迎えた期末テスト当日。対策をバッチリ立ててきた俺に死角などなかった。問題と向き合ってサラサラッと解いて後は、惰眠を貪るという最低最悪な時間を過ごした。テストの点は取れてても内申点は確実に引かれた自信がある。
天「(••••••乙和さんがすっげぇ心配だ••••••)」
俺の頭の中はそれ一色だった。もし仮に乙和さんが赤点など取ろうものなら、補習に追われてライブの練習どころではなくなってしまう。それだけは何としても避けたいので、集中的に乙和さんだけを追い込みに追い込んだ。彼女は泣いてしまったが、ライブの為だから仕方ない。心を鬼にした。
天「(あそこまでやったんだ•••きっと大丈夫、大丈夫だ••••••)」
もうテストの日となった今は、ただ祈ることしか出来なかった。
テストは無事に終わり、部活動生はテスト前で休みになっていた部活の再開を嘆いていたが、そんな事はどうでもいい。咲姫を連れて、ネビュラプロダクションへと向かった。
事務所に到着し、打ち合わせ室でみんなと顔を合わせる。テストの手応えをみんなで報告し合うのだ。
衣舞紀「みんな、どうだった?」
天「いつも通りです。欠点は確実にないと言えますね」
咲姫「私も同じ」
ノア「天くんと咲姫ちゃんに囲まれて勉強会をした甲斐あって、いい結果が期待できそう•••!」
乙和「••••••••••••」
衣舞紀「乙和はどうだったの•••?」
この中で唯一言葉を発さなかった乙和さんを見かねて、衣舞紀さんは問う。しばしの沈黙が続き、乙和さんは口を開いた。
乙和「正直わかんないかな〜•••まだ結果が出てないからなんとも••••••」
乙和さんは自信なくそう答えた。それは仕方のない事だろうと、俺は頭の中で納得してこれ以上は口を開かない。ただ、これだけは言っておきたかった。
天「わざわざみんなで勉強会開いてまで乙和さんの為に対策したんです。赤点なんて取ったら許しませんから」
乙和「うぅ•••あれは思い出したくない••••••何より天くんが怖かった•••••••••」
え、何で?俺そんなに怖がらせるような事したか?全く身に覚えがない。
衣舞紀「まぁあの中で一番圧を掛けてたのは天かもね•••乙和の言う通り少し怖かったわ」
ノア「完全に仕事をしてる時の真面目モードだった所為だね•••顔がマジだった•••」
天「う、嘘だろ•••?さ、咲姫は、咲姫はどう感じた!?」
咲姫「勉強教えてる天くんはとってもカッコ良かった」
あーもう好き。ノーコンマで俺に対して褒め言葉送ってくれるこの彼女最高過ぎる。周りに人がいなかったら抱きしめてた(確信)。
ノア「天くんの顔が一瞬で笑顔に•••!写真に収めなければ!」
ノアさんはスマホを取り出して一瞬のうちに俺の顔を写メった。泣きたい。
乙和「こんな時までイチャイチャしないでよー!」
咲姫「••••••?私は本当の事を言っただけ」
ノア「恥ずかし気もなく惚気る咲姫ちゃん•••!カワイ過ぎる••••••!」
このままオーバーヒートしてノアさんが倒れないか少し心配だ。まぁ倒れてもすぐに復活するだろうけど()
衣舞紀「とりあえずは結果を待つしかないわね。それじゃあ、今日もレッスン頑張ろう!」
衣舞紀さんが流れを変えて、全員がゾロゾロと打ち合わせ室を後にする。俺は途中で仕事部屋に入って、メモ帳と万年筆を机の上に置いた。
天「••••••そうだ。もしみんなが、というより乙和さんが赤点回避できたら•••こういうのもいいかもな」
俺は薄ら笑いを浮かべながら、七月の後半の一つの枠に、とある行事を書いた。きっとみんなも喜ぶだろうな、と少し楽しみになった。
天「さーて、仕事に取り掛かりますか!」
椅子に座りながら大きく伸びをして、スケジュールを立てて、調整していった。
仕事に関しての集中力は、自分で言うのもあれだがかなり続く自信がある。気がつけば暗くなっていて、周りもシンと静まり返っていた。
いや、実際は人はいるのだろうが、その人数自体が減って、比較的に音量が下がったのだろう。
俺はメモ帳を閉じて、胸ポケットにしまって立ち上がる。七月になり、制服も夏服へと移り変わった。冬服の時のような厚い胸ポケットではないので、落ちそうで少し怖かったりする。
天「••••••あ?あれ、あー•••やったな、これ」
鞄の中を漁ると、とあるものがない事に気がつく。パソコン•••間違えて机の中にぶち込んでしまったな。正直面倒だが取りに行こう。今日の仕事は終わらせたので、俺は立ち上がった。
ドアを開けると、目の前には咲姫が待ち伏せていた。
咲姫「終わった?」
天「あぁ。でも今から学園の方に行かないといけない」
咲姫「どうして?」
天「パソコンを置いてきてしまった。家に帰ってから必要だから回収しないといけない」
咲姫「私もついて行く」
天「いいのか?」
咲姫「うん」
一人でもついてきてくれる人間がいるのはありがたい。お言葉に甘えて咲姫と一緒に夜の陽葉学園へと向かった。
学園の中に入ると、それはそれは真っ暗だった。不気味さすら感じる程光はなく、奥が黒くて見えなかった。
幸いにも教室の鍵は開いていたので、易々と侵入する事ができた。パソコンを回収して鞄の中に入れる。
天「ふぅ、ちゃんと見つかってよかった」
咲姫「あっ、天くん、少しだけ寄り道していい?」
天「?いいぞ」
咲姫は思い出したかのように俺の手を引いて奥へと進んでいく。階段をどんどん上がっていって、扉を開ける。
七月とはいえ、夜の風は冷たく、薄い制服には厳しかった。
咲姫が連れてきたところは屋上だった。一人でにその中央まで歩いて行ったので、俺もついていく。
そして、咲姫は空を見上げた。俺も同様に見上げる。
天「••••••綺麗だ」
空には、満点の星空が映っていた。暗い夜を彩る光は、一際強い光を放つ月を中心に広がっているように見えた。
咲姫「たくさんの星•••この星の向こうには、きっと宇宙があると信じてる•••」
そういえば咲姫のお父さんは宇宙関係の研究所の所属だったかな。何気に咲姫の家には宇宙に関する学術書などが置いていたりする。俺も論文程度なら多少は見てる。例えば脳と魂の違いに関するものとか。マニアック過ぎたか、流石に。
天「宇宙なんて無限に広がるものには、流石に手が出せないな」
咲姫「でも、届かなくても伸ばし続ける事はできる」
それは、諦めない強さと言うべきなのか、俺は迷った。いや、言うべきではないのかもしれない。それは咲姫にとってとても大事な”何か”かもしれないからだ。
そもそも俺は学術的根拠のない脳と魂についての論文に触れている身だ。ないものにあるものを求めているという面では変わらない。
天「前に言ってたな。会場の人たちの色が混ざり合って宇宙のようになるって」
咲姫「うん。私は、DJを通して自分たちの、Photon Maidenの宇宙を作りたい」
これが、咲姫がこの世界で活動するようになった理由か。とても壮大で、一般人からすれば訳の分からないものにしか聞こえないかもしれないが、俺には十分過ぎるくらいわかった。
天「••••••前々から言ってると思うが、愛は人を強くする、ってヤツ。あれはとある論文から持ってきたものなんだ」
咲姫「そうなの?」
天「あぁ。人には脳とは別に身体の制御を司る『魂』があるという仮説があってな。俺はそれを信じているんだ。脳だけでは処理できない部分を、人間は一体どうやって処理し、乗り越えているのか。それは魂による大きな働きなのではないかという説だ。愛という目には見えない部分を魂は感じ取っていて、脳よりも早い処理を行うから人は強くなるのではないかというものなんだ。まぁ、学術的根拠は一切ないから、世間の底に沈んじまってるけどな」
実際にその根拠が証明された例は一切ない。未だに魂について追いかけている時もあるが、今はほぼ停滞している。もう滅びたと言ってもいいくらいだ。
咲姫「私も、それを信じる」
だが、咲姫は違った。この滅茶苦茶な理論を信じると言うのだ。
咲姫「私も、天くんと恋人になっていっぱい成長したから•••その仮説を私は信じる」
天「••••••そうか」
俺は咲姫を抱きしめる。咲姫も俺の背中に腕を回した。
咲姫「天くん•••」
天「どうした?」
いつもとは違う甘い声。これで多少察してしまうのは男の本能なのかはわからないが、俺は無意識に感じ取っていた。
咲姫「今は、天くんをいっぱい感じたい•••」
天「•••わかった」
身体を離して、俺たちは唇を重ねる。夜風で冷えた身体にはとても温かく感じた。
咲姫「んっ、ちゅ、んぅ、ちゅう•••」
最近はテスト勉強だったりレッスンだったりとあまりキスをする事がなかったので、今日はなんだか長い。息が少し辛いが、それでも幸せの方が勝っていた。
咲姫「んうぅ、ちゅっ、ちゅ、んっ」
何だかやけにがっついてきてる気がするが、そんな事はどうでも良かった。俺も俺で咲姫とのキスに夢中になっていた。
咲姫「はっ、はぁ、はぁ•••もっと、しよ?」
天「•••あぁ」
咲姫のおねだりにも随分と慣れたもんだな、としみじみと感じる。俺は咲姫の制服のボタンに指を掛けた。
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