とかしてないし•••野良かも」
でも飼い猫みんながみんな首輪をしているとは限らないしなぁ••••••飼い主がいるならそれにこした事はないが。
天「とりあえず学園の外に運ぼう。ここにいてもいずれ追い出されるし」
咲姫「うん、そうしよう」
俺は猫を撫でながら校門の外まで出る。そこで猫を降ろすが、肝心の猫は俺にべったりくっついて離れない。
天「こらこら、いつまでも俺の所にいるなよー」
それでも可愛いからつい甘やかしてしまうのだけど。猫って可愛いよなーいいなー。飼いたいけど、うちペット禁止だからなぁ•••もしこいつが野良なら今すぐお持ち帰りしたいところではあるのだが••••••。
咲姫「•••••••••むぅ」
ずっと猫と遊んでいる所為か咲姫が不満そうな顔で俺を見ている。
天「咲姫も猫と遊びたいか?」
咲姫「今はいい」
なんか拗ねてる•••?少し不機嫌そうにそっぽを向いた。っと、これ以上猫と遊んでたら昼休みが終わってしまう。
天「悪いな。もう遊べない」
猫「にゃぁ?」
猫は首を傾げて座っている。少し申し訳なさを感じつつ、俺は咲姫の手を引いて学園内へ戻った。
天「はぁー、猫に触ったの久しぶりだなぁ•••相変わらずモフモフで可愛かったぁ」
まだ手に残る猫の感触が愛しい。できることならもっとモフりたかった。
咲姫「••••••••••••」
天「•••どしたの?」
ずっと黙ってる咲姫に俺は嫌な予感を感じて声を掛ける。咲姫は俺の制服の裾を握って上目遣いで俺を見た。
咲姫「猫の相手ばかりで私のこと見てなかった••••••」
•••猫に嫉妬したのか、この可愛い恋人は。俺はたまらず噴き出してしまった。
天「ぶっふぁ•••!いくら何でも猫にヤキモチ焼くのはすごいな••••••!」
咲姫「ーーッ!わ、私は本気•••!」
天「あぁ、悪い悪い。ちゃんと咲姫の事も見てるから」
猫を撫でた時と同じように、咲姫の頭を優しく撫でる。それで少し機嫌が良くなったようで、表情が柔らかくなった。
男子生徒D「なんかめっちゃイチャついてるんですけど!?」
男子生徒E「あれ、一年生の出雲と神山だよな•••?付き合ってたのか•••」
ノア「カワイイの極み•••!」
男子生徒D「福島!?」
なんかあっちの方にノアさんいるやんけ。声掛けようかなと思ったが、座って飯食ってる男の人になんか熱弁してるっぽいのでほっといた。
咲姫「ギュってしてほしい•••」
天「ここでは無理」
俺が恥死するのでお断り願った。またムッとした顔をされるがお前はいいのかそれで。恥ずかしくないの?ねぇ?
天「というか早く飯食べないと昼休み終わるぞ」
咲姫「そうだった•••急ごう」
まだ多少時間はあったので、急ぎながらもお互いに弁当を食べさせた。もうこれバカップルだろ。なんか急にすっごい恥ずかしくなった。
今日の仕事はパッと終わったので、咲姫たちが終わるまで仕事部屋で音楽を聴きながら目を閉じていた。俺はPhoton Maidenのマネージャーだが、だからと言って必ずユニットの曲を聴いているわけではない。俺にだって音楽の趣味はある。わざわざボーカルアルバムを買ってまで聴く程にはハマっているのだ。大体は月課金制のストアですませるけど。
天「••••••朝まぁだぁーきぃ弾ぅむぅ•••鳥の声••••••」
つい口ずさんでしまう程にハマっている曲だってある。ちなみにこの歌詞だけで何の曲かわかったらすごいよ。ヒントは作者の趣味から探して。
天「(••••••朝月にからかわれたやつがまだ残るな••••••)」
キスとかの催促が頭の中にこびりついて離れない。いや、本当はキスしたいよ。恋人なら当たり前のようにするのだから、ねぇ?セックス?それはまだまだ先のお話でしょ。
ノア「天くん、寝てるの•••?」
天「えっ•••?あぁ、ノアさん。休憩ですか?」
ノア「そうだよ。天くんは何してるの?」
天「今日の分の仕事が終わったので、音楽を聴いていました」
俺は淡々と答える。決して音楽を聴くのを邪魔されたからイラついているわけではない。単純に眠たいからだ。さっきも、ノアさんに声をかけられなければそのまま寝落ちコースを辿っていただろう。
ノア「だったら帰っても大丈夫なんじゃ?」
天「咲姫待ちです」
ノア「あぁ、咲姫ちゃんね。ちゃんと終わるまで待ってあげてるんだ、優しいね」
天「勝手に帰ったって知れば絶対機嫌悪くしますから、咲姫は」
ノア「確かにそうかも。咲姫ちゃん、天くんと付き合い始めたからなのかな?一段とカワイくなった気がするんだよね」
ノアさんは思い出したかのようにそのような言葉を口にした。俺はわかるようなわからないような、そんな微妙な反応しかできなかった。
ノア「天くんに気に入ってもらう為なのかはわからないけど、やたらと天くんの理想になろうとしてるなぁ、とは思うの」
天「あぁ、そういう••••••だったら咲姫に言っといてもらえますか?」
ノア「いいよ。何て伝えればいい?」
天「『俺は咲姫を好きになったんだから、俺に合わせて変わってしまったらそれは違う存在だ』と、お願いします」
ノア「おぉ•••なんかカッコいいね天くん••••••」
天「そうですか?俺は出雲咲姫を好きになったんです。俺の理想は今の咲姫だから、変わってしまう方が困りますよ」
ノア「咲姫ちゃんの事、大事にしてるんだね」
天「当たり前じゃないですか、大事な恋人なんですから」
俺は少し笑いながら言葉を返す。ノアさんもそれに釣られたのか、笑った。
ノアさんは部屋を出て行った。俺はヘッドホンを装着し直して、また音楽へと耳を傾けた。
あれからどれくらいの時間が経っただろうか、知らない内に夢の中へと向かっていた俺は、目を開ける。
咲姫「あっ」
目の前には咲姫の顔があった。かなりの至近距離で、あと少し近づけばくっついてしまう程だ。
天「俺、どれくらい寝てた?」
咲姫「天くんがいつ寝たかはわからないけど••••••私たちのレッスンが終わるまでは眠ってたみたい」
天「あ、じゃあ他のみんなはもう帰ったのか」
咲姫「うん、スタッフさんとかはまだ残ってるけど」
俺は椅子から立ち上がって身体をゴキゴキと鳴らす。座りながら寝てたから身体が少し固まっているようだ。
天「んじゃ、帰りますかね」
咲姫「うん」
俺が差し出した手を、咲姫は握った。二人で事務所を出て、帰路に着く。
咲姫「天くん、ありがとう」
天「急にどうした?」
突然の感謝の言葉。俺は訳がわからず頭に疑問符を浮かべた。
咲姫「ノアさんから聞いた。『天くんは今の私を好きでいてくれるから、変わらなくていいよ』って。それがすごく嬉しかった」
天「なんだそんな事か。そりゃなぁ。今の咲姫を好きになった訳なんだし」
するり、と咲姫の手が俺から離れた。数歩前に出てそれに反応したのでそこから身体を振り向かせた。月の光に照らされている咲姫はとても綺麗で、どこか神秘的なモノを感じさせた。
咲姫「私、天くんの恋人でよかった••••••」
天「な、何だよ、恥ずかしいだろ•••」
そんな真っ正面から言われるのは慣れない。少し顔を赤くして逸らしてしまう。その直後に俺の身体に衝撃が走る。咲姫が俺に抱きついたからだ。
••••••俺の身体、完全に耐性ができたな。感覚が暴走していない。もしかしたら咲姫だからここまでされてもセーフなのかもしれないが、今はそんな事はどうでもいい。咲姫を抱きしめ返して、後頭部を撫でる。
咲姫「ずっと大好きだよ、天くん」
天「あぁ。俺もだ、咲姫」
そしてどちらからでもなく、俺たちは唇を重ねた。咲姫の唇はとても柔らかくて心地が良かった。
咲姫「んっ•••ちゅ、ん」
そんなすぐには終わらせるつもりもないようで、咲姫はどんどんがっついてくっついてくる。俺も仕方なくそれに付き合って、お互いに満足するまでキスをし合った。
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