神山家に二人で帰宅する中、俺は外で振り返って会場を眺めた。本当にあんなところでライブをしたのか、としみじみと感じた。
ノア「どうしたの?みんな待ってるから早く帰らないと」
天「そうですね」
握っていた手を引かれて、俺はまた踵を返す。ノアさんがニコニコと俺を見ているのが妙に気になる。
天「••••••何か顔についてますか?」
ノア「なにもないよ。••••••ありがとう」
天「どうしたんですか急に」
突然礼を申されて、俺は少し困惑してしまう。
ノア「ここまで私たちを連れて行ってくれて、守ってくれて、ありがとう。天くんがいなかったら、今頃あんなところに立ってなかったよ」
天「••••••そうですか」
まだ頭がボーッとしていて返答を練る思考がなかった。久しぶりに発動した能力は、薬込みでもかなりの負担を脳に与えていたらしい。
ノア「これからも、私たちをステージに立たせ続けて欲しいな」
天「当たり前ですよ。Photon Maidenをライブに連れて行くのが俺の仕事なんですから」
これだけは聞き逃さずに、ちゃんと言葉を返すことができた。さっき少し寝たとはいえ、まだ疲れは相当残っている。家に着いたらまた少し寝させてもらおうと、僅かながらに考えた。
家に到着して玄関を開けると、やはりと言うべきか、ワイワイとしていて賑やかだった。俺とノアさんは顔を見合って、小さく笑う。そのままリビングに向かって歩いてドアを開けた。
猛「おぉ!帰ってきたな天!それとノアちゃん!お疲れ様!」
天「••••••父さん?帰ってきてたのか」
後疲れた脳に大声はやめてくれ、頭が痛くなる。
月「遅いよー?待ちくたびれちゃったんだから」
足をブラブラと振りながら月が呆れ混じりに口を開く。遅くなったことに関しては申し訳ない。セックスしてて遅れた事は口が裂けても言えんが。
月「•••••••••あぁ、そういうこと。青春してるねぇ」
天「あっ•••」
そういえば思考読めるんだったコイツ。やらかした。ノアさんも察したようで、顔を赤くしていた。
乙和「ノアどうしたの?顔赤いけど」
ノア「な、なんでもない!」
乙和さんが気にかけて心配するように声をかけてくれたが、ノアさんは焦っていたのかデカい声で対応した。その声に驚いて、乙和さんの身体はビクッと跳ねた。
咲姫「天くん、こっち••••••」
ちょうど咲姫の隣が空いていたので、彼女はこちらに手招きをした。俺はそのまま釣られてそこに座る。
咲姫「お疲れ様」
天「ん、ありがとな」
すぐに労いの言葉をいただけて、俺は少しばかり微笑む。更にその隣に、ノアさんが座った。
ノア「咲姫ちゃんの相手だけ•••?」
天「普通に話してただけじゃないですか。過剰に反応し過ぎですよ」
衣舞紀「嫉妬深い女の子は別れやすいわよー?」
すかさず衣舞紀さんがからかうように口を挟んだ。ノアさんは更に反応して、頬を膨らませる。
ノア「これは嫉妬じゃない!ただ天くんが他の子と楽しそうに話してるのが嫌なだけだもん!」
乙和「ノア、それを嫉妬って言うんだよ•••?」
月「これが素だから余計に面白いですね」
咲姫「面白い•••かな••••••?」
月の言葉に、咲姫は苦笑いをしながら首を傾げた。俺も面白いとは思わん。可愛いとは思うが。
猛「最近の女の子ってこういうもんなのか?」
天「さぁな」
猛「こんな沢山の女の子と関わってきて知らんはねぇだろお前」
天「いやたった四人じゃん•••」
いつものように言い争うノアさんと乙和さん。それを嗜める衣舞紀さん。月と楽しそうに談笑する咲姫。それに比べて俺は父親とつまらん会話をしているだけだ。
猛「今日、母さんが帰ってくる予定だったんだが•••無理そうらしい」
天「仕事が忙しいのか?」
猛「いや、担当の番組が遅くまで長引いてるからそれでな」
天「マネージャーはめんどくせぇな」
かくいう俺もマネージャーなんだがな。父さんはそれをわかってて、小さく笑った。
猛「それに比べてお前の担当は優秀でいいな。まだライブあるんだろ?」
天「あぁ。来月に後二回ある。まだ増えるかもしれんがな」
猛「成長したなぁ•••そういや、高校卒業したら家出て行くんだったな」
天「あぁ。いい加減一人暮らしを始めないといけないし」
本当は父さんや母さんと離れたいだけなのだが。この二人は普通に面倒だから今後関わりたくないまである。
月「はーいちゅうもーく!ご飯食べますよー!」
パンッ!と月が手を叩いて音を響かせた。自然と全員の視線が集まって、妹はわざとらしく咳払いをする。
月「えー、ライブも無事に終わって成功を収めました。ここで、我が兄である天様にお言葉をいただきたいと思います」
乙和「おー!」
猛「変なこと言ったら殴るからなー!」
早速乙和さんと父さんが悪ノリを始めてしまった。他の人もなんだかんだ楽しそうに見てるあたりグルだ()。
俺はため息混じりに仕方なく立ち上がる。
天「えっと、まぁ•••ライブが何事もなく終わって本当に良かったと思います。こうして成功できたことも、Photon Maidenが日頃から努力を重ねて技術を磨いたからでしょう。今後も気を抜くことなく練習に励んで貰いたいと思っています」
猛「おいかてぇぞなんかねぇのか!」
天「部外者は黙ってろ」
猛「アッハイ、すんません••••••」
ジロリと睨みつけるとすぐに父さんは黙った。流れが完全に崩れたので、俺はもうヤケになろうとする。
天「とりあえず!ライブ成功おめでとう!これからもどんどん連れていくからついてきてくれ!」
我ながらクサいセリフを吐いたものだ。かなり恥ずかしい。
ノア「もちろんついていくよ。天くんあってのライブだから」
月「とりあえずご飯食べません?お兄ちゃん話長すぎ」
天「その話振ったヤツには言われたくねぇな」
勢いよく座って、俺たちは夕食を食べ始める。豪華に料理が沢山並んでいて、どれから食べようか迷ってしまう。
乙和「ん〜!栗きんとんあまーい!」
衣舞紀「乙和、ちゃんと野菜も食べなさい」
咲姫「もぐもぐ••••••」
天「咲姫、お前はちゃんと肉食え」
月「お兄ちゃんにははいこれ」
ドンっと小さくも鈍い音を立てながら、俺の目の前に缶が置かれた。エナジードリンクやんけ。
月「それ飲んで、少しは脳働かせてね。今日は遅くまで騒いじゃうよ」
妹の気遣いにちょっと感動しながら、俺はプルタブを開けてエナドリを口の中に流す。
炭酸と共に満たされる甘味がとても心地良い。でもそんな大量に飲もうとは思えなかった。
ノア「はい天くん、あーん」
天「あむっ。んむんむ•••なんすかこれ」
独特な食感に酢飯の味が口いっぱいに広がる。美味いけどよくわからないものを食わされて少し困惑した。
ノア「フグのお寿司だよ。美味しい?」
天「美味いですよ」
ノア「じゃあ私にもお返しを」
天「しゃーないですね」
俺はマグロ寿司を箸でつまみ取って、ノアさんの口元へ運ぶ。
天「あーん」
ノア「あーんっ。もぐもぐ•••んーっ!美味しい!これって中トロかな?」
天「そうですよ」
すぐにネタを味で見分けたノアさん。すごくね?
月「流石に私一人でこの人数分を作るのは辛いから沢山出前とっちゃった。お金かなり使ったけど許してね?」
天「全然問題ない」
よく見たらテーブルには他にもピザやたこ焼き、更には弁当までもあった。見境無さすぎて逆に笑える。
ノア「•••••••••」
ぎゅっ、とノアさんが俺の手を握った。テーブルの下だったので、周りからは一切見られていない。横を向くと、彼女は少し顔を赤くしてこちらを見つめていた。
天「どうしました?」
俺も握り返すと、ノアさんは少し安心したような顔になる。
ノア「大好きだよ、天くん」
天「俺もです、ノアさん」
周りに人がいるにも関わらず、俺たちは素直に自分の気持ちを伝え合った。もうすぐ夏が終わる。だんだん涼しくなっていき、そこで魅せてくれる彼女の姿は、とても綺麗だろうと勝手に思い込んでみた
いやー寒いねー。あ、明日で完全にノア√終わります。ラストは衣舞紀やでー。頼むよー(他人事)