期末テストの結果が全部返ってきた。俺の結果は全て赤点回避だ。ただ俺の事はどうでもいいのだ。赤点候補の乙和さんの心配をせねばならない。
天「咲姫はどうだった?」
咲姫「大丈夫だった。赤点は一つもとっていない」
咲姫も何とか補習は免れたようだ。元から咲姫の心配はしてなかったからいいけど。
乙和「そーらくんっ!さーきちゃんっ!」
廊下から、やけに嬉しそうな乙和さんが手を振っていた。あの態度を見る限り、赤点は免れたようだ。俺と咲姫は顔を見合わせて笑みを零した。
その後、衣舞紀さんとノアさんとも合流して、事務所まで五人で歩いていた。
衣舞紀「とりあえず一つの問題は片付いたわね。後は思い思いにライブの準備ができるわ!」
ノア「それにもうすぐ夏休みだし、長時間練習できるね」
そういえば後一週間もしないで夏休みだった。休みだろうと関係なく仕事をしている所為で感覚が少し狂っていたのかもしれない。
天「実は、全員赤点を免れたらやろうかなーと思っていた事があって」
乙和「え?なになに〜?」
乙和さんが興味津々、と言った様子で乗り出す。
俺は少し引き気味になりながら口を開いた。
天「一週間ちょっと後に夏祭りがあるらしいのですが•••行きますか?」
ノア「えっ?じゃあその日は•••」
天「オフにします。全員が補習を回避したご褒美、みたいなものです」
乙和「わーいやったー!夏祭りだー!」
まだ一週間以上先の話なのに乙和さんは既に騒いでいた。彼女の肩を押さえてこれ以上暴れさせないようにする。
衣舞紀「何だか天が乙和のお兄ちゃんみたいね」
乙和「ちょっと衣舞紀!私の方が歳上なんだけど!?」
ノア「行動とか見ても天くんの方がよっぽど大人と思うけど•••」
天「月と精神年齢あまり変わらないんじゃないかとは度々思ってます」
今の言葉の所為で乙和さんの怒りは更に増した。みんながまぁまぁ、と嗜める。咲姫はその光景を遠くから見ながら笑っていた。
今日の仕事はあんまりなかったので、サッと終わらせてレッスン部屋にお邪魔していた。
今はライブを想定した練習をしているので、ずっと歌を歌い、ダンスを踊ったりしながら、本当にライブをやっているかのように通していた。これを修正しながら何回もやるのだからかなりキツいだろう。
月「やっほーお兄ちゃん!」
天「•••あ?月、何で来たんだ」
突然ドアが開いて誰が来たかと思えば、妹の月だった。突然の来訪に全員が驚いて歌声がなくなり、無情にも音楽だけは流れていた。
月「•••あれー?邪魔しちゃったかな••••••」
天「今はライブを想定した通り練習をしているんだ。タイミングが合えば良かったが、難しいか」
間髪入れずに次の曲をやるなんてザラだから尚更入りにくいだろう。俺の時はとりあえず音が止んだから入ったからセーフだった。
ノア「つーきちゃん!」
月「わっ!ノアさん苦しいですよー!」
ノアさんが真っ先に月に抱きついた。妹も困惑しながらだが、ノアさんの抱擁を受け入れて背中を優しく叩いている。
乙和「あー!ノアズルい!私は天くんに抱きついちゃおー!」
天「えっ?ちょっとまっーー」
俺の静止の声が間に合う事はなく、お構いなしに乙和さんは俺に飛び込んできた。全体重を乗せられ、その拍子に足を滑らせて見事に後ろにぶっ倒れた。
咲姫「天くん•••!大丈夫•••!?」
衣舞紀「ちょっと乙和、いきなりはダメでしょ!」
咲姫と衣舞紀さんが俺たちの元へ近寄ってくる。すぐ近くで見ていた月とノアさんは今の状況がわかっているので、ただ見ていた。
天「••••••あっぶな」
全力で首を前に傾けていたお陰で、頭を打つ事はなかった。父さんに転がされまくってたから反射的に身体が対応したようだ。
乙和「えへへ〜、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかな?」
天「ちょっとじゃないですよ。離れてください」
乙和「やだもーん!天くんの身体ゴツゴツしてる〜!」
無闇やたらと俺の身体をペタペタと触る乙和さん。妙なくすぐったさ、というより軽い感覚の暴走を受ける。
月「お兄ちゃん•••咲姫さんがいるのにこんな事••••••」
天「俺何も悪くないよな!?」
何故俺に飛び火するような言葉をわざわざ選ぶのだろうかこいつは。マジで最近当たりが強くて軽く泣きそうなんだけど。
咲姫「••••••••••••」
しかもさっきの月の言葉に反応したのか、咲姫はムスッとした表情を浮かべていた。
俺は立ち上がって乙和さんを引き剥がす。これ以上くっつかれてもこっちが困ってしまう。
天「次からは勘弁してくださいよ••••••」
乙和「わかってるわかってる!疑り深いな〜天くんは」
乙和さんは冗談混じりの笑いを浮かべた。俺は全く笑えないので無表情を貫く。
不意に誰かから手を、というより指を握られた。
咲姫「••••••浮気?」
天「断じて違う!」
月の言葉に踊らされまくった咲姫は俺に疑いの目を向ける。事の張本人はニヤニヤしながら俺の反応を伺っていた。家帰ったらシメる。
咲姫「私も•••ぎゅう•••」
天「え、ここで•••?」
周りにみんないるのにそれはかなり、いや相当恥ずかしい。俺は気が引けてしまう。
月「お兄ちゃん何ビビってんだー!ハグの一つくらいしろー!」
天「煽んな!」
野次を入れてくる妹に怒鳴る。月はとにかく俺の反応が見たくてたまらないご様子だ。いつになくウザい。
咲姫「ぎゅうしてくれなきゃ•••嫌いになる••••••」
天「〜〜〜!あぁもうわかったよ!」
このままじゃ埒が明かないので、俺は覚悟を決めて咲姫を抱きしめた。咲姫も抱きしめ返して、俺の胸に顔を埋めた。
ノア「これは超レアな瞬間なのでは•••!写真に、写真に収めなければ!」
月「私も写真撮っておこう!」
ノアさんと月は結託して俺たちの恥ずかしい姿をパシャパシャと撮っていた。それを気にしているのは俺だけで、咲姫は抱きつく方に夢中になっている。
咲姫「なでなでも••••••」
天「あーはいはいわかったわかった」
なんか変に吹っ切れたので咲姫のワガママに応える事にした。サラサラの白い髪を撫でていく。微かに咲姫の頭が温かかった。
乙和「うわー•••すごいイチャイチャしてる•••」
衣舞紀「咲姫ってあんな風に天に甘えてたんだね•••なんだか新鮮かも」
月「いいよお兄ちゃん!そのままキスしようキス!むしろその先まで行っちゃえ!」
天「•••月お前家帰ったら覚悟しろよ?☆」
月「••••••すみません調子乗りました」
ノア「圧••••••」
とびきりの威圧たっぷりの笑顔を月に向けると、月は一瞬で萎えて大人しくなった。ノアさんが少し怯えていた気がするが俺は知らない。
ちなみにその後も咲姫が甘えてきた所為で練習どころではなくなってしまった。なので俺はしばらくはレッスン部屋への入室をしない、と心に決めた。咲姫に甘えられるのは嬉しいが時と場合と言うものがあると、改めて感じた。
感想評価オッスお願いしまーす。最近書いてて思うけどなんかネタが少なくなってきたな•••バンドリ時代の真面目文になっちまってる••••••え?バンドリの更新?一文字も書いてません♡