敏腕(感)男、マネージャーするってよ   作:如水くん

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どうも、お久しぶりです如水です。無事親知らずの手術が終わり、症状も落ち着きました。いやまだ痛いですし食べ物噛めないので結構酷いもんですよwしばらくお粥生活なの辛いです•••。投稿できなかったのはマジで申し訳ないです。痛すぎて投稿する気力すらなくなってたんですよ。本当にすみません。明日から•••はまだ車校の方がバンバン忙しいのでわかりませんが、時間ができ次第は投稿します。それでは。


2月14日、大カカオ戦争勃発

2月14日•••。それは一つの戦争を意味する日である。

そう、バレンタインだ。

女子からのチョコを求めて、男たちが戦争を繰り広げる。そして女子たちもまた、意中の男にチョコを渡すべく勇気を振り絞る日でもあったりする。というか基本男が騒いでばっかりのイメージしかない。

 

天「まぁ中学の時みたいにいつものメンツから貰っておしまいだろ」

 

月「それはまだわからないかもしれないよ?高等部に入ってから色んな人と絡むようになったんだしさ?」

 

天「あー•••そういえばそうだったな。麗や絵空からのチョコが欲しいな」

 

月「それは単純にお嬢様の高級チョコを召し上がりたいだけでしょ?」

 

天「当たり前だろ。逆にそれ以外に理由があると思うか?」

 

月「はぁー•••俗物的だ••••••」

 

月が呆れたようにため息を漏らす中、俺は無表情のまま椅子に座ってテレビを見ていた。

朝のニュースもバレンタインで賑わっていて、限定商品の紹介までも始めていた。

 

天「あれ美味そうだな•••」

 

月「味の事しか頭にないのか•••」

 

仕方ないじゃん、美味そうなんだから。チラリと時計を見ると、もうそろそろ家出る時間だったので俺は立ち上がる。

 

月「もう行く?」

 

天「あぁ。じゃあな」

 

月「行ってらっしゃーい。今年は何個貰えるかな?」

 

天「さぁな。でもくれるもんはありがたくいただかないとな」

 

月「礼儀礼儀。私にも食べさせてねー?」

 

天「あぁ。どうせ一人で食えん量になるだろうから二人で少しずつ消化しよう」

 

最早毎年の恒例行事となりつつ共同作業を予告して、俺は外に出る。

息を吐くと、白い霧となってそれは出ていき、それだけで妙な寒さを感じてマフラーを口元に運ぶ。

 

天「寒いな•••」

 

周りは雪が降り積もって真っ白になっている。冷たい空気を浴びながらザクッザクッ、と雪を踏み締めて学園へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

教室に入ると、やけにピリピリとした空気に俺は身構える。女子はそこまででもないが、特に男子たちの目つきは尋常ではない程に血走っていた。一見ホラーゲームとかに出てくる狂人を彷彿とさせる。

が、そんな事に一々動揺してられる程俺は暇ではない。いつものように席に座ってスマホをイジり始めた。

 

焼野原「神山はいいよなー。何もしなくてもチョコ貰えるんだから」

 

天「いきなりだな•••」

 

後ろの席の焼野原くんがぶーぶー言いながら俺に愚痴をこぼす。それに対して俺はただ苦笑いを返すのみである。

 

焼野原「今年はいくら貰えるんですかねぇ〜?」

 

そしてやけに威圧感のこもった視線を俺に向けてくる。居心地が悪いったらありゃしない。

 

天「•••さぁな」

 

これ以上会話を引き延ばすのもダルいので、俺はそっけない返しだけをしてスマホに目を落とした。こうして「今忙しいんだよ話しかけんな」という雰囲気を演出させるのだ。

 

天「(まぁ•••あんまり貰っても返すのが面倒だからな•••)」

 

貰う側からしたら、量が多くてお返しをするのが面倒くさくてたまらん。本音を言うならあまりチョコは貰いたくない。最低限でいい。

 

天「(咲姫から貰えればそれで十分なんだよな•••)」

 

心の中は家族と咲姫以外には読まれないので心置きなく本音を呟く。ただ愛する人から貰えれば俺はそれで満足なのだ。

 

教師「お前ら席つけー。ホームルーム始めるぞー」

 

教室に教師が入ってきたので、サッとスマホをカバンに投げ込む。ふぅ、と小さく息を吐いて、ホッとする。

 

教師「そういや今日はバレンタインだったな。女子の連中は好きな奴に渡すんだろうが••••••男子。その怖い目つきはやめろ。そんなんじゃチョコ貰えんぞ。神山を見習え。平然としてるじゃないか」

 

男子生徒A「先生、神山は毎年チョコ何十個も貰ってます」

 

教師「マジか神山••••••あんまり女子の心を弄ぶのはやめろよ?」

 

天「あの、俺恋人いるんですが••••••」

 

相手がいるのにそんな真似してたまるかよ。というかそれ、浮気に近いただのクズ行為じゃねぇか。人間やめるレベルの案件だぞ。

 

教師「とりあえず•••神山は遊び過ぎないようにな?女子の心は繊細なんだぞ?」

 

天「ふわあああぁぁ••••••」

 

男子生徒B「せんせー。神山話がつまらなくて聞いてませーん」

 

教師「相変わらずだな••••••」

 

頭を抱えていたが、俺からしたらとにかくどうでも良かったので、教師から目線を逸らして外をずっと眺め続けていた。あー•••家帰って寝てぇ••••••。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ホームルームが終わると、一限前の多少ながら長めの休憩に入る。俺はすぐさま席を立って、廊下に出た。

 

天「あそこにいても男子が怖すぎるな•••」

 

チラホラとキッツい目線を向けられていたので、耐えられずに出てきてしまった。人目のあまりつかないところでなんとかやり過ごしたいところだ。

 

りんく「あれっ?天くんだ!こんなところでどうしたの?」

 

天「ん?あぁ、りんくか」

 

突然誰かに声をかけられたと思ったら、相手はりんくだった。片手に小包を持ってこちらに向かってくる。

 

天「どうしたんだ?咲姫なら教室だが」

 

りんく「今日は咲姫ちゃんじゃなくて天くんに用事!はいこれ!バレンタインのチョコレートだよ!」

 

手に持っていた小包を、目の前に渡される。俺は目をぱちくりとさせて、恐る恐る綺麗にラッピングされたそれを受け取る。

 

天「あ、ありがとう•••」

 

りんく「どういたしまして!それじゃあねー!」

 

そしてそのまま笑顔で走り去っていった。まるで嵐のようだ。そっとチョコに目を落として、俺はため息を吐いてしまう。

 

天「•••今年は去年以上に増えるな」

 

そう確信してしまう。あまりにも絡む人間が多くなりすぎた。その事に、俺は多少ながらの後悔の念を抱いてしまう。

そして周りからの視線がかなり痛い。冷や汗がダラダラと溢れてくるのが嫌でも伝わる。

 

天「と、とりあえず人気のないところに•••」

 

気の所為だと思いたいが、少しお腹も痛くなってきたように感じる。今日の晩飯はお粥かな•••。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結局まともな隠れ場所などなく、俺はノコノコと教室に戻った。小包を見られた瞬間に、男子たちの目がカッと開く。あまりにも反応が良すぎて怖い。

 

男子生徒A「さ、早速一個めか神山ぁ!?だ、誰からだ!」

 

天「えっ、り、りんくだけど•••」

 

男子生徒B「愛本ぉ!?早速美少女からもらってんじゃねぇかテメェ!ぶっ殺すうぅぅ!!」

 

天「切実だな•••」

 

チョコをもらえていない男子クラスメイト諸君らは、悲痛の叫び声を上げていた。同情したいけどしたくない(唐突の矛盾)。

 

女子生徒A「か、神山くん•••よかったら、これ」

 

いつの間にか後ろに立っていたクラスメイトの女の子にチョコを渡される。本日二個目だ。嫌な顔一つせずに、頷いて受け取った。だが心の中は不満でいっぱいである。

 

天「(お返しめんどくせええぇぇ!!)」

 

ホワイトデーにチョコのお返しをするのがとにかく面倒なのだ。それに加えて男子たちからの睨みも更に増す。

幸いな事にチャイムが鳴ったので、続々とそれぞれの席に戻っていった。

一時の安寧に、俺は心底ホッとする。そして約一時間後にまた同じ地獄を味わうと思うと、恐怖で震えてしまう。

 

天「(••••••こえぇ)」

 

人間の恐ろしさを、改めて痛感したような気がする。来世は平和に生きたいものだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の授業が終わった後、俺はそそくさと教室を出た。男子たちの視線を躱す為に、別の教室へ友人と会うという名目で向かう。

 

天「真秀」

 

真秀「えっ?そ、天•••?そっちから来るなんて珍しいね」

 

突然の俺の来訪に、真秀は驚いた表情を見せる。本当ならわざわざこんなところまで移動したくなかったよ。

 

天「突然すまんな」

 

真秀「い、いいよ。私も暇してたから•••。あ、今大丈夫?」

 

天「?あぁ」

 

真秀「こ、これ•••!受け取って欲しいんだ!」

 

少し強めの語調で渡してきたのは、りんくのものとはまた違うラッピングがされた小包だった。

 

天「••••••ありがとう」

 

完全にチョコだよなこれ。流石に無下にするわけにはいかないのでいただいたが•••どうしよこれ。

 

真秀「ほ、ほらっ!いつもお世話になってるし•••りんくのブレーキ役でも助かってるから•••!」

 

最早理由になってない気がするが、ここで否定したら真秀に恥をかかせてしまうのであえて何も言わなかった。

 

天「•••じゃ、じゃあ俺は戻るな••••••」

 

真秀「う、うん•••」

 

妙な居心地の悪さを感じて、俺は逃げるように真秀の教室を後にした。

ため息をつきながら、小包を見つめながら歩く。これで三個目なわけだが••••••どうしたもんかね。もうこれ以上増えて欲しくはないのだが、他に渡してきそうな人間が後十人はいるのが記憶に新しい。

ーードンッ!!

 

?「きゃっ!?」

 

天「おっと•••」

 

前を見て歩いていなかったので、誰かにぶつかってしまった。すぐにしゃがんで、倒れてしまった人に手を差し伸べる。

 

天「すみません、大丈夫でしたか?」

 

?「いたたた••••••ちょっと何処を見てるのよ!気をつけなさい!」

 

天「•••なんだ、むにか」

 

相手はやたらと交戦的で強気な態度と言葉遣いをするおチビこと大鳴門むにだった。口ではそう言いながらもしっかりと手を握っているのがなんだか面白い。

その小さな手を引いて立ち上がらせると、いつもの鋭い目つきで俺を見据えていた。

 

むに「•••それ、誰からよ」

 

天「これか?真秀からだが」

 

むに「そう•••はいこれ。余ってたからあげるわ」

 

ふんっ、と鼻を鳴らしながら乱雑に俺にチョコを手渡すむに。それでもなんだか頬が赤いのが、こいつらしくて微笑ましかった。

 

天「ん。ありがとな」

 

むに「れ、礼なんていいわよ!」

 

天「人から物もらってんだ。礼くらい言うのが常識だろ」

 

むに「ふんっ。精々味わって食べることね!」

 

そしてそのまま俺の横を通り過ぎていった。全く素直じゃないやつだ。俺は優しい笑みを向けて、教室へと戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

教室に戻れば、それこそ視線が集中する。某パルテナの死神のセンサー並みに働きが良さそうだ。更に増えたチョコを見て、男どもの目がギラリと輝く。それと同時に冷や汗が流れたのを感じた。

 

天「•••まぁ義理チョコだし、そんなカッカすんなよ?」

 

精一杯の言い訳はたったのこれだけだった。媚を売るようなヘラヘラとした笑顔に、自分自身がイラついた。

 

男子生徒A「貰ってるだけいいじゃねぇかテメエエエェェェ!!」

 

男子生徒B「こちとらひとっつも貰ってねぇんだぞぶっ殺すぞゴルアァ!!」

 

天「••••••こっわ」

 

男子の、いや、人間の恐ろしさというものを改めて感じた気がする。俺の気持ち悪い笑顔は、すぐに真顔へと変貌を遂げる。そうなってしまう程に、今目の前の男たちを軽蔑してしまった。

 

天「まだ父さんの方がまともに思えてきたな••••••」

 

最終的に出てきた答えは、我が父がまだマシだということだ。出会い頭に殴ってくるクソ野郎よりも、欲望しかない男たちの方がクソだという事に悟りを開いた。

多分俺の目は死んでいただろう。いや、死んだというよりも、力がなかった。というか目の前のヤバい連中を視界に入れたくなかった。怖いもん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昼休みになり、俺は席を立った。同時に男子たちも立った気がするが無視。学食に逃げ込もうと移動しようとしたが、一人の声に立ち止まる。

 

衣舞紀「天ー。学食行きましょう?」

 

天「衣舞紀さん?はい、わかりました。咲姫、学食行くか?」

 

咲姫「うん••••••」

 

近くにいた咲姫に声を掛けると、彼女はコクリと頷いて当たり前のように俺の隣に移る。そういえばコイツ朝からこの時間まで一切話しかけてこなかったな。

チラリとこっそり目を向けると、顔を逸らされた。クソ、バレるか。

 

乙和「天くんもうチョコ貰ったー?」

 

天「はい。朝に四個くらいもらいましたね」

 

ノア「やっぱり天くんはモテるね」

 

天「お返しダルいし消化大変なんであんまり貰いたくないですけどね••••••」

 

衣舞紀「あはは•••天らしい感想ね•••やっぱり月と食べるの?」

 

天「一人じゃ食べきれませんよ、あの量は。今年は月でも消化し切れない気がするので、甘いもの好きな乙和さんにお願いしたいくらいですよ」

 

乙和「え!?チョコ食べていいの!?やったー!」

 

衣舞紀「あまり食べ過ぎるのはダメよ?というか乙和は食べちゃダメ」

 

乙和「ぶーぶー!衣舞紀のケチー!」

 

頬を膨らませて可愛らしく怒る乙和さん。相変わらず厳しい衣舞紀さん。そしてそれを苦笑いしながら眺めるノアさん。最早いつも通りの光景だ。俺はそれを微笑みながら見つめる。

が、咲姫だけはその輪の中に加わっていなかった。ずっと顔を逸らしてばかりで、見てすらいない。

 

天「咲姫、どうかしたのか?」

 

咲姫「•••なんでもない」

 

天「•••ならいいが」

 

何かよくない事でもあったのだろうか。執拗に訊くとかえって悪い状況になりかねなかったので、俺は黙る事にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

学食に着いて、俺たちはすぐに席を確保する。やはりというべきか、学食内でもかなり殺気立ってるような様子だった。やたらとピリピリとした空気を感じるのはその所為か。

 

天「••••••なんかすげぇ居心地悪いな」

 

主にこの学園の男子どもの所為で。だがごく僅かな数の男子は穏やかだった。恐らくチョコを貰えてご満悦なのだろう。お返しをしないクズには成り下がるなよ。

 

衣舞紀「バレンタインとなると、みんな荒れるわねー•••」

 

乙和「私たちのクラスもすごかったよー。男子の目がすっごく怖いんだもん!」

 

本当にそうなのか•••?まだ笑いながら気楽に言えてるだけマシなのかもしれないが。

 

ノア「天くんと咲姫ちゃんのクラスはどうだった?」

 

天「•••怖かったです」

 

咲姫「怖かった••••••」

 

衣舞紀「•••どうやら一年が一番荒れてるみたいね••••••」

 

俺と咲姫の怯えた表情を見て、衣舞紀さんは苦笑を漏らした。

 

天「•••あいつらの目、尋常じゃないですよ」

 

乙和「そこまでなの?それはそれで気になるな〜」

 

怖いもの知らずだなオイ。地獄見るからやめといた方がいいと思うんですがそれは。少なくとも俺は絶対に嫌だね。ここまでバレンタインを呪った年は無いと思う。明らかに去年より荒んでいる。

昼食を摘みながら談笑を続けていたら、ぞろぞろとたくさんの女子生徒が集まってきた。学年など関係なく。

 

天「•••ん?」

 

咀嚼をしながら、その女子たちを見据える。ぱちぱちと瞬きをしながら、口の中の食物を飲み込んだ。

 

女子生徒E「えっと、神山くんかな•••?これ、受け取って欲しいんだ」

 

そしてチョコが入っているであろう小包を渡される。またか•••そしてこの人数•••。これだけで去年の数を余裕で超えてしまうな。俺はとりあえず礼だけを申してそれを次々に受け取る。

 

乙和「モテモテだね〜」

 

天「•••お返しの金額エゲついことになりそうだ••••••」

 

ノア「手作りじゃないの?」

 

天「えっ、ノアさん冗談ですよね?お菓子作りとかした事ないですよ」

 

ノア「そういえば普段料理とかしなかったね天くんは•••」

 

思い出したかのように察した表情となるノアさん。そもそも、お菓子作りができないことを誇らしげに申す俺もかなり可哀想な人間だ。

 

響子「急に人だかりができて来てみれば、天だったんだね」

 

天「響子•••それにピキピキの面々まで」

 

興味本位だけなのかいささか怪しいが、Peaky P-keyの四人がこちらに歩いて来た。

 

絵空「隣に失礼してもよろしいですか〜?」

 

乙和「いいよいいよ〜!」

 

歓迎ムードで乙和さんが率先して席を通した。まだ昼食を食べ終えてない俺はピキピキそっちのけで飯を食らっていた。

 

しのぶ「相変わらず量が多いこと•••太らないの?」

 

天「逆にお前は食う量が少ない気がするんだが?だからチビなんだろ」

 

しのぶ「なっ•••!?」

 

由香「天としのぶの悪態は相変わらずだねー」

 

俺としのぶが睨み合いながらあまり綺麗ではない言葉を吐き合うのは、最早いつもの光景となっている。

まぁこれくらいいつも通りの方が、俺としてはかなりやりやすい。

 

響子「後、天に渡すものがあるんだ。はい、これ」

 

そう言いながら、ひょいっと軽々しく小包を手渡してくる響子。一瞬困惑した後に、それを受け取る。

 

天「•••ありがとう」

 

おい男子女子ども、俺はあのピキピキの山手響子からチョコもろたんやぞ。どや?羨ましいやろ?えぇ?

 

由香「そして私からも天にチョコを渡しまーす」

 

プラス由香からもチョコのお恵みをいただく。ある程度仲良くしてる人間からのチョコは素直に嬉しいものだ。

 

しのぶ「•••はい、お世話になってるから•••」

 

照れながらチョコを渡すしのぶ。俺は小さく微笑みながらそれを受け取った。

 

天「ありがとな。たまにはうちにも遊びに来いよ?月もしのぶの家ばっかり行くのは飽きてるっぽいし」

 

しのぶ「えぇ•••、面倒くさいな•••」

 

天「たまには身体動かせよ。鈍るぞ」

 

絵空「最後は私ですね〜。天さんはいっぱい食べると聞いたので、こちらをご用意させていただきました〜♪」

 

ドンッ、と音を立てて置かれたそれは、今まで貰って来た小包とは比べ物にならないような大きさだった。というか置いた衝撃で小包たちが一瞬浮いたぞおい。

 

天「な、なんじゃこりゃ••••••」

 

絵空「巨大チョコでーす。結構大変だったんですよ?」

 

天「••••••やりすぎだ、絵空」

 

乙和「おぉ〜。ね、ね、これも食べていいの!?」

 

俺の制服の裾をくいくいと引っ張りながら乙和さんがそんなことを訊いてくる。俺は静かに頷いたが、今は乙和さんに意識を向けるのは難しかった。だってこんなデカいものくるとか誰が予想するよ。

 

衣舞紀「これ、消化しきれるのかしら•••?」

 

天「長い戦いになりそうです•••」

 

今になって、絵空や麗などのお嬢様連中からのチョコをねだった朝の俺を恨んだ。こんな大きさのチョコを寄越されたら確実にデブってしまう。

 

衣舞紀「天•••大丈夫•••?」

 

天「•••頼ってもいいですか?」

 

衣舞紀「少しだけならいいよ」

 

天「じゃあレッスンが終わった時にでもうちで消化手伝ってください•••」

 

響子「へぇ、面白そうじゃん。私たちも行こうかな」

 

天「え゛」

 

しのぶ「•••何?なにか問題でもあるの?」

 

天「いや人数•••」

 

俺の家そんなにキャパ広くねぇんだけど•••そんな大人数で行ったら破裂してしまう。顔に一筋の汗が浮かんだのがわかった。

 

咲姫「それなら、衣舞紀さんたちが使ったあの大きな部屋を使えばいいと思う•••」

 

ノア「あの部屋のこと?だったらニ十人くらいは平気で入りそうだね」

 

天「あそこか•••」

 

まぁ掃除もしてあるし、多分大丈夫だろう。うちに来るのがPhoton MaidenとPeaky P-keyだけで収まればの話だが。

 

響子「まだ増えるんでしょ?だったらりんくちゃんたちも誘ってみる?」

 

天「•••消化役は多い方がいい」

 

俺はため息を吐きながら頷いた。チラリとチョコの山を見て、また再度ため息が漏れてしまう。これは•••消化し切れる気がしないな••••••。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後になり、俺は一足早く事務所に駆け込んだ。スマホでちょくちょく響子やりんくらと連絡をとりながら、仕事を進めていく。ちなみに通話を繋げているので、リアルタイムで集合時間を相談中だ。

 

天「一応俺の方はもうちょいで片付きそうだが、レッスンの方はわからんな。延長する可能性もあるし」

 

りんく『計画立ててるの天くんだよね?どうにかならないの?』

 

天「まぁ•••別に今すぐ終わらせてもいいが•••一応俺ら単独ライブとかもやるプロなわけだし、手を抜くわけにはいかないからな」

 

響子『天らしい答えだね。それよりも、もしここで通話してるのがバレたらどうなるかな?』

 

天「おいおい、縁起でもないこと言うなよ。怖ぇじゃねぇか」

 

本当は通話しながらの仕事なんてやってはいけない事だ。単純に俺の仕事がほとんど終わってるからこそ、こうやって余裕ぶっこいて話をしているが、本来は無理だ。集中力が欠けてしまう。もしバレたら死ぬだろう。

 

りんく『え〜、まだ天くんの家行っちゃダメなの〜?』

 

天「まぁうちに行く自体は大丈夫だと思うぞ。妹がもう帰って来てるだろうし。この後の事も伝えてあるからな。あいつ晩飯作ってねぇらしいぞ」

 

りんく『えっ!?じゃあ今日の晩ご飯はチョコだけ!?』

 

響子『それは流石に偏り過ぎじゃないかな•••』

 

天「チョコの写真送ったら一瞬でそっちに切り替えた•••多分晩飯いらんレベルの量と判断したんだろうな」

 

力なく笑ってみせた後に、はぁ、とため息を吐いた。夕飯がチョコのみとか、どんな生活だよ•••デブまっしぐらじゃねぇか•••。

 

天「しばらく砂糖は控えないといけねぇな•••」

 

そして、そんな事を呟く。今日だけで大量の糖を摂取する事になる。数日は米とか食わなくていいかもな•••。呟きを聞いていたりんくと響子は、苦笑を漏らしていたという。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そろそろレッスンが終わる頃と思い、俺は通話を切った。パソコンを閉じて、身体を大きく伸ばす。

 

天「んっ、んーーーっ!はぁっ。なんか電話とか久々にした気がするな•••」

 

基本は電話ではなくチャットで済ませていたので、なんだか久しぶりにした通話は、少し新鮮だった。

さて、一応終わってるか確かめに行こう。そう思って席を立とうとしたらーー、

 

衣舞紀「お待たせ」

 

天「•••タイミングバッチリでしたね」

 

ちょうどよくレッスンを終えた四人が仕事部屋にやってきた。そしてそのまま俺の方に向かって来て、

 

衣舞紀「ハッピーバレンタイン。いつもありがとう、天」

 

乙和「私からもー!いつもありがとー!」

 

ノア「はい。これからもよろしくお願いします」

 

三人にチョコを渡される。他の人間からもらった時とは比べ物にならない喜びという感情が俺の中を駆け巡る。

 

天「•••ありがとうございます」

 

多分、これが今日初めての純粋な笑顔なのだろうか。ものすごく清々しい気分で、彼女たちに顔向けできているだろう。

 

咲姫「••••••••••••」

 

だがただ一人咲姫だけは、黙ったまま立っていた。俺はそっと顔を覗かせたが、昼の時と同じように顔を逸らされる。

 

衣舞紀「私たちは先に天の家に向かってるから、咲姫と二人で話し合いなさい」

 

乙和「それじゃ、おっさき〜」

 

ノア「ところで、しのぶちゃんとむにちゃんが来るって事よね!?それに加えて月ちゃんまで!!天国だ••••••」

 

なんか一人だけ暴走してた気がするけど、そこは衣舞紀さんが制御してくれるだろうと信じてそのまま送り出す。

部屋の中で俺と咲姫の二人きりになると、彼女はようやく俺の方に向かって歩いてきた。

 

咲姫「モテモテだった••••••」

 

天「•••••••••え?」

 

予想外の言葉の切り出しに、俺は困惑の声を漏らす。

 

咲姫「みんなからチョコを貰えて、嬉しそうだった••••••」

 

天「そ、そりゃ一応好意でくれてるわけだし、嬉しいに決まってるだろ•••」

 

貰い物だからいらない、と断る事も難しいが•••というか嬉しそうにしてたのは本当に一部だと思うのだが。

 

咲姫「私だけの天くんなのに••••••」

 

天「変な独占欲働かせるなっての。それで、俺はまだ本命チョコを一つも貰ってないんだが?」

 

咲姫「えっ••••••?」

 

いたって冷静に、そして真顔で俺はそんなクサいセリフを吐く。表情こそいつも通りだが、心の中は恥ずかしさでいっぱいだった。今更になって後悔する。

 

天「今まで貰って来たのは全部義理チョコだ。まだ本命•••その、なんだ•••咲姫からのチョコを貰ってないんだが•••」

 

そしてついには恥ずかしくなって俺は頬を赤くしてしまう。それを見た咲姫はくすりと笑って、バッグを漁り始めた。そして取り出したのは、可愛くラッピングされた、ハート型の小包だった。

 

咲姫「ハッピーバレンタイン、天くん。ずっと、大好きだよ」

 

天「••••••ん、ありがとう、咲姫。俺も大好きだ」

 

そしてそのまま彼女を抱きしめてやる。咲姫の腕が俺の背中に回ったのは、抱きしめてからすぐだった。

 

咲姫「私•••すっごく幸せ•••」

 

天「今年は過去一で幸せなバレンタインだった」

 

心の底からそう感じる。目の前の愛する人間の笑顔を見て、自然と幸せな気持ちになる。

 

咲姫「•••キス••••••」

 

天「はいはい」

 

こうやってねだられるのも、なんだか懐かしいように感じた。お望み通りに唇を重ねて、俺たちはしばらくの間幸せな甘い時間を過ごした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

二人でゆったりと家に戻っていると、我が家からガヤガヤとした騒々しさが漏れていた。どんだけ騒いでんだあいつら•••。

 

咲姫「楽しそう•••」

 

天「明日はご近所さんに怒られるかもな•••」

 

ウチ、結構防音整ってたはずなんだけどなぁ•••それを貫通するレベルのうるささはかなりヤバい。これがふっつうの家だったら凸られてたな。

 

天「ただいま」

 

咲姫「お邪魔します」

 

俺も咲姫も、いつも通りに家に入る。一応リビングとキッチンに顔を出したが、人っ子一人いなかった。ということは、あのデカい部屋だろう。

そろーっと覗くと、軽くパーティー状態だった。チョコは衣舞紀さんたちに持って帰ってもらったので、既にみんながチョコを食べていた。

 

月「ん?あっ、お兄ちゃん!咲姫さん!おかえりー!」

 

いち早く気づいた月が俺たちに手を振った。それと同時に全員の視線が俺と咲姫に集まった。なんか小っ恥ずかしい。

 

りんく「おかえりー天くん!咲姫ちゃんもお疲れ様!」

 

咲姫「う、うん。ありがとう•••」

 

なんかやけに顔の赤いりんくが俺たちに絡んでくる。•••ちょっと酒くせぇな。

 

天「酒チョコ混ざってたか•••」

 

月「私がふざけて度数高いの買っちゃったから」

 

天「よりにもよってお前が原因か•••」

 

またいつものこいつの差し金だったよ。それで関係ない人間に被害浴びせるのだけはやめてあげろ。

 

りんく「二人が帰ってくるのずーっと待ってたんだからねー!」

 

ふらふらになりながら騒いで、最終的に俺の方に倒れ込んでくるりんく。咄嗟に受け止めるが、その身体の軽さに驚いてしまう。

 

天「•••こいつちゃんと食ってんのか?」

 

真秀「いつもメチャクチャ食べてるよ」

 

それでもこんなスリムなのか、羨ましいな。というか普段から身体動かしてるだろうし当然か。

 

りんく「えへへへへ〜天くんあったかーい」

 

天「とりあえず誰かこの酔っ払いどうにかしてくれよ」

 

できることならこのまま抱き止め続けるのは避けたい。咲姫がずっとこっちむくれて見てんだもん。

 

麗「わ、私が引き受けますっ」

 

天「助かる」

 

りんくを麗に引き渡して、俺はホッと一息つく。くいっと裾を引かれてその方に目を向けると、咲姫が頬を膨らませていた。まだイジけてたのキミ。

 

咲姫「••••••」

 

天「そんな顔すんなよ」

 

少し乱暴に頭を撫でてやる。少し表情が和らいだような気がするが、あくまでその気がするだけだ。

 

麗「あっ、それと天さん。こちらを•••」

 

突然麗が差し出したのは、小さくても豪華な印象を強く受ける四角い箱だった。

 

天「これ•••」

 

某高級洋菓子店のバレンタイン限定チョコだった。これ万逝くやつだよな?

 

天「いいのか?こんな高いもの•••」

 

麗「いいんです。天さんは大切なご友人ですから」

 

悪意などカケラもない、純粋な笑顔でそう答えた麗。やっぱり持つべきはお嬢様のお友達だよな。何処ぞの清水とかいうやつとは大違いだ。

 

絵空「何か失礼な事を考えていませんでしたか?」

 

天「•••ナニモカンガエテナイヨ」

 

響子「絵空のあれは流石にやり過ぎだったけどね」

 

響子が指差す方向には、昼の絵空プレゼンツドデカチョコが置かれていた。やっぱり手つけられてなかったか。わかってはいたことだが。

 

天「••••••どうするよ、これ」 

 

乙和「みんなで分けて食べるしかないと思うな〜。私はもっと食べたいよ!」

 

ノア「乙和、あんまり食べ過ぎるのはダメよ」

 

ぎゅるるるる••••••。

 

天「あっ」

 

容赦なく腹の虫が鳴りまくり、周りがしん、と静まりかえる。

 

天「•••と、とりあえず腹減った••••••」

 

顔が赤くなり、プルプルと震えてしまう。

 

ノア「んっはーーー!!カッワイイーーー!!」

 

沈黙を破ったのはノアさんだった。後うるさい。ご近所の方にマジで怒られそうだからやめてくれ。

 

咲姫「私も、お腹空いた••••••」

 

天「食べるか。まだ全然残ってるみたいだし」

 

お互いに笑って、みんなが集まってるところに歩き出す。俺は一生この一日を忘れることはないだろう。たった一度だけの、大切な日を。

だからこそ、その大切さも込めて、俺はこう言ってやるんだ。

 

天「やっぱり、バレンタインは嫌なもんだな」

 

と。




あ、ちなみに毎年恒例で自分はチョコをもらってませんw寂しいでしょ?wwwぶっちゃけチョコくれるくらいなら竹刀くれって話なんですけどね。
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