しばらく話し込んでいたら、気がつけば暗くなっていた。流石にそろそろお暇しようと立ち上がったが、部屋からノアさんのお母さんがやってきた。
ノア母「あら、帰っちゃうの?夕飯できているのだけど」
天「あー、すみません。恐らく妹が作って待っていると思いますので•••」
そう言って帰ろうとした直後に、携帯が振動する。俺は手に取って画面を確認した。•••妹からだった。
月『今日は晩御飯作ってないので何処かで食べてきてね♡』
天「••••••相変わらずこいつはエスパーか何なのかわからなくなってきたぞ」
俺の行動を監視でもしているのか疑ってしまう。ぎこちない感じでお母さんの方に目を向けた。
ノア母「食べていく?」
天「すみません、お願いします•••」
我ながら大変情けなく感じた。そしてお母さんは、俺、ではなくノアさんを見ながら、
ノア母「良かったわねー。天くんとご飯食べられるわよ」
ノア「お、お母さん!」
ノアさんを赤面させるような言葉を言い放った。見事に彼女は風邪に加えて羞恥心によって赤くなっていた。そこを可愛いな、と感じた俺は一体何なのだろうか。
天「では•••いただきます」
ノア母「いっぱい食べて行ってねー。天くんが食べてくれると思ってたくさん作ったから」
天「あはは•••ありがとうございます」
もしかしたら月は、この事を事前に察していたのか•••?ないと思いたいが、月が魂に接続して未来予知をした?それも他人の未来を?考えれば考える程頭がこんがらがってしまう。
天「(そういやあいつ、将来は魂に関する研究者になりたいって言っていたな••••••独学で魂に接続するなんて•••嫌な予感がする)」
ノア「天くん?ご飯食べるよ?」
天「•••あっ、はい••••••」
今の俺は気が気じゃなかった。ノアさんに呼ばれて、ようやく思考を目の前に移すことができた。そのまま誘われるように、俺はノアさんとお母さんの方へついて行った。
福島家の本日の夕食は豪華にもカレーだった。キッチンのコンロの上には、カレーのルーが入っているであろう大鍋があった。本当に大量に作ってて俺は笑えなかったが。
ノア父「いや、娘がいつもお世話になっているね」
天「いえいえそんな。こちらこそ良くしてもらっています」
ノアさんのお父さんからやけに圧をかけられ気味に会話をする。顔は穏やかなのに、感情が揺れに揺れていて少し怖かった。
ノア「もうお父さん。天くんを怖がらせたらダメだよ」
ノア父「い、いや、そんなつもりはなかったんだが•••」
本当か?明らかに悪意があったんだが。俺は面倒事を避けて何も言わなかったが、完全に嫌われている。恐らく、娘に寄り付く何処の馬の骨ともわからない男だと認識されているだろう。
天「すみません、おかわりいただいてもいいですか?」
ノア母「えぇ、もちろん。じゃんじゃん食べてね」
それに比べてお母さんはのほほんとしていて温かかった。
ノア「二日も連続でレッスン休んじゃったけど、みんな怒ってないかな••••••」
天「大丈夫ですよ。昨日はともかくとして、今日は学校にすら行けてないんですから。まぁ、乙和さん辺りはイジりに来るかもですね」
ノア「乙和かぁ•••確かに何か言ってきそう•••」
乙和さんとノアさんは仲がいいのか良く言い争っている。それを眺めるのも、一つの日常なのではないかと最近思い始めている。
ノア母「はい、どうぞ」
天「ありがとうございます。あんっ、もぐむぐ•••」
ノア「はぁ〜•••美味しそうにご飯食べてる天くんカワイイ•••」
ノア母「まるで息子ができたみたいで嬉しいわぁ」
天「っ!?むすっーーゲホゲホ!」
俺は驚いてカレーを喉に詰まらせてしまう。噴き出したりしなかったのが何よりの救いだが、思い切りむせてしまった。
ノア「だ、大丈夫!?」
天「ゴホッ!•••えぇ、大丈夫です。少し驚いただけですから••••••」
ノアさんを手で制して、俺は胸の部分を叩く。詰まったカレーが胃の中に入ったのを実感して、大きく息を吐いた。
天「ふぅ•••もう大丈夫です」
ノア「本当に大丈夫?天くんいつも無理してるイメージだし•••」
天「大丈夫ですって。どうしてこう、Photon Maidenの面々はみんな心配性なんですか」
ノア「天くんは大事な仲間なんだから」
天「近い近い!」
徐々に近づいていたノアさんの顔は俺のほぼ目の前へと迫っていた。お父さんは今にも飛び出してきそうな勢いだが、それに対してお母さんはニコニコとしている。
ノア母「こうして見ると、二人とも恋人みたいね」
ノア「えぇっ!?」
天「おぉう••••••」
ノアさんは驚いていたが、俺はその前にまずお父さんの顔色を窺った。そして絶望する。
先程まではイラついたような顔だったのが、完全な笑顔になった。怒りを通り越して遂に笑ったか。俺の人生もここまでかもな。
ノア「そ、そんな!私と天くんはそんな関係じゃないよ!」
天「お母さん、流石に冗談が過ぎますよ」
ノア母「あら、もうお義母さんって呼んでくれるのね」
天「なんか発音おかしくないですかね••••••」
やけに悪意を感じるが、これ以上は聞きたくないので無視する事にした。またカレーを一口口の中に放り込んで、辛さに打ちひしがれながら今の感情を捨てる。
ノア「ねぇねぇ天くん。今日、泊まっていったりしない?」
天「•••すみません。帰りに寄らなければいけないところがあるので」
ノア「あっ•••そっか」
月の事が気がかりなので、俺は福島家を後にしたらとある所に行くつもりだ。あそこの連中とも積もる話もある。
天「ごちそうさまでした。本日は素敵な夕食をありがとうございました」
ノア母「いえいえ〜天くんいっぱい食べてくれて嬉しかったわ。またいつでも来てね」
天「はい、機会があれば」
俺は笑顔を向けて頭を下げた。荷物を持って、福島家を出て行く。そして俺はすぐに走り出した。ノアさんたちの前では平然とした顔でいられたが、今は遠慮なく焦った顔になる。
天「はぁ、はぁ、はぁ•••マズいぞ••••••”オーバーロード”三人目の疑惑が出てきやがった••••••!」
怒りにも似た、絶望にも似た、もしくはどちらも兼ね備えているのか、そんな入り混じった感情を顔に浮かべながら、俺は走り続ける。
天「(もし月が本当に魂に接続できるオーバーロードの人間なら、面倒な事になる•••!世界のバランスが崩れてしまう•••!)」
本来、魂に接続できる人間は一人しかいないという研究結果が出ている。だがそれは俺を含めて二人。この時点でイレギュラーなのだ。オーバーロードは、世界の均衡を崩しかねない強大な力を有する。それ故に研究者内では、絶対に外部に漏らしてはいけない禁忌として認識されている。
今度はそれがもう一人増えて三人だ。これはなんだ?宇宙からのギフトとでも言うべきなのか、それとも悪魔からの呪いなのか。いや、どちらもだろう。使い方次第で、善にも悪にもなる。オーバーロードとはそういうものだ。
天「(早く伝えないと•••!手遅れになる前に••••••!)」
走る速度を上げる。ここからとある場所、まぁ研究所だが。そこまで行くのにはかなりの距離がある。ぶっちゃけ走って行くのはバカのすることだ。だが今はそんな冷静に物事を考えていられる余裕なんて一切ない。
天「(だが月がオーバーロードだという事を知ってどうする•••?いや、月に自覚がないならそれで話は終わりだ。後は俺とあいつだけでこの事実を隠蔽して事なきを得ればそれでいい。平和的に行くんだ、平和的に••••••)」
実際はそう上手くいかないのは自分自身が一番わかっていた。詳しい話は後でする事にして、とりあえず今は目的地に向かう事に集中した。
感想評価オナシャス!誕生日はフリセンマグナムでも買ってもらおうかなぁ。