朝を告げる鳥の鳴き声が聞こえて、俺は目を覚ました。むくり、と身体を起こして、隣を見る。乙和さんが裸のまま眠っていた。そして自分自身も裸になっていた事に気づく。
一瞬の困惑を覚えたが、すぐに思い出すことができた。そういや昨日ヤッたんだわ()
そして朝→月が呼びにくる→見つかる→END。完璧過ぎる最悪な構図が出来上がってしまった。俺は嫌な汗が流れたのを感じて、すぐに乙和さんの身体を揺さぶった。
天「ちょ、ちょっ!乙和さん起きてください!」
乙和「んっ、んぅ〜•••どうしたの?朝から•••」
天「いいから早く服着てください!月がこっち来ますよ!」
乙和「えぇ•••?•••••••••そうだった!」
訳がわからないといった表情を見せたが、しばしの沈黙の後に彼女は焦った顔になる。すぐに散らばったパジャマを手に取って着始めた。
なんとか月が部屋に入って来る前には完全に着装を完了した。少し安心。
乙和「こんなに急がなくてもよかった気がするのだけど••••••」
天「大事を考えた結果ですよ。見つかった時の事考えてください」
乙和「堅苦しいなぁ〜•••あ、でも•••」
乙和さんは俺に抱きついた。温かい身体はかなり気持ち良くて、安心できた。
乙和「えへへ〜!やっぱりここが一番落ち着くなー!」
天「どんだけ甘えん坊なんですかあなたは」
乙和「天くんの前だけだもーん!」
ぐりぐりと胸に顔を押し付けてきた。いきなりの事で少しびっくりしてしまう。
乙和「ほら、どうだどうだ!」
天「はいはい落ち着いて落ち着いて」
抱きしめると、案外すぐに乙和さんは大人しくなった。そのまま更に俺の胸に顔を埋めたが。
月「二人とも起きてるー?朝ご飯できたよー?」
天「ん、今から行く」
乙和「わーい!朝ご飯だー!」
乙和さんは元気の良い子供のように月の元へ走って行った。俺はため息を吐きながら、ベッドから降りてリビングへと向かった。
乙和「いっただっきまーす!」
朝からやけにテンションの高い乙和さんは、朝食をかき込んでいた。その光景が可笑しいのか、はたまた嬉しいのか、月は笑みを零していた。
月「昨日はお盛んだったねー」
天「んっ!!?ゲホッゴホッ!」
乙和「ぶふぅ!!?」
俺は飲んでいたお茶を喉に詰まらせて咳き込み、乙和さんは口内に含んでいた食べ物を噴き出した。ば、バレてたのか••••••!そういや昨日声とか抑えるの忘れて普通にヤッてたわ••••••!
月「部屋隣だから結構聞こえたよー。まぁ二人とも幸せそうだから、全然いいけどねー。乙和さんがご機嫌なのもそのおかげでしょ?」
乙和「そ、そうです••••••」
乙和さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。かくいう俺もかなり恥ずかしい。
月「いやー良かった良かった!お兄ちゃんがEDじゃなくて!」
天「どこの心配してんのお前••••••」
月「だってねぇ?ずーっと恋人作らないし好きな人聞いてもいないっていうから、てっきりEDかホモなのかと思ってたよ」
天「好きな女いない=男好きのホモって発想やめない?」
中々に面倒でクソみたいな思考をしていやがる。マジでぶん殴ろうかと少し思ってしまった。
月「それでそれで、乙和さん!昨日はどうでしたか!?」
乙和「えぇ!?ど、どうって訊かれても••••••」
天「答えてくれるわけねぇだろ」
味噌汁を啜りながら、俺は呆れたように言葉を漏らした。月からはいやらしい笑みが向けられていたが、その心情はわからない。
天「そういや明日レッスン休みだったな••••••何もやる事ねぇ」
乙和「じゃあさ!私と何処か出かけようよ!」
天「いいですよ。どこ行きますか?」
乙和「うーん••••••これから決める!」
わかりきっていた回答だったので、俺はただ頷いた。
月「何気に初じゃない?デート」
天「あー確かにそうだな」
言われてみれば乙和さんとデートをするのは初めてだ。やべ、なんか変に緊張してきたぞ。
月「恋人同士のデートといえば•••最後にホテルに行って•••きゃ!」
天「お前本当に遠慮しなくなったよな••••••」
最早何も言えない。月はダブルピースをキメていたが、ここまでダブルピースがウザいと感じたのは、人生で初めてだろう。
乙和「楽しみだね!」
天「そうですね」
が、乙和さんはそんな事はお構い無しだった。月は無視して、俺の方へ意識が回っていたようだ。
月「お土産よろしくねー」
天「そこら辺の草と石持って帰るわ」
月「ガチのゴミ持って帰らないで!?」
俺の適当な返答が月を傷つけた。ちょっとスッキリしたが、後でフライパンで頭を叩かれた。痛ぇ。
乙和さんと家を出て、通学路を歩く。昨日の事もあり、乙和さんは以前よりもスキンシップが激しくなった気がする。俺の腕を抱きながら胸に押し付けてくるのだ。その所為で少しドキドキしてしまう。
乙和「朝話してたお出掛けについてなんだけど」
天「はい、決まりましたか?」
乙和「一緒に甘いものを食べに行きたいなー、なんて」
天「••••••あまりたくさん食べたらダメですからね?」
乙和「わかってるよー!天くんは過保護過ぎるよ!」
天「衣舞紀さんよりはマシと思いますがね」
ここで衣舞紀さんを引き合いに出すあたり、俺もかなり性格が悪いなと感じる。乙和さんは苦い表情になり、更に腕を抱き寄せた。
乙和「いじわる••••••」
天「すみません」
頭を撫でてやると、彼女は少し照れたような顔になった。
乙和「えへへ•••好きだよ」
天「俺も好きですよ」
乙和「じゃあキスして?」
天「こんな人が沢山いる中では恥ずかしくて無理です」
乙和「え〜。照れなくてもいいのにー」
ぶーぶーと唇を突き出しながらブーイングを送ってくるので、人差し指で唇を押さえた。
乙和「んっ!?」
天「これで我慢してください」
乙和「•••しょうがないなー。じゃあもっとぎゅーってしちゃうもんね!」
間髪入れずに乙和さんが俺に抱きつく。俺は少し困惑したが、何とか受け止める。うっわぁ•••すげぇ恥ずかしい。この人なんでこんなに堂々とできるんだよ。
乙和「このまま学校行こ?」
天「歩きにくいので嫌です」
乙和「ワガママだなぁ〜」
離れてくれたが、また腕を抱かれる。俺は諦めて乙和さんのされるがままとなった。
学校に到着して、俺たちは別れた。教室へ入って真っ先に自分の席に座る。
天「あー•••疲れたー••••••」
朝っぱらから月にあんな事を言われて心底参っていた。頼むから問題発言を控えてほしい。でも父さんの血が流れてる以上、それは難しいだろう。
咲姫「かなりお疲れみたい••••••」
天「今朝の月がヤバ過ぎた••••••」
咲姫「そうなんだ•••大変だね••••••」
天「全くだよ••••••マジでどうにかならないかなぁ」
まぁ無理なんだろうけどさ。父さんも母さんも月に甘いし、それに加えて二人は俺に厳しい。一度月に異を唱えれば、両親からも責め立てられるという地獄絵図が出来上がる。ハッキリ言ってクソだ。
咲姫「ちょっと怒ってる••••••?」
天「いや、ちょっと嫌な事を思いだしただけだ」
過去にあったあの光景がフラッシュバックしてきて、何とも言えない感情に包まれる。あの時は本気で家出しようと思ったなぁ••••••。出来る事なら今からでも出たいけども。
咲姫「乙和さんとはどんな感じ?」
天「まぁ仲良くしてるよ。特に問題もなく」
咲姫「そうなんだ、よかった」
天「ただ、月がうるさい••••••」
咲姫「それは仕方ない••••••かな?」
咲姫は苦笑いをしながら俺の目を見た。多分疲れ切った力のない瞳をしているだろうと、自分でもなんだかわかっていた。
咲姫「辛いなら早退した方がいい••••••」
天「そんなんじゃないから大丈夫だ」
俺は笑う。完全に作り笑いだが、誤魔化せるだろうと簡単に考えていた。
咲姫「••••••無理はしないでね」
天「あぁ」
俺は頷く。それを最後に咲姫は自分の席へと戻っていった。俺は小さく息を吐いて、椅子の背に体重を預ける。
天「(まぁ••••••昨日ヤッた後だから疲れてるんだよな)」
理由がかなりしょうもないので、目を合わせて言うなど無理な話だった。
執筆意欲の上がり下がりが激しいなぁ•••つーかリアルの方が普通に忙しいから書く時間確保するのも辛いッピ!