俺は目を覚ました。人の家と言うこともあって、熟睡はできたが何故かスッと起きてしまった。チラリと時計を見るとまだ6時前だった。あまりにも早すぎる。だからと言って二度寝をしてしまったら今度は寝坊しかねない。
天「でもこの状況だからなぁ•••」
昨晩に続いて俺と咲姫は抱き合っている。当の咲姫はまだ寝ていて、俺から離れる気配など一切ない。強引に離れようとしたら確実に起きてしまうだろう。
天「•••••••••」
咲姫「ん、んぅ•••」
流石に何もできないというのは暇すぎて死んでしまうので、咲姫の頭を撫でて気を紛らわしていた。そして撫でる度に、咲姫がくぐもった声を漏らしてモゾモゾと動く。更に密着した気がするが、俺も対抗して抱きしめる力を強めた。
咲姫「天、くん••••••」
天「ん?•••あぁ、寝言か」
もしかして起こしてしまったか、と焦ったが、どうやら杞憂だったようだ。起きる気配がしない程にぐっすりだ。
咲姫「好き•••天くん••••••」
天「••••••こんな時間に起きるんじゃなかった」
寝言とは言え、急に言われるのは恥ずかしい。もしかしたら俺が頭を撫でてるから、咲姫の夢の中でも俺が頭を撫でてるような光景が出来上がっているのかもしれない。変に手を出すのはやめておこう。こっちが被害被りそうだ。
天「でもそれしちまうとなぁ•••」
やる事がなくて詰みますねぇこれは。だからと言って離れられるわけでもないのがまた痛い。手を伸ばして携帯を手に取って開く。
特に何か興味をそそられるようなニュースがあるわけでもなく流し見ていたが、一つだけ気になる、というよりビックリするニュースが流れていた。
天「••••••あ?は?おい、嘘だろ」
『Photon Maiden、単独ライブ決定!』••••••まさかのニュースとして世間に流れていやがった。あの社長やりやがったな••••••多分うちの事務所の方には話通してるだろうけどなんで俺に言わなかったし。
••••••あーやばい、しれっとトレンド入りしてんじゃねぇか。これもう周りに知れ渡っちまってるよ••••••。ワンチャン学校で騒がれるかもしれんな•••まぁ咲姫たちなら何とか躱してくれるだろうし、あまり心配はしていなかった。
でも、でもなぁ••••••。
天「••••••ははっ」
嬉しさでいっぱいで、笑わずにはいられなかった。トレンド入りまでしてしまう程、Photon Maidenが大きくなっていって、すごく気持ちがいっぱいだった。あーもうこれ本当に泣いちまいそうだ。その時はどこかで隠れて泣こうそうしよう。泣き顔なんてあまり見られたくないしな。
Photon Maidenがトレンド入りするなんて何気に初めてな気がするから、色々気になって眺めていたらかなり時間が経っていた。咲姫が自然と目を覚ましたのを確認してから携帯をしまった。
咲姫「おはよう•••」
天「あぁ、おはよう」
咲姫「•••?なんだかすごく嬉しそう」
天「多分この後わかるぞ」
俺は笑みを隠しきれなかった。咲姫がどんな反応をするのか、今か今かと楽しみで仕方がないのだ。咲姫は首を傾げていたが、俺に釣られて笑っていた。
テレビを点ければ、朝のニュース番組ばかりで溢れていた。その中のものを一つ選んで流す。朝食は咲姫が作るとのことで、俺は椅子に座ってテレビを眺めていた。
天「•••••••••」
キャスター「それでは次のニュースです。最近、グングン人気を伸ばしているDJユニット、『Photon Maiden』が単独ライブを開催する事を発表しました。八月に開催し、場所は横浜アリーナで行われる予定です」
予想通り、と言うべきか、Photon Maidenのライブの件はすぐに流れてきた。
咲姫「••••••え?」
咲姫がテレビを、ニュースを見て呆然としていた。そして俺の方へ視線が移る。
咲姫「もしかして、この事?」
天「あぁ、何気にトレンドにも入ってるし、世間はかなり賑わってるぞ」
軽くネットサーフィンもしておいたが、期待の声がかなり上がっていた。このままの流れで行けば、ライブの成功は間違いなしと言えるだろう。後は彼女たちの努力次第だ。
咲姫「天くんはすごいね」
天「え?なんで俺?」
咲姫「Photon Maidenをここまで連れてきてくれたのは、天くんのおかげ。こんなに大きな舞台を用意してくれて、ありがとう」
天「礼なんていい。Photon Maidenだからここまで来れたんだ。俺はあくまで仕事を提供しただけさ」
俺は肩をすくめる。俺のやってきた事は大した事ではない。仕事を、場所を用意したところで、それを有効活用してくれるのは提供先だ。それをPhoton Maidenが上手く動かしただけの事。
天「マネージャーなんて立ち位置に就いた以上、仕事を持ってこないのはアウトだからな」
咲姫「それでも、私たちの為に頑張ってくれてる姿はとてもカッコいい•••」
天「そ、そうか•••」
なんだか照れてしまう。頭を掻いて誤魔化すが、咲姫の表情はとても柔らかかった。
天「学校で騒がれるかもしれないが、対応頑張れ」
咲姫「その時は天くんも一緒」
天「えやだ」
咲姫「ダメ」
天「俺には見向きもされないんだから、変に出てくる方がおかしいと思うぞ」
咲姫「その時はその時だから」
えぇ•••(困惑)。咲姫は一体何を考えているんだ?どんな行動を起こすか予想出来ず、少し怖い。
あれこれ悩んでいるうちに朝飯は運ばれて、俺は頭の片隅にこびりついたそれを一旦忘れて食べ始めた。
制服に着替えて準備を整える。まだ時間はあったので、スマホをボーッと眺めていた。SNSにはPhoton Maidenの話題で持ちきりになっており、咲姫たちやライブの写真が載ってたりしていた。
写真の咲姫も可愛いってはっきりわかんだね。保存しとこ。
咲姫「••••••ぎゅう、して」
天「あーはいはい」
相手にされなくて寂しかったのか、咲姫は手を広げて待っていた。要望通りに抱きしめてやり、咲姫の肩に顎を乗せてまたスマホを眺める。
咲姫「何をそんなに見てるの?」
天「いや、こうして見るとライブの写真って結構あるんだな、と感心してた。咲姫の写真もかなりあるし、最高だ」
咲姫「••••••ここにいるのに、写真の方がいいの••••••?」
天「そりゃもちろん実物の方がいいに決まってる。だからこうやって抱きしめてるんだろ?」
抱く力を強める。制服越しとはいえ、咲姫の胸の感触が伝わってきて少しドキッとしてしまった。
咲姫「もっと•••ぎゅう•••」
天「わかった」
咲姫の身体が折れてしまうのではないかと思うほど、強く、強く抱きしめる。
天「咲姫の身体、柔らかいな」
咲姫「そういう天くんは硬い•••」
天「鍛えてるからな」
俺の身体は細身だが筋肉の塊だ。流石に父さん程は無理だが、無駄な肉はほとんどついていないくらいには出来上がっている。
天「••••••そろそろ家を出たほうがいいんじゃないか?」
咲姫「もう少し••••••」
俺の彼女は案外ワガママなのかもしれない。結局家を出るギリギリまでお互いに抱擁をし合う事になった。
学校に着くと、わかっていたが咲姫はみんなに囲まれて注目の的になっていた。
咲姫「そ、天くん助けて•••」
天「頑張れー」
咲姫が俺の方へ手を伸ばしているが、当の俺は手をひらひら振るだけで助けようなんて事は一切する気がない。今は人気者としてみんなとお話をしていて欲しいものだ。
女子生徒A「出雲さん横浜アリーナでライブするんだって!?ニュースで見たよー!私絶対見に行くからね!」
女子生徒B「単独ライブなんてすごいよ!はぁ〜出雲さんがどんどん遠い存在になっていくなぁ••••••」
咲姫「ライブとかのお仕事は、全部天くんが持ってきてくれるんです」
女子生徒A「神山くんが!?」
一気にクラスメイトたちの目が俺に移る。咲姫め•••飛び火はやめてくれよ。いや、さっき助けなかったからその仕返しだろうな。
女子生徒B「あっそっか。神山くん出雲さんたちのマネージャーだったっけ。あんな大きいハコ押さえられるなんてすごいね!」
天「それは咲姫たちの実力が伴っていたからだ。俺は何もすごくなんてない」
咲姫「天くん、今まで担当してきた人を大きなライブに連れて行ってるから、その実績もあって単独ライブができるようになりました」
女子生徒A「えーすごいじゃん!神山くんそんなにお仕事できるんだー!」
天「•••咲姫••••••、変に煽るのはやめてくれないか」
あまりに飛び火がヤバ過ぎて咲姫に目を向けた。彼女はまだ不機嫌なご様子で、ぷいっとそっぽを向いた。
咲姫「後でぎゅうとなでなでしてくれたら、許す•••」
天「••••••わかったよ」
男子生徒A「出雲さんに普段そんなことしてるのか神山ぁ•••!」
天「ーーッ!?」
とんでもない殺意を感じて背筋が凍った。••••••咲姫の発言には後々注意しておこう•••いつか刺されそうだ。
咲姫「どうしたの?」
天「な、何でもない」
クラスメイトに命狙われてます、なんて言えるわけがなかった。俺は苦笑を返して席に座った。
感想評価オナシャス!後毎回感想くれる兄貴愛してるゾ!(突然の告白は投稿者の特権)後最近ここすきとかいうやつを思い出した()