玄関の鍵を開けて家に入る。奥のリビングからガヤガヤとした音が聞こえて、真っ先に向かう。神山家はリビングとキッチンが繋がっている。丁度キッチンの方では、制服の上にエプロンを着けて晩ご飯を作っていた妹の月が目に入った。月は俺に気がついて明るく笑う。
月「おかか、お兄ちゃん。顔合わせどうだった?」
天「ただま。まぁボチボチかな」
俺は当たり障りない返答をするが、月はそれが気に入らなかったらしく、眉をひそめている。
月「担当、女の子いた?」
天「•••全員女子」
月「え!?ま、待ってどんな人たち!?写真ある!?」
月が料理をほったらかしてまで俺に食いついてくる。月を嗜めながら、Photon Maidenのメンバーの写真を見せる。
月「うわぁ、可愛い人しかいない•••お兄ちゃん、これはチャンスだよ」
天「チャンスって?」
月「お兄ちゃんがリア充になるチャンスだよ!」
は?(困惑)俺は首を傾げるが、月は興奮が冷める様子もなく息を荒くして言葉を紡ぐ。
月「だから、お兄ちゃんに恋人ができるかもって話だよ!」
天「ハッ」
俺はつい鼻で笑う。何かと思えばそんなことか。
天「あの人達とは仕事上での付き合いだ。それ以上踏み込むなんて、面倒だからごめんだな」
月「それっ」
天「おあぁ!!?」
ムスッとした顔の月が俺の脇腹に触れる。昼にも感じた気持ち悪い感覚を無理矢理ぶち込まれる。
天「さ、触るのはNG•••」
月「今日のお兄ちゃんなんか面倒臭いな•••何かあったの?」
天「いや特には•••ないよな?(自己分析)」
いやまぁ咲姫からの絡みがすごかったー、なんて言えば月は話のタネにするだろう。妹のこういうところはあんまり好きじゃない。というかほっといて欲しいまである。
月「まぁいっか。もうすぐご飯できるから、上着脱いでこっち戻ってきてね」
天「ん」
短く返して、母さんに報告のメールを打ちながら自室に入った。
今日は父さんは帰ってこないし、母さんも帰りが遅い。珍しいというわけでもないが、二人で夕食にありつく。
月「結局のところ関係としては悪くはないの?」
天「まぁ嫌な反応はされてないな。面倒なのは確かだけど」
月「歳お兄ちゃんと変わりないんでしょ?少しは気楽と思うけどなぁ」
天「女子の時点で安心できない。まだ男だったら良かったんだが•••」
月「何気に初だね。女の子のマネージャーするのって」
言われてみればそうだ。今まで男の芸人や俳優のマネージャーをやってきたが、女性に当たった事は一切なかった。でも今のところはまだ男の相手してる方が楽()
天「とりあえず慣れるまでは何とか頑張るよ•••はぁ」
月「どうしたの?何か不満でもあるの?」
天「いや、よりにもよってメイデンのみんな、俺と同じ学園なんだよ•••」
月「うそやん」
天「マ」
真顔で驚く月に対して俺も真顔で応える。というか月の真顔とか久しぶりに見たな•••写真撮ればよかった。
天「だから極力学園では、というか同じ学園だということがバレるのは避けたい」
月「なんで?」
天「いやだって明らかに面倒じゃん。学校では平和でいたいのに、あそこでも絡まれるとか勘弁願いたいわ」
月「ホント扱いが面倒だなこの兄は(キレ気味)」
天「ところで話は変わるけど、月はメイデンの誰がお気に入りとかあるか?」
月「え?唐突だねぇ。私は•••出雲咲姫ちゃんかな」
天「ほう」
明日咲姫に報告しておくか。喜ぶ•••かどうかは知らんが(他人事並感)。
天「ごちそうさま。じゃ、先風呂入る」
月「はーい。植木鉢投げた方がいい?」
天「人に対しての植木鉢演出は冗談抜きでやめろ」
普通に痛いし最悪破片刺さるし土塗れになるしで最悪な事になる(経験談)。ちなみに風呂はさっさと済ませた。長風呂する趣味はない。
風呂から上がった後は自室でゴロゴロとしていた。そういえばメイデンのメンバーとはラ◯ン交換してグループにぶち込まれたんだった(強制)。グループ内では言葉が交わされているが覗くこともなく、俺は明日の予定を確認する。
天「••••••まぁ特に詰まった予定はないしなぁ•••ライブ会場の交渉はまだ先でいいか」
メモ帳を閉じて、俺はベッドに寝転がる。明日も早い。さっさと寝て備えなければ。
天「••••••どうせ少しの付き合いだ」
俺はそう自身に言い聞かせる。これまでもずっとそうしてきた。今まで担当してきた芸人や俳優とは一切会わないし話すこともない。お互いに忘れて今目の前の事に対して必死になっているだろう。Photon Maidenだって、担当を離れれば必ず忘れる。だから無理に関係を築こうだとか、仲良くしようだとか、そんな楽しい事は一切捨てる。仕事に私情を挟むような真似は俺の流儀に反するのだ。
天「••••••大丈夫だ。大丈夫•••」
だが、それでも彼女らの姿を見て、忘れる事なんてできるのだろうか。担当に就く前に、ライブの映像等を見せてもらった事がある。記憶に植え付けられるような神秘的な世界を見せつけられて、その時の俺の心は跳ねた。吃驚する程に、すごかった(語彙力)。担当に就いたのは、ただマネージャーとしての経験だとかの建前を捨ててでも、あの世界の内側に近づきたいと、そう思えた。だが蓋を開ければ全員成人もしていない学生だ。耳を疑った。あれ程の実力を持っていながら、学生。少なからず劣等感を感じたし、立場の違いに絶望もした。今でこそ冷静に振る舞ってはいるが、いずれは現実を叩きつけられるかもしれない。今はただ、仕事と頭に言い聞かせて動く事しかできないが、彼女たちのサポートはしっかりやらせてもらおう。俺程度の力で彼女たちが前に進めるなら、マネージャーとして本望だ。明日も、頑張ろう。俺は意識を閉ざして、そのまま身を任せた。
課金?むりむりむりむりかたつむり。アインシュタインより愛を込めてっていうエロゲを買うので課金にまわすお金なんてないですwじゃ、また明日(本田圭佑並感)