ちなみに授業は大体寝ていた。いかんせんやる気が起きない上に、やたらと頭がボーッとするのだ。オーバーロード側の人間なので昨日脳を疲れさせたのが原因なのか、魂が損傷している可能性もある。少し怖くなったが、その時に例の薬を飲めばいい。今は飲まないが。
昼休みになると、俺はすぐに弁当箱を取り出した。何故だかわからないが、本当に即座にそっちに手が出たのだ。
陽太「よっ。来たぞ」
天「どこから来てんのお前」
左側を見てみれば、片手に弁当箱を持ちながら教室の窓に捕まっている神無月がいた。お前身体弱いのによくそんなことできるな。
陽太「身体の使い方ってのがあるんだよ」
天「しれっと人の思考読んでるが、使って大丈夫なのか?」
月から能力をコピーしているので、今の神無月は相手の思考や未来を読む事ができる。そのコピー野郎は肩をすくめた。
陽太「お前の能力と違って、あまり負担がかからないからな。にしても、お前の妹は強いな。制御できずに四六時中発動している状態なのに全く疲れた様子がない。かなり興味深いな」
天「制御ができてない•••か。俺よりも月に薬をやった方がいいかもな」
陽太「やめとけ。お前は一秒使うだけでもかなりの負担になる。対してあの子は、恐らく物心がつく前から能力を保持していただろう。気がついたら見えるようになってたらしいな。もう魂がオーバーロードを発動するのに完全に慣れてしまっている」
真剣な顔で、まるで睨みつけるように神無月は語った。それに対して俺は、ただ聞くことしかできなかった。もう研究から離れてた所為で、彼の言ってる事についていけていなかった。
陽太「っと、そろそろお前の好きな人が来るぞ」
ノア「天くんっ。って、またいる•••」
俺の顔を見て明るくなった途端に神無月の顔を視認して暗くなるノアさん。咲姫もタイミングを見計らっていたのか、ノアさんと同時にやってきた。そしていつものメンバーで昼食を摂り始める。
陽太「そういえば、出雲だったか。お前も何か変なモノを持っているな•••?」
咲姫「変なモノ•••?もしかして共感覚の事ですか?」
天「••••••まさか、咲姫もか?」
共感覚も魂への接続による力かと思って、神無月に目を向けた。が、予想と反して彼は首を横に振った。
陽太「どちらかというと異常な体質に近い。目が異常に発達したか、はたまた脳か•••それはわからないが、研究対象にはならないな。興味深くはあるが」
ノア「ちょっと!咲姫ちゃんをモルモットみたいに扱わないで!」
ノアさんが咲姫を抱き寄せて神無月を睨んだ。嘲笑にも似た顔で鼻を鳴らしてから、白飯を口の中に含んだ。
陽太「んで、福島。お前は彼氏そっちのけで女抱きしめてていいのか?」
ノア「はっ!そうだった!」
天「じゃあ俺も便乗するわ」
俺もノアさんにあやかって咲姫を抱きしめる。そして神無月を睨みつけた。
陽太「いや、俺は睨まなくていいだろ•••」
天「そうしないと便乗にならんだろうが」
咲姫「あ、あの••••••は、恥ずかしい••••••」
悪ノリの効果はあったようで、咲姫が顔を赤くして身をよじった。俺とノアさんはすぐに離れたが、それでもお互いにニヤニヤしながら咲姫を眺めていた。
ノア「咲姫ちゃんの次はもちろん私だよね?」
天「え、やだっすよ」
陽太「ブハッwwwwww」
真顔で拒否ると、神無月は噴き出して笑い始めた。咲姫も、先程のお返しかはわからないがクスクスと小さく笑っている。
ノア「〜〜〜〜〜!!えいっ!」
天「うわっ、っと•••」
ノアさんが急に抱きついてきた。衝撃こそ軽かったが、いきなりの事なので体勢を崩しかけてしまう。
天「いきなりは危ないですよ」
ノア「だって、あんな事言うから•••」
陽太「あのさ、ここ学校だからあんまり公にイチャつくのは勘弁してもらっていいか?」
咲姫「焚き付けた張本人が言うんですね••••••」
多少涙目のノアさんに対する視線は集まりに集まっていた。そして、俺とノアさんが交際している事が、学校中に広まったらしい。ぎゃん受ける。いや受けねぇよ(キレ気味)。
授業が終わって事務所に着けば、俺はすぐに仕事部屋に引きこもった。万年筆を走らせて作業を進めながら、パソコンの方も確実に終わらせていく。
天「•••••••••あ、やべ」
見事に誤字った。修正テープを引いて消してからまた書き直す。少し精神的に落ち着かないのかもしれないな、と感じるが、自分自身そこら辺どうなのかイマイチ理解ができていない。
天「はー、またライブどこかに入れるかなー。でも別に何処かデカいハコを抑えられる気もしねぇし」
後頭部に両手を当てながら俺は椅子の背に体重を預けた。そしてそのままくるくると回り始める。
天「やる気おきねぇー•••」
今日はやけに脱力感が残る。何か気分転換になるものを探そうと、俺は椅子から飛び降りて仕事部屋から出る。
天「それでまぁ、ここだわな•••」
自然とレッスン部屋に足が向いていた。邪魔はしたくないので、中には入らずにドア越しにそっと眺める。
ノアさんがちょうどダンスをしていて、その動きをずっと見ていた。無駄のない丁寧な動きだが、やや思い切りに欠けるというか勢いがないというか。隣に乙和さんがいるのもあって、余計に顕著に見えた。
天「••••••頑張るか」
彼女が頑張っている姿を見たら、やる気が一気に湧いた。我ながら単純だな、と感じるが、男は元から単純な生き物だ。大きく伸びをしながら仕事部屋に戻って、キーボードを打ち始めた。
仕事が終わり、俺はパソコンを落として鞄の中に入れる。メモ帳と万年筆も胸ポケットに差し込んで、部屋を出た。一応確認でレッスン部屋に赴くと、もう終わってるようで、メンバーが談笑していた。待っていたらいずれ出てくるだろうと思い、俺は事務所の外まで歩いた。
天「もう六月も終わるが、夜になると多少冷えるなぁ」
もうすぐ本格的な暑さがやってくる。そんな時でも、夜は涼しい風を送り続けていた。壁に体重を預けながら、近くの自販機で買ったコーヒーを胃に流し込む。
天「にがっ。コーヒーとかいつぶりに飲んだかわからんぞ••••••」
久々に味わう苦味は、俺の口には合わなかった様子だ。こんな事なら微糖を頼んでおけば良かったと少し後悔する。
ノア「天くん、おまたせ」
ひょっこりとノアさんが事務所から出てきた。俺は飲み終わったコーヒーの缶を潰して、ゴミ箱に放り投げた。
天「家まで送りますよ」
ノア「えっ、いいの?反対方向なのに」
天「何があるかわかりませんから」
ノア「•••じゃあ、お言葉に甘えて。えへへ」
俺の手を握って、ノアさんは歩き出した。俺もそれに続く。
夜の道は全く静かではなく、仕事終わりのサラリーマンだったり、遊び明かしている大学生だったりがいて、かなり騒がしかった。周りの店もバリバリ営業していて、光があちこちで溢れている。
ノア「なんだかこうしてると、夜遅くまで遊んでる不良みたいだね」
天「なんかぽいですね。そんな人間になるのはごめん被りたいです」
ノア「私も。乙和とかは遊んでそうなイメージがあるけどなー」
天「正直あの中で言ったら一番乙和さんがマトモな気がしますけどね、バカですけど」
必要最低限しか喋らない共感覚持ちの変態の咲姫だったり、筋肉バカでトレーニングの事ばかりの衣舞紀さん。そしてカワイイモノを見つけると、暴走して手のつけられないヤベー奴ことノアさん。それに比べて乙和さんはアイドル好きのおバカ、くらいだ。なんだかんだ言ってPhoton Maidenの面々のキャラはアホみたいに濃かった。
ノア「本当?私の方がよっぽどマトモな気がしますけど?」
天「ハハッ」
俺は乾いた笑いを漏らした。それが気に入らなかったノアさんは、俺の腕に体当たりをしてきた。
ノア「•••ふん」
天「拗ねないでください、すみません」
頬を膨らませて上目遣いでこちらを見つめるノアさん。頬を撫でると、途端に彼女の顔が赤くなった。
ノア「それ、好きなの•••?」
天「どうでしょうね。よくわかりません」
多分ノアさんのだから触ってしまうのだろうが、言うのが恥ずかしかったので口から出てくる事はなかった。
しばらく歩いていると、福島家が見えてきた。そこで俺とノアさんの手が離れた。
ノア「ありがとう。明日もよろしくね」
天「わかりました。では、また学校で」
俺は踵を返して歩こうとしたがーー、
ノア「天くん、待って!」
天「はい?」
ノアさんの声が響いて、足を止める。そして振り返ると、目の前にノアさんの顔があった。
ノア「ちゅっ••••••」
そしてそのまま唇を奪われる。俺は驚いて目を見開いていたので、今のノアさんの表情がしっかりと見えた。恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも、目を閉じて爪先立ちでくっついていた。
ノア「今日の、お礼•••」
天「•••ありがとうございます」
俺は小さく頭を下げて、家までの道を歩き始めた。その道中、やたらと唇が気になって指先で触れていた。
まだノア√途中+衣舞紀√書いてないのに咲姫√の二回目書き始めるって何?