翌日には俺の風邪はすっかり回復していて、自由が利いていた。先日のような頭痛や吐き気、喉の痛みもない。完全復活だ。
一階に取りてリビングに入ると、月は既に朝食を作り終えていた。
月「おはようお兄ちゃん。すっかり元気になって良かったよ」
天「あぁ。昨日は迷惑かけたな」
月「兄のお世話は妹の義務なので!••••••帰るのは9時以降かな••••••?」
天「まぁそれくらいだろうな•••。何とか早く終わらせるけど、あまり期待はしないでくれ」
月「はーい。今日は友達呼んであーそぼっと」
どうやら月は友達を我が家に呼ぶつもりらしい。まぁ、流石に9時以降まで遊ぶようなバカな真似はしないだろうから大丈夫だろう。発言はアレでも根っこはしっかりしてる子だから、月は。
天「ヘルプ呼べねぇかなぁ•••でも自分の仕事は自分で全部終わらせたい••••••」
月「悩んでるねぇ•••。そもそもヘルプって誰呼ぶつもりなの?」
天「••••••••••••••••••」
誰も思い浮かばず、俺は黙り込んでしまった。交友関係の狭さを呪ったね。
通学路はいつも通りの光景だった。俺と同じく学校に向かう学生。会社へと急ぐサラリーマン。タピオカ飲んでキャッキャ騒いでる陽キャorギャル。路地裏をチラッと除けば、カツアゲの真っ最中だった。まぁ俺には関係ないからガン無視キメこむんですけどね。
•••••••••そういえば、なんかカツアゲされてる人どーっかで見た事あるような気が•••••••••。引き返してまた覗き込む。
カツアゲくんA「ほら嬢ちゃん。さっさと金出しなよ、えぇ?」
カツアゲくんB「払えないなら、身体で払ってもらおうか?ギャハハハ!」
乙和「え、えっと•••その•••私、お金持ってなくて••••••」
ガンッ!カツアゲをしている男の一人が、乙和さんの横の壁を蹴った。乙和さんは驚いて、ビクッと跳ねた。
カツアゲくんA「じゃあ今からホテル行くぞオラァ!金ねぇなら身体で払えや!」
乙和「いやっ•••助けて•••天くん••••••」
天「呼びましたか?」
呼ばれたので俺は路地裏に入った。以前の俺なら無視していたが、今の彼女は担当先だ。傷モノにはでにない。
カツアゲくんB「なんだ?この声の低い女は•••しかも男の制服着てんじゃねぇか!キンモチワルwww」
天「せいっ!」
カツアゲくんB「グブッ!?」
男の鳩尾に拳を叩き込む。一撃で男はよろけて膝をついた。そのまま顔面を蹴飛ばして、仰向けに倒れた。最後に男のち◯こに蹴りを入れる。
カツアゲくんB「あああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!???♂♂♂」
男だからこそ、その痛みには同情する。でも仕方ないな。ここまで綺麗に急所があるんだから、狙わないわけがない。
カツアゲくんA「何なんだこいつ!」
男は逃げた。いや逃がさないけど。即座に足払いを掛けて、男を転がす。そこから生まれた隙を狙って、キンタマに蹴りを入れた。今度は連続で。
天「オラオラオラオラ!」
カツアゲくんA「んほおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!???♂♂♂(裏声)」
気持ち悪い声を上げながら、男は泡を吹いて気絶した。なんかイッたような顔してるな•••原因俺だけど。ふぅ、と短く息を吐いて、乙和さんの方を向く。
天「乙和さん、だいじょうbーー」
最後まで言い切る前に、衝撃が走った。乙和さんが俺に抱きついてきたからだ。
乙和「うわああぁぁ•••!怖かったよおぉぉぉ••••••!」
天「はいはい、もう大丈夫ですから」
泣きじゃくる子供をあやすように、俺は乙和さんの頭を撫でながら、背中を優しく叩いた。
•••なんで朝っぱらからこんな事になってんだ、と困惑する俺だった。
何とか学園まで着いたが、乙和さんはずっと怯えた様子で俺にくっついていた。今までそういった輩と出くわさなかったんだろうな•••完全にトラウマになってしまっている。でも俺教室入りたいんだけどなぁ••••••仕方ない。二年の方まで行くか。面倒だけど。
ノア「天くん•••?二年生の教室まで来てどうしたの?」
天「乙和さんがカツアゲされてたみたいで•••それでまだ怖がってるっぽいです」
まだ乙和さんは俺の腕に巻きついている。顔を埋めて、誰にも自分の今の顔を見せたくない、と言っているかのようだ。
ノアさんが乙和さんを引き剥がす。
ノア「後は私と衣舞紀で何とかするから、天くんは戻っていいよ」
天「はい、お願いします」
頭を下げて、踵を返した。が、誰かに制服の裾を掴まれる。振り返ると、まだ泣いていた乙和さんだった。
乙和「行かないで••••••」
天「•••••••••すみません。後は衣舞紀さんとノアさんが相手をしてくれますから、大丈夫ですよ」
本当はマネージャーである俺が彼女の心のケアをしてあげるべきなのだろう。だが、学校というこの空間の中では、それは難しかった。乙和さんの悲しそうな表情を見ると、心が痛くなる。
ノア「乙和、ワガママ言ったらダメだよ」
天「••••••本当に、すみません」
俺はもう一度頭を下げた。今度はノアさんではなく乙和さんの方に。そこから逃げるように、俺は一年の教室へ向かった。
昼休みになったが、俺はずっと乙和さんの事が気掛かりだった。授業も、その所為で全く集中できていない状態が続いた。
咲姫「お昼ご飯、食べよう?」
天「あ•••悪い、咲姫。今日は乙和さんのところに行かないといけない」
咲姫「あっ••••••そうだったね。私も行く」
天「ん••••••ありがたい」
咲姫もついてきてくれるようで、精神的にかなり楽になった。二人で二年生の教室まで歩いて行く。
咲姫「乙和さん、大丈夫かな••••••?」
天「•••どうだろうな。衣舞紀さんとノアさんに任せてしまったけど••••••」
それでもあの怯えようだと、全く安心できない。むしろ怖い方だ。
二年生の教室に到着し、ドアを開ける。乙和さんは衣舞紀さんとノアさんと一緒に昼飯を食べていた。が、表情は暗かった。
乙和「•••あっ」
乙和さんが俺と咲姫に気がついた。そしてそのままこちらに走ってきて、
天「おっと」
俺に抱きついた。クラス中からどよめきが起きたが、乙和さんはそんなことお構いなしに俺の胸に顔を埋めていた。
天「•••ダメでしたか」
ノア「うん•••ごめんね」
申し訳なさそうに、ノアさんは謝罪する。俺は短く返して、いない人の席を借りて座った。その時に乙和さんは一時的に離れたが、すぐに腕に巻きついた。
咲姫「これはどういう••••••?」
天「見ての通りだ。朝からずっとこんな感じなんだ」
トラウマを植え付けられた今の彼女は、縋る何かがないといけないのだろうか。
衣舞紀「何とかしてみたけど、効果はなくて••••••」
天「そうですか•••でも、一体どうすれば••••••」
ノア「落ち着くまで待つしかないのかな•••ずっと天くんにくっついてるけど••••••」
天「あの時居合せてましたから•••」
男たちを(象徴ごと)潰したから、乙和さんは俺を頼っているのだろう。だとしても、ここまで酷くなるとは思えない。
咲姫「•••すごく怯えた色••••••。でも、少しだけ明るい色が見える。天くんに対しての信頼•••?」
咲姫が乙和さんの感情を見てくれたが、根本は変わらずだった。どうしたものかと、頭を抱えてしまう。
ノア「しばらくは、天くんが乙和の相手をしてあげて?今の乙和は天くんをすごく信頼してるみたいだし」
天「•••••••••わかりました」
かなり不安だが、乙和さんの為だと、自分に言い聞かせながら頷いた。
感想評価、オッスお願いしまーす。感想評価くれた人はワシの腕の写真送ります(謎)