夏休みで昼からは大体暇になるので、ノアさんがよくうちにお邪魔するようになった。たまに新作の和菓子を持ってきてくれていて、今日はまた新しくできたご様子。
ノア「はいこれ、新作のお饅頭。月ちゃんもどうぞ」
月「わーい!いただきまーす!」
天「すみません、わざわざ」
頭を下げる俺に対して、月は饅頭にがっついていた。少しは慎みを持てはしたない。
ノア「いいのいいの。うちの和菓子屋さんご贔屓にしてもらってるから。お義母さんもよく買いに来てくれてるよ」
天「母さん•••いつの間に」
あまり甘いものを食べるところを見たことがないからなんとも言えないが、もしかしたら好きなのか?
月「おいしー!お兄ちゃんも食べなよ!ほらほら!」
天「あーはいはいわかった。あむっ•••」
月から促されて、俺は饅頭を口に含む。餡子の甘味とバターのなんとも言えない味がとても合う。うん、美味しい!
ノア「お味はいかがですか?」
天「美味いです」
ノア「良かった。まだいくつかあるからおかわりしてもいいよ?」
月「私もう一個ー!」
天「まだ肉の消化終わってねぇだろ•••ガチで太るぞお前」
佐々木さんが送ってきやがったA5肉、多すぎて未だに食べきれていない。今はようやく半分に達したくらいだ。かなりキツいゾ。
ノア「そんなに大変なの?じゃあ私も付き合おうかな」
天「本当ですか?クソ助かります」
これでノアさんが夕食を一緒にすることが確定した。このまま泊まりの流れは流石にないだろう、ないよな?
月「•••あ、なんかお父さん帰ってきそう」
天「は?あの人絶賛仕事中だろ?帰ってくるわけーー」
ドガアァンッッ!!
天「えぇ••••••」
爆発とも勘違いしそうな程の爆音を響かせながら、玄関が開いた。俺は呆れと困惑が入り混じった声を漏らす。
ノア「何今の!?」
月「お父さんが勢いよくドア開けただけですよー」
もう慣れている月はお茶を飲みながら呑気に喋る。妹の逞しさに俺泣いちゃいそう。
猛「ただまー!久しぶりだなぁ!天!月!••••••誰ぇ!?」
歯を見せて笑いながら俺と月に声をかけたが、ノアさんを見て父さんは目をギョッとした。
ノア「あ、あのっ!そ、天くんとお付き合いさせていただいております、福島ノアです!よろしくお願いします!」
そして母さんと同様、立ち上がって丁寧に腰を折って頭を下げた。が、父さんはノアさんではなく俺に目を向けていた。
猛「天お前••••••!彼女できたのか!?」
天「いやノアさんの方見ろよ失礼だろうが」
猛「おっと失礼。福島さんだな。こんな息子だがよろしくな。酷いことされそうになったらすぐ俺に言え!ぶっ殺すからな!」
ノア「あ、あはは•••」
やけに父さんが張り切っているが、当のノアさんは苦笑いを返しているだけだった。
ノア「あっ、うちの新作の和菓子があるので食べていきませんか?」
猛「おっ、助かる。ちょうど腹が減ってたんだ」
そう言って父さんは席につき•••、
ゴトン。
一つの拳銃をテーブルに置きやがった。
ノア•月「えっ•••?」
天「何で持って帰ってんだお前」
M1911A1コルトガバメント。百年以上の歴史を持つ名銃中の名銃だ。世界初のセミオートハンドガンにして、その安全性能、射撃威力の高さですぐにアメリカ軍の信頼を勝ち取った。百年以上経過していても初期モデルが動くくらい長持ちもする。
猛「いや、急いで上がったもんでな。ミスって持って帰ってきちまった。まぁ軍用の身分証明書出せばサツの世話にならんから大丈夫だ!」
天「いやそういう問題じゃないんだが•••こんなところで堂々と置くやつがあるか?」
猛「あー•••まぁいいかってな!ガハハハ!」
いやこういうのは部屋でやってくれよ、後バカ騒ぎしながら饅頭食うな汚い。
猛「まぁ、明日辺りにすぐに持っていくし無駄に荷物が増えただけなんだがな!」
天「無駄な事してんなぁ•••」
頬杖をつきながら、俺はため息を漏らす。
猛「たまにはお前も撃ってみるか?スッキリするぞ」
天「お生憎様、俺は銃を撃つ趣味はない」
猛「つまんねぇなぁ••••••」
俺とお前の趣味を一緒にしないでもらいたい。
ちなみに私はターミネーターモデルのハードボーラーが大好きです。相棒ですね(作者)。
猛「そんじゃ、部屋に籠るわ。後は好きにやれよー」
父さんはヒラヒラと手を振りながらリビングを出て行った。しれっとガバ置いてくな持って行けよ。
ノア「なんというか••••••濃いね」
月「神山家の人間はみんなキャラ濃いですよー。私っていう例外がいますが」
天「いやお前が一番濃いぞ••••••」
多分神山家内で一番薄いのは母さんだろう。あまりぶっ飛んだところないし。
ノア「それを言ったら天くんは見た目とのギャップすごいと思うな」
天「••••••一応、一応どうしてか聞いておきましょう」
ノア「では二時間ほど時間をいただきまして•••」
天「なっが!なしなし!」
予想外にも膨大な時間を使って長々と説明する気の彼女を引き止める。この人のことだ、絶対に話し出したら止まらないに決まってる。
月「それより先にお風呂入っちゃってー?二人が入ってる間に夕ご飯の準備するから」
天「えっ、あ、あぁ•••」
うざったそうに月が投げやりに言葉をかける。俺は困惑しながらも頷いて立ち上がると、ノアさんも続いた。
ノア「一緒にお風呂、二回目だね」
天「そ、そうですね•••」
もうすっかり慣れた様子のノアさんは俺の手を引いて脱衣所まで歩いていく。もう完全に我が家に馴染んでいて、俺は軽く身の危険を感じ始めていた。
お互いに裸になって湯船に浸かる。必然と俺が後ろ側に座って、その足の間にノアさんが座る。
ノア「天くんのところって結構お金持ちでしょ?その割には庶民的な暮らししてるんだね」
天「父さんも母さんもあまり金つぎ込まない人ですから。でも家自体は防音が相当整ってて金はかかってますよ」
ちなみにこの風呂場も例外ではない。外からの音は一切入らないしこちらから漏れることもありえない。
ノア「へぇ。何か理由でも?」
天「さぁ、特に理由は知りません。まぁプライベートの確保がほとんどできない人たちなので、そこら辺は誰にも邪魔されたくなかったんじゃないですか?」
ノア「プライベートかぁ••••••」
ノアさんの頭が俺の胸にくっつく。真っ直ぐに下された金髪はしっとりしていて当たっているだけでもサラサラなのがよくわかった。
天「ノアさんはこの先気にしないといけなくなりますけど、俺は気が楽です」
ノア「ホントかなぁ?更に有名になったら熱愛報道とかされそうじゃない?」
天「普通にありそうなこと言わないでくださいよ•••怖いです」
来年にでもなったらPhoton Maidenは知らない人自体が珍しいくらいの知名度になりそうな気がする。それくらい上へと導くのが俺の仕事でもあるが。
ノア「期待してるよ、マネージャーさん」
天「へいへい」
俺はノアさんを抱きしめる。彼女の柔らかい身体をダイレクトに感じて、なんとも言えない心地よさに浸ってしまう。
ノア「そ、そういえば天くん•••」
天「はい?」
顔を赤くしながらこちらに振り向いたノアさんは、少し言いにくそうにもごもごとした。
ノア「ここって、防音なんだったっけ?」
天「はい、そうですが?」
ノア「じゃあ•••えっちしてもバレないってこと••••••?」
天「ぶふっ!」
突然のお誘いに俺は噴き出す。そしてノアさんに顔を向けると、これ以上にないくらい真っ赤に染まっていた。
天「まぁ、少しご無沙汰でしたし、いいですよ」
ノア「軽いなぁ•••」
彼女は不満な様子だったが、俺は微笑を返してまたノアさんを抱きしめ直した。
書き貯めしといて本当に良かったと思うよwお陰で新年回書きながらも毎日投稿できるのだからね。