敏腕(感)男、マネージャーするってよ   作:如水くん

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皆様、メリークリスマス、でございます。いかがお過ごしでしょうか?私は上善如水を呑みながらルタオのチーズケーキを食べています。美味しいですチーズケーキと日本酒合いますねぇ!
まぁ無駄話はこれくらいにして、私はいつも通り恋人などおらず一人で寂しいクリスマスを過ごしています。悲しいね。
急ピッチで仕上げたものなのであまり内容は期待しないでください泣きます。


メリークリスマス!

もうすぐクリスマスを迎えようとしている中、俺は特に変わりなく仕事に打ち込んでいた。パソコンのキーボードを叩く音が虚しく部屋に響き渡る。

去年はライブでそれどころではなかったが、今年はライブも何もない。至って普通のクリスマスが過ごせそうで少し安心している。

まぁ受験生が三人もいる中で、しかも受験も近いこの時期にライブをブチ込むなんてアホな真似をする気は毛頭ない。するヤツは人間の心がないと思う。

 

今日の分の仕事を全て終えて、パソコンをパタン、と閉じる。立ち上がって部屋を出た。

まだ彼女たちはレッスン中だろう。あえてそこを狙って外に出たのだ。

クリスマス当日にサプライズでプレゼントを渡してやるつもりなので、バレないように買い物をしなければならないのだ。

 

天「バレてねぇよな•••?咲姫辺りはなんとなく察してそうだが」

 

あの子に関しては休憩時間の時にたまに仕事部屋に来るから最悪の場合は電話なり何なりして呼び出してくるに違いない。

だから彼女の行動に全てがかかっている。ほぼ運ゲになってしまうが祈るしかないだろう。

 

天「えーっと••••••何処だっけ」

 

携帯の地図を見ながら、キョロキョロと不審者気味に歩き続ける。

意外とわかり辛いもので、見つけるのに少し時間がかかってしまった。

 

無造作に扉を開けて店内に入ると、質素な外観と違って内装はかなり豪華だった。まるで人間の心の中身みたいだ。外側は謙虚に、普通に、内側は傲慢に、艶やかに。

 

天「趣味わっる」

 

簡単に言うとものすごく趣味が悪い。というかこんなところがちゃんとした商品を売ってくれるのかすら怪しいまである。

こんなんだがモノ自体は優秀なんだよなぁ•••。本当に見た目が悪い。

とりあえずりんくたちの分も諸々含めて買い漁ってやった。

最近金よく使ってんなぁ•••妹の学費は大丈夫だろうか。

学費に関しては両親の金使っても関係ないし、本当に危ない時は頼らせてもらおう。

 

天「よし、帰るか」

 

買うものは買ったので、俺はそそくさと店から出て行く。

少し急ぎ目に歩き、事務所に急いだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

特に咲姫たちから言及されることなく次の日を迎えることができた。

12月24日。クリスマスイブだ。

 

月「おはよう〜•••」

 

少し元気のない声をあげながら朝食を食べている妹の姿が目に入る。その前の席に座って、俺も箸を手に取った。

 

天「どうした?何か悩み事か?彼氏でもできたか?」

 

月「できてない!!それに私は石油王と結婚するのー!!」

 

天「やめとけ一生無理だから。んで、何かあったのか?」

 

月「クリスマスだよお兄ちゃん?咲姫さんと朝からイチャイチャチュッチュしないの?」

 

天「咲姫は今自分の家だぞ」

 

月「なんで泊まってないのさ!」

 

知らねぇよんなこと俺に言うなや。そもそもいつもいつも咲姫が泊まりに来てるわけではない。ぶっちゃけほぼ毎日宿泊してるのは確かだ。もう家族だよ。

 

天「それだけか?」

 

月「まだあるよ。クリスマスどうするの?今年はお父さんもお母さんも帰ってこないけど」

 

天「咲姫も入れて三人でひっそりと過ごすくらいでいいだろ。明日の帰りにケーキでも買ってくる」

 

ケーキ、その言葉を聞いて月の顔が明るくなった。そんなにケーキ好きだったっけお前。

 

月「高いケーキ!これでもかってくらいクソ高いケーキを用意して!!」

 

天「そんなに金に余裕ないんだが?学費払えなくなるけど」

 

月「学費はお父さんに払わせるもん!いつもいつもお兄ちゃんがお金出してばかりなんだから!」

 

天「••••••そうかよ」

 

父さん、強く生きてくれ。有栖川学院の学費ってなると相当バカにならんぞ。しばらく酒でも断っててくれ。

 

天「というかそんな高いケーキを買うつもりはないぞ。お前が高校受かったらいいもん食わせてやるよ」

 

月「えぇー•••しょうがないなぁ。じゃあいいもの食べるために勉強頑張りますかぁ!」

 

俺も月も冬休み。勉強する時間はたっぷりとあるのだ。そして俺もうんと仕事をすることができる。

まぁ冬休み課題と言うゴミカスがあるから完全に自由、というわけではないが。

 

天「そういや冬休みになって三日くらいだが、宿題は終わったのか?」

 

月「え?数時間で終わったけど?」

 

天「•••••••••」

 

やっぱこいつ天才だろ。なんでここまで優秀なのに受験が不安なんだよおかしいだろ。

 

月「お兄ちゃんはどうなの?」

 

天「••••••まぁ、計画的に進めるよ。仕事が主だからそこまでやってる余裕はない」

 

月「大変だねぇ。去年ほどではないけど•••あ、来年が一番忙しいか!」

 

天「うるっせぇなぁ••••••」

 

来年までは受験の事は忘れさせて欲しい。今から受験の事なんか考えてたら仕事が進まなくなる。

あまりこういう事は言いたくないが、正直な話大学に行かなくていいとは思っている。

だって既に職があるんだよ?今更学業を続ける必要is何処?

Photon Maidenの彼女達はいつか引退した後に働く為に念の為大学は出ておいた方がいいのは確かだ。だが俺はマネージャーと言う困らない仕事に就いている。どこにでも行けるのだ。

 

月「大学行くって、みんなで決めたんでしょ?今更逃げちゃダメだよ?」

 

天「わかってる、もう一年しかないんだ。今になって受験しません、なんて言ってられん」

 

心を見透かされていたが、言葉通り俺は今更逃げるつもりなどない。忙しくなるだろうが、ちゃんと大学に行く。そして普通に卒業して普通に仕事を続ける。

 

天「つーかぶっちゃけクリスマス関係ないよなこの話」

 

月「それはそうだねー。今年のクリスマスは延々とクソゲーでもやる?」

 

天「せめてモ◯ハンにしてくれ•••」

 

まぁ少なくとも今の半ライス•••じゃなかったラ◯ズはやることやり尽くしていてやる事ねぇんだよなぁ•••グラフィック面とか諸々見てもワー◯ドやる方が何倍もマシなのではと考えている。

 

月「そういえば•••クリスマスプレゼント•••?買ったの?」

 

天「ちゃんと買った。抜かりなし」

 

月「私のは?」

 

天「ないって言ったらどうする?」

 

月「殺す♡」

 

ストレートだなおい。

 

天「嘘、ちゃんと買ってる」

 

月「なんか怪しい」

 

信用しろよ。腐ってもお前の兄貴だぞこっちは。

まだ訝しんだ顔をする月を見ながら、俺もため息を吐く。

 

天「ちゃんと用意してるから、変に警戒するな」

 

月「変なもの用意してないよね?」

 

天「すまん、それは保証できない」

 

月「は!?ちょっと待ってよ!」

 

天「じゃ、仕事行ってくる〜」

 

月「逃げるなーー!!おい!!!」

 

大声で呼び止める月をガン無視して、俺はゲラゲラ笑いながら家を飛び出した。ちなみに家を出ても妹の叫び声は少しだけ聞こえていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

乙和「終わった終わった〜。はぁ〜疲れたぁ〜」

 

天「お疲れ様です」

 

乙和「ありがと〜。そういえば天くん、クリスマスはどうするの?すごい今更だけどさ」

 

レッスン終わりに唐突に乙和さんからこんな質問をされて、俺は少し困惑した顔となる。

 

天「本当に今更ですね•••普通に家で過ごしますけど」

 

乙和「あれ?咲姫ちゃんと一緒に過ごさないの?」

 

咲姫「もちろん天くんの家に行く」

 

天「らしいです」

 

乙和「あー•••うん。なんかそんな気はしてた」

 

腕に巻き付いた状態の咲姫を、苦笑いしながら眺める乙和さん。俺は完全に慣れてしまったので、欠伸をしていた。

 

ノア「去年の今頃はライブをしていたはずなのにね。今年は何もなくてなんだか違和感があるかも」

 

衣舞紀「そうよね。なんだかむず痒いもの」

 

天「いいじゃないですか、何もないのは。こっちは仕事追われて死にそうでしたし•••」

 

頭を掻きながら俺は遠い目を明後日の方向に向ける。ヘラヘラとした笑いすら込み上げない程に目が死んでいた。

 

咲姫「今年はゆっくり過ごせそうだね」

 

天「そうだな。でもあまり騒がないようにな」

 

乙和「騒ぐのはどちらかというと月ちゃんの方だよね•••」

 

天「あいつは今年はそんな余裕ないと思いますけどね•••」

 

受験勉強漬けで疲弊しきってるし、今年のクリスマスはあいつの絶叫も何も聞こえないことだろう。耳が生きてるって実感する。

 

衣舞紀「天はこの後どうするの?」

 

天「この後色々回ってりんくたちに会ってプレゼントでも渡そうかと」

 

ノア「全員分用意したの!?」

 

天「そうですけど」

 

ノアさんが驚いた顔をしているが、今更な事のはずだよな?

 

天「ホワイトデーとかちゃんと全員分用意してたじゃないですか。寧ろ少ないくらいですよ」

 

ノア「だとしてもお金を使いすぎじゃないかな!?貯金崩したりとかしてない!?」

 

天「大丈夫ですよ。普段そこまでお金は使わないので」

 

咲姫「本当に大丈夫なの•••?無理してない?」

 

天「してないしてない。貯金もちゃんとあるから問題ない」

 

何年も前からこの仕事をしているし、相応の給料ももらっている。寧ろ貯金はどんどん貯まっていってるくらいだ。

 

天「とりあえず今から適当に連絡入れて渡してきます。みんなの分は明日に」

 

乙和「りょーかい!いってらっしゃーい!」

 

天「いってきます。お疲れ様でした」

 

一礼し、俺はスタスタと歩いて外に出る。吹き抜ける風が冷たいが、防寒をしっかりしていたのもあってそこまで寒くはなかった。

携帯を取り出して、りんくに連絡に連絡を入れる。

 

天「丁度よく四人で集まってたな••••••」

 

いつも通りなのかはわからないが、タイミングよく集合していたらしい。

適当な場所を指定して、そこに落ち合うことになった。

携帯をイジりながらボケーっと待っていると、こちらに向かって走ってくる人の姿が見えた。

 

天「ぶふっ!?」

 

そしてすかさずこちらに突撃した。防寒着に守られてたおかげでそこまで痛くはなかったが、衝撃はかなりのものだった。

 

りんく「天くーん!終業式以来だね!」

 

天「おうそうだな。とりあえず離れてくれないか?」

 

りんく「え〜?やだー!」

 

天「ちょっと真秀ちゃーん!?貴女の娘さんワガママなんですけどー!?」

 

真秀「ほらりんく!離れて!」

 

りんく「はーい!」

 

何このコント。まるで仕組まれたかのように話が進んだが、打ち合わせなど一切していない。これが友情かぁ•••()

 

むに「会って早々騒がしいわね•••」

 

麗「まぁまぁむにさん。いつもの事ですよ」

 

むに「そうだけど••••••」

 

後からやってきたむにと麗が色々話しているが、ちゃんと聞こえているので、俺は苦笑していた。

 

りんく「どうしたの?急に呼んだりして」

 

天「ん?明日クリスマスだろ?」

 

真秀「そうだけど、何か関係でもあるの?」

 

天「はいこれ」

 

鞄から用意していたプレゼントを取り出して、見せびらかす。

 

天「ちゃんと用意しました!」

 

にひひ、と砕けたように笑う。変にテンションが上がってるのか知らんが、あまりにも行動が自分らしくない。

 

りんく「え!?いいの!?」

 

天「あぁ。いつも世話になってるからな」

 

真秀「悪いよ。いつも貰ってばかりじゃん」

 

天「気にすんな気にすんな。俺が好きにやってるだけだから」

 

むに「これ結構高いものじゃないの••••••?お金ーー」

 

天「それさっき言われた」

 

お金の事に関しては少し前に言われたばかりだ。流石に何回も訊かれるのは勘弁願いたい。

 

麗「よろしいのですか?いただいてしまっても」

 

天「だから構わんって。貰っとけ貰っとけ」

 

少し無理矢理気味に押し付けてやる。まだ困惑の残った顔をしていたが、何とか受け取ってくれた。

 

むに「ところでこれ、何よ•••?」

 

天「適当にお菓子。クソ趣味悪い店で買ってきた」

 

むに「それ中身大丈夫なの!?箱自体は普通だけれど•••」

 

天「••••••店のまんまだなこれ」

 

店舗自体が見た目は普通中身はカオスだっただけに、買った商品もそれと全く同じらしい。本当にセンスを疑ってしまう。

 

りんく「何が入ってるの!?」

 

天「それは開けてからのお楽しみだ。変なものはないはずだから安心してくれ」

 

真秀「たとえば?」

 

天「TENGAとか?」

 

りんく「?」

 

麗「てんが•••?」

 

約二名がTENGAの事をよくわかっていないらしい。いや知らない方がいいんだけどね。というか一生知るな。

 

真秀「そんなもの入ってるわけないでしょ!?」

 

天「ワンチャンあるかもしれねぇじゃん!!それが運ゲってもんだろ!?」

 

むに「そんな運ゲないわよ!というか言ってることが月と全く変わらないわよ!?」

 

天「俺一応あいつの兄貴だからな!」

 

むに「知らないわよ!!」

 

外なのにお構いなしに大声で叫び合っているが、周りに人はいないので特に問題ないのが幸いだ。

 

りんく「とにかくありがとう!天くん!」

 

そしてTENGAがどういうものか知らないりんくから純粋なお礼を受け取る。ホントいい子だなぁ。

 

りんく「後でその、てんが?の意味も調べておくね!」

 

麗「私も興味があるので調べてみます」

 

天•真秀•むに「やめて!!」

 

純粋というのも困り物だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

りんくたちと別れた後、俺は響子たちに連絡を取って集まる事にした。

集合場所は特に決めてないが、昼食を食べるついでにハンバーガー屋に行く事になった。

そこまで距離はなかったので、適当に歩いていたらすぐに着いた。彼女たちが到着するまで、先ほどと同じようにスマホをぽちぽちする。スマホ依存症ですみませんねぇ。

 

天「ふわ•••眠」

 

仕事終わりにこうやって歩き回っているものだから、かなり眠たい。最悪響子たちの前で寝てしまいそうだ。

 

響子「随分と眠そうだね、天」

 

天「んぁ•••?」

 

思ったより早い到着に、俺は欠伸をしたままの顔で固まってしまった。それを見た響子はクスクスと笑う。

 

響子「何、その顔?私の顔に何かついてた?」

 

天「いや、少し驚いただけだ。デコちゃん以外は終業式ぶりだな」

 

しのぶ「デコちゃん言うな」

 

隣にいたしのぶがしかめっ面で嫌そうな声音で話す。俺はニヤニヤと笑うだけだ。

 

絵空「天くんからお呼び出しなんて、何かあるのかしら?」

 

天「大した事じゃない。とりあえず飯食おう、腹減った」

 

響子「そうだね。じゃ、天の奢りで」

 

天「いいぞ」

 

由香「え?いいの?」

 

天「うん」

 

元々奢るつもりできてたんだけど•••せっかくのクリスマスイブなんだし、俺も太っ腹なわけだ。

 

しのぶ「えぇ•••何か裏がありそう」

 

天「ねぇよんなもん。お前だけ払うか?」

 

しのぶ「やだね」

 

結局奢ってもらうんかい。いやまぁいいんだけどさ。

各々自分が食べたいものを注文して、俺は全ての代金を背負った。ファミレスに比べたら安いもんだよ。

 

天「ほらこれ、クリプレ」

 

テーブルの上に箱をドカドカ置く。一つ一つが軽いのでそんな大きな音が出ることもなかった。

 

しのぶ「•••案外普通だ」

 

天「俺のことなんだと思ってんだよ」

 

しのぶ「頭おかしいやつ」

 

天「カスかよ」

 

響子「相変わらずだね••••••」

 

俺としのぶが悪態を吐き合うのは最早日常に近いものなので、響子こそ口では呆れているが表情は穏やかな笑みを浮かべていた。

それは由香や絵空も同じようで、まるで子供を見るような目で眺めていた。

 

絵空「天くんのセンスはどんなものかしら♪」

 

天「特別なものは期待するなよ?というかよくわからんところで買ってきたものだし。変なものの可能性の方が高い」

 

しのぶ「何処で買ってきたのさ••••••」

 

知らね。多少調べてはいたがあまりにも店そのもののインパクトが強過ぎて他を忘れてしまっていた。

 

天「悪いものではないからそう身構えるなよ。爆発するわけじゃないんだから」

 

由香「そういう問題かな••••••。そもそも何が入ってるの?」

 

天「普通にお菓子だけど」

 

響子「普通じゃん」

 

天「普通だよ」

 

え、何?そんなに普通なのがおかしいの?俺は至って健全な男子高校生のはずだが。

 

しのぶ「まぁお菓子でもなんでもいいけどね、ありがとう」

 

天「ん、そりゃどうも」

 

しのぶから微笑み混じりに礼の言葉を向けられて、俺も口角を上げながら答えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

プレゼントを配り終えて、さっさと寝たらもう25日、クリスマスになっていた。

 

月「メリクリー我が兄よ」

 

天「おうメリクリ、我が妹よ」

 

お互いに静かな声で挨拶をする。朝食を食べながら他愛もない会話をするが、いかんせん月に余裕がないらしくあまり弾むことはない。

 

月「とりあえずケーキお願いね。いいものを頼んだ」

 

天「はいはいわかってるよ。お前の好きなところでいいか?」

 

月「咲姫さんに合わせてもいいよ?私はいいケーキさえ食べられれば構わないし」

 

天「一応あの子にも訊いておくわ。まぁ•••大方予想はつくけどな」

 

月「絶対フルーツ盛り盛りのケーキが出てくるよ••••••」

 

俺と妹は共に白い目を向ける。なんというか•••あまりにも予想がつきすぎていてかえって違和感がある。

テレビから流れてるニュースはどれもクリスマスに関連したものばかりで、クリぼっちを完全に潰しにかかっていた。

 

月「今年は雪降らなかったね」

 

天「そうだな。まぁたまにはいいだろう」

 

月「どーせ二月くらいにまた降って遊ぶ未来しか見えないよ」

 

天「また雪合戦するか?」

 

月「私運動できないんだけど」

 

天「頑張れよ」

 

運動が大の苦手の月からしたら雪合戦は地獄らしい。いやただ雪投げつけ合うだけじゃん。避ける時に身体動かすくらいじゃん。

 

月「運動音痴をナメてもらっては困るね」

 

どうしてお前はそれをキメ顔で言えるんだよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

事務所に行って、いつも通りに仕事をする。今頃彼女たちは、クリスマスの予定について色々話しているのではないかと思う。

かくいう俺も少しだけ想像してるしな。

 

天「••••••うるさそう」

 

受験で精神が参っている状態とはいえ、それでも絶対に月はうるさいという謎の確信があった。というかあいつ本当の本当にヘコたれてないと静かじゃないし。

 

天「ま、まぁ•••騒がしいのも楽しいし」

 

そう言い聞かせて、俺はパソコンとメモ帳を閉じる。せっかくのクリスマスなんだ、そこまで長いこと仕事をする気もない。レッスンもいつもより短縮して組んであるから、彼女たちもそろそろ終わる頃だろう。マネージャー万歳。

 

レッスン部屋に訪れると、既に全員が床に座って談笑をしていた。俺の姿が目に映った途端に、みんなの表情が変わる。

 

天「お疲れ様です」

 

乙和「お疲れー!」

 

すぐに乙和さんが立ち上がって俺にぶつかってきた。それを受け止めてやると、彼女は上目遣いでこちらを見ていた。

 

乙和「実はね〜、クリスマスパーティを天くんの家でやりたいなーって話をしてたんだよ!」

 

天「えっ?」

 

は?いや初耳なんだけど。というかなんで当事者の俺にその話回ってないんだよおかしいでしょ。

 

ノア「朝月ちゃんから連絡が来てたんだよ。一緒にご飯食べたいって」

 

天「あぁ••••••」

 

どうやら月が根回ししていたらしい。

 

衣舞紀「そういうわけなのだけれど、お邪魔してもいいかしら?」

 

天「構いませんよ。どのみち親もいませんし」

 

咲姫「よかった」

 

天「••••••もしかして、咲姫が提案したのか?」

 

咲姫「うん。せっかくならみんなで過ごしたかったから」

 

そう言いながら咲姫はこちらに歩いてくる。そして乙和さんに割り込むように俺に抱きついた。

 

天「••••••目が笑ってないが」

 

咲姫「乙和さんにくっつかれてた」

 

天「いつもの事だろ?」

 

乙和「いつもの事だよ!」

 

咲姫に向かって、俺は首を傾げ、乙和さんはいつもの明るい笑顔で言葉を投げる。

本人は納得がいかないらしく、頬を膨らませている。可愛い。

 

ノア「この後どうする予定なの?」

 

天「月はもう飯を作ってると思うので、これからケーキを買いに行くつもりです」

 

乙和「ケーキ!?クリームたっぷりの美味しいものを!!」

 

咲姫「フルーツが乗ったケーキ•••!」

 

ケーキの好みが完全に違うので、言い合いが始まってしまった。俺は苦笑しながら咲姫の頭に手を置く。

 

天「そう言うなよ、みんなで決めなさい。咲姫だけが食べるわけじゃないんだから」

 

咲姫「うん••••••」

 

少ししおらしい表情になりながら、こちらに体重を預ける咲姫。いつもみたいに味方してくれると思っていたのだろうか。

 

衣舞紀「みんなで決めるっていっても•••意見とかかなりバラバラよ?」

 

それはそうだ。四人とも絶対全く違うリクエストをするのが目に見えている。

 

天「その為の妹ですよ。歳下のワガママに付き合ってください」

 

ノア「月ちゃんからのお願いなら何でも答えるよ!!!」

 

うっさい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とりあえず月の要望通りに少しお高めのケーキを買ってきた。今年のクリスマスはお金がかかりますわねぇ••••••。

 

月「おかえり〜。お、ちゃんと買ってきたね」

 

天「お前の要望通りのモノを買ってきたぞ」

 

月「ほんとに?いくらくらいした?」

 

天「一万」

 

月「たっか!?」

 

ワンホールのケーキなんて多少高くついてもだいたい五千円くらいだろう。その倍の金がかかっている。これで不味かったらマジでメーカー燃やす。

 

乙和「迷いなく選んで買ってたよね〜。お金使いすぎじゃない?」

 

天「大丈夫ですよ、多分」

 

月「信用なんねぇなコイツ」

 

天「黙れよ」

 

衣舞紀「いつにも増して口が悪いわね••••••」

 

俺としのぶがお互いに悪態を吐き合うように、俺と月の口の悪さはお互い様だった。これから美味いものを食べるからテンションが多少なりとも高くなって暴言が激しいのは少しある。

 

全員で席について、並べられた料理を見る。ピザ、ローストビーフ、カプレーゼ、鴨肉。無闇矢鱈にお洒落な食べ物が勢ぞろいだった。もっと他にないのかよ。

 

全員「いただきまーす!!」

 

全員で手を合わせて、合掌。俺はすぐさま肉に飛びついた。

 

天「うめぇ、うめぇ」

 

乙和「あー!ちょっと天くんいきなり食べすぎ!!」

 

ノア「そういう乙和もお菓子ばっかり取りすぎ!!」

 

咲姫「美味しい••••••」

 

衣舞紀「いいのかな•••こんなに食べちゃっても」

 

月「今日くらいは大丈夫ですよー!明日からまた頑張りましょう!」

 

各々好き勝手に行動している。踊って歌っている時のまとまりはちゃんとしているのに、こういう場ではそんなものは一切なかった。

それも一年以上一緒に過ごしていれば、嫌でも慣れる。いや、寧ろこれくらいがちょうどいいのだ。

 

月「お兄ちゃん、渡さなくていいの?」

 

天「おっと、そうだった」

 

月から言われて思い出した。そういえばクリスマスプレゼントを渡していなかった。

 

近くに置いてあったカバンから包みを取り出して、みんなに渡していく。もちろん月の分もだ。

 

月「中身はお菓子だったよね。どんなのが入ってるんだろ」

 

天「それは開けてからのお楽しみってやつだ。少なくともみんなが帰ってからにしろよ?」

 

月「わかってまーす」

 

咲姫「いいのかな•••いつも貰ってばかりで」

 

天「気にすんな。逆に俺がいつも貰ってばかりなんだから、これくらい返させてくれよ」

 

俺はPhoton Maidenのお陰で変わる事ができた。昔の無表情でぶっきらぼうな俺はもうここにはいないのだ。

ここにみんながいる限り、俺はいつまでも変わり続ける事ができるのかもしれない。

 

天「••••••ありがとう」

 

咲姫「?何か言った?」

 

天「いんや、何でもない」

 

乙和「何でもないと言われると気になっちゃうな〜!」

 

天「ちょっ!?」

 

食事中なのにそんな事などお構いなしにと、乙和さんが飛びついてきた。そのまま椅子と共にぶっ倒れてしまう。

 

天「あーもう、本当に退屈しないな!」

 

ノア「そうだね。こうやってみんなで楽しく過ごしているから、全くつまらないって感じない」

 

衣舞紀「これからもよろしくね、天」

 

天「えぇ、こちらこそ」

 

月「いつまでしんみりしてるのだー!それー!」

 

天「まだ重なってくるのかよ!?」

 

乙和さんに続いて月も飛び込んできた。流石にキャパオーバーしそうだ。

 

咲姫「じゃあ、私も•••」

 

天「待て待て!もう無理!」

 

咲姫「ダメ」

 

俺からの懇願など聞き入れてもらえず、俺は三人の女の子から上に乗っかられる謎の状況に陥った。

 

天「はは•••本当に、楽しいな」

 

去年はライブでそれはそれで楽しかったが、こうやって普通に食べて、普通に騒ぐ、普通の時間が、なによりも愛おしかった。




次は新年回を書きますのでそれまではほんへの更新はできません。予定より早く書き終わればほんへも書き進めますので、よろしくお願いします。
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