タクシーを手配して、研究所近くまで乗せて行ってもらう。その間に、俺は神無月とメールでやり取りをしていた。
天『もうそろそろ着くと思う』
陽太『わかった。後、一つ報告がある。第二研究室がぶっ壊れた』
天「(いや、何したら壊れんだよ••••••)」
俺は呆れてしまった。魂の研究でそんな壊れるような危なっかしい事はしないはずだ。また何か別の事に手出してるのかこいつは。
ドライバー「お兄さんたちも物好きだねぇ。あんな所に行こうとするんだから」
天「そんなにおかしいですか?」
運ちゃんから苦笑混じりの声を向けられて、俺は首を傾げた。
ドライバー「あそこの研究所、深夜になっても明かりがついているらしくて、何か黒魔術的な実験でもしてるんじゃないかって近所では噂になってるよ」
天「黒魔術ねぇ•••まぁ、研究内容はぶっちゃけそんな感じですよ」
俺は肩をすくめる。未だ解明されていない部分をずっと求めて研究しているのだから、そりゃ夜遅くまで没頭するわな。俺はもう引退したけど。
しばらく運ちゃんと会話していたら、タクシーが停止した。恐らく目的地に着いたのだろう。
料金を支払って、俺たちは車を降りる。月とノアさんは研究所を見上げて、驚いていた。
月「わーおっきい•••」
ノア「うちの学校程じゃないけど大きいね•••」
天「早くいきますよ。あんまり時間掛けていられませんから」
二人は頷くと、俺の後ろをついてくる。中に入れば、装飾のカケラもない真っ白な空間が広がった。本当に何もないから気が狂いそうである。
神無月がいつもいる所、まぁ第一研究室と言えばいいか、そこに入る。椅子に座った状態で、彼は振り向いた。
陽太「本当に無関係の人間を連れてきたのか•••」
開口一番がノアさんに対する愚痴だった。俺は少し苛立ちを覚えたが、全くの事実なので強くいえない。
天「昨日言った通り、妹を連れてきた」
陽太「OK。じゃ、今からこの子の能力の確認を行う」
神無月は何やら器具を取り出して月の頭に装着した。
月「何ですか?これ」
陽太「脳波を計測して色々調べるものだよ。痛くはないから安心していいよ」
相手は小さな女の子なので、神無月の口調は優しかった。俺も確認の為、神無月の隣に移る。
ノア「えっと、私はどうすれば•••」
現状の理解が追いついていないノアさんが、困惑気味に言葉を発する。俺は頭をポリポリと掻いて、こちらに手招きする。ノアさんはちゃんとついてきた。
天「後で話し合いをしますので、その際に何でもいいので意見を出してくれれば」
ノア「う、うん。わかった•••」
陽太「こんな素人相手に何か言わせて大丈夫なのか?」
天「ノア先輩、知識が相当豊富だからな。何か俺たちにはない提案とかを出してくれるだろう」
ノア「信頼してくれてるのは嬉しいけど、プレッシャーがすごい•••」
そんなに気張らなくてもいいのだが、と俺は苦笑してしまう。
陽太「キミ、脳と魂を接続してくれないか?」
月「は、はいっ!」
ある程度の計測が終わったようで、神無月は月にオーバーロードを発動するよう求めた。月は驚きながらも承諾し、魂に繋いだ。
月「••••••ッ!」
陽太「ブレが凄まじいな•••お前程ではないが、かなり危険なものを有しているかもな」
画面を見てみると、休みなく波形が大きく波打っていた。恐らく能力の発現と同時に、脳の処理が大きく進んでいるのだろう。
天「しかし妙だな•••ブレが一定すぎる•••」
オーバーロードによる脳波の揺れは、不安定なものでしかない。月のように、一定の動きでブレるものはまずお目にかかれないだろう。その珍しさに、俺と神無月は首を傾げた。
陽太「まぁいい。まずは能力の確認だ」
ブレと月を見ながら神無月はパソコンを操作していく。様々な範囲から情報を絞り上げ、能力の情報を構築していく。
陽太「•••••••••!これは•••」
天「何かあったか?」
俺が問うと、神無月はやけに嬉しそうに振り向いた。
陽太「もしかしたら、魂の存在を証明するのに大きく役立ってくれそうだ•••!」
興奮気味に神無月が俺に顔を近づける。俺はびっくりして後ずさる。
天「と、とりあえず、早く結果言え。後近い•••」
陽太「あ、悪い•••。んで結果だが•••見事にお前の推測通りだった。相手の思考、記憶、未来を読む力•••随分とえげつないものを持ってるな、神山兄妹は」
ノア「え?な、何の話•••?」
陽太「こっちの話だ、あんまり聞かなくていい」
天「んで、何か見えそうか?」
陽太「とりあえずは•••その子の能力を使って魂の存在を証明するかとしか•••」
天「でもそれだと迫害厨の奴らに追われるからなぁ•••」
ノア「魂って結構嫌われてるの•••?」
ノアさんが疑問をぶつけた。俺と神無月は目を合わせて、小さく噴き出した。
天「えぇw中には魂を危険視している人がwぶふっw、い、いますからww」
陽太「それで魂の研究を否定する奴らも出てきている。まぁ面倒な連中だ」
ノア「天くん笑い過ぎ」
少しムッとした顔を俺に向けるノアさん。それによって笑いが急激に収まったが、心の中ではまだ笑っていた。
天「なんかいい案ねぇかな•••」
ノア「月ちゃんの力を共有とかってできるかな?」
陽太「共有••••••それだ!」
机をバンッ!と勢いよく叩いて、神無月が身を乗り出した。
陽太「俺の能力はオーバーロードのコピーだ。俺の力を使ってこの子の能力を何かに移す。そうすれば証明に大きく近づける!」
神無月はウキウキした顔をしていた。早速魂に接続して、月の能力をコピーした。
陽太「あくまで俺の仮説だが、お前の妹の力は他人の魂を見て思考や記憶を読んでいるんだと思う。これを何かしらの視認用の器具に移せれば、誰でも魂を見る事ができる。存在の証明ができるんだ」
天「頭の回るやつだな。それで、移したりとかはどんぐらいかかりそうなんだ?」
陽太「少なくとも秋か冬まではかかるな。まぁ、ゆったりと進める事にする。時間はたっぷりあるからな。それにしても、お手柄だ!」
俺の肩をバンバン叩いて、彼は笑う。が、彼の顔は一気に真顔へと急変した。
陽太「お前、身体大丈夫なのか?」
こいつが言っているのは、恐らく身体が反応して暴走していない事に対する疑問だろう。俺は肩をすくめてみせた。
天「何度も触られる内に、慣れちまったっぽい」
陽太「••••••いや、それだけじゃないな。魂の強化•••?それとも成長というべきか•••また新しい課題ができちまったよ」
天「多少は落ち着いたんなら学業に復帰したらどうだ?」
陽太「•••••••••それもそうだな。お前のいる所でいいか?」
天「•••お前今何年生だっけ」
こいつとの付き合いがしばらくなかったので、正直年齢すら覚えていない。神無月は、腰に拳を当ててその平な胸を張る。
陽太「NINEN!!だ」
月「その動作いらないですよね」
月からの的確なツッコミが、神無月の心を傷つけた。本人はただふざけただけなのだろうが、マジレスされるのは嫌だった模様。
天「じゃあノアさんと同じ学年だな」
陽太「•••この人と一緒かぁ」
ノア「むっ。何か文句でも?」
陽太「いや、見るからにお堅いからなぁ」
天「お前も人のこと言えないけどな。後、多少仲良くなってわかったけど、この人堅さのカケラもないから」
陽太「うせやろ?」
神無月は更に疑いの目をノアさんに向ける。じっと見つめられるのが気に入らなかったのか、彼女は俺の後ろに隠れた。
天「••••••大丈夫か、これ」
月「少なくとも、仲良くなる未来は見えないね」
俺は心配になるが、月はこの先の展開を見た所為か、達観していた。
さて、筋トレしてきますか•••