風邪でも話す事は話したい
夕方辺りの時間になっただろうか、俺は未だに頭痛と空腹に苛まれていた。せめてお粥だけでも食べておこうとベッドから立ち上がったが、大きくふらついて膝をついてしまう。
天「ぐぅ•••やっぱりキツいか••••••」
少し動くだけでも頭に激痛が走る。俺はついにその場に倒れてしまった。
天「まさか、ここまでダメになるとはな••••••」
頭どころか身体中が痛くなったような気がした。せめて何か気の紛らわせるものはないか•••。俺は立ち上がって、本棚に向かう。震える手を伸ばして一冊の書物を手に取った。
『脳と魂の存在』
とある誰かが著した、魂についての論文が書かれたものだ。
天「これ読むの•••いつぶりだろうか••••••」
最後に読んだのは一年くらい前になるだろうか。もう内容ほとんど覚えてねぇよ。
俺はその場にへたり込んで、書物を開いた。魂の存在について、それがどこにあって、どのような役割を果たしているのか、事細かに記されていた。
天「今更になって見てみると、意外とわかるな•••魂の存在位置とか、なんとなくわかる•••」
俺は風邪の症状など忘れて、論文に意識が完全に向いていた。頭の中は過去に思いに思い詰めた魂についての事ばかりが、いっぱいに広がっていく。
ピンポーン!
インターホンが鳴り、俺の思考が遮られた。パタン、と本を閉じてテーブルの上に置く。
天「何か荷物でも頼んだっけ•••?」
俺は首を傾げる。そして集中していた意識が分散したおかげで、また頭痛が襲いかかってくる。とりあえずさっさと対応してまた読み直そう。俺は壁に手をつきながら、小さな歩で歩く。
多少の時間をかけて玄関前まで辿り着き、ドアを開けると同時に、倒れた。
ノア「えっ!?そ、天くん!?」
急に倒れ始めた俺を、ノアさんは受け止めてくれる。顔に柔らかい感触があったが、そんな事はどうでもよかった。
ノア「まだ月ちゃんは帰ってきてないの?」
天「•••••••••」
俺は無言で頷く。それくらい弱っている事を理解したノアさんは、俺を支えながら部屋まで連れて行った。
ノアさんは俺をベッドに寝かせると、テーブルに置いていた論文書に目が留まった。
ノア「これ•••学術書?魂の存在••••••これまたマイナーな」
多方面に知識のあるノアさんは、少し苦笑した様子で書物を手に取る。それを開くとすぐに苦笑は苦い顔へと変わる。
ノア「なにこれ•••私の知ってる論文じゃない•••」
天「ノアさんは表面しか見てないんですよね?魂についてとなると、かなりめんどくさいですよ」
そもそも脳との関係性の時点でダルいまである。脳のどのような働きが魂にどう働いているのか、脳がこうなると、魂もこうなるとーー基本は脳に連動して魂が行動しているような感じになるが、変な所で脳と関係なく魂は動くからめんどくさい。
ノア「天くん、こんな難しい本読んでるんだね」
天「一応はそれの研究に携わっていた事もありましたから」
ノア「それで、結果は•••?」
天「魂の存在を理解するところまでは行きました。ですが、それを証明するまでには至れませんでした」
ノア「証明•••?」
ノアさんは首を傾げた。恐らく、その研究結果を言えば証明になるだろう、と考えたのだろう。だが現実は非情だった。
天「魂の存在は研究者しかわかりませんでした。それを証明する為の決定的な何かがなく、ただ研究者たちの中でだけ証明されました」
ノア「そうなんだ•••結構難しい問題なんだね•••」
天「魂についての研究が更に進めば、死亡した人の身体を人工義体に替えて蘇らせる事もできます」
ノア「そんな事ができるの•••!?」
ノアさんは驚いた顔をする。全く説明をしていないが、するとまた話が長くなるので俺自身のやる気の問題だった。
ぎゅるるるるるる••••••。
盛大に腹の虫が鳴り、ノアさんはクスリと笑った。
ノア「お昼食べてないんだね?」
天「はい•••」
俺は少し恥ずかしくて顔を逸らした。ノアさんはやれやれと言った様子で立ち上がって、お粥を持って一階に降りて行った。
しばらくしてノアさんが戻ってくると、ベッドの前に座る。俺は上体を起こして、ノアさんに身体を向けた。
ノア「熱いから気をつけてね」
スプーンでお粥を掬って、俺の顔前へと持ってくる。俺は息を吹きかけてお粥を冷ましてパクリと一口で食べる。
天「あつっ」
冷まし足りなかったのか、まだ熱かった。口の中が火傷しそうだ。
ノア「天くん、焦らなくてもたくさんあるから」
天「わ、分かってます•••」
なんだか今日はノアさんに少し遊ばれているような気がした。とりあえずはノアさんの言葉を気にしないようにして、淡々とお粥を口にした。
お粥を食べ終えると、食後特有の妙な眠気に襲われた。寝転がった状態のまま、瞼が重くなってきていた。
ノア「もう眠たいみたいだね。寝ちゃっていいよ?」
天「•••頭いってぇ」
眠気は大いにあったが、頭痛がそれを邪魔した。目を閉じれば、余計に頭痛が酷くなってとても眠れる気がしなかった。
ノア「大丈夫?手握っててあげるから」
ノアさんが優しく俺の右手を握ったのがわかった。俺より小さくて柔らかい手だったが、包まれている感覚を覚えた。俺も握り返すと、なんだか精神的に落ち着いたのか、頭痛が引いた気がした。
天「ノアさん、ありがとうございます•••」
ノア「どういたしまして。早く元気になってね?」
天「••••••はい」
その言葉を最後に、俺は眠りについた。恐らくノアさんの手を握る力は完全に抜けただろう。
ノア「•••カワイイなぁ」
ノアさんは小さく呟いた。俺の手から離れると、次は俺の頭にその手が移る。
天「んぅ•••」
ノア「はぁ〜カワイイ•••!こうして見てると、ただの女の子だよね••••••」
ノアさんの手が俺の額に触れる。多分熱いだろうが、それでもお構いなしだった。
ノア「まだ熱はあるみたいだね•••でも苦しそうだったりしてなくて良かった」
ノアさんはそのまま俺の頭に手を置いて撫で始める。眠ってる俺自身はその感覚に気づく事は絶対にないが、ノアさん本人は堪能していたという。
俺は目が覚めると、勢いよく身体を起こした。右手にはノアさんの手はなく、そもそも俺の部屋には俺以外誰もいなかった。
天「ノアさんは帰ったか•••」
俺はベッドから床に足を着けて、自室を出る。一階のリビングに灯りがついているのが見える。恐らく月だろう。
天「月、おかえり」
月「あっ、お兄ちゃんただいまー」
ノア「調子はどう?」
天「••••••ノアさん、帰ってなかったんですね」
月「夕食食べていくみたいだよ」
天「いやとりあえず、その状況なんなの?」
今俺の目の前では、月がノアさんに抱きしめられている絵面が広がっていた。月は嫌がる様子もなく、むしろ受け入れているようだ。
月「ノアさんの身体すっごくあったかいよー!」
ノア「月ちゃんカワイイ•••!健気で素直でもう本当に愛しい•••!」
月「ほらほら、お兄ちゃんも!」
天「いや、俺はいい。風邪を移してしまうかもしれないしな」
月「えぇー。もったいないなぁ」
俺はため息をついて椅子に座る。一度寝た所為で眠気はぶっ飛んでいたが、なんだか落ち着かなかった。
月「じゃあ夕飯食べよっか。お兄ちゃん、持っていってー」
天「あぁ」
ノア「あ、私もーー」
天「ノアさんは客人ですので、そこに座っていてください」
ノア「はい、わかりました」
ノアさんは微笑むと、素直に席に着いた俺も微笑を返して、料理が積まれた皿を手に取った。
D4恋色マスタースパーク追加されたけど難易度15とか頭おかしなるで。後でするけどクリアできる気しねぇわ。しかも今スピード11.5慣れの途中やぞw