学園に着いたのはいいが、乙和さんが俺から離れる気配がなかった。階段のところでずっと俺に抱きついている。
天「あの、そろそろ•••」
乙和「やだ!」
天「子供ですか•••?周りの目もあるんですから自重してくださいよ。あなた先輩でしょ」
乙和「好きな人に甘えるのに先輩なんて関係ないよ!」
確かに今の乙和さんの言い分はもっともだった。それに対して反論する気はないが、いかんせん周りの視線が痛い。居心地は最悪だった。
天「後からでもイチャつけるんですから、ほら離れてください」
乙和「むぅ〜•••」
渋々、といった感じで乙和さんは俺から身体を離す。
乙和「昼休み、ちゃんと来てね」
天「もちろんです」
俺は頷いた。乙和さんもそれで機嫌が良くなったのか、いつもの笑顔へと変わる。
乙和「じゃあ、後でね!」
天「はい」
階段を登っていく乙和さんを眺めてから、俺は自分の教室へと入る。
男子生徒A「よー神山ぁ••••••朝からお熱いなぁ••••••えぇ?」
天「そ、そうだな••••••」
男子生徒から殺意マシマシの視線を向けられて、俺はたじろぐ。顔こっわ。
焼野原「花巻先輩と、あんなこと••••••!」
天「付き合ってるから、な?」
焼野原「な?じゃねぇよ!あんな人前でイチャコラしやがってさぁ!?」
顔を目の前に近づける焼野原くん。ちょっと暑苦しくてキモいのでやめてほしい。
天「近い」
焼野原「あぁ!?花巻先輩はよくて俺はダメなのかぁ!?えぇ、コラ!?」
天「めんっどくせぇ••••••」
朝から妙な絡まれ方をされて、疲労感を感じていた。椅子に全体重を掛けてドカッと座る。そして大きなため息を吐いた。
咲姫「大丈夫?」
天「はは、まぁな•••意外と疲れるな•••乙和さん含めて」
咲姫「乙和さん、どんな感じ••••••?」
天「ずっと甘えてる。まぁ可愛いからいいんだけどさ」
咲姫「少し前までは乙和さんのこと、苦手だったよね」
天「••••••まぁ、かなりボディタッチとか多かったしな」
俺は遠い目をする。咲姫は苦笑いを返したが、俺の事はある程度わかっている咲姫だからこそ、どういう心情をしているのか俺自身もよくわかっていた。
咲姫「でも、順調そうだね。すごく幸せそうな色をしてる」
天「そりゃどうも」
俺は軽くぶっきらぼうな返しをする。咲姫はそれが俺の照れ隠しだとわかったようで、クスクスと笑っていた。
天「まぁ••••••乙和さんからは少し前に告白されてたからな。その時から意識はしてたのかもな」
咲姫「そうなんだ•••?乙和さん、いつの間に••••••」
咲姫は訝しげな表情をする。まぁ人知れずやってきたから知らないのは仕方のない事だろう。
天「仕事終わりに急に誘われてな、それでコクられた。その時は恋愛とかする気なかったから保留って形にしといたけど••••••本当は乙和さんの気持ちが冷めるのを待ってたんだ。その方が平和的に終わるし、俺も変に後味を残すこともないからな」
俺は淡々と語る。咲姫は無言で聞いていたが、表情は苦そうだ。
天「でもまぁ、惚れた弱みだな••••••。今じゃあ甘えられるのが嬉しいまである」
咲姫「乙和さん、天くんといつもくっついてるからね」
そう言われるとなんか恥ずかしいが••••••。いやそれはどうでもいい。
天「しかも今はうちで暮らしてるし•••もう滅茶苦茶だ」
咲姫「それ、ここで言っても大丈夫••••••?」
天「あっ(察し)」
俺は周りを見渡す。嫉妬、殺意、負の感情が入り混じった視線が向けられ、俺は冷や汗を流す。
男子生徒C「どういうことだ神山••••••?」
天「ちょ、ちょっとしたジョークよ、ジョーク••••••アハハハ•••••••••」
男子生徒C「ん?(威圧)」
天「•••••••••••••••」
俺は目を逸らす。圧たっぷりの顔を向けられ、目を合わせたくなかった。そして今後学校では、この手の話をするのはやめようと誓った。だって死にそうなんだもん。
昼休みに入り、俺と咲姫は弁当箱を持って二年生の教室へと向かっていた。そこまで向かってる間にも痛い視線が男子達から飛び交っていた。まさかとは思うが、乙和さんって人気者だった••••••?
乙和「そっらくーん!」
向かっていた途中に乙和さんが教室から飛び出して、俺に抱きついた。そこまで衝撃は大きくなかったが、急な事態だったので少しよろけた。
天「おっと•••いきなりはやめてください」
乙和「えっへへ〜、ごめんね〜」
全く悪びれる様子のない乙和さんは、俺の胸に顔を埋めていた。ため息を吐くが、嫌な気は全くしなかった。
咲姫「ご飯••••••」
天「あぁ。乙和さん、行きますよ」
乙和「はーい!」
離れたが、手はしっかりと握っていた。その所為で更に周りから見られてしまう。
乙和「?どうしたの、天くん?」
天「••••••何でもないです」
引き攣った顔をしていた所為で、余計な心配を掛けてしまった。俺は首を横に振り、平気なフリをしてみせる。
教室に入り、Photon Maidenの面々と昼食を食べ始める。これもいつもの光景になりつつあった。
ノア「とりあえずは、二人ともおめでとう」
天「ありがとうございます」
乙和「ありがとう!ノア!」
俺と乙和さんが付き合い始めた事を伝えると、真っ先にノアさんは祝福の言葉を贈ってくれた。それに対して、俺は礼で応える。
衣舞紀「天と乙和かぁ•••相性はいい方かな」
天「気を遣わない、という面では相性はいいかもですね」
乙和「性格はー!?」
納得のいかない答えを聞いて、乙和さんは俺に掴み掛かった。そして容赦なく揺さぶられて、俺の頭はガクンガクンと滅茶苦茶に動く。
ノア「ちょ、ちょっと乙和!そんなことしたら天くんが•••!」
天「大丈夫ですよ。それにこんな事で怪我をするわけがないじゃないですか」
咲姫「でも万が一にも••••••」
天「こんなんで怪我なんてしねぇよ」
乙和さんの腕を掴んで強引に引き剥がす。頬を膨らませて、不機嫌な様子をアピールする彼女は、何だか可愛かった。
衣舞紀「いつまでもイチャついてないで食べなよ•••」
乙和「だって天くんの反応が薄いんだもん!」
ノア「いつもの事じゃない•••なにを今更••••••」
乙和「昨日と今朝は甘えても許してくれたのに!」
今朝はともかく昨日は俺と乙和さんと月の三人しかいなかった。月の睡眠のタイミングを考えれば、監視されることもない。
天「それで、今日は何か食べたいものはありますか?」
乙和「クレープ!」
天「夕飯にクレープとかデブまっしぐらじゃないですか。というかそれはデザートでは?」
乙和さんの要望にツッコミを入れる。少しシュンとした顔になったが、そのお願いは受け入れ難い。
乙和「というか、今ご飯食べてるのにそれ訊くの?」
天「早めに言っておかないと俺が忘れそうなので」
ノア「もう夕飯は乙和でいいんじゃない?」
天「クソ不味そうですね」
乙和「酷い!」
いやだってねぇ?人間って美味しいのかわかんないし。というより俺はマズい説を推す。
乙和「天くんが冷たいよ〜•••」
天「そう言いながらくっつかないでください」
更に身体を密着させられ、少しドキドキしてしまう。そういうとこやぞホンマ。
咲姫「そういえば、月ちゃんは最近どう?」
天「•••いつも通り」
咲姫「••••••••••••」
黙り込んでしまった。咲姫も多少は月の事はわかるので俺の言い分は理解していた。
ノア「はぁ〜、私も久しぶりに月ちゃんに会いたいなぁ〜•••」
天「うちに来ますか?月も喜びますよ」
ノア「でも今は天くんの家、乙和がいるんでしょ?ちょっとね••••••」
乙和「何それどういう事?私がいたら悪いの?」
ホントこの二人仲いいよなー、と俺はしみじみと感じる。そして生温かい目で、彼女たちを眺めていた。
感想評価オナシャス!後R18要望兄貴約二名!明日出すぞ!