衣舞紀さんと付き合い始めて数日が経過した。俺たちの関係は瞬く間に広まり、ネビュラプロダクション、Photon Maiden内にも知られる事となった。
乙和「いつの間に付き合ってたのー!?」
今は昼休み。学食の方に連れて行かれて、俺と衣舞紀さんに向かって乙和さんが問いただしていた。
衣舞紀「本当につい最近よ。まだ一週間も経ってないと思うわ」
ノア「天くんと衣舞紀が•••なんか意外かも。天くんは咲姫ちゃんと付き合うと思ってたから」
天「え、何で咲姫なんですか•••?」
ここで何故か咲姫の名前が出されて、俺は首を傾げた。
ノア「だって、咲姫ちゃんは天くんによく懐いてるし、天くんも咲姫ちゃんに対していつもより優しいから」
天「•••そんな違うか?俺」
咲姫に目を向けると、彼女は首を傾げた。どうやら本人はその気がないらしいし、違和感も感じていないようだ。
衣舞紀「とにもかくにも、私は天と付き合ってるから変に手は出さないように!」
乙和「たかが付き合ってるくらいで調子に乗るなー?天くんの許可さえ出れば何でもするんだから!」
ん?今何でもするって•••(テンプレ)。
いやそれは置いといて、ここで独占宣言するのはいかがかと思うぞ俺は。
男子生徒A「神山め•••あんな美少女たちと仲良くしやがって•••!」
男子生徒B「どうする?処す?処す?」
男子生徒C「後でXすか」
ブルッ!唐突に悪寒を感じて、身体を震わせた。
衣舞紀「どうしたの?もしかして寒い?」
天「この時期に寒いもクソもないでしょう•••誰か俺の噂でもしてんのか•••?」
衣舞紀「風邪には気をつけてね?夏風邪を引いてしまうかもしれないから•••熱測っておく?」
乙和「過保護だ•••」
天「人の事ナメ過ぎですよねこの人」
若干乙和さんが引いていたので、少しばかり便乗しておく。が、衣舞紀さんは首を傾げた。
衣舞紀「過保護かな•••?私はただ天の心配をしているだけなのだけど••••••」
ノア「それにも限度ってものがあるでしょ•••。大体天くんはそんなつきっきりで世話する程弱くないだろうし」
衣舞紀「えー?天、風邪引いてた時一人で何もできずに相当酷い事になってたわよ?」
天「ちょっ、衣舞紀さん!?」
何でよりにもよってその話するのあなた!?普通に恥ずかしいんですけど!
ノア「えっ!?天くんそんなに弱ってたの!?私も看病に行けばよかったかな•••あわよくば天くんが甘えてくれたり•••」
天「絶対にあり得ないこと言わないでください」
なんかまた気色悪い事を言ってるのでスッパリ斬り捨てる。
ノア「最近天くんが冷たい気がする•••」
乙和「いつも通りだと思うよ?前の頃は聞いてるフリしてたもん」
そういえば最初の頃は関わろうとしなかったから、話半分にしか聞いてなかったな。今となってはちゃんと受け答えしてるから驚きだ。
衣舞紀「天も変わったって事よ。これでもっと素直になってくれればいいんだけどね」
天「••••••素直ねぇ」
咲姫「どうしたの?」
天「いや、なんでもない」
素直って何だったか少し疑問に感じた所を、咲姫が見逃さず声を掛けてきた。だが、大した事でもないので首を横に振った。
天「まぁ•••ずっと担当をしていたら色々変わるんじゃないんですか?」
乙和「曖昧だなぁ•••」
天「••••••実際、どうなるか俺もわかりませんから」
少しだけ口角を上げて僅かに微笑む。この先の物事次第で、俺はどうにだってなるだろう。後は自分のやるべき事をやって、待つだけだ。
教室に戻ると、クラスの男たちからやたら見られまくったが気にせずに席に着いて授業を受けた。
放課後になれば、真っ先に咲姫が俺のところまでやってきた。
咲姫「事務所、行こ?」
天「あぁ」
鞄を手に取って立ち上がり、咲姫と一緒に廊下に出る。
衣舞紀「来たわね。それじゃ、行こうか」
乙和「二人とも遅いよー?」
なんか知らん間に先輩組に待ち伏せされていた。俺は引きつった顔になる。
ノア「いつも一人で行っちゃうから、先に来ちゃった」
天「事務所までの移動くらい俺のペースでいいですよね•••?」
乙和「だーめっ。ちゃんとみんなで行くぞー!」
いつまで経っても元気だなこの人は。その快活さを分けてもらいたい程だ。
衣舞紀「乙和ー。廊下は走っちゃダメよー?」
天「小学生じゃん•••」
その姿はまるでヤンチャな子供の様だった。身長が低い乙和さんだからこそ、子供っぽさが際どっていた。
ノア「乙和は子供なんだから•••」
乙和「高校生は子供だもーん!」
天「大人になる努力をしてください。あなた一応芸能人なんですからね?」
ため息を吐きながら乙和さんを追いかけて捕まえる。そのまま引きながら戻る。
乙和「ちょっと天くん速すぎー!」
天「はいはい暴れない暴れない。このまま引っ張って行きますよ」
乙和「あれ?ということはこれって実質天くんと手を繋いで歩く事になるのでは?」
天「えっーー」
衣舞紀「ーーッ!」
乙和さんの言葉に反応して顔を向けたその一瞬、空いてるもう片方の手に衣舞紀さんの手が握られていた。
衣舞紀「行きましょうか、天」
天「あっ••••••ハイ」
そのまま優しく手を引かれて俺は乙和さんと一緒に歩く。
ノア「咲姫ちゃん、今の見えた?」
咲姫「全く••••••」
ノア「私たちも行こうか?置いて行かれちゃう」
咲姫「うん•••」
その後ろを咲姫とノアさんが続いて、訳の分からない絵面が完成した。誰か止めろ。
仕事も終わり、一日の終わりを感じる。今日はさーっと帰って早く寝よう。なんだかそんな気分だ。
衣舞紀「天、帰ろっか」
天「おうっ、いつの間に•••」
いつの間にか後ろにいた衣舞紀さんに肩を叩かれる。身長差がそこまで大きくあるわけではないので、綺麗な顔がすぐ目の前にあって驚く。
衣舞紀「どうかした?」
天「いえ、何でもありません。帰りましょう」
何事もない風を装って、事務所の外に出る。既に暗がかっている空は鈍色の雲に覆われていた。雨でも降りそうな雰囲気まである。
天「流石にこの時間は涼しいですね」
衣舞紀「そうね。このくらいの気温は走りやすいかな」
天「誰もランニングの話はしてませんよ」
苦笑しながら衣舞紀さんに軽いツッコミを入れる。彼女も笑いながら応えてくれた。
衣舞紀「いやーさっきはごめんね?急に手を握ったりして」
天「全然構いませんよ。嫌ではないので」
衣舞紀「•••じゃあ、今繋いでもいい•••?」
天「•••ッ!い、いいですよ••••••」
そっと手を差し出すと、衣舞紀さんは恐る恐るそれを握った。さっきは流れでスムーズに行ったのに、こうもムードが出来上がると恥ずかしくて仕方がない。
衣舞紀「な、なんだか照れ臭いわね•••」
天「そ、そうですね•••」
これではまるで初々しいカップルの様だった。周りの大人たちの視線もあって居心地が悪い。
女性A「(付き合いたてなのかしら?可愛らしくていいわね〜ーーって両方とも女の子•••?)」
女性B「(でも男子の制服着てるし男の子じゃないかしら•••?)」
知らず知らずの内に失礼な事を考えられていた事を俺は気が付かない。誰かの思考を読めるわけじゃないからわかるわけがなかった。
しばらく歩いていると、衣舞紀さんが急に立ち止まり、俺もすぐに反応して停止する。
衣舞紀「それじゃあ、私はこっちだから」
するり、と手が離れる。何故か名残惜しくなってる俺がいた。
天「そうですか、ではまた明日」
一礼し、俺は踵を返す。家に向かって一直線に歩こうとしたが、後ろから誰かに腕を掴まれる。
衣舞紀「忘れ物」
天「え?なんですかーー」
衣舞紀「んっ•••」
その正体は衣舞紀さんで、何事かと振り向いた瞬間に唇を奪われていた。
衣舞紀「ん、んぅ、ちゅ•••」
そのまましばらくの間キスを続けられ、俺の頭はこんがらがる。
衣舞紀「•••ん!じゃあね!天!」
そして手を振りながら笑顔で走っていった。俺は困惑したまま、その場に固まってしまう。
天「••••••反則だろ•••••••••!」
男として何かを失った様な気がして、ものすごく悔しかった。無意識のうちに唇に触れていて、顔が熱くなる。
天「•••絶対、仕返ししてやる」
俺のそのか細い呟きは、夜の風によって消えていった。
そんじゃ、私は執筆しながら生放送に帰ります。皆様、モンハンコラボ頑張りましょー。