放課後になり、俺は荷物を抱えて一度家に帰ってスーツに着替える。今日は大事なライブの交渉があるのだ。ビシッとキメて臨まなければならない。交渉先は横浜アリーナだ。収容人数は17000人。東京ドームの規模には遠く及ばないが、もしここでのライブを成功させれば、上手くいけば東京ドームも視野に入れる事ができる。
もう一度家を出て、俺は駅に直行する。改札を通って、新幹線に乗り込む。外の景色をボーッと眺めながら到着を待つ。まぁニ十分程度で着くんだけども。
新幹線を降りて新横浜駅を出る。そこから歩いてすぐに横浜アリーナはあった。何日も前から交渉する件は話していたので、アリーナの前には人が立っていた。
天「ネビュラプロダクションから参りました、神山です」
男「神山様、ですね。どうぞこちらへ」
俺は黒服の男の人に通されて、控室らしきところに入れられる。中にはたくさんの人たちがテーブルを前に座っていた。
社長「やぁ、神山さん。お待ちしておりましたよ」
天「失礼します」
社長に頷かれ、俺は席に着く。さて、さっさと終わらせないとな。みんなには仕事で少し離れるがすぐに戻るとは伝えてある。だからわざわざ横浜までライブの交渉に行ってるとは思ってもみないだろう。彼女たちの反応が楽しみだ。
天「早速本題に入りますが、近いうちに•••我がネビュラプロダクションに所属するDJユニット、Photon Maidenの単独ライブをする為にこの横浜アリーナを使わせていただきたいと思っています」
社長「ほぉ、DJですか。神山さんがマネジメントを務めているユニットなのでしょう?知名度等はいかがなものか」
まぁ、流石にそんな簡単にはいかないか。それは分かりきっていた事だし、逆にスッと決まってしまってはこっちが驚いてしまう。
天「知名度ですか•••それはもう有名と言えます。つい一、二週間程前に都内の来栖スタジアムでライブをしました」
社長「あの来栖でですか?それは中々••••••しかしそれは単独などではなく、他のアーティストも交えてのものでしょう。ここの収容人数は17000人、客席は11000もあります。とてもユニット一つでここまでの人を集めるのは厳しいのではありませんか?」
そこを突いてくるかぁ••••••まぁぶっちゃけ人は確実に集まる。Photon Maidenがこれまで築き上げたものを考えれば、17000人なんて数、余裕だ。
天「その程度の数であれば、うちはいけますよ。なんてったってPhoton Maidenですから」
この言葉には大きな確信があった。『Photon Maiden』という看板がある限り、人は自ずと集まってくる。何度もライブを繰り返してたくさんの人たちにその存在を知らしめた今こそ、新星なんて関係ない、大きなユニットとして君臨しているのだ。
社長「すごい自信ですね•••いや、神山さんは今までたくさんの人をこのような舞台に連れてきています。それを考えたら、納得ですね」
天「では•••?」
社長「横浜アリーナでのライブ、やりましょう。そして必ず成功させてください」
天「••••••!ありがとうございます!」
俺は席を立って思い切り頭を下げた。もうこれは勝ち確だ。その後、ライブの日程などを話し合って俺は満足した気分で新幹線に乗り込んだ。
東京に戻り、事務所へと足を運ぶ。ライブの件を姫神プロデューサーに報告して、仕事部屋に入った。鞄を置いて、俺は椅子にもたれかかった。
天「••••••やったぜ。このライブの次はもっとデカいところを攻められるぞ」
今回の横浜アリーナでのライブは必ず俺たちにとって大事な活路を見出す何かを残してくれるだろう。それはもしかしたらとかの幻想などではなく、確信とも言える絶対的な安心感があった。
が、結局は彼女たち次第だ。Photon Maidenも彼女たちが実質的に動かしている。マネージャーの俺はあくまでスケジュールを立てて仕事を持ってくる事だけだ。
天「着々と前に進んでるなー、このまま行けば日産スタジアムも夢じゃねぇな」
約70000人もの規模が入れるライブで、その大量の人間に囲まれながらライブをするPhoton Maidenを思い浮かべて、俺はワクワクした。そして実際にその目標が実現できるよう決意を抱いた。
まぁでも仕事はあるのですぐには帰れないんですけどね()メモ帳に万年筆を走らせながらパソコンから音楽を流す。周りの音を完全に遮断する為にかなり大きい音量で流しているので、曲に集中できていた。スケジュールなんて立てたところで後々調整したりだから適当に大まかにしかしないが、ある程度は決まっている。横浜アリーナでのライブを控えているので、それに合わせたレッスンの予定を入れ込む。
天「•••今から楽しみだな」
何処か頭の中はふわふわしていた。ライブが楽しみで楽しみで仕方ないのは今までで初めてかもしれない。これまでライブなんて何回もしてきたが、今回ばかりは違う。単独での大規模なライブだ。楽しみでいられないわけがなかった。
ワクワクとドキドキが重なり合って滅茶苦茶になってるところにーー、
ポン、と肩に手を置かれた。
天「うおおおおぉぉぉぉ!!!???」
俺はビックリして飛び上がった。恐らく俺の肩に触れた人も驚いただろう。一瞬で手が離れた。
咲姫「••••••呼んでも反応がなかったから触ったのに、ビックリした••••••」
天「さ、咲姫か••••••!」
俺をビビらせた張本人は咲姫だった。俺は荒く息を何度も吐いてから一気に落ち着く。驚いて飛んだ衝撃で転げ落ちたので、立ち上がった。驚いた拍子にヘッドホンは外れて地面に転がっていた。拾って机の上に置く。
天「もうレッスンは終わったのか?」
咲姫「うん。それで天くんを呼びに行ったら音楽を聴きながらお仕事をしてた。すごく嬉しそうな色だったけど、何かあった?」
天「ん?あぁ、咲姫たちへのいいニュースを手に入れてきたんだ。明日にでも言うよ」
咲姫「そうなの?楽しみ。お仕事は後どれくらいで終わりそう?」
天「ほとんど終わってるし、今日はもう切り上げるよ。帰ろうか」
咲姫「うん」
俺は鞄を持って咲姫と事務所から出る。まだ事務所の明かりは灯っていて、スタッフが遅くまで仕事をしている光景を物語っていた。
咲姫「今日、私の家に泊まる?」
天「突然だな••••••月に一応訊いてみる」
携帯を取り出して月にメールを送った。秒でオッケーの返信が返ってきて少し引いた()監視してねぇよな俺の事•••。
咲姫「どうだった?」
天「大丈夫らしい。着替え持ってすぐ行くよ」
咲姫「わかった。待ってる」
楽しみなのか咲姫は終始ずっと笑顔だった。女の子の家とかに行くのは初めてなので、俺は心の何処かで少し緊張していた。
家に戻ると、案の定月はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら俺を見つめていた。
月「咲姫さんって今一人暮らしなんだよね?しっぽり楽しんできてね♪」
天「••••••あぁ、そうだな」
相手にするのも面倒なので、俺はぶっきらぼうに返す。月からすれば俺が動揺する反応でも見たかったのだろうか、少しだけ表情は悔しそうだった。
天「じゃあ行ってくる。後の事は頼んだ」
月「はーい。迷惑かけないようにねー」
天「了解」
家を出て、咲姫の家の方面へと歩き出す。咲姫の今の家は事務所が借りている状態だ。彼女は地方出身らしいが何処なのかは詳しくはわからん。だが、ずっと一人で家にいたのかと思うと、少し可哀想に思えた。甘えてきたら、ちゃんと応えてあげよう。そう思いながら夜風に震えた。
咲姫の家に到着し、インターホンを押して中へ通してもらった。咲姫の部屋は意外とシンプルで、月のようなカラフルさはなかった。
咲姫「もうすぐお風呂が沸くから、入ろう」
天「咲姫が先に入っていいぞ」
咲姫「一緒がいい」
天「••••••なんて?」
咲姫「だから、一緒にお風呂に入りたい」
天「••••••••••••アッハイ」
今日の咲姫はかなり容赦なかった。わざと聞き返したのに律儀に返しやがった。
咲姫「もうあんな事もしたんだから、今更恥ずかしがる必要もない」
確かに一緒に風呂入る以上の事はヤった。だからこうして攻めてきてるわけなのか••••••。まぁでも、甘えてきたら応えようって決めたのさっきばかりだしなぁ•••自分の言葉には責任を持ちたい。
天「わかったよ•••」
なので渋々だが承諾した。風呂場まで案内してもらって、服を脱いでお互いに全裸になった。あの時と同様に、咲姫の身体は真っ白だった。
咲姫「あんまりジロジロ見られるのは恥ずかしい•••」
天「あ、悪い」
ちょっとデリカシーがなかったな。早めに入って身体をさっさと洗う。咲姫も隣で身体を洗っている。バスタオルで隠すなんて事はしてないので、お互いに丸見えの状態である。
身体を洗い終えたので、湯船に浸かると、咲姫は俺に重なるように入った。
天「誰かと風呂に入るなんて、いつぶりだろうか」
咲姫「私は小さい頃にお父さんやお母さんと入ったっきり•••かな」
天「うちはたまに入ってると父さんが来るんだよな。最近はないけど、多少暇になったら急に来ると思う」
咲姫「天くんのお父さんってどんな人なの?」
天「あーそうだな•••見た目はゴリマッチョのヤクザだな。中身は面白いけど野蛮な人だよ。乱暴だけど、何だかんだ俺たちの事を大事にしてくれてる
」
咲姫「いいお父さん•••」
天「息子と娘を楽しませてくれる父親って、案外貴重なのかもな•••」
改めて父さんの存在に感謝した。殴ってきたりウザかったりするのは相変わらずクソ面倒ではあるが。
ちゃぷ、と湯の表面が小さく揺れた。咲姫が少し動いて更に俺に密着した。
咲姫「なんだか•••ドキドキしてきた••••••」
天「•••だから一緒に風呂に入るのは嫌だったんだ」
咲姫が俺の方向へ身体をぐるりと反転した。そして俺の肩に手を乗せて、唇を重ねる。
咲姫「んっ、ちゅっ、んむ••••••」
咲姫のスイッチが入ってしまったようで、俺はキスの対応をしながら頭を撫でる。
咲姫「あむ、んぅ、ちゅぅ••••••」
ここまで長いキスはしてないんじゃないかと思うくらい長時間唇をくっつけ合ってる気がしてきた。息が少し苦しくなってくる。
咲姫「ん、ちゅっ•••はっ」
ようやくキスが終わり、咲姫はとろんとした表情で力のない瞳で俺を見つめていた。
咲姫「天くん•••もう••••••」
天「•••わかった」
俺は咲姫の手を引きながら立ち上がって、風呂の壁まで連れて行った。
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