そのままノアさんも交えて夕食を食べる事に。テーブルに広がる色とりどりの料理は、最早見慣れた光景だった。
天「あむっ、あむあむ•••」
月「今日はがっつくねー。そんなにお腹空いてたの?」
天「いや•••来週の事で色々ずっと考えてたら、いつの間にか腹が減ってた」
ノア「脳を使ったからだね」
月「あれこれ難しく考えなくてもいいんじゃない?」
軽い提案が飛んでくるが、俺は首を横に振った。
天「本来なら、これはサツとライブスタッフの仕事だ。でももし仮に犯人が武器を持ってたりしたら、サツはともかくスタッフ連中は相手にできない。中にまでサツを入れるのは難しいしな」
月「そこらのポリスメンよりお兄ちゃんの方がよっぽど強いしねー。もぐもぐ」
白飯を口に入れて咀嚼を始める妹。俺は反応に困って何も言えなかったが、気を紛らわす為にもご飯を口の中にかきこんだ。
ノア「そんなに急いで食べると喉に詰まるよ?」
天「母親みたいな事言いますね」
まぁいつも乙和さんを諭したりとか言いくるめてたりするし、精神的にもノアさんは大人な方だと思う。ヤベー奴である事に変わりはないが。
月「あれあれ〜?将来は尻に敷かれちゃうかも〜?」
ノア「それはないかな。いつも頼りにしてるし、逆に私が尻に敷かれちゃいそう」
月「おぉ•••ノアさんが言うとなんかエロいな」
天「失礼極まりない」
妹の発言がクソ過ぎてお兄ちゃん泣きそう。父さんに悪い意味で似過ぎなんだよなぁ•••。というか父さん以上に酷い。
ノア「前以上に月ちゃん、言いたい放題言うようになったね••••••」
天「この歳で父さん以上に問題発言連発してるんですから•••将来が真面目に心配です」
月「こんな事でそんな心配しないで!?流石にここだけだから!」
テーブルから身を乗り出して、月は俺の目の前にまで顔を運んだ。
天「じゃあマジでそういう事言うのはやめておけ」
月「セックス!」
天「•••••••••」
月「いや、あの•••そんな真顔で見られるのはちょっと••••••」
天「••••••••••••ハッ」
堪らず、俺は鼻で笑ってしまった。ピキッ、と月の顔に青筋が入ったのが直感でわかった。
月「オマエマジブッコロス」
天「おーこわwwwそんなカリカリすんなって、髪の毛の生え際が後退するぞ」
ノア「この状況でも煽るのはやめないんだ••••••」
天「伊達にメンタル鍛えられてませんから」
いつも煽られるから今回は仕返しだ。生憎とあまり煽られる経験がない月にはかなりのダメージが入っている。
天「で、どうだ?言い返された気分は」
月「ここまでイラつくとは思わなかったな〜。この事を踏まえて今後は遠慮なくお兄ちゃんをイジめていく事にするよ」
天「どうしようもねぇなお前••••••」
世が世なら殺されそうだなこいつ()ノアさんも苦笑いばかりで会話に参加できていない始末だ。可哀想に。
ノア「あ、そうそう。私、今日泊まるからね」
天「帰ってください」
ノア「冷たい!」
人を泊める余裕のない俺はつい昔のように返してしまった。少し反省する。
天「いえ嘘です。泊まってもらって構いません」
月「イライラしてるのは分かるけど人にぶつけるのはアウトだよ」
天「いや、分かってはいるんだが•••なんかすごいムカつくんだよ••••••」
月「•••Photon Maidenがそれほど好きなんだね」
まるで母親の様な慈愛に満ちた微笑みを月は浮かべる。この歳で母性あるとか勘弁してくれよ。
天「そ、そりゃ担当だからな!これくらいは•••しないと••••••」
ノア「天くん、責任を感じるのは大事だけど気負い過ぎ。警察やスタッフさんもいるんだから、自分一人で背負わなくていいんだよ」
天「そうですね•••ありがとうございます」
今はノアさんの優しい言葉が何より救われた。一息吐いて、またご飯をかき込んだ。
風呂も済ませて、俺は自室でパソコンを開いていた。メールの確認と共に、発信先を調べていたのだ。
天「まぁ、そううまくはいかんか」
発信の元を取る事ができたが、やはり元から捨てるつもりだったものだろう。情報が全く書いてない。
天「はぁ•••やっぱり現地で警戒するしかないか」
僅かな希望がなくなり、俺はわかりやすくため息を吐いた。
ノア「ダメだったみたいだね」
天「うおぉ!?」
突然後ろから声を掛けられて、俺は飛び上がった。ノアさんが噴き出して笑い始めたので、頬を引っ張る。
ノア「いふぁいいふぁい!」
天「何人のこと笑ってるんですかあなたは」
ノア「ごふぇんなふぁい!」
謝ったのを確認したので離した。彼女は少し痛そうに頬をさすっている。
ノア「いきなり酷い•••」
天「はいはいすみませんすみません」
手を伸ばしてノアさんの頭を撫でる。泣きそうだった顔はたちまち笑顔へと変わった。
ノア「やっぱり、落ち着くなぁ。天くんに撫でてもらうと」
天「•••そうですか」
手を離して、パソコンの電源を落とす。椅子から降りて俺は一度部屋を出る。
ノア「何処に行くの?」
天「ちょっとした野暮用です」
それだけ言い残して、隣の月の部屋の扉をノックした。すぐに月が出てきて、疑問まみれの顔を浮かべていた。
月「どうしたの?」
天「久しぶりに一緒にゲームしないか?」
月「珍しいね。もちろんいいよ。ボッコボコにしてあげるから!」
天「じゃあス◯ブラするか」
月「おっけー。じゃあディスク持っていくね」
俺は一足先に部屋を出て、また自室に戻る。ドアを開けると、ノアさんがベッドに腰掛けていた。
ノア「何処に行ってたの?」
天「月の部屋です。ストレス解消にゲームを一緒にしようと思って」
ノア「月ちゃんとやるの?じゃあ私はいつも通り見ていこうかな」
テレビの前に座ると、ノアさんは隣に来る。クッションを渡すと、軽く礼を申しながら尻に敷いた。
月「はーいお待たせー。あれ?三人でやるの?」
天「いや、ノアさんは見てるだけ。タイマンでやるぞ」
月「私は配管工の赤いおっちゃん使うね」
天「普通にマ◯オって言えよ。俺はいつも通りリ◯クで」
月「まーた剣キャラか(ボソッ)」
月が小さな声で毒を吐いた気がするが気の所為と言うことにしておこう。ゲーム機本体にディスクを入れて、ス◯ブラを起動させる。
すぐに対戦画面へと行き、自分が操作するキャラを選ぶ。
天「残機1か、普通だな!」
月「ゾロったりしないでよ?」
天「初心者じゃねぇんだぞこっちは」
ノア「ぞ、ゾロ•••何?」
ノアさんは用語がわからなくて首を傾げていた。ゾロるはまぁ、自分から落ちて死ぬ事を言う。多分。
そうこう言ってるうちに試合が始まった。俺は開始直後に真っ直ぐに突進してダッシュ攻撃のジャンプ斬りを繰り出す。が、月の操作するマ◯オは簡単にそれを躱した。
月「お兄ちゃん毎回凸ってくるよねー。癖なの?」
天「まぁ癖だな。なんだかんだまず最初に一発入れたい性分でな」
月「見事に躱されてるけどねっと!」
天「あぶなっ!」
ガードをしていたところに唐突に掴みにきやがった。俺は即座に回避し、なんとか免れる。
月「無駄に反射神経はいいね」
天「こちとら鍛えてるからな」
ノア「もうこれだけで何が何だかわかんない•••」
俺の腕に抱きついていたノアさんは、状況についていけていなかった。ただ呆然と俺と月が操作するキャラが戦い合ってるのを眺めてるだけだ。
月「はいはいはいはい!」
天「うわっ、コンボ始めやがった!」
月が操作するマ◯オには確定で相手を場外に追い出すコンボがある。今はそれをキメられている真っ最中だ。
天「•••ッ!」
タイミングを見計らって空中回避をする。月の攻撃は外れて、俺が先に地面に足をつける。落ちてくる月目掛けて、俺は上攻撃を入力した。
が、月も同時にした攻撃を入力していたようで、お互いの攻撃が重なってふっとんだ。そしてどちらかが死んだみたいだが、画面を見ればマ◯オのダメージ表記が残っていた。つまりはーー、
月「はい私の勝ちー!」
月の大勝利だった。コントローラーを放り投げて喜んでいる。
天「あーくそ、負けた」
月「現役勢に勝てると思ったら大間違いだぞー?引退勢くん」
天「その引退勢にギリギリまで追い込まれていたのはどこのどいつだ?」
月「勝てればいいんですぅ〜」
まるで子供のように俺たちは言葉を投げつけ合う。その光景が面白かったのか、ノアさんは笑い始めた。
ノア「あはっ、あはははっ!天くんも月ちゃんも、本当に仲がいいんだね」
月「十年以上一緒ですからねー。絆ってものがあるんですよ」
天「いやお前普通に絆崩壊しそうなパーティーゲームで容赦なく潰してきただろ」
月「ゲームと現実は違うんですよお兄さま!」
やたらと呼び方が変わるなこいつは。俺も堪らず笑い出し、部屋の中は三人の笑い声で溢れかえっていた。
新年回のお陰で書き貯めがどんどんなくなってるんだよなぁ。やっべどうしよ()