何やかんや言っていたが、結局ノアさんはうちに来ることになった。その事があまり気に食わないのか、乙和さんは少し不機嫌だった。頬を膨らませながら、俺の手を握って歩いている。
乙和「もう!何でノアを誘ったの!?」
天「いいじゃないですか。月に会いたがってましたし」
乙和「これじゃあ、家でイチャイチャできないよ•••」
天「ノアさんが帰った後でもいいじゃないですか•••」
乙和「あっそっか」
この人本格的にアホなんじゃないか?ちょっと心配になってきたぞ••••••。
乙和「今日はお仕事どれくらいかかりそう?」
天「そこまで時間は使わないと思います。順調に進めば、多分二時間くらいで終わるかと」
乙和「あっ結構早いんだ。じゃあじゃあ、レッスン見ていく?」
天「んー•••いや、やる事あるので今回は遠慮します。すみません」
よくよく思い返せば、今日の分の仕事を片付けた後はライブの交渉に行く予定だった。もうすぐ別のライブがあるというのに、お気楽な事だと自分でも感じる。
天「••••••まぁ大丈夫か」
乙和「ん?何が?」
天「いえ、こっちの話です」
ライブの規模自体はそこまで大きいというわけではない。多分使わせて貰えるだろう。ただ、こんなにライブの予定を詰め込んでもいいのだろうか、と少し不安になる。
乙和「こーらっ」
乙和さんが急に俺の額にデコピンをかました。その所為で思考は乱れて、一気に現実へと引き戻された。
乙和「急に重たそうな顔をしていたけど、変な心配はしなくて大丈夫だよ」
天「えっ?」
乙和「どうせ、ライブを入れすぎて私たちが倒れたらどうしようー、なんて考えてたんでしょ?私たちがそんなにヤワじゃないのは、天くんが一番わかってると思うな?」
天「••••••そうですね。過保護過ぎました」
乙和「でも心配してくれるのはすっごく嬉しいよ!」
人が沢山いる中にも関わらず、乙和さんは俺に抱きついた。周りの視線が集まって少し恥ずかしい。
乙和「あったかーい!」
天「そんな事してないで早く事務所行きますよ」
乙和「もー!もうちょっとくっついてもいいでしょー!?」
天「家でお願いします」
乙和「はーい•••」
それでも少しの時間を置いて乙和さんは離れた。俺は少し疲れて、無意識のうちにため息を吐いていた。
事務所に到着し、俺はすぐに仕事部屋にこもった。メモ帳に万年筆を走らせながら、パソコンからは音楽を流す。周りに漏れないように、しっかりとヘッドホンをしながら。
天「••••••晩飯どうしよ」
結局今になって思い出した。まぁ、ここまで来たらもう月の中で決まってるだろうから俺は諦めた。作業に集中する。
天「•••流石に素っ気なさ過ぎたか?」
が、多少進んだところで、今度は別の方向へと思考が移ってしまう。乙和さんに対する態度だ。
小っ恥ずかしいというのもあって、かなり冷たくあしらった気がする。このままいけば別れそうな感じがして、少し不安に駆られてしまう。せめて家ではちゃんと応えてあげよう。なんだかんだで俺も甘くなったな、とバカらしくなった。
予定よりも早く仕事が終わったので、俺は荷物をまとめて電車に乗った。数駅程離れた場所にある会場を使わせてもらう為の交渉だ。
天「•••••••••あっけねぇな」
が、交渉と言うよりは、世間話をしただけな気がした。相手側も断る理由はなかったらしく、用件だけ話したらすぐに了承を得ることができた。なのでその後は他愛もない話を少しだけして、また帰ってきていた。
時間的にはレッスンは確実に終わっている。乙和さんはもう、トラウマとかそういったものはさほど気になっていなさそうなので、うちの家に帰ってそうではある。
改札を出て、家まで帰ろうと大きく伸びをする。座ってばっかりだった身体は鈍っていて、ボキボキと骨が鳴った。
天「帰るか」
駅から出て、家の方向を確認してその方角を向いた。それと同時に何かが俺に突っ込んできた。
天「んんっ!?」
乙和「おかえりー!ね、ね、どうだった?」
天「しっかり仕事持ってきましたよ。••••••後、ノアさんが見てるのであまりくっつくのは••••••」
ノア「今後のネタにするから大丈夫だよ」
うわー、悪い顔してるなあの人。笑顔だけど裏側がよく見える見える。
天「月も待ってますし、帰りましょう」
乙和「うん!」
乙和さんの手を握って歩き出す。ノアさんも隣を歩き始めた。
ノア「ライブ•••今はどれくらい入ってるの?」
天「来月が三回•••再来月が四回ですね•••八月は五回くらい詰め込もうかな、とは考えてます。夏休み期間なので人は集まりやすいかと」
乙和「結構忙しいんだねー。でも天くんが来るまではこんなにライブを持ってくることなんてなかったから、感謝しないとね!」
ノア「でも、私たちがそれを盛り上げないと意味はないんだけどね」
乙和「それくらいわかってるよ!」
俺越しに二人が睨み合う。ケンカする程仲が良いというのはこういうことなのかと、他人事のように感じた。
天「月、ノアさんが来るって聞いて喜んでましたよ」
ノア「本当?月ちゃんカワイイなぁ〜•••!」
乙和「ノアがこうなるのわかってて言ったよね?」
天「まぁそうですね。これで矛先が全部月に向けば、俺は被害を被らなくて済みますから」
乙和「本人がいる前でそれ言っちゃうんだね••••••」
天「トリップしてますし、大丈夫でしょう」
何かしらの妄想に浸っているのか、ノアさんはずっとニヤニヤしていた。ちょっと気持ち悪かったので引いた()
家に到着して玄関を開ける。たたた、と月が制服の上にエプロンを着けた状態で、小走りでここまでやってきた。
月「おかえりー。ノアさんいらっしゃい!こんな家ですけど寛いでいってください!」
ノア「うん、ありがとう月ちゃん」
こういう真面目な場ではノアさんは普通だった。丁寧な対応で月と話をする。
天「今日晩飯何?」
月「何も連絡が来なかったから適当に決めました。もう、何で忘れちゃうかな••••••」
天「悪いな。乙和さんには訊いてたんだが、まともな答えが返ってこなくてな••••••」
月「••••••参考までに訊きたいけど、何だった?」
天「クレープ」
月「それデザートじゃん••••••」
苦い顔をして、昼の時と同じことを月は言った。その事を覚えていたノアさんは少しウケている。それに対して乙和さんの顔は赤い。
乙和「いいじゃんいいじゃん!クレープ好きなんだから!」
月「だからって晩御飯にクレープはないですよー!太っちゃうじゃないですか!」
兄妹揃って体型の事を心配するのは、父さんの性なのかはわからない。食生活というか、身体の事にうるさいからな、父さんは。
ノア「月ちゃんカワイイ••••••!」
そしてノアさんは案の定平常運転だった。まぁ対象が月だから俺は気楽である。
月「ご飯もうすぐできますので、ささっ、こっちに」
ノア「お邪魔します」
天「あ、そうだ(唐突)。月、テストはどうだった?」
月「え〜?もちろん、オール100点です!」
天「そうか、よく頑張ったな」
妹の頭を優しく撫でてやる。月はこうされるのが好きなようで、嬉しそうに笑っていた。
月「いやー、お兄ちゃんのなでなでは気持ちいいですなー」
天「お前これ好きだよなホント」
月「抱きしめる権利も差し上げよう!」
天「ノアさんに渡すわそれは」
月「ノアさんカモン!」
バッ、とノアさんに向かって大きく手を広げる月。それに反応したノアさんが月を抱きしめた。
ノア「月ちゃん柔らかーい!それにあったかい!」
月「うぅ•••おっぱいが当たる••••••」
貧乳の月さんには胸のあるノアさんはキツかった模様だ。いやでもPhoton Maiden内だと多分一番小さいと思うから•••これ以上はやめておこう。
今日の夕食は一段と賑やかだった。俺と月と乙和さんの三人でも十分だったが、更にノアさんが加わった事で、楽しい食事へとなっていた。
ノア「美味しい!月ちゃん料理上手なんだね!」
月「ずっとこの家の料理を担当してますから!」
ノア「将来絶対いいお嫁さんになれるよ!うちで貰われない?」
月「私の理想に合う殿方であれば考えます!」
ノアさんのお誘いを月は一蹴した。ノアさん本人もふざけて言ってるのはわかっているので、クスクスと小さく笑っていた。
乙和「なんだか、置いてけぼりだね••••••」
天「そうですか?聞いてる分には楽しいですけど」
月「別に私とノアさんがいるとか関係なくイチャついていいからね?」
天「一々言わなくていい。後ノアさんがいるから発言には気をつけろよ?」
月「フリ?」
天「違う」
いやらしい笑みを浮かべながら、月はおちゃらけてみせた。それに対して俺は真顔での返答だったが、内心では普通に焦っている。
月「あ、これは私からの率直な質問なんだけど」
天「なんだ?」
月「もう乙和さんとキスはしたの?」
乙和「えぇ!?」
ノア「!?」
天「いや、まだしてない」
月からの問いに、俺は淡々と答えた。約二名が驚いた顔をしているが気にしない。
月「それでも付き合ってるのか!?」
天「付き合ってるよ」
月「じゃあ早くセッkーーいったい!?」
禁止用語を言いかけたので全部言われる前に頭を叩いた。
月「何するのさ!可愛い可愛い妹の頭を叩くなんて!」
天「お前さっきなんて言いかけた、なぁ?発言には気をつけろって言ったよな、えぇ?」
月「はい•••すみません••••••」
圧を掛けると、妹はすぐに大人しくなった。
夕飯を食べ終えると、程なくしてノアさんは帰っていった。風呂を済ませて、俺と乙和さんはベッドで寝転がっていた。
乙和「あったかいねー」
天「そうですね」
乙和さんは相変わらず俺にくっついた状態で、何やらご機嫌な様子だった。
天「来週にはライブですね。緊張しますか?」
乙和「するに決まってるよー!しかもその事を今言わないでよ!」
天「それは失礼しました。でも、いつも通りなようで安心しました」
乙和「むぅ•••そういう天くんはどうなの?」
天「俺ですか?•••まぁ、多少はしますね」
乙和「ほらやっぱり!」
それみたことか、と乙和さんは笑う。俺もつられて笑ってしまうが、あまりそんな余裕はなかった。
乙和「そういうわけで•••どうにかして緊張をほぐして欲しいなぁ、と思って••••••」
天「はぁ•••、でもどうすれば」
乙和「キス、してほしいかな••••••」
天「ーーッ、じゃ、じゃあ•••」
俺は乙和さんの両頬に手を置いて、顔を近づける。それと同時に乙和さんは目を閉じた。俺も目を閉じて、唇を重ねる。
乙和「んっ•••ちゅっ」
少しだけの小さなキスだったが、それだけでもすごく幸せだった。
乙和「はっ。ねぇ、天くん•••シちゃおっか?」
天「隣の部屋には月がいますよ」
乙和「大声出さなかったら大丈夫!私もう、我慢できない•••」
天「••••••全く、ワガママですね」
俺はため息を吐いて、乙和さんを抱き寄せる。上体を起こして、また唇を重ねた。
感想評価オネショ!ちなみに咲姫√同様Hシーン投稿します()。見たい人向けね。